August 26, 2011

自転車通勤を拡大させる条件

自転車通勤を始めたいと考える人が増えているそうです。


産経新聞の記事に、今後、最も利用してみたい通勤手段を聞いた調査で、自転車が2位に入ったと書かれています。1位は当然のことながら電車ですし、3位がクルマで4位が徒歩です。自転車が2位とは驚きということなのでしょうが、渋滞や駐車場所の確保などを考えるならば、妥当な結果のようにも思えます。

自転車通勤インターネットでの調査、それも調査会社の会員に限られ、対象年齢も20〜40代限定、調査対象地域もサンプル数も限られています。この設問の仕方が妥当かどうかも含め、はたしてどれだけ意味のある数字かという疑問はありますが、少なくとも自転車通勤への注目が高まっているのは間違いないでしょう。

このところの自転車通勤への関心の高まりには、東日本大震災が大きく影響しているのは言うまでもありません。調査でも、震災時の交通マヒを経験したからとか、震災でも有効だったからといった、地震発生時のことをかなり意識した回答が多かったようです。

今まで、自転車通勤は運動不足解消になる、健康に良い、エコだから、節約になる、満員電車を利用しなくて済むといった理由はあっても、震災時にも有効な交通手段だからという回答はほとんど皆無だったはずです。冷静に考えれば、そう起きることでないにもかかわらず、震災を強く意識する人が多いようです。

震災発生当日、首都圏では電車が止まり、道路は見たことも無いような大渋滞に陥りました。大量の帰宅難民が発生し、徒歩で長時間かけての帰宅を余儀なくされた人が大勢いました。当日に帰ることを断念し、職場や公共施設などで夜を明かした人も多かったはずです。

急遽、自転車を買い求める人が殺到し、都内の自転車店では売り切れが続出しました。震災の体験が強烈だったことに加え、自転車があれば帰れたという事実が教訓になった形です。今後30年の間に首都圏直下型地震が発生する確率が70%という予測もあり、ふだんから自転車通勤しておこうと考える人もあるのでしょう。

自転車通勤専門家は、震災発生時に無理して帰宅するのは危険だと指摘しています。都心に留まればいいと考える人も多いと思います。しかし一方で、小さい子どもや介助が必要な高齢者がいるなど、どうしても自分が帰らなければならないと考える人も少なくないものと思われます。

少し前までは、自宅から職場まで直接自転車で通勤するなんて、ごく一部の限られたマニアだけのものという感じでした。震災後に計画停電が実施され、通勤電車が減らされて大混乱したこともあり、実際に自転車通勤を経験した人も多かったのでしょう。以前と比べ、格段に自転車通勤の認知度が上がったと言えると思います。

さて、その自転車通勤ですが、満員電車から開放される、運動不足解消になるなどのメリットがある一方で、デメリットもあります。一番の問題は雨ということになるでしょうか。雨が降った時だけ電車を使うなどの方法も考えられますが、途中で予想外の雨に降られることもあります。

特に日本人は雨に濡れることを嫌いますし、降り方もスコールのように一時的とは限りません。一年を通じて雨の降る日が多いということもあります。日本では雨への対策、その克服が自転車通勤拡大のポイントになるのかも知れません。

KLIMAX, hasebikes.comKLIMAX, hasebikes.com

自転車通勤する人が多いヨーロッパでは、雨対策の工夫がされた自転車もあります。カサをさして歩くのと同じように、雨が降ったらフードをつけるといった感覚でしょうか。カサをさして自転車に乗るのは危険ですし、禁止されていますが、これならば雨でも濡れるのをかなり防げそうです。

KLIMAX, hasebikes.comKLIMAX, hasebikes.com

日本に比べ、3輪のトライクやリカンベントがポピュラーな欧米では、下のようなフードをつけた自転車という選択肢もありますが、固定式のフードに比べて軽く、不要時にはたたんでしまえるので邪魔にならないというのも長所でしょう。形状的にも空気抵抗が少なく走りやすいと思われます。

The FlooW, www.gowiththefloow.com

電車通勤であっても、雨の日には、どうしても多少は濡れます。これだと顔が雨で濡れるのは防げませんが、それ以外は実用的に見えます。もちろん、3輪のリカンベントで通勤できる経路が確保される必要がありますが、かなり現実的な選択肢になるのではないでしょうか。

KLIMAX, hasebikes.comKLIMAX, hasebikes.com


 

雨以外では、パンクのリスクも心配の一つでしょうか。自転車通勤の途中でパンクしてしまうと、遅刻してしまう可能性があります。実際には、空気圧の管理を適正に行えば、パンクは滅多に起きるものではありませんが、この点を不安に思う人も多いかも知れません。

換えのチューブと携帯用の空気入れを持ち、チューブの交換の練習をしておけば、パンクしても、それほど時間をとられるわけではありません。応急の瞬間パンク修理剤なんかもありますし、乗り心地は悪くなりますが、パンクレスタイヤなども売られています。

ただ、これから自転車通勤を始めようかという初心者にとって、パンクは不安のタネでしょうし、パンク修理に自信が持てないのも仕方のないところです。これだけ技術革新が進んでいるのですから、パンクしないタイヤがあっても良さそうなのにと思っている人も多いかも知れません。

Art Bikes, www.ronarad.co.uk

その点で、このホイールは新発想です。スポークは棒状が当たり前ですし、他には、せいぜいディスク状くらいしかありません。このホイール、基本的にはアート作品なのですが、スポークの部分をこのような形状にすることで、タイヤの空気の代わりに出来る可能性があるのではないかと思ってしまうのは私だけでしょうか。

Art Bikes, www.ronarad.co.ukArt Bikes, www.ronarad.co.uk

つまり、空気を注入したタイヤチューブを使う代わりに、このホイール形状をクッションにするわけです。さすがに、このままではスピードも出ないと思いますが、この形状のホイールにゴムのタイヤを装着すれば、パンクしないタイヤが出来るかも知れません。実用化可能かわかりませんが、出来たらパンクの心配もなくなります。

もう一つオマケを。会社の重役にふさわしい通勤用自転車が欲しいという人にピッタリ、お腹が出ているので、あの前傾姿勢は辛いという人でも自転車通勤が可能なソファー自転車(笑)です。リカンベントが比較的ポピュラーな欧米では、このスタイルの自転車を発想する人が、実は結構います。

Sofa bikeSofa bike

もちろん冗談半分のものが多いのですが、その中でもこれは、よく出来ています。重くてスピードが出ないとか、幅が広くて道をふさぐとか、空気抵抗が大きすぎる、駐輪すると邪魔など、デメリットはいっぱいありますが、こんな自転車で通勤するのも、ちょっと楽しそうです。



震災がきっかけというのは残念だったにせよ、日本でも自転車で通勤するという選択肢が広く認知されるようになりました。場所によって差はあると思いますが、実際に自転車通勤する人がかなり増えたのも事実です。環境が整えば、今後も増えていく可能性があります。

自転車に限ったことではありませんが、新たなニーズが発生したことで、それに適応するための改良や新機能が開発され、商品として格段に進化することも少なくありません。日本人は改良や改善が得意でもあります。そう考えると、自転車通勤がさらに一層拡大するためには、新しい自転車の登場が鍵になるのかも知れません。





なでしこジャパンの五輪予選が近づいています。国民栄誉賞まで授与されたために、変に意識して硬くなったり、守りに入ったりしないでほしいですね。

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この記事へのコメント
楽しい情報発信をありがとうございます。
◇◇のため、○○に良い、△△が有利、いろんな理屈があるのでしょうが、好きになったから自転車に乗り続けるというのが一番素敵だと思います。その魅力を自分で具体的に感じるきっかけは、残念な震災、尊敬する選手の活躍、家族や友達、進学就職、いろいろでしょうね。
さまざまに自転車を利用する人が、責任感を持って自ずと安全を意識して、過去のしがらみを乗り越えた合目的の秩序が再生され、あえて抗うのが苦痛になるような、今に適切なインフラとルールが社会にしっかりと根ざし成長していく。その下で、自転車もいろんな工夫や発展のバリエーションがあって、利用方法が広がって、理解者発案者がまた増えてはルールも成長するという好循環を
最近いくつかの記事から夢見させていただきました。
Posted by 七九爺 at August 27, 2011 20:55
七九爺さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
たしかに、理由やきっかけはともかく、自転車が好きでないと、通勤にまで自転車を使えないでしょうし、なかなか続かないということもあるでしょうね。
今回、震災が理由だったにせよ、自転車通勤する人が拡大したことで、多くの人にとっては新たな活用の形が開けた感じがあると思います。
混乱や問題も起きるでしょうが、自転車を取り巻く環境の問題点がクローズアップされ、問題視され、改善への機運が広がるチャンスでもあると思います。
願わくば、おしゃるような好循環が起きてほしいものです。
いつもご覧いただき、ありがとうございます。
Posted by cycleroad at August 28, 2011 23:18
空気無しタイヤ、ミシュランがTweelというのを研究してます。2輪用はまだ見た事ありませんが。
Posted by つべりん at August 29, 2011 14:55
このClimateという品物は、一般販売されているのでしょうか?
価格にもよりますが、ぜひ買いたいです。
8月はずーと週末が雨模様でした。これがあれば遠出ができそうですし。
冬には自転車で温泉に行って暖かいままに帰れそうです。
Posted by クラウド at August 29, 2011 22:28
つべりんさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
この空気無しタイヤ、私もテレビか何かで見た覚えがあります。Tweelと言うんですか、教えていただきありがとうございます。
まだ実用化までは時間がかかるようですが、クルマで出来るなら、自転車でも当然できるでしょうね。
Posted by cycleroad at August 30, 2011 23:25
クラウドさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
日本に入ってきているかどうかは知りませんが、一般に販売されていると思います。
雨に強いだけでなく、風防として風が身体にあたらないことで、確かに冬の保温効果も期待できそうですね。
Posted by cycleroad at August 30, 2011 23:37
こんばんは。

理由はどうあれ、通勤時の移動手段として自転車に関心を持つ人間が増えてきていると言うのは悪くないと思う。電気が止まれば電車(電気自動車も含む)は動かなくなり、ガソリンの供給が断たれると自動車(ガソリンを燃料とする乗り物全て)は走れない。必然的に移動手段として動く乗り物は自転車になる。大震災を経験した後と言う事もあり余計に自転車に関心が高まるのも分からない事はない。これを機に、日本の交通事情も変化して行ってくれれば良いのだが。

ソファー自転車、一度乗ってみたい。この自転車なら四輪車の無理な追い越し(追い抜き)をされずに済みそうだ。自転車に乗っていて何時も思うのだが、追い越し(追い抜き)をしてくる四輪車で減速を一切せずにスレスレ且つ猛スピードで走って行くのには恐怖を感じる。運転技術に相当の自信があるのか、又は轢き殺そうとでも言うのかは不明だが本当に恐ろしい。
Posted by passerby Ω at August 31, 2011 21:39
passerby Ωさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
自転車に関心を持つ人が増えたことは、日本の交通事情がかわっていく素地にはなると思いますが、なかなかそう一朝一夕には変わらないですね。
クルマ中心の秩序のようなものが出来てしまっていて、震災であっても、大きく変わる様子はありません。劇的に変わるには、もっと何か違う要素が必要なのかも知れません。
ソファー自転車、面白いですね。ただ、現状で一般道を走行したら、相当クラクションを鳴らされそうですね。
笑って追い越すくらいの余裕が欲しいものですが..。
Posted by cycleroad at September 01, 2011 00:22
一昔前、オートバイのエンデューロレース(バハカリフォルニア)などで、ムースタイヤと言われる中にスポンジが入っているような低パンクタイヤが使われていましたが、乗り心地が最悪とのことでした。ビバンダム君(ミシュラン坊や)の活躍でノーパンクと乗り心地の両立を期待します。
Posted by Tokyo自転車通勤 iwasaki at October 18, 2011 11:54
知恵たらずな自己中馬鹿が考える自転車通勤。車にぶつかりゃ被害者ヅラ、歩行者に当たったらトンズラ。片輪になって後悔、交通法規を守らない馬鹿チャリは 跳ねても良い法律を作ろう。
Posted by 呆 at October 19, 2011 19:45
Tokyo自転車通勤 iwasakiさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
ゲル状の樹脂などをつめた、ノーパンクタイヤをうたったものも出ていますね。
私も試乗したことがありますが、乗り心地がいまいちなのと、タイヤが重いことで、操作性もよくなかった印象があります。なかなか両立は難しいのでしょうね。
Posted by cycleroad at October 19, 2011 23:46
呆さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに、ここのところの自転車通勤者の拡大で、同じ自転車乗りから見ても、身勝手で、交通ルールもマナーも無いような人が増えたと感じますね。
なんらかの対策も必要となってきている気がします。
Posted by cycleroad at October 20, 2011 00:04
 
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