最近は、ニューヨークもずいぶん自転車が多くなりました。
ブルームバーグ市長は、積極的に自転車の活用を推進する政策を掲げ、自転車レーンや駐輪場などのインフラ整備にも力を入れており、ここのところニューヨークでは自転車に乗る人が大幅に増えています。慢性的な渋滞への対策もありますが、クルマ本位の都市から、ヒトに優しい都市へ変えていこうという考えなのです。
アメリカ全体で見れば、まだまだクルマ社会ではありますが、連邦政府のラフード運輸長官も、もっと自転車を活用すべきだと積極的に発言しています。日本で言えば国土交通大臣にあたる人です。環境への負荷という観点も含め、アメリカでも人々の意識が変わりつつあります。
特にニューヨークのような都市部では、クルマよりも速く移動でき、維持費も含めたコストが安いこともあって、ここ数年だけでも、自転車を通勤などに使う人が急増しているのです。ヨーロッパの都市などと同じように、ニューヨークでも自転車がトレンドとなっているわけです。
ところで、そのニューヨークを拠点とするアメリカ3大新聞の一つが、言うまでもなくニューヨークタイムズですが、最近、そのニューヨークタイムズのサイトを訪問者数で上回ったことで話題になっている、今アメリカで人気のニュースサイトがあります。ハフィントン・ポスト(
Huffington Post)です。
そのハフィントン・ポストに、
ちょっと面白いニュースが載っていました。ニューヨークに住む
Casey Neistat さんという人が、自転車レーンを外れて走行して警察に違反切符を切られたというものです。そのことに反発して製作し、YouTubeへ投稿した動画が話題になっているのです。
多少、自転車レーンを外れて走行していたにせよ、あまりに杓子定規な取締りに頭にきたのでしょう。いくら自転車レーンがあるとは言っても、その中だけを走行すれば危険な場合もあると訴えると、警察官は、『どんな場合でも自転車レーンを通らなければいけない。』と言ったのだそうです。
おそらく警察官にしてみれば、取り締まられて不満を訴える市民に対する、いつもの対応だったのでしょう。いちいちそんな言い訳を聞いていたら、違反切符は切れません。そういう言い方をすれば、他の大勢の人と同じように、ケイシーさんも大人しく引き下がるだろうと思ったのは想像に難くありません。
しかし、ケイシーさんは他の人とは違いました。なんと、自転車レーンだけを通った場合に起こるシーンを動画にして、YouTubeにアップしたのです。警察官が言うように、どんな時でも自転車レーンだけを走行したら、実際に何が起きるかを演じてみせたわけです。
動画は、現時点で300万回を超える視聴回数となっています。確かにコミカルで面白いですが、これだけ視聴されたのは、単に映像が面白いからだけではないでしょう。彼は、同サイトの取材に対し、面白い映像が撮りたかっただけと答えています。でも、問題提起をしたかったのは明らかです。
警察に説明を求めるところから動画は始まります。最後の「俺の50ドル(罰金額)を返せ」というメッセージはユーモアですが、その前の、「自転車乗りにだけでなく、自転車レーンをふさぐ人にもキップを切れ。」というメッセージに共感する人、よく言ってくれたと喝采する自転車乗りは多いに違いありません。
このケイシーさん、実は映画製作者で、これまでにもいろいろな動画を製作し、大きな話題になったこともある人です。道理で、単なる素人が記録した動画とは仕上がりが違います。警察官も、よりによってケイシーさんにキップを切ってしまったことで、大きな注目を浴びる事になりました。
警察の公平とは思えない取締りが改めて意識され、市民の不満を刺激する結果となってしまったのでしょう。実際、ここのところニューヨーク市警は取締りを強化しているのか、ケイシーさんだけが摘発されたわけではなく、似た事例が他でも起きていることも背景にあるようです。
当然ながら、自転車人口が急増することによる路上の秩序の混乱や悪化もあると思います。安全のため、自転車の無謀な走行を取り締まるのは職務であり、一概に警察官を非難出来ません。ただ、警察官のやり方にサイクリストに対する悪意や不公平さ、恣意的な部分を感じるからこそ、市民も反感を感じるのではないでしょうか。
ときおり発生する「
クリティカルマス」にしても、『道路はクルマだけのものではない』というメッセージではなく、単なる集団暴走に見えてしまう警察官もあるようです。そのことを示している動画もあります。この動画も大きな反響を呼びました。
ニューヨーク市が、自転車を重要な都市交通と明確に位置付け、その活用推進に力をいれているとは言っても、ニューヨーク市警の隅々にまで、そのビジョンが理解され、徹底されているわけではありません。小さな組織ではないので当然ですし、ある程度仕方がない部分です。
世の中が自転車の活用へと向かう中、そのことを面白く思っていない人もいるでしょう。自転車乗りだけを正当化するわけではありませんが、自転車レーンに平気で駐停車する人もいますし、それが明らかに違反であるにも関わらず、ある程度、目をつぶって取り締まらない警察官もいるのだろうと思われます。
警察もお役所ですし、世の中の意識と同時には変わっていかない部分もあると思います。今までのクルマ中心の考え方が染みついてしまっており、そのことに気付かない人も多いはずです。自転車が大幅に増えてはいても、ニューヨークで警察が、より『自転車目線』になるには、まだまだ時間がかかるのかも知れません。
自転車に乗っていて、道路に張られたヒモで怪我をされた方、軽傷で良かったですね。警察も殺人未遂で捜査していますが、検挙して厳罰にしてほしいものです。
Posted by cycleroad at 23:30│
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