あれほどの災害だったにも関わらず、日本人は冷静に行動し、略奪やパニックなどを起こすこともなく秩序を保ち、辛抱強く救援物資の支給の列に並んでいました。大災害に直面しても、そうした沈着で抑制のきいた姿はテレビを通して世界に伝えられ、多くの驚きと賞賛の声が寄せられました。
確かに、落着いて冷静に行動した人たちは、さすがですが、日本人から見れば、略奪やパニックが起きなかったことには、それほど驚きはありません。過去の災害の時もそうでしたし、日本では何度も大きな災害を経験し、それを誰もが見てきているので、異常な群集心理が働きにくいのかも知れません。

未曾有の災害だったことは間違いありませんが、日本は世界の地震の1割が集中するという国です。予想を超える大きさだったものの、津波が過去何度も襲った地域でもありました。原発事故を除けば、全く知識のない事態に対処しなければならなかったわけではありません。
地震の発生は予測されており、ふだんから避難訓練などが行われ、誰でもある程度は念頭にあります。もちろん、それでも驚き、混乱したとは思いますが、パニックを起こすようなことが無かったのは、日本人から見れば、不思議ではありません。でもそれは、外国人の目には、驚くべきことだったようです。
ところで、我々から見れば普通のことでも、外国人が見ると驚くということは、他にも少なくないようです。もちろん、西洋とは違う独自の伝統や文化がありますし、島国で、人種や民族、言語といった面での環境もあるのでしょう。未だに東洋の神秘と呼びたくなるような、西洋から見ると異質な部分もあるのかも知れません。
日本でずっと生活している日本人には、なかなか気づかない部分ですが、文化や価値観の違いから、世界の常識と日本の常識が違う例はたくさんあります。日本では当たり前であり、ふだん意識もしないようなことが、外国人の目から見ると、とても異様に映ったりします。

日本について1000のこと、“
1000 Things About Japan”というブログを書いている人がいます。日本在住のアメリカ人が英語で書いていて、日本人に対してではなく、海外に向けてアメリカ人が見た日本を発信しています。作者は1989年からずっと日本に住んでいるそうです。
アメリカ人同士で結婚しているので、長く暮らしているものの、必ずしも日本の生活様式べったりでは無いようです。アメリカと日本の両方、外から見ただけではわからない日本も知っているし、外国人が見て不思議に思う感覚もよくわかる、というところでしょう。ただ、あくまで彼個人の主観であると断っています。
クリスマスが休みとは限らないという事実から、街角で無料で配られるポケットティッシュのことまで、普通の市民が銃で撃たれる可能性がほぼゼロに近いことから、ペットショップの檻が小さすぎる事まで、いろいろな驚きが語られています。
挙げるとキリがないので、興味のある方は読んでみていただくとして、さまざまな事柄が、一つ一つカテゴリーに分けられています。ほとんどのカテゴリーで記事は一つだけですが、中には例外があって、自転車もその一つです。自転車については10個もエントリーが上がっています。

例えば、女児を含めた小学生たちが、1輪車に乗っているのが奇異に映るようです。なぜ、こんなにアクロバットのような乗り物が普通に乗られているのか不思議というわけです。見ていて楽しいですが、なぜこんなに日本で1輪車が普及しているのか、わからないと書いています。でも、そんな単純な驚きばかりではありません。
彼がまず幻滅するのは、日本の駐輪事情です。母国であれば、用事のある場所の近くに停められるのに、日本ではどこても置けるというわけではありません。彼は長く日本にいるので、以前はそうでもなかったと書いていますが、今では、遠い駐輪場に停めさせられるなど、不便な状況を強いられています。
そして下手をすると、それは撤去移動され、取り戻すために30ドルも払わなくてはなりません。もろもろの措置が必要な理由を、一応は理解しているものの、この不便で無意味な規制の為に、自由に、また安心して自転車で出かける事が出来ないことを嘆いています。
徒歩で出かけても問題があります。よく映画やテレビのコメディなどで、自転車に乗った主人公が道行く美人に気をとられてクラッシュするといったシーンがあります。いや、今どきそんなベタで古典的なシーンは、マンガでもなかなか無いかも知れません。しかし、日本の街では、それが日常茶飯事であることに驚いています。

ただ対象は美人ではなくケータイです。メールなどを見ていて、突然人とぶつかりそうになってアセる日本人が多いことを指摘しています。彼もこの3カ月で2回もぶつかったそうです。一人は高齢者で、一人は少女だったそうですが、言われてみれば、コメディのようなシーンがあちこちで起きているというのは異様な光景です。
自転車が、一般に非常に粗末に扱われることにも驚いています。それが、他人の自転車であってもです。停めてある自転車のカゴに、飲み終わったジュースとか、ゴミとかを平気で捨てます。それを、他人の持ち物である自転車に対してするということにショックを受けています。
駐輪場などに自転車を停める時、自分の押す自転車がぶつかったことで、他人の自転車が倒れたとしても、誰も咎めなければ起こそうとすらしないのも驚きです。他人の自転車のパーツが曲がろうが壊れようが、お構いなしという利己的でモラルのない態度が驚きです。
外国人が日本で見て、最も驚くものの一つが、いわゆる子供乗せ自転車だと言っています。これで前後に子供を乗せ、フラつきながら乗っている光景が信じられないのです。時に子供はノーヘルですが、ちょっとバランスを崩そうものなら、子供の頭には簡単にヒビが入るに違いないと感じています。

そして、困ったことには、彼によれば、『こんなモンスターのような自転車』が、駐輪場に停めた彼の自転車の隣に停められる場合も多く、おかげで彼の自転車のハンドルバーが挟まれて動かせなくなっていることが少なくないのだそうです。
日本では自転車の多くが格安のママチャリであり、自転車が簡単に盗まれる日本で、人々が高価な自転車を買おうとしないのは理解しています。しかし、彼らにとって耳障りなのは、キーキー鳴るブレーキの音です。黒板をひっかく音のようで、とても耳触りで腹立たしく感じています。雨が降った後が特に酷いと言います。
音と言えば、ベルをしきりに鳴らして歩道を通る人にも腹を立てています。ほとんどの人は、そんなことはしないわけですが、歩道が自転車のためにあるものと思い込んでいるような人がいることを指摘しています。年配の男性などにもいて、人が邪魔をしていなくても鳴らし続けるのが最悪だと断じています。
当然ながら、多くの外国人が驚く世界の非常識、自転車の歩道走行にもあきれています。しかし、意外なことに、彼らにとってそれが助かると感じる部分もあるようです。日本では車道が走りにくく、慣れない外国人が、日本の車道上で、自転車を邪魔だと思っているドライバーに煽られたりすることを考えれば、それも納得です。

東京で移動する場合、短い間でも路上駐車は困難ですし、クルマを使うのはコスト的にも割高です。その点、自転車は維持費も安く、東京を回るのに最高の手段です。日本での道路走行に慣れない外国人にとって、実際問題として、ほとんどの場所で歩道が通れるのは、それなりに魅力的に感じる部分があるようです。
ただ、それは車道が自転車で走行するよう想定されていない場合が多いこと、ドライバーも自転車は歩道だと思っていて、いわゆる交通弱者の優先が守られないことが少なくないからであることを見逃すべきではありません。彼は滞在も長いですし、郷に入っては郷に従えということもあるのでしょう。でも非常識は非常識です。
外国人から見て、日本のどこが不思議に映るか知るのは、興味深いものがあります。日本について、いい意味で驚かれる点、賞賛される点もあります。しかし、日本人が外国人と違っているのは、必ずしもいいことばかりとは限りません。
少なくとも自転車に関しては、悪い意味で驚く点が圧倒的に多いようです。日本人の感性や習慣、社会システムに根差した部分もありますから、必ずしも海外に合わせるべきでないのかも知れません。ただ、世界から賞賛されないまでも、見られて、あるいは訪問されて、恥ずかしくない日本にしていきたいものです。
しかし、また酷い大臣がいたものです。大臣としてどころか、人間としての資質を疑うと被災者に言われるのも当然です。偉そうに、何様のつもりでしょうか。最低ですね。