テレビなどでも大きく取り上げられていますが、東京都防災会議が「首都直下地震による東京の被害想定」を新たに発表しました。ある程度予測されたことではありますが、これまで考えられていたより、大きな被害が予想されています。
首都地震、死者9700人…全壊・焼失30万棟
東京都は18日、首都直下で起きるとされる東京湾北部地震(マグニチュード=M=7・3)で、都内約30万棟の建物が全壊・焼失し、約9700人が死亡するとの新たな被害想定を発表した。
都内の最大予測震度を6強から7に上方修正した文部科学省研究チームの分析を基に推計した結果、死者数は前回想定(2006年)の2倍近くになった。帰宅困難者も約70万人増えて517万人に上るとした。
都は今回の被害想定を踏まえ、9月をめどに新たな地域防災計画を策定する。
都防災会議の地震部会(部会長=平田直なおし・東大地震研究所教授)が東日本大震災の発生を受け、昨年9月から被害想定を見直していた。これまで想定対象にしていた東京湾北部地震と多摩直下地震(M7・3)に加え、津波を引き起こす恐れがある海溝型の関東地震(M8・2)と活断層で発生する立川断層帯地震(M7・4)の被害も分析した。(2012年4月19日 読売新聞)
この数字は東京都だけですから、首都圏全体ではさらに大きな数字になると思われます。これまで想定外とされていたM9規模の地震が日本でも起きた以上、想定が上方修正されるのも当然でしょう。被害想定が変わったことで、改めて防災対策の見直しが求められることになります。
東日本大震災から日も浅く、いまだに余震が続く中、気になる人は多いと思います。地震の多発期に入ったとも言われており、切迫感もあります。3・11の記憶も新しいこの時期に公表されたことは、人々の注目を集め、防災・減災の意識を高めるには効果的なタイミングと言えるでしょう。
震度7という揺れが想定される地域もあります。建物の倒壊が心配されます。木造住宅の密集地域では、大規模な火災の恐れもあります。また今回、東京湾でも想定される津波の高さが見直され、津波による被害や、浸水などによる地下街や地下鉄の危険も指摘されています。
長周期地震動による高層ビルの被害や、大規模な液状化、帰宅難民の発生、石油コンビナートの火災など、さまざまな被害が想定されています。火災旋風が発生すると被害がさらに拡大すると言いますし、重油の流出と津波によって、文字通りの火の海が都市部を襲う恐れも指摘されています。
震源が東京湾北部で、もし大規模な津波が発生したら、到達までに5分とかからないと言います。水門の閉鎖は間に合いません。高さ50センチ程度でも人は流され、地下街などへの浸水も防げません。都会は高い建物が多く、避難場所には事欠かない気がしますが、津波による大きな被害の可能性は否定できません。
首都高の老朽化が心配される中、阪神淡路大震災で起きたような高架道路の崩落も起きるかも知れません。過密な東京の鉄道網での事故も免れないと思われます。考え出すとキリがありませんが、これまで考えていたような地震に対する備えでは、対処できないことも多いに違いありません。
いくらでも危険は想定されますが、例えば、エレベーターに閉じ込められるようなことも考えられます。大規模な首都直下地震だった場合、救援の手が何日間も届かない可能性は充分に考えられます。非常通報装置や携帯電話もつながらない中、水や食料もなしに生き延びられるでしょうか。
映画だと、エレベーターの天井あたりから脱出することになるでしょう。しかし実際には、外側からしか開けられないなど脱出不可能な構造のものが大半だそうです。トイレなどの心配もあります。すし詰め状態で人が乗っているかも知れません。かなり過酷な状況になることは容易に想像できます。
エレベーター内に、非常用食料や簡易トイレなどを入れた箱を置くなどの対策をとっているところも出てきていますが、まだまだ少ないと思います。地震の発生と同時に停電したとしても、最寄階に止まって扉を開くまでは停止しないようなシステムが必要です。それを義務付けるなど対策すべきことはたくさんあると思います。
水や食料の備蓄、家具の固定、地域での初期消火など防災体制の確立、避難場所の確認、家族との安否の確認方法、避難時にどうしても必要な身の回りの品の持ち出し袋の準備といった備えも大切です。しかし、それら従来の備えだけで充分なのか不安もあります。
3日分ほど自前で水や食料が確保できれば、あとは救援の手が差し伸べられると言われています。しかし、首都圏で大規模な地震災害が起きた時、数百万人単位の避難民が予想されます。道路やライフラインが寸断される中、救援の手が足りず、行き届かない状況も充分考えられます。
避難所にすら入れない人が出てくる可能性も指摘されています。首都圏のうち、東京都市圏だけでも3千数百万の人口があるわけですから、避難所に入りきれないほどの人が押し寄せても不思議ではありません。一説には、その規模は160万人以上とも言われます。
3・11を境に、ものの見方や考え方が変わったという人は少なくありません。津波にも耐えるという潜水艇のようなシェルター、震災前だったら、そうそう売れるものではないでしょう。しかし、今では生産が追いつかないほど、納品までに何ヶ月待ちというような人気があるそうです。
米ソの冷戦時代ならばいざ知らず、核シェルターが再び注目されるとも思いませんでした。核ミサイルではありませんでしたが、原子力発電所の事故や核物質の拡散という災害が現実になった以上、何らかの理由で緊急の避難が難しい人は、いざという時の原発事故への備えが必要になるかも知れません。
ウェブ上で目にするのいろいろなアイディアにしても、3・11前なら、単にユニークな発想、面白いアイディアで済まされたようなものの見方も変わってきます。以前ならば笑えたアイディアが、もしかしたら、案外現実的に見えてくることもあるのではないでしょうか。
こちらは、“
WALKING HOUSE”と名づけられた、歩く家です。突拍子も無いアイディアにも見えますが、洪水などの災害を想定しています。太陽電池などを動力に、ゆっくりですが移動可能です。雨水を集め、太陽光でお湯を沸かし、ライフラインが断たれても最大4人が完全に自給自足できるという設計です。
地震や津波、火災といった脅威から、いかに身を守るかという課題もありますが、その後の避難生活にも多くの懸念があることが、明らかになっています。首都地震の場合、大量の避難者で、避難所にすら入れないような事態が起こりうるなら、なおさらです。
災害からのサバイバルに成功したとしても、その後の避難生活が過酷な環境となることもわかってきました。避難生活が長引くにつれ、プライバシーの問題もあります。こちらは災害用ではありませんが、簡単に組み立てられる個室というのも、考えておきたい問題です。
下の“
Instant Housing”と名づけられたアイディア、例えば自転車で牽引するトレイラーというのも、災害用の備えとして使える可能性があります。避難所に入れず、寒空で夜を過さなければならないとしたら、簡単なテントによる寝床でも貴重です。足を伸ばせることも重要になるでしょう。
自転車でキャンプに行く人、天体観測やバードウォッチングに行く人など、自転車の趣味と、災害への備えを兼ねられる部分があるかも知れません。トレイラーを牽引することで、趣味の範囲を広げながら、イザという時にも備えるような方法が追求できないとも限りません。
商品としても、海外では自転車に連結するトレイラー型のテントが売られています。
いずれにせよ、どんな状況に対して備えておくべきか、イザという時、何が必要になるか、ふだんから考えておく必要があるでしょう。言い古された言葉ですが、備えあれば憂いなしなのは間違いありません。貴重な教訓を生かしながら、少しでも有効な地震への備えを考えておきたいものです。
以前から指摘されていましたが、太陽の極域の変動で小氷期が訪れ、地球が寒冷化する恐れが報じられています。温暖化が一転、寒冷化とは皮肉なものですね。