西瀬戸自動車道という正式名称よりも、愛称である「しまなみ海道」のほうが有名になっています。海上を自転車で渡ることができる、世界でも珍しい道路として、全国のサイクリストが一度は渡ってみたいと考える道路でしょう。サイクリストの聖地などと呼ぶ人もいます。
最近はテレビでも、しまなみ海道のサイクリングがよく取り上げられており、ふだん自転車に乗る人でなくても、一度は出かけてみたい場所、観光名所としての知名度も高まっています。地元自治体や関係者が、さらなる観光客の誘致を目指し、地元経済の発展につなけたいと考えるのは当然です。
自転車でしまなみ海道を巡るイベントが開催されたり、自転車客向けのサービスや施設なども充実してきています。しまなみ海道を使ったロードレースを企画すれば、その経済波及効果は8億円に上るとの試算もあります。サイクリング客の増加に、地元の期待も高まります。
そんな中、観光客のお目当てが、しまなみ海道そのものになってしまい、本州から目指す目的地としての存在感が薄れてしまうのを、今治が危惧するのもわかります。愛媛・今治を自転車の街にしようという機運が地元の市民を中心に盛り上がっているようです。
愛媛・今治を「自転車の街に」 市民ら、街づくり提言へ
「自転車先進都市・今治(愛媛県)」をめざし市民自らまちづくりに提言する活動がスタートした。11日、まず専門家の講師と約20人が市街地を試走する体験会を実施。今後、道路の危険箇所などを地図で示したり、おすすめスポットを調べたりしながら、約5カ月かけて提言をまとめる。
NPO法人「シクロツーリズムしまなみ」の山本優子代表が部会長を務める市中心市街地再生協議会サイクル部会が開いた。講師の「自転車ツーキニスト」疋田智(ひきた・さとし)さん(44)=東京都=は「しまなみ海道は日本一のサイクリングコースであることはもちろん、世界に誇れるコース」と指摘。一緒にJR今治駅〜来島海峡大橋たもとの市サイクリングターミナル「サンライズ糸山」間往復約14キロを走った。今治が先進的な「サイクリングのまち」を実現できるよう、具体的に助言していく意向を示した。
体験会に参加した県立今治南高校教諭渡部大輔さん(35)は「自転車についての意識改革が大切と思った。欧州の例を聞き、車の入れないゾーンの導入で、にぎわいのある安全な街が実現したのが分かった」と話した。(2011年6月12日 朝日新聞)
市民が自転車に乗りやすく、安全な街ということでしょうが、しまなみ海道のゴールとしてサイクリングの街をアピールし、観光客誘致や、地元経済の活性化につなげたいという意図も当然あるはずです。しまなみ海道のサイクリング客が、市内まで来ないで折り返してしまうという危機感もあるでしょう。
せっかく、しまなみ海道を快適にサイクリングしてきても、今治の道路に入った途端、走りにくくなるのでは、一部のサイクリストは別としても、一般のサイクリング客を愛媛県内へ引きこむのは難しくなります。自転車で走りやすい街にしようと考えるのは自然です。
今月の20日には、高速道路の上限千円も終わることになっています。この千円高速で、多くの観光客を本州から引き寄せていた四国側としては、危機感も高まっています。クルマの客が減るのは避けられませんが、せめてサイクリング客を、瀬戸内海の橋までではなく、四国内部へと呼び寄せたいはずです。
日本各地でも、地方自治体や観光協会などが中心になって、「自転車の街」「サイクリングの街」を宣言し、観光客を呼び込もうとする例は数多くあります。しかし、その多くは自転車用のマップを作ったり、パンフレットを作成したり、レンタサイクルを整備する程度にとどまる場合がほとんどではないでしょうか。
そうした方策も不要とは言いませんが、まず必要なのは、自転車で走りやすい街をつくること、あるいは自転車で走って魅力的な道路を整備することではないでしょうか。すなわち、ある程度のインフラの整備が不可欠だと思います。必ずしも大規模な造成工事でなくても出来る整備、必要な整備は少なくないはずです。
しかし、そうした政策を進める立場にいる人に限って、自転車は歩道を走るものと信じ、頭から疑わないような人が少なくありません。そこで、せいぜい歩道を走りやすく補修したり、色を塗って歩行者と分けようとしたりする程度しか整備は行われません。
一般的な観光客にしても、ふだんは歩道走行する人が多いでしょうから、そのことに違和感はないかも知れません。ただ、それではサイクリング自体が観光資源にはなりえません。観光客が自転車を借りて観光地を回る助けにはなっても、自転車そのもので観光客を呼ぶことにはなりません。
単に自転車がブームみたいだから自転車の街をアピールしてみよう、というだけの安易な取り組みでは、自転車に乗ることを目的に観光客が来るはずがありません。レンタサイクルの整備やサイクリングマップも無駄ではないでしょうが、効果は薄いと言わざるを得ません。
いかに、サイクリングして楽しい、自転車で走って魅力のある道を整備するかが重要です。しまなみ海道のようには行かなくても、ノンストップで軽快に、安全で景色も楽しめるような道、あるいは、観光地を楽しく回れるような自転車の道を整備できるかが焦点ではないかと思います。
何も大規模な造成をして、高規格のサイクリングロードをつくれというのではありません。いまあるサイクリングロードをつなげていくとか、既存の道を自転車で走りやすくして、有名な観光スポットへのルートを確立する、わかりやすくするといった整備は、いくらでも出来ると思います。
もちろん歩道走行では、自転車の能力や楽しさは活かされません。大きな道路に自転車レーンを設置するだけではなく、多少迂回するような道路であっても、あまり使われていない交通量の少ない道などを使って、自転車で快適に、迷わず走れるようにする手も考えられます。
しまなみ海道に接続して、サイクリングロードがネットワーク化されていくならば、自転車の通行量増加も期待出来ます。必ずしも自転車専用道である必要はありませんが、クルマや歩行者とは区分けされ、安全快適にサイクリング出来る道路が整備されていれば、観光客へも自転車の街としてアピール出来るに違いありません。
愛媛だけではなく、他の四国各県でも、自転車に注目するところは増えています。高松では、自転車を積んで運んでくれる観光客向けのバスまで登場しています。ただ、既存の観光客が便利にはなっても、やはり、自転車で観光客を呼ぶようなものとは言えません。
四国は、魅力的な観光資源がたくさんあります。しまなみ海道から連続して、四国を周遊できるような自転車道のネットワークがつながっていくならば、さらに魅力的な要素として、四国観光が盛り上がるのは間違いありません。もともと、八十八カ所巡りのような周遊する伝統もあります。
実際、四国各県でレンタサイクルの整備が広がるなど、自転車で観光してもらおうという機運は高まっているようです。地区単体ではなく、ぜひ各地の観光地が連携するような方向への、インフラ整備を期待したいものです。しまなみ海道から拡大して、四国全体を自転車の聖地にすることだって出来るはずです。
ヨーロッパには、欧州全土にサイクリングロードのネットワークが整備されており、自転車で長距離旅行する人も珍しくありません。日本でも、聖地・しまなみを起点に四国全体、さらには、全国のサイクリングロードを接続していくような動きになっていってほしいものです。
私も、行きたい、行きたいとは思いつつ、せっかく行くなら余裕を持った日程でじっくり楽しみたいと思うのが、なかなか行けない結果につながってますね。
今治市はともかく、しまなみ海道は徒歩でも自転車でも渡れますが、橋脚の下を船舶を航行させるため橋はかなり高い場所に作られているため、しまなみ海道自転車コースは、ヒルクライムコースともなっています。 そのためレンタサイクルもスポーツタイプがかなり数多く揃えられています。橋へのアプローチが狭くて急坂なので、登り切ったときの絶景と達成感は、秀逸でした。
クルマの観光だとスピードが速すぎるし狭い箱に閉じ込められてる気がして、景色を眺める気がしませんでしたが自転車なら風が気持ちいいし疲れたらバスに乗ればいいなら帰り道を気にせず走れるので気楽で楽しそうです