February 07, 2012

レーンが無理ならマークする

警視庁が自転車ナビマークの設置を始めました。


産経新聞の記事から引用します。


自転車路示す「ナビマーク」、都内初設置 西葛西駅周辺自転車路示す「ナビマーク」、都内初設置 西葛西駅周辺

自転車が車道を安全に走行できる走行路を明示する「自転車ナビマーク」が6日、東京都江戸川区西葛西の東京メトロ西葛西駅周辺に初めて表示された。警視庁では今後、ほかの地域の車道にも、同じようにマークを設置していく方針。

マークは、自転車と、進行方向を示す矢印が白色で描かれた縦4メートル×横0・4メートルのイラスト。車道左端に、約50メートル間隔で計190カ所表示し、自転車の走行路を明示した。

自転車の走行路だということを分かりやすく示すほか、逆走防止や、歩行者の歩道での安全確保などを目的としている。走行路全体を青色に塗る「青色レーン」は、整備に時間がかかるため、マークの表示を先行したという。

自転車に乗って近くを通った同区内に住む主婦(73)は「マークでわかりやすくなり、車道でも走りやすくなると思う」と期待を寄せた。一方、同区の長島慶子さん(69)は「夜になると、見にくくなる気がする。やっぱり自転車で車道を走るのは怖い」と不安な表情を見せた。
(2012.2.6 産経新聞)


昨年10月、自転車の原則車道走行の徹底を指示した警察庁の通達を受け、その実現のため警視庁は車道上に自転車レーン、いわゆる青レーンを設置する方針を明らかにしています。今回、それに先行する形で、記事にあるような車道への自転車ナビマークを設置し、車道走行の徹底に向けた環境を整えていくようです。

「ナビマーク」都内初設置ふだん歩道走行しており、車道走行は怖いという人も多いと思います。しかし、自転車の歩道走行が歩行者の安全を脅かしており、事故も大幅増だと言います。本来、歩行者のための歩道なのに徐行もせず、歩行者を優先しない人が多いからこそ車道走行への転換が必要でもあるわけで、その事に文句は言えないでしょう。

一方、それなら車道に自転車の走行空間を整備すべき、となるのも当然です。これまでの車道整備は、自転車の走行を前提としておらず、むしろ歩道走行を強制しようとしてきたこともあって、車道を通りにくくなっている部分もあります。警察庁にしても、すぐ明日から車道走行の原則が徹底できないのは当然わかっています。

現実問題として、車道に自転車レーンを充実させ、今まで歩道走行していた人も抵抗なく車道走行に移行できる環境を整えていかなければなりません。一朝一夕に出来るものではありませんが、警察庁は、そのために車線を減らしたり、道路を一方通行にしたり、パーキングメーターの撤去なども視野に入れるべきとしています。

警視庁は、車道への自転車レーンの設置を原則としていますが、レーンを設置するには幅が足りない道路もあります。そうした道路には、レーンの代わりに、このナビマークを設置していこうというわけです。簡単に設置可能なマークが先行する形になっています。

車道の隅に自転車通行マーク 警視庁が考案もちろん自転車レーンが理想ですが、設置のため幅の狭い道路を拡幅するなどというのは現実的でありません。そうした場所を放置せず、マークだけでも設置することには一定の意義があると思います。特に現状で逆走が多い中、自転車は車道の左側走行だということを認識させるだけでも無駄ではないでしょう。

40年以上も歩道走行できたため、クルマのドライバーにも誤解があります。このマークは、ドライバーに対しても、道路の自転車とのシェアを意識させることになるでしょう。自転車レーンの幅がとれない道路では、クルマ側に弱者優先が義務付けられていることを思い出させる効果も期待できます。

このマークがペイントされていることによって、ここは自転車も通る場所であり、駐車禁止なのに無理に駐車すれば、自転車にも迷惑であることを、ドライバーに気づかせる可能性もあります。駐車違反車両は自転車の危険を増幅することへ、今後、世間の目が向くきっかけとなるかも知れません。

sharrowちなみに、似たような道路標示(右の図)は、アメリカでも導入が広がりつつあります。以前取り上げた、“sharrow”と呼ばれている道路標識です。これは、道幅の都合上、自転車レーンが設置できない場所などに表示され、クルマに対し、「自転車と車道をシェアせよ。」という合図なのです。

この“sharrow”、2006年のアメリカ版流行語大賞にノミネートされるほど、現地でも関心を集めました。今回警視庁の導入するナビマークと、この“sharrow”とは、よく似ています。もしかしたら警視庁は、このアメリカの“sharrow”を参考にしたのかも知れません。

ナビマークも、自転車レーンを設置する幅のない場所に設置し、自転車の通行場所を明示すると共に、クルマに対し自転車と車道をシェアするよう促す標識です。自転車に気をつければ、クルマがこのマークを踏んでも問題ありません。その意味で、読売新聞の記事は勘違いしています。


これでも本当に安全?自転車向け「ナビマーク」これでも本当に安全?自転車向け「ナビマーク」

車道を安全に走行できるようにと、警視庁が6日導入した、自転車向けの「ナビマーク」。

しかし、その脇をトラックが通り過ぎると…… 

(2012年2月7日 読売新聞)


自転車レーンとは違い、車道の幅が狭いからこそのマークです。クルマが踏むのも仕方ありません。自転車がいる場合に注意すればいいのです。こうした勘違い記事を平気で掲載することで、読売新聞は読者の正しい理解を阻害しており、この問題に対する理解力不足と浅はかさを自らさらけ出しています。

自転車はこちら…車道にナビマーク塗装始まる今回の措置は車道走行の徹底に向けたものですが、懸念されるのは東京都の出方です。昨年の警察庁の通達に対し、もう一方の当事者である東京都の道路部は、あくまで歩道走行を主張し、警察庁の方針に反対する姿勢を見せていました。警察庁・警視庁と東京都の方針が食い違う形になっています。

例外措置とは言え、40年以上も放置してきてしまったため、市民だけでなく関係者にも誤解があるようですが、自転車の車道走行は法律で決められています。国がその原則に回帰させようというのに、東京都が逆に例外を拡大させる方向に整備を続けるのは、理にかなっていません。いずれ無駄になるだけです。

都が新規建設を予定する都道は歩道幅を4メートル確保しているケースが多く、その整備方針に従えば自歩道が増えることになります。地方自治ですから、国と都の方針が違うこともあり得ますが、車道走行なのか歩道走行なのか都内でも方針が別れ、バラバラに整備が進めば、利用者が混乱するだけです。


都内歩道、約8割が幅3メートル未満 自転車路整備急ぐ 警視庁都内歩道、約8割が幅3メートル未満 自転車路整備急ぐ 警視庁

東京都内で自転車の走行が認められている歩道のうち約8割は、歩行者安全のため国が原則走行禁止としている幅3メートル未満であることが19日、警視庁の調査で分かった。

道幅が3メートル未満でも徐行するなどすれば自転車走行は認められているが、同庁は「歩行者のためには、車道に自転車専用レーンをつくるなど対策を進める必要がある」としている。

警視庁によると、都内で自転車走行が認められている歩道計約3650キロの道幅を調査したところ、幅3メートル未満は約77%だった。(2012.1.20 産経新聞)


自転車ナビマーク:路上に表示 東京メトロ西葛西駅周辺、警視庁が検証警察庁の通達では、歩道の幅が3メートル以内の場所では、自転車通行可にする措置を見直すよう求めています。こちらの記事によれば、都内の自転車通行が認められている歩道のうち、8割で歩道走行可を廃止し、車道に自転車レーンかナビ・マークの整備が必要ということになります。

残りの道路、都内で自転車走行が認められていない歩道がある道路、加えて歩道の無い道路では、当然自転車は車道を通行することになるので、やはりレーンかマークの整備が求められます。つまり、トータルでかなりの割合の車道に、自転車レーンかナビ・マークを設置すべきということになります。

自転車通行が認められている自歩道の割合が全国平均と同じ45%くらいとすれば、全体の1割くらいが自歩道として残る可能性があります。都が今後新設する道路を自歩道にし、歩道に自転車レーンを設置するとしても、さほど大きな割合にはならないと推測されます。

都の道路部も、国が原則禁止する既存の3メートル未満の歩道に、無理やり自転車レーンを設置するのは難しいでしょう。この状況を見る限り、普通にいけば、車道へのレーンやマークの設置が大勢を占めることになりそうです。おそらく、東京都の道路部と警視庁が反目しあうことにはならない気がします。

「ナビマーク」国土交通省の調査・試算によれば、全国の都市部にある幹線道路3万キロ余のうち、車道の両端に歩道とは別に1・5メートル以上の余裕がある主要道は約8100キロになると言います。その8割強に当たる約6600キロで、自転車専用の通行帯「自転車レーン」を容易に設置できるという報告もあります。

車道の端に色を塗るだけで、すぐ自転車レーンが設置できる道路は意外に多いと言えるでしょう。ラインを引きなおしたり、1・5メートルまでは余裕が無く、幅員に不満が残るものの、まず簡易な形であっても車道に自転車レーンを設置できる道路も含めれば、相当の割合になるはずです。

今回のマークは、今のところ都内3地区への設置ですが、他の地域にも広げていく方針のようですから、とりあえず車道走行の実現へ向け、まず一歩踏み出したと言えそうです。もちろんマークを設置していく中で、問題が出てくる可能性もありますし、これで万全というわけにはいきません。

車道への自転車走行環境が整い、原則車道走行の徹底が図られるまでには、まだまだ紆余曲折が予想されます。今後の動向についても、引き続き注視していく必要がありますが、警視庁には、これを皮切りに、今後も着実に整備を進めていってほしいと思います。





この大雪で、雪下ろしに苦労されている高齢の一人暮らしの方が気の毒です。都会には雪下ろしのボランティアくらいなら、というも多いと思いますが、なかなかそれだけで雪国まで行けないのも現実ですね。

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この記事へのコメント
 金沢では記事に出ていたナビマークに似たマークと、白線を使った「自転車走行指導帯」なるものの整備が進められています。昨年9月に整備した地区で利用者にアンケートをしたところ、自転車車道走行の安全性が向上したという評価が7割〜8割ありました。自転車マークと左側走行を示す矢印だけでも相当の効果があることが立証されています。ただ、読売新聞の記者のような誤解はそれなりにあって、車の走行に邪魔だという意見もありました。これらのマークは自動車が踏んでも構わないのですから、自動車の邪魔になりようがないのですが、そうと理解されるためには説明が必要なようです。
 金沢では「自転車走行指導帯」の整備に加えて、街頭指導を3回行いました。町会・市・警察・高校・交通推進帯・自転車ボランティアらが街頭に立ちました。このことによって、自転車のマナーは格段に向上しました。
 自転車の車道左側走行を推進するには、ハードに加えてソフトが必須だというのが我々の実感です。都会ではなかなか難しいとは思いますが、40年の垢落としは簡単ではないですね。
Posted by testach48 at February 09, 2012 13:06
読売の記事、恥ずかしいですね
いったいいつから日本人は”考える”事を捨てたのか

このナビマークによりある程度の緊張感が生まれ携帯電話を弄りながらクルマを運転したり脇見運転する輩が居なくなる事を願ってやみません
Posted by 乗り物大好き at February 10, 2012 05:39
レーンの自転車の絵が逆走に見えるのは私だけ?
Posted by あるふぁ at February 10, 2012 16:56
大阪ではまず御堂筋をどうするかですね。今度以下の会合があるので議論してこようと思います。クリティカルマスの掲示板も休眠状態だったので、こちらのページを借りて紹介しますね。
http://8507.teacup.com/criticalmass/bbs
Posted by sharetheroad at February 10, 2012 18:10
testach48さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですか、金沢では好評でしたか。マークだけでも一定の効果があることは、実証されているわけですね。
やはり、安全性が向上したと感じられるのは、自転車が車道走行することを示すことで、クルマのドライバーにも認知されたということでしょうか。
確かに、説明して周知するのは、必要になりそうですね。金沢では、マークの設置だけでなく、指導が効果を発揮したことを、今後導入する地域は参考にしてほしいものです。
本当は全国規模でいっせいに、体裁も揃えて設置すればいいのにと思います。あちこちで見るようになれば、認知度も高まるでしょうし、その他の道路標識と同じくらい認知されるまでアナウンスすべきでしょう。
40年の垢落としには、それくらいの全国規模の思い切った取り組みが必要だと思います。
Posted by cycleroad at February 10, 2012 23:36
乗り物大好きさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
警察の発表を受けての記事ですから、警視庁記者クラブを通じて説明資料が配布されているわけですし、担当の記者が、こうした間違い記事を書くようでは、困ったものです。
新聞の影響力は大きいですから、これにより誤解する市民も多いはずです。その意味で罪深い記事です。
チェックするデスクも含め、確かに恥ずかしいレベルの低さですね。
Posted by cycleroad at February 10, 2012 23:43
あるふぁさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
なるほど、たしかに言われてみれば、こちらへ向かってくる絵に見えますね。
アメリカ版のようなシンプルなものでよかったのかも知れません。
Posted by cycleroad at February 10, 2012 23:47
sharetheroadさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
御堂筋は、自転車の通行やマナーについても、何かと話題になるようですね。新聞などでも、時々見ます。
個人的には、側道部分の一部を自転車レーンにしても良さそうに見えてしまいますが、地元の方や、ドライバーの反対などいろいろあるのでしょうね。
Posted by cycleroad at February 10, 2012 23:54
 
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