
今年は夏に向けて、節電対策が大きな課題となっています。
原発事故を起こした東京電力や、震災で発電所に大きな被害を受けた東北電力だけでなく、浜岡原発を停めた中部電力、原発が停止中で需給がひっ迫している九州電力などの管内でも電力不足が懸念されています。日本各地で今年の夏、不測の大停電が起きる可能性が出てきているわけです。

企業は独自にサマータイムを導入したり、業界ごとに工場の休日を平日にずらす、いわゆる輪番操業などを計画しています。夏季休暇を増やして、冬の休暇を減らすなどの措置をとる会社もあれば、関西などに生産や業務を移したり、分散するところもあります。
オフィスでは従来のクールビズを更に進め、照明を減らすなど節電への取り組みを強化しています。LED電球に換えたり、事務機器などの稼働を制限する事業所もあります。家庭では、省エネ家電に買い替えたり、つる性の植物を植えて緑のカーテンをつくるのも流行っているようです。
街でも、商業施設が売り場の照明を落としたり、ビルや駅のエスカレーターが停止しているなど、節電に努めるところが目立つようになってきました。電車もラッシュ時を除いて本数が減らされるなど、私たちの生活にも、さまざまな形で影響が及ぶことになります。
不測の大停電による災害を招かないためにも、こうした取り組みは必要不可欠です。各方面で節電への取り組みが進み、その意識が高まっていることは、まことに歓迎すべきことです。しかし、一方で節電によって危険になったり、リスクが高まったりすることもあります。

いろいろあると思いますが、サイクリストにとっての危険は、街路灯の消灯でしょう。国道や各地方自治体が管理する市町村道などでも、軒並み街灯が消され、あるいは間引かれて暗くなっています。道によって、場所によっても違うと思いますが、かなりの割合の街灯が消されています。
街が全体的に暗くなっているのは、多くの人が実感していると思いますが、夜間に走行しないと、その危険については、あまりピンと来ないかも知れません。ただ、例えば休日の昼間しか乗らない人であっても、何らかの理由で遅くなることもあるでしょうし、リスクはあります。
毎日自転車通勤をしている人の中には、帰りは日が暮れた後という人もあるでしょう。今は一年で一番、日が長い時期ですから、けっこう遅くまで明るいですが、夏に向けて、少しずつ日は短くなっていきます。ちょっと残業すれば、図らずも夜間走行になってしまうということもあるはずです。

すでに夜間走行をしている人なら、怖さを実感されているかも知れません。交差点など、それほどでもない所もありますが、場所によっては、かなり暗くなっている道もあります。暗いと歩行者や他の自転車、障害物などに気付くのが遅れ、事故になる危険が高まります。
多少暗くなったから、すぐ事故になるわけではありません。しかし、確実に事故は増えています。まだ、あまり具体的な数字として報道はされていませんが、道が暗いことによる事故は、実際に起きているようです。
例えば先日、夜の都内で、タクシーを停めようと車道に立っていた女性会社員に、自転車で通りがかった男性会社員が激突し、男性は死亡、女性は顔面に重傷を負うという痛ましい事故が起きています。現場付近は節電で街路灯の一部が消されており、暗かったのが一因ではないかと見られています。
路上の暗がりに歩行者がいて、特に服装が黒っぽかったりしたら、その発見が遅れる場合もあるのは容易に想像がつきます。急に歩行者や他の自転車が飛び出してきた場合にも、暗ければ、それだけ気付くのが遅れ、対応が遅れてしまうのは間違いありません。今年は例年に比べて危険が増しているのです。

クルマからの視認性という意味でも危険が増すのは確実です。実際に、自転車に気付くのが遅れたクルマと事故になるケースも増えていると言います。タクシー会社などでは、すでにそのことをドライバーに周知し、夜間の自転車との事故を防ぐべく対策を進めているところもあります。
街灯が消されていても、クルマからならヘッドライトがあるので、見えないことはないように思います。しかし、ライトの範囲外が暗いことで、自転車に気付くのが遅れます。歩道から突然車道に出る人など、クルマからは、周囲の暗がりから、突然自転車が現れる形になって事故が起きるわけです。
自転車に乗って信号無視をする人もいます。実際に、小さな交差点で、信号無視の自転車の発見が遅れたため、クルマでひいてしまうといった例もあるようです。法規を守らないのが悪いのは当然ですが、今まで事故にならなかったケースでも、暗いことで事故になる可能性が高まっています。

最近は、自転車用のライトもLEDで明るいものが増えています。ただ、見た目は非常に明るいものの、前方を照らす照度的には、必ずしも明るくないものもあります。無灯火は論外ですし、視認性を高めるための点滅するフラッシュライトだけでは、前方の視界確保の点で問題です。ライト選びもよく考えるべきでしょう。
出来れば後方にも、赤いフラッシャーや尾灯などを取り付けるべきですし、最低でも反射板をつけなければ違反になります。反射材や周囲からの視認性を高めるグッズもいろいろ出ています。今年は、相手から見えにくくなっているわけですから、装備や服装を再検討してもいいかも知れません。

ここのところ、急遽自転車通勤を始めたような人も増えていて、マナーをわきまえていなかったり、交通ルールを知らなかったりする人も少なくありません。夜間、暗い車道を平気で逆走してくるような危険な人もいます。さらに無灯火だったりして、気付くのが遅れれば、正面衝突になってもおかしくありません。
ライトの照度や視認性の向上だけでは安心できません。自転車用ライトでは明るさにも限界があります。街路灯の消灯を、自転車ライトだけではカバーしきれない場合も充分考えられます。やはり、自衛策として暗い道ではスピードを落とし、不測の事態に十分備えられるようにするしかなさそうです。
世の中の節電への取組みに異議を唱えるつもりはありません。節電は大いに進めるべきだと思います。しかし、一方で危険を増やす部分、リスクが高まる部分があることも確かです。今年の夏は、特に夜間走行のリスクについても考えておきたいものです。
汚染水の処理が綱渡り状態です。はやく処理施設が稼働するといいと思いますが、間に合わずに、あふれ出させるくらいなら、汚染水をとりあえず、そのまま循環させるという手はないんでしょうか。
節電は、全国民が意識して取り組む課題です。最近どこのお店でも節電グッツの販売に力を入れています。ビジネスチャンスにもなります。ただ、余りに節電し事故に繋がることは、避けなければいけません。街路時の特にカーブ地点は、街路灯を消さないでもらいたいです。事故で尊い命を守る為
危険な節電は、尊い命を落とします。
停電で、死ぬ人は、いません。
節電の優先順位をかんがえましょう!