May 22, 2011

ペダルパワーを備えておけば

いまだ多くの方が避難所生活を強いられています。


当初の物資の不足は解消され、生活環境も幾分改善されてきたようですが、不自由な生活が続いていることには変わりありません。未曾有の大災害だったとは言え、苦労されている様子を見るたびに、もう少し避難生活の苦痛を和らげる備えは出来なかったのだろうかと感じることがあります。

今回の震災では、自転車も見直されました。言うまでもなく、被災地ではクルマが流され、道路が瓦礫でふさがれ、ガソリンが不足したことで、自転車が貴重な交通手段となったからです。通信手段が途絶した当初は、人が自転車で実際に行き来することで、連絡手段や輸送手段としても使われたようです。

避難所となっている体育館ただ、非常時に人力だけで動く自転車の有用性については、阪神淡路大震災の時にも言われていました。当時もパンクしない自転車を災害に備えて備蓄すべきなどと話題になった記憶があります。今回、震災後に救援物資として自転車を被災地へ送る動きはありましたが、被災地で災害用に備蓄してあったという話は聞きません。

今回は津波の被害が大きかったため、災害用の備蓄物資も流されてしまったということがあったのかも知れません。しかし、前回取り上げた仮設住宅の問題もそうですが、災害発生後の備えに、果たして過去の教訓が生かされ、準備がされていたのか疑問な部分もあります。

避難所生活では、何よりプライバシーが保てないのが辛いと言います。最近は、避難所にも間仕切りが見られるようになりました。しかし、卓球用のつい立など、高さが低くてプライバシーの保護になっていないものも少なくないようです。この問題はいつも指摘されることで、あらかじめ予想されていたことでもあります。

仮に、こんな物資を備蓄していたらどうでしょう。ダンボールをカットしただけの簡単なものですが、屏風のような形にして組み合わせることで、十分に視線を遮る間仕切りが出来ます。食事時は、テーブルと椅子に作りかえることも出来ます。床に直接座って食事をとるのも姿勢として辛いですから、この機能も重宝しそうです。

help me darwin, www.nocc.fr

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持ち運び用の収納袋も使い、ベッドとして毛布などの下に敷いても使えるようになっています。不要な場合にはコンパクトにたためて軽量なので、もち運びにも便利です。こんな間仕切り兼、家具兼、ベッドが、避難生活当初から配れるよう、本来は備蓄してあっても良かったのではないでしょうか。

仮に備蓄しておけなかったとしても、ダンボール製ですし、あらかじめ想定されていれば、すぐに生産して届けることも可能だったでしょう。それが、いまだに、ほとんど目隠しになっていない間仕切しかない避難所があるのは、物資だけでなく、体制としても備えが足りなかったと言わざるを得ません。

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今回の被災地は東北が中心であり、時期が3月上旬だったので寒さも問題になりました。避難所が設置されたのは小学校などの体育館が多く、建物の構造的に寒さが厳しいという部分もあったに違いありません。天井が高いので、暖かい空気は全部上の方に行ってしまうのではないでしょうか。

もともと、防寒という面で言えば、体育館が避難所として相応しくないのは否めません。でも、どこにでもある公共の建物、収容力のある建物として体育館などにならざるを得ないのも仕方のないところです。それならば、間仕切りと兼ねて、こんな物資を備蓄しておいても良かったのかも知れません。

HexayurtHexayurt

こちらの六角形の簡易テントは“Hexayurt”です。軽い断熱マットや段ボール、プラスチックなど、手近にあるパネルをテープで貼り合わせて作る非常用のシェルターです。材料も安価で、誰でも簡単に組み立てられます。ハイチ地震などの災害で使われたオープンソースのプロジェクトで、デザインや作り方を公開しています。

体育館の中で、世帯ごとにこのような断熱マットのテントを組めるような資材を用意しておくのです。プライバシーが保てるばかりでなく、暖かい空気を逃しません。暖房器具が満足に調達出来ない場合に、最大の熱源は人間の身体そのものです。人間の出す熱を狭い空間に閉じ込め逃がさないようにするわけです。



場合によっては、下のような構造物を、体育館に用意しておくことも考えられます。ふだんは、たたんでおき、必要に応じて立体にするハニカム構造です。組み立ても簡単、1人から2人用の穴倉のような就寝スペースが確保できます。体育館のような広い場所で寒さを凌ぐのにも好都合です。

どんなものを、どれだけ用意しておくかについては議論の余地があると思います。ただ、平時にこうした備蓄物資の有用性、ありがたさについては、なかなかピンと来ない部分があると思うので、その必要性が痛感される今こそ、避難所生活への備えについても考えておくべきではないでしょうか。

temporary shelter system, www.red-dot.sg

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避難所生活では、トイレの問題も深刻だと言います。衛生上の問題はもちろんですが、トイレを使うのがイヤなために、特に高齢者が水分を摂るのを控えてしまい、いわゆるエコノミークラス症候群や心筋梗塞、脳梗塞などをひき起こすリスクが高まるのも問題と言われています。

断水しても、水を汲めば流せることもあるでしょう。しかし、地震などで下水道まで破壊された場合は、仮に水が用意できても下水に流せません。大規模な地震でトイレの問題が起きるのは、こうしたケースです。下水道はそう短期間では復旧が見込めません。

バイオトイレバイオトイレ

そこで、バイオトイレという手もあります。キャンプや山歩きなどが趣味の方ならご存じかも知れません。私も見たことがありますが、生ゴミ処理機と同じ原理で、排泄物を微生物で処理するトイレです。水を使わないので、下水道がない山の中などでも設置出来ます。

自転車のような装置がついていて、使用後、撹拌するためにペダルをこぐものもあります。臭いもなく、汲取り作業も必要ありません。3立方メートルほどのおがくずがあれば、1日に300人分くらい処理出来ると言います。山小屋やキャンプ場だけでなく、こうしたトイレの設置を検討する余地もあるのではないでしょうか。

自転車発電機

避難所生活で、特に災害発生当初は情報が途絶するのも大きな苦痛の要因だと言います。携帯電話の基地局が働いている場合でも、停電して携帯電話への充電が出来ず、乾電池などの備蓄がなければ、ラジオも聞けません。そこで、こうした電力くらいは、電力量も少ないので、人力で発電する手段を備えておいてもいいでしょう。

避難所生活で、洗濯が出来なくて困るという声も多く聞かれるようです。水があったとしても、洗濯機がないので手で洗うしかありません。昔は当たり前だったとは言え、今さら手で洗うのは重労働です。以前、取り上げたことがありますが、ペダル式の人力洗濯機を備蓄しておくのはどうでしょうか。

ペダル式洗濯機災害時用に自転車で飲料水製造

そのほか、災害用の自転車浄水器も取り上げたことがあります。自転車で必要な場所へ移動し、ペダルの力で水を浄化し、飲料水を得るというものです。これなど、まさしく災害用です。飲料水が支援物資として届けられるまでの間、こうした備えがあれば安心です。

避難所間仕切りに間仕切り以外はペダル系を多く挙げましたが、避難所生活の不便が、自転車やペダルをこぐことで解決、あるいは緩和するものも少なくありません。人力をラクに効率よく使うためには、一番強い足の筋肉を使うのが一番です。つまり、ペダルをこぐスタイルになるわけで、非常時の装置に自転車型のものが多いのも道理です。

災害時、電気やガスが止まり、非常用発電機などがなければ、人力が唯一使えるエネルギーというケースも多いはずです。自転車そのものや、連結して荷物を運ぶためのリヤカーなどを含め、災害時の備えとしてのペダルパワーの利用も、もっと考えておいてもいいと思います。

毎日のように報じられている避難所生活で、被災者の方がご苦労されている様子を見るにつけ、少しでも備えがあれば、その困難さも軽減できたのではないかと思うことが少なくありません。残念ながら起きてしまった大震災ですが、せめてその教訓を生かしたいものです。





最近、私の周りでも、非常用持出袋などを準備したなんて話を聞きますが、本当は自分の地域の避難所での備蓄についても、考えておくべきなんでしょうね。

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この記事へのコメント
cycleroadさん お早うございます。
2カ月以上経っても避難所では、間仕切りひとつ満足にありませんね。
いくら我慢強い東北人でも、我慢の限界があると思います。
我々ももっと普段から、避難所での生活のことを考えておかねばなりませんね。

避難所生活とは直接関係ありませんが、ペダルパワーと言うことで私の自転車はペダルパワー&ソーラーパワーです。
「メリダの電源は自己完結型」
http://blog.goo.ne.jp/tonsan2/e/1014fdf2318a653befe157a2bb0fa586
Posted by トンサン at May 24, 2011 10:05
トンサンさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
未だこの状態というところが、お気の毒ですし、何とかならないものなのかと歯がゆい思いがしますね。
毎回、大きな災害が起きるたびに、こうした避難生活の苦難が報じられているわけで、なんとか改善しよう、教訓を生かそうという方向が出てきてほしいところです。
拝見しました。
すごいですね、電源は、すべて自給自足ということですか。
こんな電装系の自作が出来るというのが、いつものことながら、うらやましく思います。
Posted by cycleroad at May 24, 2011 23:22
はじめまして、バイオトイレ良いですね。ご紹介させて下さい。
Posted by あずま at December 28, 2012 15:27
あずまさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
引用元の記事はリンク切れになってしまっているようですが、どうぞご紹介ください。
Posted by cycleroad at December 28, 2012 22:40
 
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