しかし、さまざまな困難にも直面しています。数々の問題があると思いますが、津波への対策が影を落としている部分もあります。三陸地方はたびたび津波の被害に襲われてきた地域であり、この教訓を生かして高台移転を進めようとしていることも復興計画を複雑なものにしています。
一刻も早く商売を再開しようにも制約があったり、元の土地で住宅を再建しようにも自治体の認可がおりなかったりするようです。一方で集団での高台移転に、必ずしも住民の合意が得られなかったり、国の助成の要件や土地の買い取り価格などの課題も多いと聞きます。
復興の計画については、それぞれいろいろな事情もあり、部外者が口を出すようなことではないでしょう。ボランティアや義援金などによる被災者支援とは違って、当事者でない私たちとしては、せいぜい納税を通して復興予算を支え、少しでも早く問題が解決し、復興が加速するよう祈るほかありません。
ところで、各地域の復興計画では、高台移転などを進める一方、津波の被害を受けた地域については、居住地や商業地としての利用を制限することになるケースが多いようです。農地や産業用に利用する部分以外は公有地化し、防潮林や公園、防災緑地などとして、津波からの緩衝地帯とする考えが一般的です。
被災地の多くでは背後に山が迫り、ただでさえ平地の少ない地形が多くなっています。貴重な平地を防潮林や公園、防災緑地としなければならないのは、無駄に思えて残念な思いもあるに違いありません。しかし、津波の教訓を活かし、将来の人的被害を減らすためには必要なことであり、仕方がない措置と言えるでしょう。
個人的に思うのですが、この防潮林や公園、防災緑地などの緩衝地帯を、自転車公園として整備してはどうでしょうか。津波に備えて緑地にするしかない場所を、ふだんは市民が自転車に乗って楽しめる公園にするわけです。もちろん普通の公園でもいいわけですが、自転車の公園に向いていると思うのです。
今回の津波の被害地域を考え、また津波の緩衝地帯とする関係上、海岸線に平行して相当細長い形状になると思われます。徒歩で散策する公園部分があってもいいですが、何十キロにもわたる長い緑地帯ならば、徒歩で散策できる範囲は限られます。自転車でサイクリング出来るような公園にしてはどうでしょうか。
防潮林や緑地のままでいいのですが、せっかくならば、その一部にサイクリングロードを設置するなどして、自転車で楽しめるようにするわけです。これは海岸線に沿った交通手段としての機能も期待できます。鉄道や道路とは別に、それを補完する交通手段となりえます。
もし、各市町村の防災緑地に自転車道を整備し、それぞれを接続していくならば、東北地方を縦断するサイクリングロードとして、魅力的な観光資源になる可能性も秘めています。また、ふだん公共交通ではなく、クルマで移動することの多い地域の市民には運動の機会を提供し、その健康増進にも寄与するはずです。
クルマが通ることはないので、電動アシスト自転車などを利用すれば、免許を持たない高齢者にとっても安全に移動できる交通手段として機能する可能性があります。市民の憩いの場としての役割や、沿岸の地域をつなぎ、地域同士の交流を促進する効果も見込めます。
もちろん、防潮林や公園、防災緑地などにする部分は、計画上での優先順位も低く、復興の重要な部分ではないでしょう。そんな計画は後回し、どうでもいいと言われるかも知れません。当然そうだと思いますし、まずは居住地や街をどうするかが重要なのは間違いありません。
ただ、サイクリングロードを通すくらいなら、たいして費用もかかりませんし、計画しておいても損はないと思います。防潮林や公園、防災緑地としてしか使えない部分を、自転車公園として整備することを打ち出せば、仕方ないから緩衝地帯にするのと比べて前向きなプラン、楽しみな部分になるかも知れません。
画像は、
JDSという建築設計グループが中国・上海近郊の崇明というところでの開発を念頭に、コンペに応募した設計のパース図として公開されているものです。建物は、自転車博物館や資料館、多目的ホールなどになっています。“
Bike City”と題されたプランです。
コンセプトは違いますが、崇明も海岸沿いの地域であり、自転車の公園という点では共通する部分があります。普通の公園は、別途サイクリングコースが設けられていることもありますが、園内は自転車の乗り入れが禁止されているところも少なくありません。しかし、この自転車公園内は基本的に自転車で移動します。
なんと建物の上まで、そのまま自転車で上れるようになっています。建物部分まで含めて、自転車で散策する公園という考え方なのです。日本の三陸地方などとは地形が違いますが、それぞれの地形に合わせ、自然の中を基本的に自転車で移動する長細い公園として整備するわけです。
画像の建物、自転車博物館などは不要としても、場合によっては、津波からの避難タワーを自転車公園内に設けることも考えられるでしょう。そのまま自転車で上れる必要はありませんが、人数が多く集まる可能性のある場所ならば、ある程度の広さ、収容人数は必要となります。
観光客向け、移動に使う人向けにレンタサイクルを用意することも当然考えられます。ダートコースがあってもいいですし、ロードレースなどの大会を誘致することも考えられます。そして、本当にイザという時には、自転車を内陸部、高台への避難に使えます。クルマとは違い渋滞することもありません。
被災地では、いまなお多くの人が避難生活を続けており、県外や遠方に避難した人も多く、どれだけ住民が戻ってくるか心配されている地域もあります。そんな中で、自転車公園などというノー天気な構想は、不躾けで不謹慎と関係者に怒られてしまうかも知れません。
それどころではないと言われればそれまでです。当然、地域ごとの事情や考えもあるでしょうし、もっと違ったプランがあるかも知れません。もちろん、どうしても必要と言う話ではありません。ただ、前述のように、緑地や防潮林にしか使えない土地を、どうせならば少しでも有効に、多目的に使えればと思うだけです。
高台移転と言うのは簡単ですが、実現には大きな困難が伴うと思います。遅々として計画が進まないことに苛立っている人もあるに違いありません。しかし、せっかくの機会という面があるのも確かです。復興計画には、将来の津波の被害を軽減するだけでなく、他にも多くの狙いがこめられていると思います。
例えば津波前からの過疎化への対策、コンパクトシティとして再生させ、社会インフラやその維持コストの低減も図れる可能性があります。集落を集約することで利便性が高まったり、人口が集中することで商業施設の採算性が向上したり、公共交通の充実などの恩恵が受けられるかも知れません。
当事者の方々には苦難の道だと思います。しかし、同時に新しく街をデザインし、地域の課題を克服する機会でもあります。ぜひとも復興を成し遂げ、そればかりか、新しい地域の形として21世紀の日本を先取りするようなモデルを作り上げてもらうことを期待したいと思います。
相変わらず地震が頻発しています。青森沖の地震では津波注意報も出ました。千葉県東方沖の地震は震度5強を記録し、被害も出たようです。1年経っても、まだまだ心配ですね。
多摩川沿いのサイクリングロードで行われたウォーキング大会19キロに参加した事があります。息子にマナー守らせて左側をずっと歩かせていましたが、時々右側により、サイクリストとぶつかりそうになりました。サイクルロード様の過去日記に「どうしても二人で乗りたい人」がありました。それと似ていて、どうしても二人仲良く手を繋いで歩きたい人もいます。知的障害だったり、目が悪かったり、愛し合っていたりです。
もし、サイクリングロードを設けるのなら、「思い切り自転車」「のんびり自転車」「思い切り速く走る」「ゆっく歩く」用の4コースに分けて作って欲しいです。
「思い切り自転車」はある程度の自転車運転技量がある許可制にして、「ゆっく自転車」は車椅子付き自転車や4輪自転車とかの変形自転車走行可能にしたら面白いと思います。そしてサイクリング大会やマラソン大会やウォーキング大会もあれば、景気快復するでしょう。