二度と間違いは繰り返さない
東京電力は国有化されることになるのでしょうか。
今後予想される、福島第一原子力発電所の事故の賠償や廃炉に向けた膨大な費用が、東京電力のリストラだけで捻出できるとは到底思えません。破綻をさせないためには、いずれ公的資金を投入せざるを得ず、実質国有化の方向へ向かうだろうという報道がなされています。
東電、実質国有化…官民で総額2兆円支援へ(2011年12月21日 読売新聞)
東電、のしかかる負担 国有化不可避(2011.12.21 産経新聞)
東電に1兆円規模の公的資金検討(12月21日 NHK)
東電支援策、三つの障害…銀行支援・値上げ・再稼働 (2011年12月21日 読売新聞)
一方、東電サイドは政府の支援は受けても国有化には否定的と報道するメディアもあって、どのような形になるのかは、まだ不透明です。しかし、公的資金として我々の税金か、あるいは電気料金の値上げという形で、どちらにしても事故のツケは、私たち国民が負担させられることになるのは間違いありません。
地震と津波は天災ですが、福島第一原発の事故は人災だと当初から指摘されてきました。事故原因の調査は、いまだ途上ですが、緊急冷却装置の操作を間違わなければ事故が防げたか、こんな大惨事にはならなかった可能性があることも明らかになりつつあります。
先日のテレビでは、緊急冷却装置の基本的なことを職員が理解していなかったことが、結果として水素爆発につながったという見解が示されていました。いずれにせよ、こんな過酷事故は起きないとタカをくくっていた、組織としての油断が大事故を招いたことは、元東電の幹部や関係者も認めています。
津波対策の不備を指摘されていたのに、東電が防潮堤の高さを見直すと、他の経営基盤の弱い電力会社に過大な負担を強いるなどという、電力村の論理なのか、他者への責任転嫁か、よくわからないような理由で、防潮堤を高くしなかったとの報道もありました。
津波で、予備の電源が失われたのが原因とされていますが、そもそも津波や豪雨などで冠水の危険のある地下に非常用の電源が全て集中している原発の設計のまずさ、もしくは日本に適していない設計というのは素人でもわかります。それを放置していた怠慢もあるでしょう。電源車が来ても、結果として役に立ちませんでした。
長時間の電源喪失への備えが無かったのも問題だとされています。津波ではなく地震で送電線の鉄塔が倒壊して外部電源を喪失したのに、現実には長い期間復旧できませんでした。とにかく、あちこちに不備があったわけで、安全神話は嘘で固めた、国民を騙すためのものだったと言われても仕方がないでしょう。
さらに、事故後にわかった、この会社の隠蔽体質には多くの人が呆れました。九州電力のやらせメール問題も発覚しましたが、九電の対応も含め、電力業界、原子力村の論理自体が、一般の国民からすれば、常識とかけ離れたところにあると感じた人は多かったはずです。
事故後の計画停電に疑問を呈する人もいます。充分発電余力があることを指摘されると、東電のサイトから各発電所の発電能力の一覧が削除され、隠されたと言います。真偽は不明ですが、原発の重要度をアピールしたとか、火力は燃料費がかさむので赤字になるといった身勝手な理由で停電を押し付けたと言う人もいます。
さらに問題なのは、事故の被害者への対応です。およそ補償をさせてもらうという態度ではなく、分厚い手引き書を読ませたり、膨大な書類を書かせるなど、自分勝手な手続きを要求したことへは非難が集中しました。支払いの遅さや、金額の少なさにも不満が高まっています。
福島県内のゴルフ場は東京地裁に、東京電力に汚染の除去を求めたむ仮処分を申し立てました。すると、なんと東京電力は、「原発から飛び散った放射性物質は東電の所有物ではなく、無主物である。したがって東電は除染に責任をもたない。 」と主張したというのですから、耳を疑います。
無主物とは、空気中に漂う霧などのように、誰の持ち物でもないものという意味です。誰がどう見ても、東電の福島原発由来のものなのに、飛び散ってしまったら、後は知らないという主張です。そして、あろうことか東京地裁は東電の主張を認め、ゴルフ場の訴えを退けたというのだから恐れ入ります。
このゴルフ場に限らず、本来は東電の社員が総出で除染作業をしてもいいくらいです。普通の工場から、爆発で物が飛び散ったら、言われなくても大急ぎで謝罪と回収、一刻も早い現状復帰と補償をするのが、社会的な責任のある企業というものでしょう。実際には東電だけで手に負えないとしても誠意は示すべきです。
まだ大勢の人が避難を余儀なくされ、苦しい生活を送っています。子どもの健康や将来を心配し、被曝の低減や、日々の食材調達に追われている親たちも相当な数に上るはずです。農産物の出荷が出来ず、今後の予定も立たずに苦慮している農家や漁師の方も多いでしょう。
風評被害で苦しむ観光施設や関係者もいます。海外への輸出が風評で激減して困っている会社も少なくありません。一方、東電は減額されたとは言え、社員にボーナスまで払っています。幹部の退職金や企業年金にも批判が集まっていますが、改める様子はありません。これが支援を求める企業の態度でしょうか。
根底には、自分たちが電力を供給してやっているという驕りがあるように思います。自分たちが発電・送電しなければ、企業も国民も困るだろうと人質をとっている気になっているのかも知れません。そうでなければ、あれだけの事故を起こして、これほど大きな態度でいられるわけがありません。
少し前までなら、僅かな放射能漏れでも大騒ぎでした。これだけ莫大な量の放射性物質を撒き散らしたのに、開き直って、放射性物質は無主物と言い切る厚かましさです。こんな会社だからこそ、福島原発の事故が起きた、もしくは防げなかったと言ったら、言い過ぎでしょうか。
東電が、今後も原子力発電所を運営していくのを許していいのでしょうか。地震や津波は仕方がありませんが、原発の爆発だけは、二度と起こしてはなりません。今回の事故は大惨事ですが、まだ運がよくて、さらに悪い事態もありえたと指摘する専門家もいます。
原発は絶対安全と言ってきました。しかし、実は、たまたま今まで運が良かったに過ぎませんでした。こんな事故は起きないだろうと思い込んできただけで、過酷事故を絶対に起こさないため、ありとあらゆる努力をしてきたわけではありませんでした。安全より利益を優先してきた東京電力を信用してはなりません。
安定供給のためと言いながら、アメリカの3倍とも言われる電気料金をとってきた東京電力ですが、結果はこのザマです。国有化されるか否かはともかく、いずれにせよ、このままの東京電力を存続させるわけにはいかないでしょう。経営陣の刷新といった問題でなく、電力供給そのものを考え直す必要があります。
こんな会社になってしまったのも、地域独占で、競争の全く無い世界ですから、腐敗するのも当然と言えば当然なのでしょう。酷いお手盛りで電気料金を決めて来たこともわかってきました。なんでもかんでも原価に入れて、利益を乗せて電気料金を申請すればいいのですから、ラクな商売です。
東電、電気料金に上乗せ 保養所維持管理費 高利子の財形貯蓄 (2011年12月20日 東京新聞)
電気料金原価、6千億円高く見積もり 東電、10年間で (2011年9月29日 朝日新聞)
東京電力を一時国有化してリストラをするというレベルでなく、解体する必要があります。発送電を分離し、競争原理が働くような仕組みが必要でしょう。原子力保安院にも重大な責任があります。行政の仕組みも含め、エネルギー政策そのものを考え直すことが求められています。
東京電力が、このままでいいと思っている人は少ないと思いますが、問題は、東京電力がしぶとく生き残り、形は変わっても、体質的にはそのままで独占企業として残る可能性があることです。それを暗示するかのように、東京電力への批判の声は抑えられてしまっています。
我々の払う電気料金を吊り上げ、その中から政治家に多額の寄付を行ってきました。今も個人名など、目立たない形で続いています。東電や電気事業者連合会(電事連)として、政治に対して大きな発言力を保っています。献金や選挙のことを考えると、東電に厳しいことを言えない政治家は少なくないと言われています。
政治家だけではありません。CMや広告のスポンサーとして、マスコミに対しても大きな影響力を持っています。先ほどのゴルフ場の無主物の件も、ネットでは大きく騒がれましたが、一部を除き、あまり大きく取り上げたり、批判するマスコミがないのを見てもわかります。
こうした政治やマスコミに深く浸透した力を影で発揮することで、一時国有化されても、しぶとく生き残る可能性が否定できません。当面は平身低頭のフリをするでしょうが、いつの間にか責任や企業体質の問題などは、うやむやになって復活している、なんてことになりかねません。
そうならないために、私たち国民は今後の動向を注意深く見ていかなければなりません。黙って事故のツケを払わされるだけではいけません。喉元過ぎれば熱さを忘れるで、この大変な事故の影響も薄れてくる時が来るでしょう。しかし、二度と原発を爆発させないためには、忘れてはいけない重要なことだと思います。
自転車とは直接関係ないのですが、少しでも多くの人に考えていただきたいと思って書いてみました。
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Posted by cycleroad at 23:30│
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自転車と原発は関係無いとは思いません。健康な成人の大部分が10キロ以内の移動を自動車から自転車への移動に代えたら、車道の左側は自転車で渋滞しそうです。自転車の車道走行が確保されていなくて危ないからと、ついつい自動車に乗る事が多いです。自転車が安全に乗れれば、エネルギーの消費が抑えられそうです。
原発に反対するのなら、自らも省エネに協力しなければと思います。自宅に太陽光発電パネルを取り付けています。
値上げの理由を火力発電のせいにするとは本末転倒ですよね。
福島が東京の犠牲になったように、八ッ場ダムもまた群馬が東京の犠牲になるようではね・・・。
自転車を通して世間を見ていると、歩く速度や自転車の速度からは原発もダムもいらないような・・・?
誰が頼んだわけでもないのに、いつの間にやら国中に56基もの原発が動いていたなんて、ブラックユーモアにしてほしいです。
除染した土をどこへ持って行くというのでしょうか?
世の中、リニアの時代らしいですが、徒歩や自転車の速度で考えたいものですね。
まったくcycleroadさんのおっしゃる通りです。
電力をどうするかはみんなで考えなければいけません。
これまで我々は人に任せきりでした。
その結果がこうなった。
僕も原発事故があって初めて原発の怖さを知った。
それでも原発を海外に売ろうとしている政府。
今のリーダーたちには、将来の展望がありません。
一般市民や若者がもっと意見を言うべきです。
こうやってcycleroadさんのように、みんなが意見を述べてもらいたい。
何万年後も地球に生物が住めるように、みんなで頑張りましょう。
やるべきことは、決まっています。
1.オンブズマンのような、第3者機関が監視すること。
2.給電・発電分離
でも、政治家はやらない。
皆で声を上げるしかないんですが・・。
世田谷花子さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
車道の左側が自転車で渋滞するくらい、多くの人が自転車に乗り換えたら、クルマは相応に減るでしょう。
クルマは平均して2人弱しか乗っていないのに、道路を占有する面積が大きいですから、それはそれで道路上のバランスはとれてくるのではないでしょうか。
ここでは原発の是非ではなく、東電のような組織が原発をこのまま運営していいのかという点を問題にしています。
省エネの議論とは別に、エネルギー政策をもっと考える必要がありそうです。
二浪独河さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
莫大な原子力予算を充てるべきでしょう。どのみち原発は、少なくとも当面の間、新規に建設できないのですし、立地対策の予算などは不要になるはずですが、いまだ相当の金額が計上されています。
原発もダムも、いろいろ問題があります。ただ、エネルギーが必要なのも確かであり、単に使用量を減らすという話だけではなく、安全保障も含めたエネルギーの総合的な政策を考える必要があると思います。
価格も問題です。発送電分離など、競争の原理が取り入れられなければ、東電でなくても組織は腐敗し、大きな危機を招きます。
不幸な事故でしたが、過ちから、いかに学べるか、改革できるかが問題だと思います。
トンサンさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
原発の危険が誰の目にも明らかになり、世論は大きく脱原発に傾きました。
百歩譲ったとしても、いまのままの形で原発を運転するのは、大きな問題があると思います。3.11以降、他の原発に電源車の配備などが行われましたが、そんな小手先の対処で、安全は確保できません。
今また巨大地震が起きたら、津波が起きなくても、制御棒が入らないかも知れません。
設計から見直すべきですし、古い原発の廃炉は必須でしょう。
ただ、単に脱原発だけでは解決になりません。エネルギー供給をどうするか、エネルギー安全保障上の問題、他国の原発の問題もあります。
エネルギー政策を根本から考える必要がありますね。
ヨッシーさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
監視や規制が有効に働くような仕組みは、ぜひとも必要でしょう。
発送電の分離は、安定供給の面では問題があり、何で発電するか、そのバランスも考える必要があります。
政治家は献金漬け、マスコミもスポンサーに頭が上がらないというのも問題です。
どのように進めていくかも含め、根本的に改革が必要ですね。
ほんと仰るとおりだと思います。
管理者さんのご主張が通る世の中になるなら、胸がスッとする思いがします。
借金1000兆円突破にしても、今回の事故にしても、誰かの利権というか利益のために後は野となれ山となれと考えるような人々に大事なことを任すべきじゃないってことを思います。
政治って高尚なものでも何でもなくって、日々を必死であくせく生きてる自分たちが参加しなければ意味ないと思うようになりました。日々や暮らしが大変だからそんなこと考えられないとか言ってたら、自らこんな曲がった日本を認めたことになると思うんです。
ほのぼのさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、政治にもっと多くの人が関心を持ち、参加し、関与していかなければならないというのは、その通りだと思います。
なまじ高度成長で、うまく来てしまっただけに、今まで無関心できてしまったというのもあるでしょう。しかし、ここへ来て、さまざまな問題が噴出しています。
ここで書いたようんことは、多くの人が感じていることだと思いますが、それが実現すればいいな、ではなく、ぜひとも実現していかなければならないと思います。
そのことが、日本国民の総意として、二度と再び、原発の爆発というような悪夢を現実にしない、ということにつながると思います。
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