違反は交通事故の大きな原因となります。事故を未然に防ぐためにも取り締まりを行い、違反を減らすのは警察の重要な職務です。ただ、免許制度があって、反則金や減点のあるクルマのドライバーに比べ、自転車の場合は、警察官の前でも平気で違反したり、注意に従わない人も少なくないようです。

たまに、再三の注意に従わなかったとして、自転車の高校生が検挙されたりします。警察の街頭での取り締まりでも、自転車に乗りながらイヤフォンをした学生が警官の制止を無視して通り過ぎようとする様子などを、テレビのニュース映像で見ることがあります。
自転車には反則金や減点がないので、取締りを軽く見ている人が多いのは否めないでしょう。自転車でのイヤフォンなんかより、クルマのスピード違反とか、酒気帯び運転など、もっと先に取り締まるべき危険な行為があるだろうという反感があるのかも知れません。
そもそも警察への反感、不信感のようなものもあると思われます。市民の安全のためというより、自分の業務成績を上げるための違反取締りのように感じる人も少なくないでしょう。中には、横柄で公務員の自覚に欠け、市民に対し威圧的な態度をとる警察官もいます。

例えばクルマに対する取り締まりにしても、本当に歩行者が危険な状況にあって、取り締まって欲しい場所では取り締まりをせず、見通しの良い郊外のバイパスなどの直線道路の、ついスピードが出やすい場所で取り締まりをするなどというのは、よく言われるところです。
制限速度を急に下げてあったり、うっかり見落としがちな場所など、規制に問題があるとしか思えない場所でスピード違反の取締りを行うなど、罠を張るかのような意地の悪い取締りをするとの指摘も少なくありません。そんな警察の姿勢に対する反感もあるのでしょう。
市民に対しては意地の悪い取り締まりをする一方で、身内の警察の不祥事に対しては甘く、甘いどころか事件を隠蔽し、犯人隠避で警察署長が書類送検されるような事件すら起きています。機器の設定を誤ったままスピード違反を取締まっていたり、法令を間違え、無実の人を違反にした事例なども明るみに出ています。

警察の不祥事は相次いでいます。最近も、警官が警察の情報システムから個人情報を盗んで調査会社に売るなどしていた事件がありました。暴力団への捜査情報を漏洩していた事件、酒酔い運転をして事故を起こし乳児を置いて逃走など、あきれるような警察の不祥事は枚挙に暇がありません。
そのほかにも公然猥褻や痴漢、淫行、強制わいせつ、買春、万引き、暴行、殺人、覚せい剤所持、証拠改ざん、誤認逮捕など、ありとあらゆる不祥事が起きています。被害届を受理せず慰安旅行したり、交通事故に絡む被害者情報の無断提供など、警察官に与えられた権限を悪用した国民への背信行為も少なくありません。
いずれにせよ、警察の街頭取締りが、必ずしも効果を上げているか疑問な面があるのは確かでしょう。取締まり自体がマンネリ化し、警官が取締まりをしていても、「またか」くらいに思うだけで、その場だけやり過したら元のとおり、という人も少なくないはずです。
そんな事情は多かれ少なかれ、どこの国でもあるのでしょうが、南米ベネズエラではユニークなプログラムが実施されました。なんと、交通安全のために警察官ではなく、パントマイムの役者を使うというものです。取り締まるのではなく、パントマイムで人々に訴えるという方法です。
ベネズエラの首都カラカスの東部、スクレの市長が、120人のパントマイム役者を市内の交差点などに配置し、優しく、そして無言で交通安全を訴えました。顔に派手な化粧を施した役者たちが、交通違反をしているドライバーや自転車、不注意な歩行者などに注意をすることで、行動を改めてもらおうという作戦です。
いきなり街角に、派手な衣装と真っ白な顔のピエロやパントマイム役者が立っているだけで驚きがあります。注目が集まるでしょうし、ユーモアにあふれる動きや表情に、思わず笑ってしまいながらも、気づかされ、考えさせられることもあるに違いありません。なかなか斬新なアイディアです。
無謀な横断をしようとする人、乱暴な運転をする人を茶化すような仕草をしても、この格好なら許されるでしょう。もちろん、取締りをするわけではないですし、警察官でもないので、何ら強制力は持ちません。あくまで、役者たちの演技力で道行く人たちに訴えるわけです。
警察官が街角に立っているのは、よくある光景です。でも派手な衣装と化粧の役者たちは目立ちます。そんな役者たちが面白おかしく、時には悲しげに、パントマイムで訴えられれば、少しは注意しようという気になるかも知れません。言葉はありませんが、表情や仕草が心に響くケースも無いとは言えません。
少なくとも、毎度おなじみの警察の街頭取締りに比べればインパクトがあります。通行する人たちも驚くでしょうし、自然と注意が向けられるはずです。警察のように反感をもたれないばかりか、人々は、その偶然の遭遇を楽しんでくれさえするかも知れません。
このプログラムが、従来の取り締まりと比べて、どれくらい効果があるかは不明です。何しろ、違反者、検挙者はゼロです。しかし、市が交通安全のために、こうしたプログラムを行っていることは市民にも伝わると思います。目先を変え、話題にされるだけでも意味があると思います。

日本の警察、各都道府県の公安委員会には、残念ながらこの発想力は無いと思います。ベネズエラの事例を知ったとしても、これを取り入れて実行するような度量があるでしょうか。自治体の首長などであれば、あるいは行動力を期待できる人がいるかも知れませんが...。
さすがにパントマイムの役者を投入するというのは、悪ふざけのように見えて、お堅い役人にとっては抵抗があるでしょう。しかし、ただ警察が街頭指導を繰り返すだけでは、マンネリ化して効果が上がらないのであれば、もっと違う方法を試してみる手はあると思います。
反則金の徴収高をあげたり、市民の検挙数を実績として誇示して予算獲得を狙うなどの目的がないのであれば、必ずしも取締りでなくいもいいはずです。マンネリを打破し、交通安全という目的に少しでも効果が上がるのなら、その手法を取締り以外に広げてみるのも意味があるでしょう。
市民との軋轢を避け、反発や反感も和らげるかも知れません。市民を威圧することが目的ではなく、事故の防止が目的なのであれば、いろいろ検討の余地があるはずです。もっと柔軟な発想、広い視野、挑戦する勇気、創意工夫、現状に妥協せず、さらなる結果を求める向上心を持って欲しいものです。
イチローの電撃移籍には驚きました。ジーターとの1、2番コンビが見たいですね。