September 13, 2011

便利にするけど危険にもする

自転車関連企業の業績が好調に推移しているようです。


自転車のあさひ自転車小売り業大手のあさひの業績好調が伝えられています。確かに、郊外などを走行していて、出店間もないと思われる店舗を見かけることがあり、店舗数も急拡大させているようです。ブームや震災後に自転車に乗る人の拡大など、追い風が続く自転車関連企業の勢いを象徴していると言えそうです。

メーカー各社も新商品を発売するなど、新たな顧客の獲得に余念がありません。典型的な成熟市場のように見えますが、大多数がママチャリに乗る人ですから、スポーツバイクや、ちょっとオシャレな自転車、電動アシストサイクルなどへの乗り換え需要、潜在的な需要は大きいということなのでしょう。

こうした自転車関連企業の好調を受けて、自転車本体や周辺部品以外へも動きは広がっています。三越伊勢丹ホールディングスは、自転車通勤用のセットアップスーツを売り出すことを発表しました。自転車通勤をしやすくするための工夫が盛り込まれたスーツです。

自転車通勤用スーツこれまでも若い世代向けのブランドなどで、自転車通勤用スーツをうたうところはありましたが、老舗百貨店の三越までもが自転車通勤用スーツです。つい最近まで、最寄駅まででなく会社までの自転車通勤は、変わり者の趣味のように見られていましたが、それだけ市民権を得たということでもあるのでしょう。

自転車通勤だけではありません。ジーンズのリーバイスまで、自転車専用ジーンズを発売しています。U字ロックを吊り下げられたり、裾を折り返すとリフレクターがついていたり、伸縮性があってペダルがこぎやすいようになっているなど、自転車に乗る人向けにデザインされています。

ジーンズをはくのは若者だけではありませんが、若い世代向けのファッションにも、自転車に乗ることを意識した製品がラインナップされるなど、トレンドとして広がっているようです。女性用のファッションにも、いわゆる「自転車女子」を意識したものが出てきていると言います。

個人的には、自転車に乗るときにジーンズをはくのは好きではありません。ジーンズで乗ったこともありますが、やはり動きにくく、汗が乾きにくいなど、向いていないと思います。しかし、サイクルジャージにレーパンでは出かけにくい場合もあるわけで、普段着で乗りたい時には便利なアイテムでしょう。

スポーツバイクに乗る場合は、どうしてもスポーツ系の服装になる人が多いと思います。乗りやすさを考えればそうなりますし、ジーンズでスポーツバイクなんて論外と言う人も多いでしょう。逆にそういう人ほど、自転車向きに考えられた普段着があれば、いろいろなシーンでスポーツ系の自転車が使えるようになります。

511™ Skinny Commuter, us.levi.com511™ Skinny Commuter, us.levi.com

その意味で、専用のウェア以外にも、自転車向きに考えられた服装のバリエーションが増えるのは悪いことではありません。自転車通勤にしても、職場に着いて着替えたい人もいれば、そのまま仕事が出来たほうが便利という人もいるはずです。願わくば、こうしたアイテムが定番化し、定着してほしいものです。

自転車関連商品が好調に推移する中、そのことを意識した製品作り、製品開発が広がるのはファッション関係に限りません。分野も多岐にわたると思いますが、逆に世の中のトレンドを自転車に取り入れるような動きもあります。例えばケータイやスマートフォン、その他モバイル機器の普及です。

Silverback Technologies, www.silverbacklab.comこちら、Silverback Technologies社の自転車、なんとUSBポートが付いています。走行中ダイナモで発電して充電することも出来るという自転車です。確かに持ち歩くモバイル端末、機器が増えている中、こうした機能が自転車にあれば便利ということになるのは自然な流れなのかも知れません。

これがあくまで充電用だけに使われ、自転車に乗っている間は、誰もがみな携帯端末を充電しながら移動することになるなら問題はありません。ただ、残念ながらそうなるとは思えません。自転車に乗りながらの通話やメールなどを助長する恐れが否定できないのが気になるところです。

もちろん、それらの行為は道路交通法や条例などで禁止されているわけで、自転車にUSBポートを搭載するのが悪いわけではありません。携帯端末を使いながらの走行は危険ですし違法ですが、自転車へのUSBポートの搭載を規制するのは困難でしょう。

どんな道具であっても、その道具が悪いわけではなく、悪い使い方をする人間が責められるべきなのは間違いありません。今後こうした面での利便性が高まっていく一方で、マナーの向上や、ルールの徹底を図る必要性も、さらに高まっていくということなのかも知れません。

Silverback Technologies, www.silverbacklab.comSilverback Technologies, www.silverbacklab.com

スマートフォン向けのアプリにも自転車向けのものが多数出てきています。こちらのアプリは、音で案内するナビです。クルマのナビゲーションでも、画面を注視すると危険ということで、運転の邪魔をせず、前方を見たまま聞ける音声案内が当たり前になっていますが、その自転車版です。

一見便利なようにも思えますが、スマホをイヤホンやヘッドフォンで使うことを考えると、走行中に耳をふさぐことになります。まだ開発中のものなので、その辺を指摘するのは時期尚早なのかも知れませんが、使い方によっては、これも路上の危険を助長する恐れがあります。

navigation systemforcyclists, www.usinet.nl

開発者も一応意識はしているようで、周囲の音も聞こえるようなイヤホンないしヘッドフォンの必要性に言及しています。ただ、このアプリを利用するために、わざわざみんながイヤホンを買い換えたり、外部スピーカーを搭載するとも思えません。そのあたりが気になるところです。

また、音声だけでなく、音楽の聞こえてくる方向によってナビゲートする方式を開発中と言います。そうなると、さらに周囲の音は聞こえなくなる可能性があります。大学構内のような場所で実験しているぶんには問題は少なく見えるかも知れませんが、実際の街中で普通のイヤホンで使えば危険が伴うことになるでしょう。

navigation systemforcyclists, www.usinet.nl

すでに、開発中のアプリをダウンロードして試用できるそうです。こうしたアプリは、ネットからのダウンロードで利用されるので、場合によっては爆発的に普及します。後から安全上好ましくないとなっても、既に多数出回った後という状況も充分にありえます。

こうした世界、コンピュータでもモバイルでもそうですが、まず製品を出してみて、問題があれば後からアップデートなどで修正するスタイルが当たり前になっています。他の分野と違って、製品の開発の途中で問題点を修正し、完成させてから発売するわけではありません。問題があっても、とりあえず市場に投入されます。



大掛かりな設備を必要とするようなハードとは違い、簡単なアプリなら誰でも開発して販売することができます。従来のように流通する商品とは違い、メーカーの自主規制や業界による申し合わせ、会社としての良識や判断のような歯止めが効きにくいという面もあります。

このアプリがヒットし、広く使われるようになるかはわかりません。しかし、こうした製品が爆発的に普及した時、問題が発生する懸念は拭えないでしょう。特に、自転車が車両であるにも関わらず歩行者感覚で乗り、歩道を通り、歩行者優先も守らず傍若無人に走り回るような人の多い日本では問題となりそうです。



アプリやソフトウェアなどが、まず市場に出すことが優先され、修正は後からというスタイルなのは、今の時代、商品の特性や市場構造などの点から仕方がないでしょう。ましてや、技術としての面白さとか、ナビゲーションの進化を否定するものではありません。

危険性を明記し、法令に違反する使い方をしないよう注意書きされれば、開発元を責めるのも難しいと思います。USBポートと一緒で、悪いのは使うほうと言えばそれまでですが、事故の起きる可能性を高める懸念は否定できません。出来るならイヤホンを使わない仕様にするなど、何か配慮がほしいところです。

電動アシスト自転車に乗っている時、音楽などを聴くことで、周囲の物音が聞こえなくなることが、それほど危険性とは実感していない人も多いと思います。今でもイヤホンなどを使っている人は少なくないですが、今後、モバイル端末や携帯機器の普及は、さらにそれを増やす恐れがあり、対策の必要性も高まっていきそうです。

自転車に関連した商品がたくさん開発され、市場に出てくることは歓迎すべきことです。新しい挑戦や提案があるからこそ、自転車の性能がアップしたり、自転車生活がより便利になったりしていくわけです。何でもそうですが、古いものに閉じこもり、新しいものを否定するばかりでは進歩もありません。

ただ、新しい技術や製品にはリスクも伴います。ファッションくらいなら、それほど問題はないと思いますが、自転車に乗って使うものである以上、怪我や事故などに直結する場合もあります。そして、それは周囲の、あるいは公共の場での大きな迷惑にもなりかねません。

例えば、ネットで便利になった一方で、ウィルスなどのセキュリティ上の脅威や詐欺、情報漏えいなど、さまざまなデメリットも発生します。自転車関連でも、利便性が高まる一方で、ものによっては事故のリスクの無視できないものがあること、マイナス面と表裏一体であることは意識しておくべきかも知れません。





9月も半ばと言うのに、熱帯夜に真夏日が続いています。まだしばらくは、自転車に乗るにも熱中症に注意が必要ですね。

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この記事へのコメント
こんにちは。

音楽を聞きながら自転車に乗車している人間はよく見かける。と言うより、毎日当たり前のように見る光景。特に学生が多いか。口で言っても分からないなら、その身を持って痛い思いをすればよい。それと、携帯を使いながら自転車に乗るアホを何とかして欲しい。出来れば、携帯を取り上げてその場で破壊してやりたいが。便利さに対する代価が人の命では話にならない。
Posted by passerby Ω at September 18, 2011 15:53
passerby Ωさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
口で言っても分からないなら、その身を持って痛い思いをするのはいいですが、周囲の人が巻き込まれることもあるわけで、巻き込まれた人にしてみれば、たまったものではありません。
自転車に乗りながら携帯を使っていたら、その携帯を叩き落してもいいという法律でもあればいいんでしょうけど..(笑)。
Posted by cycleroad at September 18, 2011 23:36
 
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