
海外には、人々が自転車に楽しんで乗っている国が少なくありません。
前回、日本と海外とでの自転車に対する認識の違いということで、いくつか動画を取り上げました。自転車の上で暮らす男や、マウンテンバイクで自然の中を駆け巡るシーン、ストリート・トレイルの名人など、自転車の魅力が表われているものを中心にピックアップしました。
個人的なブックマークの中から選んだのですが、前回取り上げ切れなかった動画がまだまだたくさんあります。せっかくなので、今回は少し趣向を変えて選んだ動画を取り上げてみようと思います。あまり特別な人の動画ではなく、ごく一般的な人や街の様子などを中心にピックアップしてみます。
まずは自転車先進国として名高いオランダです。こうした動画を見ると日本との違いがよくわかります。自転車レーンや専用道、専用橋以外にも、いろいろ設備が充実し、自転車の交通としての地位が確立されています。日本と比べ、決して道幅に恵まれているわけではないのもわかります。
デンマークの首都コペンハーゲンでは人口の36%、5万人が毎日自転車に乗ります。前に子供を乗せる大きな箱がついたトライクなど、日本のものよりはるかに安定もして安全性が高そうなのがわかります。車道走行なら、こうした自転車も使えるでしょう。この動画にも見所はいろいろあります。
自転車都市とは見られていなかったパリでも、世界的に注目された自転車シェアシステム、“Velib”が導入されたことで、運用が始まって10ヶ月という短い間に、都市の景色が大きく変わったと言います。パリジャンやパリジェンヌも、もはや当たり前のように自転車を使っています。
オランダは世界有数の自転車先進国です。国土に低地が多く、おおむね平坦なこともあって、全土に自転車レーンや自転車道が張り巡らされ、広く活用されています。こちらは貴重な記録ですが、1950年代頃から、すでに自転車大国だったことがわかります。
国土が平坦でないから自転車に向かないとは限りません。日本でもマウンテンバイクでクロスカントリーやダウンヒル、ロードでもヒルクライムなどを楽しむ人がいます。こちらは、なんとロードバイクでトライアルです。先入観を取り払えば、まだいろいろな楽しみ方があるに違いありません。
自転車そのものだけでななく、何かと組み合わせてもいいでしょう。例えば自転車に乗ってジャズを演奏というのも楽しそうです。自転車に乗りながらではなく、こぎ手と演奏者が別というところも含め、日本では見られないパレードでしょう。ちょっと日本に無い発想と言えるかも知れません。
こちらは、ちょっと趣旨から外れますが、ユニークなので載せました。街中にとめた自転車が、どうなっていくかを長期にわたって定点観察し、365日にわたって撮影したものを1本の動画にしています。しばらくは健在ですが、何か部品が盗まれた途端、崩壊していく様子がよくわかります。
同じニューヨークですが、これも面白い動画です。ハイファイブと言うのは、日本で言うハイタッチのことです。思わず笑みがこぼれた人も多いのではないでしょうか。私も銀座あたりで、やってみたくなります(笑)。実際やるには勇気がいりそうですが、人々が思わず笑顔になるところがいいと思います。
ちなみに、こちらは自転車とは関係ない日本の動画です。ニューヨークの動画のように、こちらから勝手にハイファイブするのではなく、ハイタッチを呼びかけているわけですが、シャイな人が多い日本人も、意外に応じてくれるようです。道行く人のスマイルを引き出しています。
もう一つ、デンマークの動画を。最初から出てくるスーツを着た人、友達と再会を喜んで抱き合っているのかと思えば、そうではありません。フリー・ハグズ(フリーハグ)と呼ばれる、街頭で見知らぬ人とハグ (抱擁) をするという活動をしているのです。
このフリーハグズ、アメリカのジェイソン・ハンター(Jason Hunter)さんという人が、2001年頃に始めた活動で、その後インターネットを通じて世界に広まったものと言われています。街角でお互い知らない人同士でハグをすることで、愛や平和、ぬくもり、幸せ、癒し、連帯感など、素晴らしい何かを生み出そうという活動なのです。

普通は商店街など、人通りの多い街頭に立って、歩行者同士でハグするわけですが、この人は自転車レーンを通る、自転車に乗っている人とハグしています。みな笑顔で応じているのが印象的です。見知らぬ者同士ですが、同じ街の自転車乗り同士です。少なくとも笑顔が生み出されています。
日本では、自転車が歩道を我が物顔で走り回り、歩行者は眉をひそめています。自転車の走行空間が乏しい車道でも、クルマのドライバーがルールを無視する自転車に苦虫を噛み潰したような顔をしています。車道でも歩道でも事故やトラブル、時には怒鳴りあうような状況があります。
一方、自転車レーンのあるような街では、クルマと自転車と歩行者の間に秩序があり、日本よりストレスが少なく見えます。当然ながら、車両である自転車が歩道を通るという、とんでもない状態がないだけでも、日本よりはるかに優れているのは間違いありません。
もちろん、自転車レーンが出来て車道走行になったら、日本でも道路上で愛やぬくもりが生まれる、などと言うつもりはありません。ただ、少なくとも、もっと自転車に乗るのが快適で楽しくなり、歩行者も安心して歩けるようになり、人々にもっと笑顔が生まれやすくなるだろうと思うのです。
ここのところ痛ましい事件が相次いでいますね。こういう事件がおきてしまうのが悲しいところです。
Posted by cycleroad at 23:30│
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日本と欧州諸国との自転車文化の違いを短い言葉や文章で表現することはとても難しことですが、今回取り上げていただいた動画は実に雄弁にそれらを表現していると思いました。ヨーロッパではずいぶん昔から自転車が人々の生活と深く結びついていたのですね。cycleroad様がおっしゃるとおり、日本には、低品質のママチャリが市場を席巻している状況が自転車本来の可能性をスポイルしている、という側面があることを認めざるを得ません。私も非常に残念な状況だと強く思っています。
明日、金沢で自転車ネットワーク推進のための勉強会が開催されます。国土交通省、石川県、金沢市の都市計画・交通行政に関わる行政官、警察、大学教授、高校の先生、自転車関連NPO、道路建設関係者、自転車に乗る一般市民(私)らが参加して主に金沢の自転車走行空間の整備について話し合います。昨年10月25日に警察庁が自転車の車道走行に政策を転換したというのに金沢では3月に歩道上に自転車レーンを作ります。(しかも2kmに3億円もかけて=北國新聞報)。交通事故を減らしたいという警察庁の強い思いを道路管理者は何故無視するのかしっかり質してきたいと思います。