警察官用の自転車、いわゆる白チャリで移動する警察官に自転車用のヘルメットをかぶせる取り組みです。
自転車用ヘルメットを試験導入=警察官が安全運転の手本に−警視庁
自転車で交通事故に遭った際の大けがを防ぐため、警視庁は20日、警察官がかぶる自転車用ヘルメットを試験導入した。これまでの制帽の代わりにかぶって街頭活動することで、一般の利用者にも着用を促し、安全運転を呼び掛けるのが狙い。同庁によると、専用ヘルメットの導入は全国で初めてという。
同庁地域総務課によると、試験導入されたのは素材や通気性などが異なる2種類のヘルメットで、「警視庁」という文字や反射材などが施されている。万世橋署地域課と交通課の警察官86人に貸与し、1年間試行実施して、都民の反応などを調べ、早ければ来年中に都内全署に拡大する。(2012/08/20 時事通信)
基本的には、警察官も車道走行を率先垂範することが求められることを意識しての試みなのだろうと思います。背景には警察庁の自転車の原則車道走行への方針転換があります。原則車道走行と言いながら、警察官が歩道走行では格好がつきません。車道走行時の安全を考えてのことなのでしょう。
海外ではすでに多くの国で導入されています。海外の警察官の場合、ヘルメットだけでなく、専用のスポーツバイクに乗り、ウェアまで自転車用のものを着ています。それと比べると、ヘルメットだけというのは、今ひとつ垢抜けない感は否めません。
これまで日本の警官は歩道走行していましたし、中には併走をするなど、自転車のルールを守っていない例も、たくさん目撃されていました。専用のヘルメットをかぶることで、警察官の意識が向上し、当然のように原則車道を走行し、ルールの遵守につながるのであれば、それなりの意味があると思います。
街をパトロールする際、ヘルメットをかぶって颯爽と車道を走行するというのであれば、確かにお手本になるでしょう。逆走する自転車やイヤホンの利用者などに注意を与え、信号無視や一時不停止など危険な行為に目を光らせ、違法に駐車しようとするクルマには移動を促すというのであれば文句はありません。
しかし、単にヘルメットをかぶっただけで、今まで通り相変わらず歩道をノロノロ走行しているだけなのであれば、何のお手本なんだか、さっぱりわかりません。警官の身を守るためにも、ヘルメットをかぶるのはいいことだと思いますが、ただヘルメットかぶることのみに、それ以上の意味があるとは思えません。
警察官が自ら率先して、原則車道走行をすることで、人々に車道走行を促すというならわかります。その結果スピードも出ますし、個人個人が必要性を感じればヘルメットもかぶるようになるでしょう。しかし、今まで通り歩道を歩行者を縫って走行する警察官を見て、一般の利用者が着用しようと思うでしょうか。
ヘルメットの着用を促すのが悪いとは言いません。でも、現状では、多くの人がママチャリに乗って歩道走行しています。白チャリの警察官がヘルメットをかぶったところで、そもそもヘルメットの必要性を感じるようになるでしょうか。誰もわざわざ警官のマネをして、ヘルメットをかぶろうなんて思わないでしょう。
その辺が少し違う気がします。一般の利用者にヘルメットの着用を促すなんて余計なことを言わずに、まず警察官の自転車の運用の仕方を改めることです。市民に自転車のルール違反を指摘されないようになるのが先決、その結果、市民が自転車警官をお手本と認識するようになるなら、自ずと変わっていくでしょう。
もう一つ、自転車走行推奨ルートを策定する警視庁の取り組みについても報道されています。
道路複雑で安全ルート描けず=自転車対策、スロー進行−マナー向上に注力・警視庁
自転車が安全に車道を走れる推奨ルートを策定する警視庁の取り組みが、東京都内の複雑な道路事情から難航している。都内の警察署ほぼ全てが策定する計画だが、第1号ルート整備から半年以上たっても、実際に定めたのは5署止まり。今後もスローペースが続く見通しで、同庁は利用者のマナー向上などの対策に力を入れている。
推奨ルートの策定は、警視庁が昨年12月にまとめた「自転車総合対策推進計画」に基づく。自転車に原則車道を走るよう求め、利用者が多い施設の周辺にルートを定めることにした。
第1号ルートとなったのは、世田谷区の大学と最寄り駅の約1.4キロの区間。自転車で通う学生らはこれまで、交通量が多いバス通りを走行することが多かったが、住宅街を抜ける生活道路を通るルートが定められた。導入後の1〜7月、この区間で起きた自転車の人身事故は2件で、昨年同期から半減した。
しかし、都内の道路は一方通行や駐車メーターなど、さまざまな交通規制が入り組み、車道左側を安全に走れるルート探しは難航している。また、自転車利用者が多い施設が点在するため、ルートを絞り込めないこともあるという。同庁交通部の幹部は「正直言って厳しい」と苦い表情だ。(2012/08/18 時事通信)
この警視庁の自転車走行の推奨ルートを策定する取り組みについては、
昨年秋始まった際に取り上げました。記事によれば、その後難航しているようです。具体的に、どう悩んでいるのかよくわかりませんが、そんなに難しいことなのか、不思議な感じがしないでもありません。
厳密に車道左側を安全に走れる道なんて考えていると、それは策定できなくなるでしょう。交通量が少ないとか、相対的に安全度が高い道路に誘導するという考えではいけないのでしょうか。出したルートの結果に対して、どこからか制約がかかってくるのでしょうか。
大学と駅など、2地点を結ぶルートで考えるから難しくなる面もあるのではないかと推察します。さらに自転車利用者が多い施設など、いろいろなことを考慮しようと思えば、ルートも絞り込めなくなるでしょう。2地点を結ぶという考え方はやめたほうがいいと思います。
本来、都市に自転車レーンが網の目のように通るのが理想です。しかし、現状は無理なので、まず幹線や主要な道路の走行を想定し、その中で物理的な危険な区間に、迂回路を紹介するという考え方でいいと思います。危険な区間について、代替できる迂回路を推薦するくらいのスタンスならば難しくないはずです。
どこへ行くか、どこを通るかは利用者が決めることです。出発地と目的地を決めてルートを作ろうと思わず、比較的安全な道路の情報を紹介し、利用者が参考にすればいいことだと思います。利便性を高めるため、なるべく網の目になるよう、多くの道路の情報が載せられるよう努力すればいいでしょう。
現場にも、例えば「自転車通行推奨区間」といった表示をするとか、路面の一部にブルーのラインをひくなどしてはどうでしょうか。ルートを決めることよりも、現場で標識などを目印に、実際に利用者が迂回するようになることのほうが重要だと思います。
むしろルートづくりに苦労するくらいなら、通学路などは当事者の学校に任せ、少しでも自転車が通りやすい道路を増やすことに力を入れて欲しいと思います。何も道路の拡幅や車線の変更など、大規模なことをやれと言うのではありません。路面の表示を工夫するなど、簡単に出来ることが多々あるはずです。
このブログでも、過去にいろいろ取り上げています。“
Bicycle Boulevard”、“
sharrow”など海外の参考になる事例もあります。都内でも「
ナビマーク」などを設置する試みがありますが、整備や工夫によって自転車で通りやすい道にしていくことによって、推奨道路を充実させることも出来るのではないでしょうか。
警察とは直接関係ありませんが、こんなニュースも報じられています。
大型店舗に駐輪場義務化へ、千葉市が放置自転車の条例改正案
千葉市は、「市自転車等放置防止条例」改正案をまとめた。これまで努力義務としていた大型店舗の駐輪場設置について、新築・増築の際に義務化することなどを盛り込んでいる。来年4月の施行を目指し、意見を公募して内容に反映させるパブリックコメントを実施している。
市自転車対策課によると、今年6月の市内駅周辺での放置自転車数は約3400台。駐輪場の整備や撤去の強化により、最多だった平成17年の約1万5千台から減少傾向にある。しかし、繁華街の店舗周辺での放置自転車は依然多いという。
改正案では商業地域などの指定区域で大型店舗を新築・増築する際には、施設の用途と規模に応じた駐輪場を設置しなければならないことを明記。400平方メートルを超える飲食店や小売店では20平方メートルにつき1台分を確保する基準を例示している。
また、市民の要望を反映させ、125cc以下のバイクの受け入れを一部の駐輪場で進めることなども予定している。パブリックコメントでの意見の募集は9月14日まで。市ホームページなどで募集方法を告知している。(2012.8.22 産経新聞)
地味な記事ですが、千葉市は、大型店舗に駐輪場の設置義務を課す方向で動いているようです。大型店舗の場合、自主的に設置するところもあると思いますが、特に都市中心部に近い場合、充分とは言えない場合も少なくありません。結果として近隣に迷惑駐輪を誘発する形になっていたりします。
商業施設への駐輪場の設置を義務つけていけば、利用者の利便性が向上し、その商業施設へ客が集まる効果も見込めます。自転車がとめやすいことで、駐輪場のある店にお客が集まる傾向が強まるなら、規制対象以外の店舗にも自発的な設置を促す効果が期待できるでしょう。
即効性のある措置ではありませんが、将来の街に駐輪スペースを増やしていく上で意味のある条例であり、他の自治体にも広がって欲しい考え方だと思います。自転車に乗る上で、走行環境だけでなく、駐輪環境の充実は大切な要素です。自治体の姿勢も、撤去移送より収容拡大へと変わっていってほしいと思います。
どの話題も徐々にではありますが、自転車環境向上への動きと捉えていいでしょう。あまり大きな前進とは言えませんが、小さなことが積み重なることによって、自転車環境が大きく好転する可能性も出てくると思います。こうした動きについて、今後も注意深く見守っていきたいと思います。
処暑というのに、涼しくなりそうにないですね。休日に自転車に乗っている人も、いつもより少ない気がします。