自転車への情熱を共有すれば
日本をガラパゴスと揶揄することがあります。
ご承知のように、日本の携帯電話が独自の進化を遂げ、海外とは仕様も機能も特殊なことを、大陸から隔絶された絶海の孤島のため、独自に進化を遂げた生態系を持つガラパゴス諸島になぞらえています。携帯電話以外にも、日本市場の独自性、閉鎖性、排他性を表す比喩として使われることがあります。
日本の自転車市場も、ガラパゴス的な面があります。日本独特のママチャリが圧倒的に大多数を占めている点で特殊な市場と言えます。このママチャリは言うまでもなく、世界から見れば非常識極まりない、自転車の歩道走行という特殊な道路行政が40年以上に渡って続けられてきたことによる産物です。
タイヤが太く、乗車姿勢もアップライトで足つき性がよいため、歩道を低速で走行するのに向いています。車体は重く、スピードは出ません。歩道で歩行者をよけながら走行するのに適した形に進化したわけです。多くは前カゴやスタンド、泥除けにチェーンカバー、ライトなどが最初から装着されています。
現状の日本の道路事情に適しているわけで、確かに用途によっては便利です。ママチャリに乗るのを悪いと言うつもりはありません。ただ、あまりにもママチャリが普及したための弊害もあります。日本人の大多数は、自転車と言えばママチャリのことをイメージします。
本来の自転車は、もっと軽快に走ります。下手をすると、20キロの米袋一つぶん余計に積んでいるようなものですから、ママチャリが遅く、坂道がキツイのも当然です。ママチャリしか乗ったことがない人がスポーツバイクなどに初めて乗ると、その性能の差に驚くと思います。
特に近年、屋入の格安のママチャリが市場を席巻するようになり、一見良さそうに見えても、粗悪で耐久性に乏しい自転車があふれています。スポーツでも音楽でも、他の趣味でも一緒だと思いますが、あまりに安い道具では、その本来の楽しさや面白さがわからないことが多いと思います。それと同じことです。
最寄駅まで乗るくらいなら問題ないでしょうが、格安なものだと、すぐに錆びたり、異音がしたり、乗り心地が悪くなることも多く、愛着もわかないでしょう。重くて遅く、こうした自転車に乗って楽しいと感じるまではいかない人も多いはずです。そもそもママチャリは長い距離を乗るには遅く、お尻も痛くなります。
こうした自転車は、格安なこともあって使い捨てにされ、駅前の放置自転車の増加を招いています。そればかりか、施錠もせずに盗難を誘発したり、マナーを悪化させたりします。フレームやパーツなどが突然破断するなどして怪我をする事故も起きています。
日本の自転車市場がガラパゴス化してママチャリばかりになってしまったため、結果として自転車本来のポテンシャルを知らない人が大多数です。多くの人が歩道走行を強いられるのを不満に思わなくなり、自転車が都市交通として機能する、自転車を充分に活用できる社会にはなっていません。このことは、まことに不幸なことです。
最近でこそ、スポーツバイクに乗る人も増えてきましたが、全体から見れば一部に過ぎません。日本での自転車のイメージは、ほとんどママチャリであり、多くの人は下駄代わりくらいのイメージではないでしょうか。駅前にあふれる邪魔で見苦しいもの、歩道を暴走する腹立たしいものという人も多いかも知れません。
クルマやオートバイに比べて子供の乗り物だとか、ネガティブなイメージを持つ人もいます。せいぜい日用品くらいの意識で、あまりカッコいいというイメージは無い人が多いに違いありません。総じて自転車のイメージが悪いものに留まっているのも残念なことと言わざるを得ません。
これが、欧米だと違ってきます。日本人には信じられないかも知れませんが、ヨーロッパでは自転車競技、ロードレースがサッカーと肩を並べるくらい人気があります。自転車選手はヒーローです。もちろん観るだけでなく、自らスポーツとして楽しんで乗っている人も大勢います。
古くから自転車が文化として定着している国も多く、日本のように自転車に乗る人を馬鹿にしたり、見下したり、邪魔者扱いするような雰囲気ではありません。むしろ、クルマに乗るよりスマートで、シンプルで素敵なライフスタイルと好印象にとられることも少なくないのです。
自転車をこよなく愛し、単なる乗り物以上のものと感じている人もいます。道具と言うより、まさに愛車であり、自転車に乗ることは生活の重要な一部という人も珍しくないのです。おそらく、このブログの読者なら理解してもらえると思いますが、単なる趣味以上のものと考えている人もいます。
大げさに言えば、自転車は生き方や、ライフスタイルを象徴するものです。人生において欠かせないもので、身体の一部のように感じている人もいます。そうした人にとって、自転車に乗るのは必然であり、喜びであり、生活であり、ポリシーです。日本人のように、歩くよりラクだから、バスが渋滞するからではありません。
おそらく、こんなことを書いても、多くの日本人には、その感覚を理解してもらえないかも知れません。自転車への興味を失わせ、その本当の良さ、凄さ、楽しさを知らない人ばかりにしてしまったという点で、ほとんどママチャリ一辺倒になってしまった日本の自転車環境は残念と言うしかありません。
自転車好きにマニアックな部分があることは否定しません。ママチャリしか乗ったことの無い人が、スポーツバイクの値段を知ると目をむきます。しかし、値段相応とは言わないまでも、スポーツバイクとママチャリとの間には、大きな違いがあります。
もちろん、現状でママチャリに乗っている人を悪く言うつもりはありません。ただ、それが一般的な自転車だと思うのは間違いです。そのことで大いに損をしているのに、それを知らない人の多いのが残念です。本当であれば自転車のことを理解し、自転車最高と思う人がもっと大勢いてもおかしくなかったでしょう。
さて、日本とは違って、クルマ大国アメリカでも、自転車最高と思っている人が大勢います。そんな「自転車を知る人」たちに、結集を呼びかけているサイトがあります。“
Peopleforbikes.org”というサイトです。非営利の団体によって運営され、多くの企業がスポンサーについています。
自転車は、ある地点からある地点に私たちを運んでくれるだけのものではありません。乗る人を健康にしてくれたり、ガソリン価格の高騰から救ってくれたり、街の空気をきれいにしてくれたり、渋滞を減らしたりもしてくれますが、ただそれだけの存在でもありません。このサイトではそう主張しています。
自転車は人生の一部以上のものであり、生き方です。舗装道路を走ることも、ダートを走破することも、岩を越えてジャンプすることも、生命の純粋な喜びです。冒険であると同時に、健康で幸せでいる方法でもあります。そして人間の力が、いかにすごいか感じさせてくれると指摘しています。
自転車は、私たちの心を冒険や興奮で満たしてくれます。私たちに喜びをもたらしたり、リラックスさせてくれたり、魂にエネルギーを与えてくれたりもします。私たちは、自転車に乗ることで、人生がより素晴らしいものになることを知っています。そして、その情熱を共有できるはずだと呼びかけているのです。
“Peopleforbikes.org”は当面、同サイトの考えを支持する人の署名を100万人分集めることを目標にしています。そして、一つの大きな声として、自転車の活用の重要性や、自転車環境の整備を促進すべきであることを、政策を立案する人たち、メディア、そして、多くのアメリカの市民に知らせることを目的としています。
自転車を支持する人を集めて、アメリカにおける自転車環境を改善するための国民的な運動を構築することを目指しているのです。一般の人の認識を高め、議会を動かし、連邦政府や国中の州や市のリーダーに情熱をもって働きかけることによって、それを実現していこうと考えています。
そのために、まず100万人の署名です。こうした運動で100万人というのは大変な数ですが、大きな数を背景にすることで、働きかけを意味あるものに出来ます。どんな自転車に乗っているか、どんな使い方をしているかに関わらず、自転車に乗る人乗らない人、広く呼びかけています。
サイクリングロード、トレイルコース、自転車レーン、自転車専用橋やアンダーパスなどの交差施設など、自転車環境への投資を訴えていこうとしています。脚力や経験に関わらずサイクリングがよりよいものとなり、誰でもスムーズに国中を移動できるような環境を目指しているのです。
こうした目標、あるいはそれを達成するための情熱を、サイクリスト同士で共有しようと呼びかけています。自転車は自然環境の面でも世界をよりよい場所にしていくはずです。自転車に乗る人が一緒になることで、世界を、より自転車に乗りやすいところに変えていけると“Peopleforbikes.org”は信じています。
残念ながら、今のところこれはアメリカ国内向けの運動です。ちなみに、彼らの言う世界とは、アメリカ国内と捉えるべきでしょう。メジャーリーグの年間王者を決める試合をワールドシリーズと呼ぶのと同じ感覚です。しかし、こうした呼びかけに、多くの人が応じているのも、アメリカならではの部分があります。
日本では、自転車の走行環境以前に、車道走行なんて怖くて無理だし、歩道走行のままでいいという人も多いのが現実です。自転車に乗る人ですら、自転車レーンなんて現実的でない、ピンと来ない、あるいは興味がない、どうでもいいという人も少なくありません。
残念ながら、日本で同じような情熱を共有できる人は多くないと思います。自転車は趣味やスポーツにとどまらない素晴らしいものだと感じ、自転車に単なる道具を超えた社会的な効用があり、その活用の推進に意義があることを理解している人も多いとは言えません。
その背景には、日本では欧米と比べて自転車のイメージが良くないこと、自転車に対する認識が不足していることがあると言えるでしょう。この差は、やはり本来の自転車を知らず、ママチャリが自転車だと思っているのが影響していると言わざるを得ません。
自転車が人生を豊かにするとか、自転車は生き方だなんて言ったら、日本では笑われるか、冷めた目で見られるのがオチです。もちろん、感じ方や考え方は人それぞれですから、そんな考え方を押し付けるつもりはありません。ただ、日本はガラパゴスで、世界と感覚のズレがあることは知っておくべきではないでしょうか。
オリンパスはやっと逮捕ですか。会社や株主に対してだけでなく、日本の証券市場の信用を失墜させ、日本全体に多大な損害を与えた事実をどう感じているのでしょうね。
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Posted by cycleroad at 23:30│
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こんにちは。
僕もママチャリを否定するつもりはありませんが(荷物の積載量とか泥除けが標準装備なのは通勤や買い物に便利だけど)、"自転車=ママチャリ"と思っている人が多いのは事実ですね。そのママチャリが走るのは当然歩道なので、歩行者の仲間と勘違いしている人がいまだに多く、ルールやマナーを守って乗る人が少ないのです。
また、過去にこういう人もいましたね。
「自転車なんて高いのも安いのもあまり変わらない」
高すぎる自転車は性能差がわかりづらいらしいですが、1万円以下のママチャリと入門モデルでも5万円クラスのクロスバイクとでは走行性能に大きな差はあります。ただ、それは実際に乗って体感しないとわからないことです。多くの人はママチャリかよくてホームセンターのルック車にしか乗ったことが無いので、仕方のない事かもしれません。
そもそも自転車を歩道にあげてしまったのが大きな間違いだったと思います。そして暫定処置だった歩道通行を長年放置してきたことも。
少し前にヨーロッパの自転車レースの模様をテレビで見ました。沿道で応援するがかなり多く自転車に対する意識の違いの現れだと思います。自動車のレースも良いのですが、人力だけで50km巡航するレーサーの迫力は見応えがあると思います。
走行環境が整って、ルールやマナーが徹底されていけば日本で"脱ママチャリ"がおきるかもしれませんね。
ママチャリがロードバイクなみの値段なら、駅前に放置することもないでしょうにね。
ロードバイクが高いと言っても、自転車屋さんがぼろ儲けしているわけでもないしね。
ケイタイ1台分でも相当高価なロードバイクが買えるのにね。
ケイタイは使わなくても毎月の支払いがバカにならないよね。
自転車の維持費も高校生のお小遣い程度ですよね。
仕事柄、オリンパスの医療機器には助けられていますが、開発エンジニア達の苦労を思うと、トップの不甲斐なさは・・・。
私もママチャリが悪と断定する気はないですが。
殆どの人にとって自転車=ママチャリであり、ス
ポーツバイク=競輪?というのは残念です。
慢性疾患の予防、交通渋滞の緩和、環境汚染の
防止、社会保障費の削減効果等、多くの利点がある
自転車、そして世界が優遇している訳ですが、日本
においてママチャリ文化がそれを気づかせていません。
そもそもママチャリでは上記の利点が有効活用でき
ないのではないでしょうか?実際、地雷モデルと言わ
れるバンドブレーキを備えたママチャリが放置自転車
問題の大部分を占めているわけですし、多くの人がJIS
の規格に通っていないということを理解していません。
また、すぐに故障してしまうこれはママチャリでは
良いものを長く使うという精神にも反しています。
欧州のように粗悪な商品に関しては輸入させない手段
も必要ではないでしょうか?
補足*旧東ドイツで製造されたトラバントが日本で走っ
ているようなものです。
「自転車は人生を豊かにする」「自転車は生き方である」、全く同感です。私には何の疑問もなく至極当然のことです。ですが、cycleroad様がおっしゃる通り日本人の多くは理解してくれないでしょうね。「スポーツ自転車に乗っている」と言ったら以前はほとんど関心を示さず「そっ」という感じだったのですが、最近は「ブレーキの無いやつか」という人が圧倒的多くなりました。ピストとロードレーサーの違いから説明しなければならないことになるのですが、もとより先方は自転車に興味のあるはずもなく、大体不毛の会話になります。本当に疲れます。お笑いタレントの某が捕まったか捕まらなかったかで、あっという間にピストが知れ渡るというのに、本物の自転車の素晴らしさが全然伝わらない。日本ってどうなっているのでしょうね。
来月出張で数日デンマークを訪れる機会を得ました。彼の国の自転車事情、しかと見届けてきたいと思います。
私も、日本で同じような情熱を共有できる人は、まだ多くないとは思います。
けれども、数年前とはかなり変わってきたことを実感しています。まずは私自身が、そして家族や職場の自転車通勤者を見ていても、決して使い捨てではない愛着と楽しさを知り、共感できるようになってきました。だからこそインフラやルールへの関心も強くなりました。その証拠に、このブログに興味と期待を持ち続け、いつも楽しみにしいています。
子供たちやその次の世代には、もっと常識が広まって、ホモ・ルーデンスが多数派になっているかもしれません。
さすらいのクラ吹きさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
「ホームセンターのルック車」、売られていますね。悪路では乗るなと書いてあるMTB風の自転車とか..。驚くほど安いですが、そのぶん粗悪なものも少なくないようです。
当然、重くて走行性能が劣る点で、格安のママチャリと同じ部類です。
確かに、乗ってみないとわからないと思いますが、その違いが見ただけでは、なかなかわかりにくいため、市場をママチャリが席巻する状況は変わっていかないのでしょう。
私も、自転車の歩道走行が全ての悪の元凶になっている気がします。普通に車道走行であれば、欧米とこうも大きく違ってしまうことはなかったのではないかと思います。
ロードレースの人気はイマイチですが、競輪などは比較的身近です。しかし、あの速さは全くの別世界と思ってしまうのでしょう。
確かに、環境が変わってくれば、もっとスピードが出せますし、意識も変わってきて、脱ママチャリになっていくののも期待できるような気がしますね。
二浪独河さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
あまりに安いのが仇になっている形ですね。ロードバイクなみの値段ならば、自転車に対する意識や考え方も違ってくると思います。
マニアックな部分で高い面もありますが、あくまで市場価格ということでしょうし、軽くするためには、素材などの関係で高くなってしまうのも、ある程度仕方の無い部分だと思います。
ホントですね、ケータイならばお金を出しても、自転車にはお金を出す気にならないということなのでしょう。
自転車なんて安いものという価格の相場感が定着してしまっているし、性能差や価値が理解されていないということなのでしょう。
確かに、気の毒なのはオリンパスの社員たちですね。
yokoさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
笑い話ですが、派手なジャージでロードバイクに乗っているのは、競輪選手の練習だと思っている人もいるようです。
まさに、ガラパゴスなわけですが、昔はともかく、これだけ情報的にもグローバルになっているのに、自転車の価値が海外と比べて理解されていないのが不思議なくらいです。
ママチャリに乗っているから理解できないのか、理解できないから乗っているのか、いずれにせよママチャリが、自転車の利点を損なっている面は否定できないと思います。
市場的にも、薄利多売の競争構造から脱することが出来ず、高いものは売れない、安いものは部品も省いているので修理がしにくく、修理が高く付くので新しく買ったほうが安いという悪循環になっていますね。
欧州のように関税を高くするのは手ですが、今どき日本が工業製品に対して関税をかけたり、非関税障壁は設けにくいということなのだと思います。
testach48さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
「自転車は人生を豊かにする」とか「自転車は生き方である」に、共感される方は日本にもいると思いますが、残念ながら少ないのは間違い無さそうです。
確かに、ピストは急速に知られるようになりましたね。固定ギヤということが伝わらずに、あるいは構造的に理解できないこともあって、ブレーキの無い自転車なんて!と驚きと非常識感が、余計にインパクトを与えたのだろうと思います。
本物の自転車の性能を理解してもらうには、歩道走行では無理でしょうから、大多数の人には、やはり伝わらないということなのでしょう。
デンマークですか。それは楽しみですね。何か面白い最新事情でもありましたら、ぜひ土産話を聞かせてください。
七九爺さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、スポーツバイクに乗る人は増えましたし、少し前までは、職場まで自転車で通勤するなんて、相当の変わり者と見られていたことを思えば、確かに変わりつつあると思います。
本当の自転車を知り、また乗るようになれば、ママチャリに乗っている時と見方も変わってくるのは自然な流れなのでしょう。
当然ルールやマナーについても関心は高まるでしょうし、気をつけるようになる人が増えると思います。
その意味でも、遊びの要素は重要ですね。自転車の楽しさを知る人が増えていけば、マナー的にも乗りやすい社会になっていくと思います。
日本人だけ、ガラパゴスにいることで、進化に取り残されないよう願いたいものです。いずれは進化するにしても、もっと加速させたいものですね。
日本における道路の歴史を紐解いてみると、もともと、自転車は車道を走っていたことがわかります。
昔・・・乗り物といえば自転車の時代・・・市民らは排ガスや騒音とも無縁で、自然の音、川のせせらぎ、虫や鳥の鳴き声、風や雪の音・・・とともに、健やかでのんびりした、自動車の危険性や公害に悩まされない暮らしを送っていました。
そして、自動車の登場です。
自動車、自転車、歩行者がそれぞれが安全に往来できる環境が整わない状況でも、自動車企業は遠慮などせず、市場、そして道路に自動車を放っていきます。
やがて、自転車の数百倍以上危険な乗り物=『自動車』の乱用、危険走行・・・市民らが大勢、自動車により殺傷される、悪名高き、凄惨な"交通戦争"時代への突入です。
しかし、なぜか、自動車の危険運転や傲慢走行を国はろくに正そうともせず、世界的に見ても在って当たり前のインフラである自転車通行帯すら整備せず、自転車は歩道に追いやられてしまいました。
いまも自動車及び自動車ドライバーへの指導や啓蒙、規制、制限、取り締まり、罰則をほとんど強化もせず、歩行者や自転車への指導や啓蒙、取り締まりを強める始末。交通弱者をいじめ、交通強者である自動車を甘やかすという、健全な国とは真逆の政策です。
信号のない横断歩道で、歩行者や自転車が通ろうとしているのに自動車が停止しない(道交法38条違反)交通弱者軽視蔑視の危険運転が蔓延している先進国など、聞いたことがありません。日本だけです。年間、多くの市民らが横断歩道で自動車によって殺されている。
にも関わらず、交通弱者にだけ「横断歩道は安全を十分たしかめてわたりましょう」「渡りたければ手をあげなさい」などと指導しながら、年間多くの市民らを加害死亡事故で殺している自動車ドライバーに対しては、信号のない横断歩道での取り締まりも強化せず、ポスターや看板等でも、信号のない横断歩道での正しい運転について啓蒙しない。これは、速度超過やスレスレ追い抜き、警音器使用制限違反が日常化している車道の自動車に対する自転車歩行者への指導対応についても同様です。自動車に甘く、自転車や歩行者には厳しい。健全な国とは真逆の政策です。
ママチャリの話に戻ります。
歩道は皆様が知っての通り、でこぼこ・段差が多く、歩道を挟んだ店舗駐車場等へ自動車がスムーズに歩道へ進入できるよう、歩道上に車道の向きへの傾斜もあり、おまけに街路樹や電柱等で、ただでさえ狭い歩道を、更に狭いものとしている。
見通しが悪く、歩道を高速走行のままでは、飛び出しに対応できない場所も多い。そんななかで、スポーツ自転車の性能は発揮できません。いいえ、自転車のジャンルによらず、すべての自転車の性能がまったく発揮できません。
日本では、世界の自転車文化が進んだ国や地域とは異なり、高速走行に向かないママチャリが選ばれた。ママチャリが選ばれてきた。しかし、世界ではスポーツ自転車が標準です。私は、先進国のなかでママチャリが普及してる国や地域では、自転車迫害文化が蔓延していると考えています。
ママチャリの普及は、未熟な自転車関連行政の犠牲、歪みを示しているのではないでしょうか。ママチャリを選んでしまうような、未熟な自転車関連環境が日本にはある、ということを表しているとしか思えません。
サイクルロード様がこれまで執筆してくださった記事の通り、先進国、特に自転車先進国と称される国々では、自転車を安全快適に活用できるよう、環境整備を日本よりずっと精力的に進ませており、遥か高みに立っています。日本も負けてはいられません。
環境や景観、健康(あらゆる病魔を誘引する肥満、糖尿病、高血圧の予防改善)、医療費軽減(自転車で市民らは健康になり、自動車が減ることにより重大事故減少、環境も向上)、市民らの安全のためにも、脱自動車、自転車推進は、もはや世界的な流れであるということは、サイクルロード様のこれまでの記事に目を通せば、一目瞭然。
日本も、自転車関連行政において、同等かそれ以上のレベルに進んでほしい、高みに進んで欲しいと、切に願い、望みます。
駐輪スペース、駐車車両に妨害されない自転車通行帯整備・・・線を引いて目立つ色で全体を着色し、自転車専用と明記したもの。できれば車道との間に保護柵付き、という基本的で先進国では在って当たり前のインフラを、まずしっかりと整備してもらいたい。当たり前のインフラなのですから、当たり前のことを実現してもらいたい。私はそう思います。
私も以前は自転車といえばママチャリしか知らない普通の日本人でした。ドイツで生活するまでは。
ドイツでの生活により自転車への考え方がガラリと変わりました。
ドイツでは自転車道がいたるところにあります。その自転車道で多くの人が自転車を楽しんでいます。彼らは生活の足としてではなくレジャーとして自転車を楽しんでおり(当然ママチャリはありません)、見ていてとても楽しそうなのですね。
それで自分も自転車に乗りたくなって、ちらしで見かけたスーパーに売っているMTBルック車を買いました(その当時それしか知らなかったもので)
最初はそれなりに楽しかったのですが、だんだん周りの人はもっと軽快に乗っているような気がしてきたのですね。
周りの人間に聞いてようやくスポーツバイクというものの存在を知り、自転車の世界を知りました。
日本へ帰国後にクロスバイクを購入し、ますます自転車の楽しみを知って、今ではロードバイクにハマり自転車通勤も始めました。
これは私の例ですが、この過程は多くの人にも当てはまると思います。ですのでまずは環境(自転車道)を整備することが自転車文化を健全なものにするために第一だと考えます。
ドイツと比べて日本の環境はとても劣悪です。人々の考え方もまるで違います。これはこのブログでも書かれていることで正にその通りだと同感しています。Peopleforbikes.org のような考えが日本にも広がることを願います。
スポーツタイプの自転車に乗っている人に質問ですが、スーパーの買い物とかで荷物を運ぶ必要がある時は、ママチャリ利用ですか?それとも自動車ですか?自転車≠ママチャリだとは思わないけど、ママチャリ≠安物と思われるのも嫌です。6歳過ぎると自転車の後ろに載せられないのは承知していますが、子どもが急病の時などの非常時を想定して、子載せ椅子は外さないでつけたままにしています。子載せ椅子部分に買い物したのを載せています。ママチャリ愛好者には、スポーツタイプの自転車は、荷物籠つけられなくて不便に見えてしまいます。
サイクルロード様、ママチャリ愛好者の為に、安全な軽快自転車の選び方を教えて下さい。私は購入価格3万円位で、車両重量20kg以上の自転車に乗っています。
自転車車道走行最大の障害は長年染み付いた歩道を走れば良いといった認識だと思います また所謂ママチャリの大部分も車道走行に耐えられるものか疑問が残ります。見かけはママチャリでも26吋以上のホイール・変速機・充分なブレーキを装備したきちんとした自転車メーカーのものであれば乗車時のポジション(サドルの低い場合が多い)を適正にすれば車道走行が可能でしょう。
よく自転車は気軽な乗り物だと言いますが、ママチャリであっても時速20キロ以上のスピード容易に出ます これだけのスピードが出れば自分も他者も容易に傷つけることができます。
自転車は便利で気軽なだけでなく危険もあると心がけて利用しなければならないと思います。
自転車メーカーには今後車道走行に適した新世代の実用車の開発をして欲しいですね。
日本でのサイクルロードレースの認知度の低さは残念ですね。ツール・ド・フランスはそれなりに知名度がありますがレースの本質を理解している人は小数でしょう。ロードレースは見るのに基本知識が必要ですがそれさえわかれば日本人気質にぴったりだと思うのですがどうでしょう?
佐藤さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
自転車が日本に入ってきたのは慶応か明治の頃と推定されていますが、当時は高価で数も少なく、一部の人の遊び用でしたし、一般市民には普及していませんでした。
クルマの前の乗り物と言えば、馬や人力車、馬車(乗り合い馬車や軌道のものも含む)であり、路面電車や蒸気機関車でした。
自転車が庶民に手が届く頃でも、自転車の価格は大学初任給を上回り、家財や耐久消費財といった位置づけだったといいます。道路も当時の自転車向きではありませんでした。市民の足としては、市街電車などが普通でした。
一方、戦後、自転車が普及しはじめた頃には、すでにクルマも普及しつつありました。
つまり、『昔、乗り物といえば自転車の時代』というのは存在していたとは言えず、適切な表現とは言えないと思います。
自転車だけが走っていた、のどかな時代をクルマが追いやったとおっしゃりたいのでしょうけれど、それは事実とは言えないのではないでしょうか。
クルマ憎しはよくわかるのですが、それと自転車の歴史を結び付けるのは、少し無理な部分があるように思います。
ラードファーラーさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
ドイツにいらしたのですか。海外の自転車事情を知り、体験すると、自転車の見方はガラリと変わりますね。
ヨーロッパで言うと、特にドイツやオランダやデンマークあたりでしょうか。最近はその他の国の一部都市でも、だいぶ自転車が増えてきているようです。
ドイツは、自転車道が発達しているので、自転車で旅行する人も多く、自転車向けのホテルがあったり、環境が整っているだけでなく、社会的にも認知されていますね。
私もヨーロッパでの実体験から彼我の違いを強く感じています。
おっしゃるとおり、環境が大事だと思いますが、その環境の整備が進まないのは、自転車に対する認識の違いがあるように思うのです。
Peopleforbikes.org のような考えが、日本にも広がってほしいと私も思いますが、その前提となる自転車への理解が足りないのがネックのような気がします。
世田谷花子さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
人によると思いますね。使い分けている人もいれば、すべてスポーツバイクで済ます人もいるでしょう。
最近は格安なものも増えていますが、ママチャリが全て安物だとは思っていません。荷物を運ぶには、そのままだったらママチャリに分があるのも間違いないでしょう。
自転車の選び方には、多くの視点があって、人によっても、使う場所によっても、また使い方によっても、何を選ぶべきか変わってきます。
この欄では到底書ききれませんし、世田谷花子さんの使い方や諸々の環境もわかりませんので、適切なアドバイスは出来ません。
今は、ブームで自転車を始める人向けの本や雑誌がたくさん出ていますので、そうしたものをご覧になるか、それらの知識を仕入れた上で、自転車の専門ショップでご相談されることをお勧めします。
kuma406さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
車道を走行する場合には、おっしゃるように充分な整備や適正なポジションは大切ですね。当然ルールをよく理解し、それを遵守することも当然です。
もちろん自転車が自分だけでなく、他人を容易に傷つけられうるという認識も重要でしょう。その意味では気軽に乗るべきではないと思います。
少しずつ、非ママチャリの自転車も出てきています。車道走行する人が増え、相対的にスピードも上がるでしょうし、それによって市場が拡大すれば、車道走行に適した新しい実用車、シティサイクルも出てくると思います。
私もそう思います。ロードレースの駆け引きや戦略性を知って観戦すれば、全くちがって見えてくるでしょう。
日本人はマラソンや駅伝好きの人も多いですし、ロードレースは、まさにハマる要素は充分だと思いますね。
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