
近頃は、持ち運んで使うモバイル機器が増えています。
携帯電話やスマートフォン、携帯音楽プレーヤーに携帯ゲーム機などもあります。ノートパソコンも、ネットブックやウルトラブックなど、携帯しやすいものが増えています。デジタルカメラやタブレット端末、電子書籍端末など、さまざまな機器を持ち歩いているという人も多いと思います。

半導体技術の進歩のおかげで、いろいろと便利になったのは間違いありません。おかげで、場合によっては分厚いマニュアルや辞書など、重いものを持ち歩かなくて済むようになりました。一方で、携帯用の電子機器がカバンの中の多くのスペースを占めるようになったという人も多いに違いありません。
外出先でも、モバイル機器が使えれば、なにかと便利です。問題は、それらが全てバッテリーで駆動する電子機器だという点ではないでしょうか。ハードに使うと電池切れの心配が出てくるものもあります。おかげで予備のバッテリーや、充電器まで持ち歩くハメになったりします。
リチウムイオン電池などの進歩で、バッテリーの持ちも良くなっているのですが、電子機器の性能の向上もめざましく、消費電力が大きくなって、より多くの電気容量が必要になっています。いったん便利になってしまうと、イザ電池切れで使えなくなった時に、とても不便に感じるのも事実です。
外出先でバッテリーが切れ、どこかで充電が出来ないものかと思うこともあるはずです。特にノートパソコンのような比較的電力の大きい機器の場合は、困ることも多いのではないでしょうか。コンセントが使えるカフェなどもありますが、どこでも見つかるわけではありません。
そんな不便を解消する設備を製品化した企業がベルキーにあります。公共の場所などで電源を供給します。ただし、電気は自分で発電してくれというユニークな製品です。その名も“
WeBike”、ペダルをこいで自分で発電した電力を使うことが出来るという、いわば人力発電スタンドです。
たまにイベントなどで、自転車型のペダルをこぐ機械を使って、人の力で発電した電力でイルミネーションを光らせたり、何かを動かしたりすることがあります。人力の発電機と言うと、誰もが自転車型のものを思い浮かべるのではないでしょうか。
その意味では、わかりやすい機械です。シートにまたがり、ペダルをこげばいいと、ひと目でわかります。でも、そのわかりやすい機械を、常設する装置として製品化したという話は、あまり聞いた事がありません。誰でも考えつくようなアイディアですが、それを実際に売り出したというところがユニークではないでしょうか。

この“WeBike”、ターミナル駅やショッピングセンターの通路脇とか、空港の待合ロビー、カフェの軒先など、公共の施設や街中の、人通りの多いところに設置することを想定しています。休憩所などのベンチの代わりに設置してもいいでしょう。3台を円卓状に丸くならべて設置したり、横に並べて置くことも出来ます。
ヨーロッパ仕様ですので、一席につき230ボルトで30ワット程度の電気を生み出すことができるようになっています。必死にこぐ必要はありません。最高速の3分の1程度のスピードでサイクリングするくらいの、ゆったりとしたペースで、30ワット程度の発電ができると言います。
前に小さなテーブルがついていますので、ちょっとした時間を使ってパソコンで調べものをしたり、自分の機器の充電をしたり出来ます。設置する施設によっては、共用のノートパソコンなどを設置しておき、自由に発電しながら使ってもらうサービスも提供出来るでしょう。

自転車のようなサドルとペダルだと、体格によって調整が必要になりますが、前後に長いシートなので、足の長さによって座る位置を変えれば、無理なくペダリング出来ます。自転車で言えばトップチューブに当たる部分がないので、またぎやすいデザインになっています。
この“WeBike”が駅や地下街などの公共の場所にあったら、コーヒーを飲んだり、ファーストフードを食べたりする時間を利用して、手軽に充電したり、発電しつつ機器を使うことが出来ます。ちょっと座って調べものをしたい時でも、バッテリーを消耗しないですみます。
考えようによっては、軽い運動をすることが出来るわけです。トレーニングジムなどへ出かけ、同じようにエアロバイクをこぐことを考えれば、手軽に運動しつつ、電子機器を使うことが出来て一石二鳥です。まさに、忙しい現代人好みのサービスと言えるかも知れません。

EU議会に出された、社会的な健康リスクのレポートは、心臓病や糖尿病、その他多くの健康上の問題が肥満とつながっているのは明らかであり、その背景にある働く人の運動不足が大きな問題であると指摘しています。この“WeBike”は、充電の必要に迫られて運動が出来るので、社会的にも役に立つというわけです。
さらに注目すべきデータがあります。オランダの研究組織TNOによれば、最大脚力の3分の1程度のゆるやかなペダリングに、仕事の能率を上げる効果が認められるそうです。ペダルをこがない場合と比べ、例えば読む速度が30%アップするという結果が出ています。ペダルをこぐことで能率まで上がるわけです。
設置する側にとっても電気料金がかからないのはメリットです。ペダルをこぎ続けなくては使えないので、長時間占有されることもなさそうです。電気配線の工事も必要ないので、公共の場所で、電源がひかれていないような場所でも設置可能です。開発した会社はリースでの供給も検討しています。
省エネでエコですし、電気が供給されなくても利用可能ということで、災害の際など、意外に役立つインフラとなる可能性があります。よく、手回しで充電する災害用の充電器がありますが、出力は小さくなります。やはり人力ならば、パワー的にも持久力的にも、足の力を使うのが一番です。
この“WeBike”、ありそうでなかった製品と言えるかも知れません。人力発電スタンドという単純なアイディアですが、なかなか優れたプロダクツではないでしょうか。街中での電源の得やすさは、国によって事情がだいぶ違うようなので一概には言えませんが、これは面白い製品だと思います。

最新の電子機器を使うのに、わざわざペダルをこいで発電するというスタイルが、どことなく滑稽な感じがしないでもありません。人力を電力に変換するというのは、エネルギー的に効率がよいとは言えず、うがった見方をすれば、現代文明への皮肉に見えなくもありません。
しかし、情報社会としての現代人の生活の中に、電子機器が必要不可欠になっているのも事実です。モバイル機器の場合、一番身近な動力源として人力を意識するのは一つの考え方と言えるでしょう。むしろ、充電池より効率の優れた脂肪というエネルギーの貯蔵庫をうまく使いこなすという発想が必要なのかも知れません。
ドイツで押収されたアルカイダの暗号文書に、大規模テロ計画があったというのが不気味です。依然としてテロの危険が続いているということでしょうね。