これまでにも世界中のユニークな自転車乗り、自転車好きたちをいろいろ取り上げてきました。どれも面白かったり、独創的だったり、笑えるものだったりするわけですが、中には日本人の感覚では、ちょっとピンと来ないものもあります。今回は、そんな例を取り上げてみようと思います。
こちらは、スウェーデンのストリートアーティスト、Akayさんという人の“robo-rainbow”という作品です。簡単に言うと、壁に落書きをするためのトレイラーです。自転車に連結し、電動ドリルを動力に、リモコンでコントロールした機械で見事に虹色の模様を描きます。
ずいぶんと凝った落書き用の道具ですが、さすがにこれはスウェーデンでも犯罪行為でしょう。見る限り民家の壁ですし、自分の家というわけでもないようです。おそらく、ほめられた行為ではないとの自覚があるのでしょう、顔は写さないようにしています。
例え許されたとしても、単純な虹色のペイントというだけでアートと呼ぶのは微妙な感じです。落書きと言うより、見た人を明るくさせるなどの主張なのかも知れません。ただ、いくらきれいだったとしても、民家や商店、公共物などに落書きするのは、アートではなく違法行為と言わざるを得ません。

スウェーデンと言うと、北欧の高福祉国家というイメージがあります。しかし、最近はイスラム系の移民が増え、一部の層の失業率が悪化するなどの原因もあり、犯罪も増加傾向と言います。日本の外務省のサイトを見ても、次のように書かれています。
「統計のとり方は国ごとに相違があり、単純比較はできないものの、人口比約13倍の日本の犯罪件数(刑法犯)が、約170万件(2009年)ですから、スウェーデンの犯罪発生率は日本の7倍以上に及ぶことになります。スウェーデンにおける犯罪の過半数を窃盗等の財産犯が占めていますが、近年暴力犯罪の増加も目立ってきています。 」
私は現地の事情に詳しくないので、よくわかりませんが、他の犯罪行為と比べて、落書きくらいは、あまり咎められないということなのかも知れません。しかし、日本ではちょっと褒められない発想です。そもそも堂々とこんな装置を牽引していたら、すぐに検挙されてしまうに違いありません。
行為の是非は別にして、単純に虹を描く自転車という装置として見れば、ユニークと言えなくもありません。直線的に虹色にペイントする第2弾の装置も開発しています。とにかく、自転車で虹色のペイントをすることにこだわっているようです。ちなみに世界では、国や民族によって虹の色の数は7色とは限りません。
自転車で虹を描くのはいいですが、技術的な部分には優れたものがあるだけに、個人的には、落書きが目的というのは残念な気がしてしまいます。描かれるほうは大迷惑、怒り心頭でしょう。どうせなら、落書きではない、合法的で人々が楽しめる虹だったら良かったのにと思ってしまいます。

こちらは、自転車で牽引するサウナです。中には火を燃やすボイラーが備わっており、移動して楽しめる本格的なサウナになっています。チェコの“
H3T architects”という建築家たちによるもので、ほかにもいろいろなタイプのサウナを設計しています。
サウナという言葉はフィンランド語から来ており、サウナと言えば北欧フィンランドです。3人に1つの割合で存在するほどサウナがたくさんある国です。サウナと言ってもいろいろあり、入り方もさまざまなスタイルがあるそうですが、サウナと屋外やバルコニーなどを行き来しながら入ることも多いと言います。

夏の間は湖畔や川岸のロッジに滞在し、サウナに入って、暑くなったらそのまま冷たい水に飛び込むと言ったスタイルが好まれると聞いたこともあります。フィンランドならば、そういう場所にもサウナがあるのでしょうが、こちらはチェコですので、移動するサウナという発想が生まれたのかも知れません。

チェコには、なかなかフィンランドのようにサウナを楽しめる場所がないので、自転車でサウナを牽引して湖畔や川べりへ行ってサウナと水遊びを楽しもうというわけです。日本では風呂を牽引する発想はないと思いますが、この自転車サウナ、
一般にレンタルもしているそうです。
日本では、どこへ言っても、たいてい温泉があります。温泉の無い地域には、スーパー銭湯とか、クアハウスといった温浴施設があって、風呂に入る場所には事欠きません。日本人だと、災害でもない限り、わさわざ風呂を牽引しようという発想が浮かばないのも、風呂に恵まれているからこそなのかも知れません。
アメリカ・オレゴンには、自転車をトークショーに使っている人がいます。アメリカのテレビの典型的なトークショー番組では、司会者とゲストがテーブルをはさんで左右に座る形になります。この典型的なフォーマットを、スタジオの外に持ち出すために、カーゴバイクを改造しています。

単に、カーゴバイクの荷台部分をテーブルにしただけに見えなくも無いですが、これでゲストのいる場所に出かけ、いかにもトークショーという形式で番組を撮影できるわけです。“
The Pedal Powered Talk Show”と名づけられたこのトークショー、今年からスタートしています。

ホストを務める、
Boaz Frankelさんは、名の知れたパーソナリティで番組制作者です。そのBoaz さんが、クルーと共に街へ飛び出し、トークショー形式で今注目の人に話を聞きます。スタジオで収録する伝統的なアメリカのトークショー形式を自転車で持ち出して、どこでもやるのがアメリカ人には面白いのでしょう。
Boaz さんは、アメリカでも有数の自転車都市と言われるオレゴンのポートランド出身です。これまでにも、クルマを使わずに、それ以外の乗り物、自転車やカヤック、ラクダやパラグライダーなどを使って
北米大陸を旅行する番組なども制作しています。彼にとって自転車は、当然の選択でもあったのでしょう。
スタジオごと、どこへでも話題の人に会いに行くというのは、それだけでもユニークですが、それが自転車を使ってというところにも、オレゴン州ポートランドという土地柄ならではという感じがします。近年のトレンドから言っても、自転車になったのは自然のことなのかも知れません。
ローカルも含めた日本のテレビ番組にも、スタジオから飛び出してロケを行うものは多いと思いますが、やはり機材もありますし、どうしてもクルマで出かけることになるでしょう。司会者もクルーも自転車に乗って出かけるという発想は、なかなか出てこないと思います。

落書き自転車も、サウナ自転車も、トークショー自転車も、ちょっと日本人には共感出来ない、なじみが薄い、あるいはピンと来ない部分があると思います。しかし世界には、こんなにも様々なことに自転車を使おうとする人がいることを思えば、日本人も、もっと今までにない使い方を発想してもいいのかも知れません。
太平洋側でも広い範囲で雪になりました。まだ、しばらく寒い日が続きそうですね。
自転車牽引サウスとは驚きました。『自転車でサウナを牽引して湖畔や川べりへ行ってサウナと水遊びを楽しもう』想像するだけでワクワクしてきます。ただ、私の周辺には自由に遊べる湖畔や川べりがないので残念ですが、サウナとそういった自然を一度に楽しめるのならば最高でしょう。私は自転車で汗を流したあとにサウナや水遊びを楽しみたいので、自転車に乗ってサウナを牽引する係を引き受けさせてください。