朝晩もしのぎやすくなり、これから秋の行楽シーズンも本番です。自転車で出かけるにも絶好の陽気とばかり、いろいろと計画を立てている方も多いのではないでしょうか。今回は例によって、最近の自転車関連の報道を拾ってみたいと思います。
自転車の駅で足休めて
◇吉見の24店 空気入れや給水無料提供/商工会 観光地巡りに期待
週末ともなると多くのサイクリストでにぎわう自転車道「荒川自転車道」に近い吉見町で、飲食店やガソリンスタンドなど24店が自転車の駅「サイクルピットよしみ」をつくった。爽やかな秋風の中、快適なサイクリングが楽しめそうだ。
荒川自転車道は、東京湾河口から熊谷市まで舗装道が続いており、信号や車両の往来を気にせず、景色を楽しみながら自転車に乗れる。しかし、せっかく都内や県南部からサイクリストがやって来ても、吉見町は素通りするか、引き返してしまっていた。
そのため、吉見町商工会は町内の観光地を巡ってもらおうと計画。「道の駅」をもじって「自転車の駅」と名付けたサイクリストのオアシスを整備することにした。
道の駅には駐車スペースやトイレなどについて国土交通省の基準があるが、県道路環境課によると、自転車の駅は基準はなく自由に名乗れる。2010年にはコンビニエンスストアのミニストップが県と「自転車の駅」の協定を締結。県内各店で空気入れを貸し出している。
サイクルピットよしみに登録したのは、運動公園管理事務所やレストラン、土産屋など。いずれも駐輪スペースがあり、トイレや給水が利用でき、パンク修理キットなどを無料で提供している。空気入れは、マウンテンバイクやロードバイクなど自転車の種類によってタイプが異なるバルブにも全て対応している。雨の日にはポンチョ型簡易カッパの用意もある。(後略 2012年09月20日 朝日新聞)
近頃の傾向として、各地でレンタサイクルやサイクリングコースを整備したり、自転車向けの施設をアピールするなど、自転車で移動する人を意識するところが増えているようです。ママチャリ用でないバルブに対応する空気入れを用意するなど、はっきりスポーツバイクを意識しています。
自転車通行帯:幅2mで対面…狭く危険 東京・荒川河川敷
東京都の荒川河川敷にあるランナーやサイクリストに人気の舗装道路で、3月から自転車と歩行者の通行部分を分ける試みが始まった。混在解消で事故防止を狙ったが、自転車の通行部分は双方向なのに幅2メートルしかなく、危険性を指摘する声も多い。管理する地元河川事務所が行ったアンケートでも拡幅を求める意見が相次いだ。(後略 毎日新聞 2012年09月15日)
同じ荒川自転車道では、自転車と歩行者を分ける試みが始まったようです。荒川以外でも、サイクリングロードと呼ばれながら自歩道、すなわち自転車が通れる歩道と同じ扱いだったりなど、問題が指摘される河川敷の自転車道は少なくありません。

分離は必要だと思いますが、あまり狭くなるのでは事故が誘発されかねません。他の場所でも、強制的にスピードを抑制するため、物理的な妨害物を設置するなどの話も聞きます。自転車に乗らない人が考えたとしか思えないようなナンセンスな規制もあるようです。
記事にもありますが、管理する河川事務所などでは、「河川敷は緊急用で、自転車のための道ではない。」などと、自転車を目の敵にしたり、まるで自分たちの所有地とでも言わんばかりな姿勢をみることもあります。もちろん、管理する立場があるのはわかります。
ただ、緊急用とは言え国有地や公有地なわけですし、多くはサイクリングロードや自転車道として親しまれているわけで、なるべく実態に即した柔軟で現実的な対応をとってほしいものです。マナーの悪い利用者がいるのは事実でしょうが、上手く共存させるためにも、自転車利用者にも配慮してほしいと思います。
諏訪湖畔ジョギングロード社会実験 「自転車走行に賛成」7割
諏訪市は、市内の諏訪湖畔公園ジョギングロードで歩行者と分けて自転車の走行が可能か調べる社会実験のアンケート結果をまとめ、20日の市議会総務産業委員協議会に報告した。自転車走行に「賛成」「どちらかというと賛成」は計69%で多数を占めたが、賛成意見には「マナーやルールを守れるなら」「幅員を広くするならよい」など条件が付いたものもあり、市はさらに共存のあり方の検討を重ね、導入の是非について方向性を出す考えだ。(2012-9-21 長野日報)
各地で自転車と歩行者の共存、安全のための分離を模索する動きが増えているようです。これまで歩道で自転車と歩行者とが混在しているのと同じ感覚で、サイクリングロードでの混在にも違和感がなかったのでしょうが、事故防止の観点からも、分離が進むことを期待したいと思います。
「自転車は車道」 レーン設置
自転車には原則通り車道を通行させるように――。警察庁が昨年10月、全国の警察本部に通達してからまもなく1年。歩行者保護のための「分離」推進で、県内では事故が減少傾向になるなど効果も感じられる。自転車や歩行者を取り巻く環境にどんな変化があるのか。「自転車は車道」の現状と課題に迫った。 (中略)
■「専用レーン 事故少ない」専門家
一方で、「専用レーン」が出来たことで車道での事故は増加していないか。駿府城公園周囲の専用レーンでは、昨年10月から今年8月末までに3件の自転車と自動車の事故が発生したが、いずれも交差点での事故で専用レーン内での事故は起きていないという。
国の有識者会議で委員長を務めた久保田尚・埼玉大学大学院教授(都市交通計画)は「自転車事故は交差点での事故が多く、専用レーンなど単路部での事故は少ない。専用レーンは歩行者にとっても自転車にとっても有効」としている。
ただ、自転車道を設ける場合には歩道に縁石を設けたり、柵を作ったりする必要があり、相応の予算が必要となる。専用レーンも「もともと狭い車道にスペースを確保することは難しい」(市の担当者)現状もある。屋井鉄雄・東京工業大学大学院教授(環境交通工学)は「歩道上の歩行者を守るためにも、車道上に自転車の走行空間を作ることがやはり重要」と話している。
◇自転車走行路 警察庁と国土交通省は(1)車道上の路肩に色を付けた「自転車専用レーン」(2)縁石や柵などで車道と歩道から区切った「自転車道」(3)色やマークで区切って歩道上に設ける「自転車歩行者道」の3種類を整備。自転車と歩行者の分離を推進している。(2012年09月18日 朝日新聞)
各地で自転車レーン設置も報じられています。以前は歩道に設置するところも多く、結局は無視されて分離にならない無駄なものも多かったわけですが、最近は、車道への設置というニュースが増えつつあります。当然のことではありますが、好ましい傾向です。
しかし、まだまだごく限られた場所で、距離的にも微々たるものであるのは否定できません。本来であれば、自転車レーンの設置がニュースとして報じられなくなるくらい、当たり前になるのが理想ですが、少しずつでも増えていくことで、車道の自転車レーンが当たり前になることを期待したいと思います。
東京・港区の駐車スペース設置道路に全国初の自転車専用レーン

東京・港区の車道に、駐車スペースが設置された道路で全国で初めて、歩道と駐車スペースの間に自転車専用レーンが設置された。新たに設置された自転車専用レーンは、JR品川駅近くの港区港南地区で、駐車スペースがある車道と歩道の間に、自転車専用レーンがまっすぐ伸びている。
これは、車道上での巻き込み事故などを減らすため、全国で初めて設置されたもの。利用者は、「いちいち戻って、あっち側に渡って、走ってこっちまで来ないといけないのは面倒くさいです」、「走りやすいと思う。便利」などと話した。警視庁は、自転車の利用者に、自転車専用レーンの走行を促したいとしている。(09/14 FNN)
一見、走行しやすいように見えますが、この全国初の自転車レーンには問題があります。駐車車両が遮蔽物になって、クルマのドライバーから走行する自転車が見えづらいのです。交差点での左折時に、ドライバーには突然自転車が飛び出してくる形になって、事故を招く危険があります。歩道を走行するのと同じ危険です。

海外では、歩道の次に駐車帯があって、その次に自転車レーンとなっています。日本人の感覚だと、走行するクルマと分離したほうが安全と感じるのでしょうが、実はドライバーから自転車が見えているほうが事故が少ないことは統計や研究で解明されています。この形は交差点での出会い頭の事故を誘発しかねないのです。
ヨーロッパの国などでも、この順番、すなわち歩道の次に自転車レーンがきて、駐車帯という場所も無いわけではありません。しかし、そうした場所の交差点ではクルマのドライバーが一時停止し、細心の注意をはらって走行しています。自転車を交通弱者として優先する原則が徹底され、日本よりはるかにモラルが高いのです。
これでは、左折巻き込みを防ぐどころか、逆に誘発しかねません。左折巻き込み防止を理由に、この形にしたのなら、担当者の無知と独善に満ちた大間違いです。国土交通省が道路構造令に、自転車レーンの規定を盛り込む方針を示していますが、こんな勘違いが起きないよう、制定を急ぐべきでしょう。
東京都が検討中の『自転車ナンバープレート義務化』は良策か? 愚策か?
9月4日、東京都内の自転車ユーザーを驚かせるニュースが駆け巡った。東京都が自転車へのナンバープレート装着義務化を検討中で、自転車購入時のデポジット制度の導入とともに、条例化を検討しているというのだ。(後略 2012年09月20日 集プレニュース)
自転車ナンバープレートに関する記事も散見されます。この記事には、義務化を推進する理由として、自転車とバスが絡む事故が多発しているためという話が書かれています。路線バスにおいて普及が進むドライブレコーダーによる記録が容易になり、原因究明に役立つというのです。
真偽はわかりませんが、バス事業者の団体が自転車へのナンバープレート推進の元凶という噂は、ほかでも聞きます。しかし、ナンバーを記録するのは、悪質な自転車利用者の特定ならともかく、原因究明とは関係ないでしょう。もし、バス事業者の都合だけで、導入を目論んでいるならば迷惑な話です。
自転車でぐるり大島 愛媛
横浜市、サイクルシェア「baybike」の利用が7万回を超えたと発表 神奈川


自転車島巡り 江田島をPR 広島
電動補助自転車貸します 22日から実証実験 岡山


相変わらず各地で、サイクルシェアリングの実験とか、レンタルサイクルの導入といったニュースが多くなっています。自宅から直接自転車で出かけるには遠い場所なら、自転車を借りる手もあります。輪行もいいですが、たまには自転車のレンタルを利用してみるのもいいかも知れません。
21日からは秋の全国交通安全運動も始まっています。30日までの10日間です。ようやく暑さが和らぎ、陽気が良くなってきたので、休みの日には自転車で出かけようとしている人も多いと思いますが、くれぐれも安全には気をつけるようにしたいものです。
少し前ですが、落雷でサイクリストが亡くなるという痛ましい事件がありました。天候の急変にも注意ですね。
Posted by cycleroad at 23:30│
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現状、荒川の自転車通行帯は、あまりに狭く、また、対面通行というマイナス要素もあり、分離により事故を抑制するどころか、逆に事故を誘引する最悪の交通施策と言えるでしょう。
交通工学的にみてもそうなのでしょうが、実際に自転車に乗って、いつもの荒川自転車通行帯を律儀にその上だけを走り続けてみれば、すぐに危険性や欠陥を実感できたはず。
そして、間違った交通施策に気づき、修正できようものですが、それをしなかった。責任を問われても致し方ないでしょう。
事故は偶然ではなく、必然的に起こる、といいます。
その要素には、道路構造も大きく起因しているということは、誰の目にも明らかなのですから
自転車利用者も安全安心して往来できる、世界的にも当たり前の環境の整備もしっかりとやってほしいものです。
未熟者で偏屈な担当者が決めた交通施策により死傷者が出ている。許されるものではありません。
歩行者・自転車が共に安全に往来できる環境の整備には、自転車だけを目のカタキにして窮屈で危険な構造にしても、根本的な解決には至らない。
それどころか、担当者及び組織の未熟ぶりを世間に晒し、時には責任が問われる結果にしかならないということを、荒川自転車通行帯の構造を決めた担当者は、気づくべきです。