理念も良心もプライドもない
消費税増税法案が採決されようとしています。
法人税などとは違い、消費税増税は消費を減らし、景気を悪化させる方向に働きます。所得の低い人のほうが相対的に負担が重くなる逆進性もあります。価格に転嫁できない中小零細業者には厳しく、日本の産業を支える中小企業が疲弊するなどの指摘もあります。世論調査では消費税増税反対が賛成を上回るようです。
しかし、増税はやむをえないと考えている人も多いのではないでしょうか。日本の財政赤字は深刻であり、高齢化が進む中、社会保障のコストもかさむ一方です。いつまでも増税反対と言っているだけでは、ユーロ危機のようになりかねないと考える人もあるでしょう。
ヨーロッパの国々などに比べれば、まだ税率は5%と低いですし、財政再建のためならば、もう少し増税するのも、やむをえないと考えるのは自然です。でも、この消費税増税が日本の財政健全化に寄与せず、将来の危機の回避につながらないとしたら問題ではないでしょうか。
2012年度の予算は90兆、震災の復興対策費や基礎年金の負担分などを含めれば、実質的な歳出規模は97兆円に近い過去最大規模です。リーマンショックの前までは82兆程度でしたから、わずか4年ほどの間に15兆も増えています。この間、日本のGDPは拡大していないのに歳出だけが増える一方です。
政府は、高齢化などで社会保障費が毎年1兆円膨らんでいるとしています。その4兆をひいても11兆円ほどの歳出が増えていることになります。整備新幹線を全て着工したり、枝野経産大臣が環境ではなく経済対策と公言したエコカー減税を継続するなど、この状況下でのバラ撒き、大盤振る舞いの結果ということになります。
消費税を5%上げると、約13兆円の増収と言われています。つまり消費税を増税しても、このバラ撒きと社会保障の自然増の分にも足りないくらいなのです。財政健全化や社会保障の充実には全く回りません。野田首相は、景気対策としてお金をばら撒きましたので、その分を増税させて下さいと言うべきであり、それが実態でしょう。
さらに言うならば、民主党がマニフェストで17兆円規模の無駄の削減をすると言ったものの、2兆円ほどしか減らせませんでした。いざ政権をとってみたら、実際には削減に踏み込めなかったので、その分増税させて下さいと正直に言わなくてはならないはずです。
それでは到底国民に納得してもらえないので、社会保障と税の一体改革と名づけ、さも社会保障の充実を図るかのようなカモフラージュをしています。最低保障年金の創設も後期高齢者医療制度の廃止も、いわゆる三党合意の中で棚上げされ、実現の見通しが立たないのは周知の通りです。
そもそも財政を健全化するには、膨らむ社会保障費に切り込まなければなりません。政策予算の無駄の削減も必要ですが、歳出規模が圧倒的に大きい社会保障費を削らなければ、歳入の半分を赤字国債や建設国債でまかなうという異常な状態から脱却できないのは明らかです。
ちなみに、社会保障費は26兆4千億円、国債費が22兆円、地方交付税交付金が16兆6千億円、文教・科学振興費が5兆4千億円、防衛費が4兆7千億円、公共事業費が4兆6千億円などとなっています。官が身を切るのも必要ですが、歳出の規模が違います。5%増税しても、歳出を削減しない限り健全化は無理です。
社会保障費を減らすという、有権者が反発する部分には切り込まずに、消費税だけ増税してもバラ撒きの帳尻あわせにしかなりません。野田首相の言う財政の健全化や社会保障の安定など絵空事です。バラ撒きを続け、歳入が増えなくても歳出が膨らむ一方の構造では、いつまで経っても健全化には向かいません。
もちろん、社会保障費に切り込むのは簡単ではないと思います。ただ、野田首相は社会保障の安定と財政の健全化のために消費税を使うと言っています。バラ撒き予算を見直さずに、膨ませたままでは、結果としてバラ撒きが補填されるだけで、国民に対してウソをつくことになります。
野田総理は政治生命をかけると言っていますが、せっかくの増税余地を、こんな風に使わせて良いのでしょうか。もちろん景気への配慮は必要ですが、税金の有効な使い道を議論すべきです。それをせずに、社会保障と税の一体改革と名づけ、ウソをついて増税するのは、国民を愚弄するものではないでしょうか。
民主党がマニフェストで掲げたことの多くは実現していません。にも関わらず、マニフェストに書かれていない消費税増税に政治生命をかけるという野田総理、一体何を考えているのでしょう。原発再稼動の記者会見もそうでした。立派な弁舌のように聞こえますが、言っていることは滅茶苦茶です。
マニフェスト、イギリスで始まりました。
ルールがあるんです。
書いてあることは命懸けで実行する。
書いてないことはやらないんです。
それがルールです。
書いてないことを平気でやる。
これっておかしいと思いませんか。
書いてあったことは四年間何にもやらないで、
書いてないことは平気でやる。
それはマニフェストを語る資格がないと、
いうふうにぜひみなさん思っていただきたいと思います。
まさに自分のことです。これだけ公言していたのに、よく平気でいられるものだと感心します。国民の審判を受けた総理ではありません。言っていることが180度変わったならマニフェストを変更し、総選挙を経てから消費税増税すべきです。丁寧に党内手続きを踏んだなんて言い訳以前に、国民に対する手続き違反です。
党が分裂含みになるのも当然でしょう。小沢元代表は必ずしも支持できないが、今回は小沢さんの言うのが正論だと言う人が多いというのも頷けます。確かに、このまま消費税を増税するのは国民に対する裏切りであり、背信行為であるというのは、選挙の時にも野田首相が演説していたはずです。
民主党に政権交代してもうすぐ3年経ちます。自民党政治よりマシだと多くの人が思ったわけで、二大政党になって政権交代が実現するようになれば、政治がもっとよくなるだろうと期待した人も多かったはずです。しかし、民主党は、この3年間で一体何をしたのでしょう。何か期待に応えたことがあったでしょうか。
普天間問題にしても、震災復興や原発事故への対応、原発再稼動にしても、国民の期待を大きく裏切り、その政権担当能力の無さを天下にさらしただけだったようにも思います。消費税増税自体は間違っていないかも知れませんが、一方でバラ撒きを膨らませ、社会保障に回らないのにウソをついての増税は問題です。
雄弁で説得力があるように聞こえますが、言っていることは裏切りとごまかし、ウソと矛盾ばかりです。何より、マニフェスト違反を、自らあれほど非難していた自身が平気でやること自体、信じられません。人格を疑います。こんな信義にもとる政治家を首相にしておくべきでないことは、支持率が表しています。
小選挙区制を基本にした今の選挙制度では、実質的に候補者ではなく政党で選ぶしかありません。つまり、マニフェストを見て投票をするわけで、それをこうも簡単に反古にされては、民主主義の根幹が揺らぎます。こんな嘘つき政党では、誰も次に投票出来ないでしょう。
消費税増税が必要ということは理解しますが、増税しないと言っておいて、選挙で勝って途端、平気で増税するのでは民主主義になりません。所要費税増税は待ったなしだと、脅しのような文句を並べて押し切るのではなく、これだけマニフェストと違うことをやるなら、やはり解散し、マニフェストを変えて望むべきでしょう。
解散を先延ばしにしたいのなら、無駄の削減などマニフェストに掲げたことをやるべきです。いみじくも野田氏本人が訴えていたこと、ご自身の言うシロアリ退治をして、天下り法人をなくして、天下りをなくす、先にやるべきことを必死にやってから増税すればいいのに、なぜそれをしないのでしょうか。
日本の深刻な財政赤字や、高齢化によって毎年1兆円も増える社会保障、またそうした将来不安が景気の足かせとなっていることを考えれば、消費税増税が不要だとは言いません。しかし、野田首相のように国民にウソをついて増税するだけで、無駄使いとシロアリのたかる構造は放置というのでは問題は解決しません。
この人は政策より政局を優先し、財政健全化や社会保障の安定なんて口先だけです。自ら批判していたくせにマニフェストを平気で破り、民主主義の根幹を崩壊させ、ただでさえ失墜している政治への信頼をさらに貶め、政治の混迷をより深めています。野田首相の弁舌には騙されないようにしないといけないと思います。
自転車と直接関係ないのですが、重要で身近な話題なので取り上げてみました。私の周りでも、この増税で財政が良くなると騙されている人は少なくないようです。
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Posted by cycleroad at 23:30│
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自転車と直接関係ないとのことですが社会保障費の大幅削減
と言うテーマでは大いに関係してくると思います。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120624/k10013069691000.html
長寿の秘訣を探る研究を日本、フランス、デンマーク、スウェーデン、そしてスイスで実施するとのことですが日本以外の4カ国に共通しているのは健康促進に自転車、特にスポーツ自転車を積極的に
活用していることではないでしょうか?サイクルロードさんが過去に
100歳のフランスの自転車乗りの方を取り上げましたが、これら年老いたサイクリストが安全に公道を走れる環境を作ることが健康寿命を
伸ばす最善策の一つと信じます。
http://blog.cycleroad.com/archives/51014724.html
同じく過去のサイクルロードさんの記事にオランダでは国会議員や市長、王室の方々、そして首相に至るまで自転車通勤を取り入れてるとのこと。良く法律上の嫌疑が掛って入院する議員がいますが常日頃から健康に留意していればそんなことにはなりませんよね?
エゴカー増やすより自転車に易しい環境を整えた方がいいのではないでしょうか?
アメリカのブッシュ前大統領もMTB好きですし、オバマ大統領も国民に自転車の活用を促進しています。日本こそが世界の潮流の先頭を
走って欲しいです。これこそが経済活性化の鍵です。
今の日本の状態って個人に例えるとカードローンしまくって贅沢してる人のようなもんですよね。
不景気で給料が下がって返せるあても無いのに借金を重ねていくバカ。
贅沢していた期間が長すぎて、今置かれている環境が身の丈に合っていない事に気が付いていないバカ。
そう考えると答えは意外とシンプルに出てきそうなもんですけどね。
破産するか豊さを捨てて死に物狂いで返済するか、又は踏み倒すか?
それ以外にあり得ませんよ。
もう無駄を省いてなんて言ってられる時期は過ぎてる様に思います。
今まで先輩方が借金しまくって遊んだツケを泣きながら返すしかありませんよ。
結局、日本の豊かさは幻だったんですね。
敗戦国としての地獄がやっと始まるだけですよ。
私はかつて返す当てのない借金に溺れていた人間でした。最後のほうは収入のほとんどがローン返済消費者金融への支払いに消え生活費が足りなくなる、それこそ三度の食事がままならない、どこかで資金を調達しなければならない、負のサイクルロード、それでもどこからともなく貸してくれる人が現れるから不思議なものです。皮肉にも自転車に乗り始めたのは通勤用の車が維持できなかったためでした。自転車をこぎ続けるうち次第に体に次に心に変化が起こり始めました。変化といってもそれは実生活の具体的な改善ではなく、負のサイクルに対する気付きというべきものです。借りるあてはありましたが、もはや、返すあてはありませんでした。破産手続きに入り裁判所にも出頭、破産申請者のあまりの多さに驚きました。
法に基づき私の負債は免除されましたが、借金をチャラにしたモラルの問題は最後までついてまわるのです。国が破綻するというのはどういうことなのでしょうか。個人の破綻は法律の後ろ盾があるからいいですが、国の破綻とは具体的に何を意味するのか、私にはそのイメージが描けません。ただひとつわかるのは今日本国の置かれている状況また私の住んでいる県、市、その財政状況は半分近くが負債であるということです。そのような財政状況のうえに人々の生活が成り立っている。今何をすべきか、一人一人が考える時です。
yokoさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、自転車が医療費の削減に貢献するという点で、社会保障に関係していると言えます。
実際、海外では、交通安全や市民サービスの一環、あるいは環境への負荷という点で自転車を評価するより、実は自転車環境を整備し、市民が自転車に乗ることで、市民の健康増進に大きく寄与し、生活習慣病などが大きく改善されることで、医療費の削減効果が高いという点が注目されています。
その目的から、自転車走行環境の整備に取り組んでいる国や都市も多いわけで、例えばアメリカのラフード運輸長官は自転車の活用に積極的な姿勢を評価され、全米の自転車団体から表彰されるほどです。
日本では、そうした面があまり知られておらず、評価が低いのが残念です。
従来からの「ママチャリ」という認識が強いのでしょうが、政策の対象として考えられることは少なく、ましてや社会保障費の削減という観点からは議論されることはまれです。
イギリスのキャメロン首相も自転車好きで有名で、野党党首時代には、普通に自転車通勤していました。
先般来日した際には、野田総理にブロンプトンを贈っていますが、野田総理がその価値、可能性を理解しているとは思えませんね。
ぶーちょさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
例えば企業でも、株式の発行や借り入れにより資金を調達し、それを事業に使って売り上げを拡大し、利益を増やそうとします。
国の借り入れも、それを使って経済が拡大し、景気が良くなって税収が増えればいいわけで、経済成長を促すという点で、国が投資すべきこと、国でなければ出来ないこともあります。
インフラ整備など、必ずしも直接税収が上がらないものでも必要なものはあります。
その意味で国の借金が必ずしも悪いわけではありません。しかし、今の状態では、いみじくも野田首相が動画で言っているように、無駄が多くシロアリがたかっていて経済は成長していない状態です。それなのに、借金ばかりが膨らむ一方なのが問題です。
敗戦後の焼け野原から、ここまで繁栄を築いたのは事実です。経常黒字や債権額から言っても世界有数の豊かな国であるのも間違いありません。
ただ、豊かになったことで、いろいろな場所に既得権が生まれ、シロアリがたかり、制度疲労が出て、問題山積になってきていることを直視しなければならないということでしょうね。
たにぐちさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですか。仕方なく乗り始めた自転車がきっかけになって変わったんですね。個人でも収入以上に使ってしまうことが簡単に出来る仕組み、環境が、個人破産を増やしてしまっている面もあるのでしょう。
国が破綻した例はたくさんあります。スーダンやソマリアなどアフリカの国もそうですし、アルゼンチンやロシア、ベネズエラなど国家がデフォルトに陥った例もたくさんあります。
預金封鎖や通貨切り替えなどが行われ、ハイパーインフレになるなど、いろいろありますが、いずれにせよ国民が大きな苦しみを味わうことになります。
その手前のギリシャを見ても、物価が上がり、賃金が大幅にカットされ、税金が非常に重くなり、行政サービスは清掃などだけでなく警察に至るまで停滞し、失業率が高くなるなど、生活苦から暴動が起きています。
今後人口が減少し、高齢化して社会保障費は増大し、インフラは老朽化するなど、市町村の財政も、今以上に厳しくなっていきます。その意味でも今考えるべきことは多いですね。
色々言いたいことはあるのですが、一つだけ。
よく消費税の議論をするとヨーロッパが引き合いに出されますよね。
ヨーロッパの方が高いと。
でもそれは数字のトリックです。
トリックと言うのも大げさですが、消費税だけで比較しても意味がありません。
税は消費税だけではありませんので、比較するのであれば、税の枠組み全体で比較する必要があるのではないでしょうか。
また着目するべきは集めた税をどのように使い、国民に還元しているかを見るべきです。税本来の目的は富の再分配です。今日本で行われている議論はまさに「木を見て森を見ず」状態です。
官僚は知っててあえてその方向に持っていってる気がします。
目の前の分かりやすい数字ではなく、
その先を見た方がいいでしょう(今の政府では期待できませんが…)
借金を返済して、尚且つ豊かな世の中になっていたのなら、その時初めて豊かな国だと言えるんだと思います。
今の日本は、返す当てもない借金をして富を手に入れただけです。
誰にだってできることだと思います。
いざ借金を返す時になったら景気が悪化するから…なんて甘ったれですよね。
昔の人の死に物狂いの努力を無駄にしたくないなら、もっと税金を上げて、
それを僕らが必死で返すしかありませんよ。
よく無駄を省いてなんて言いますが、一見無駄な事でも、実はそれで生活が成り立っている人が大勢いる場合が多々有ります。
そこまで調べて事業仕分けなんてしてる間、市場は待ってはくれないと思います。
なんせ世界的にも稀な、のろま国家なんですから。
佐藤さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、直間比率もありますし、社会保険料など税以外の負担など、国によって制度が違います。
いわゆる高福祉高負担や低福祉低負担など、国によって考え方や政策も違うわけですから、間接税の税率だけを比べても仕方ありません。
私は理解しているつもりですが、世にそういうことを言う人が多いという意味で書いています。
まさに集めた税をどう使うか、民主党政権になって、これほどバラ撒きが増えており、大盤振る舞い状態なのに、それを是正せずして増税では意味が無いということを指摘したかったわけです。
もちろん財務官僚はわかっているはずです。野田首相の言うシロアリがたかりまくりの状態を放置しているのが問題だと思います。
ぶーちょさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
借金をして国の経済を拡大させるという考え方は、どこの国でもやっていることであり、政府の経済政策に期待される部分ですから、必ずしも間違っているとは言えないでしょう。
しかし、おっしゃる気持ちはよくわかります。問題は借金を膨らませたことにもさることながら、無駄なことに投入されすぎていることでしょう。
いみじくも野田首相が選挙前に言っていたように、シロアリがたかり、いわばバケツに穴が開いた状態で水を注いでいるようなものです。
まずバケツの穴をふさぐのが先決だと誰もが考えるのに、バケツに入れる水量を増やすことばかり国民に要求しているわけです。
無駄を省くこともそうですが、税金の使い道や社会保障の給付などを抜本的に見直さないと持たないところにきているのは、間違いないところです。
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