傘さし走行より魅力的な選択
ようやく秋らしい陽気となってきました。
台風の影響などもあって、10月になって真夏日を記録したりもしていますが、彼岸を過ぎて、やっと秋らしい日が増えてきました。気温の変化が大きいと、この時期でも熱中症には注意だと言いますが、秋は自転車で出かけるにも絶好の季節です。
一方で、秋には長雨が続くことがあります。今年は台風がまだ来そうですし、秋雨前線が停滞して、大雨になることもあります。言うまでもなく、雨は自転車乗りにとって大敵です。ほとんどの人は雨の日に自転車で出かけたくないだろうと思いますし、途中で降られるのも、出来れば御免蒙りたいところです。
雨と言えば、日本ではママチャリで雨の中を傘をさして走行する人が多く見られます。でも、これは多くの都道府県で法令違反です。傘を片手で持ちながらでは、ブレーキもあまくなりますし、視界がさえぎられて危険です。周囲にも大きな迷惑をかけることになります。
中には傘を固定する装置を使う人もいます。この装置自体は違反ではないようですが、危険になることには変わりないでしょう。両手が使えるぶん危険は減りますが、濡れないためには、どうしても前方に傘を傾けて走る形になるので、視界は相変わらず悪くなると思います。
法令では普通自転車という定義があり、要件が決められています。傘を装着すると幅が60センチ以上になり、この要件から外れます。また、自転車に歩行者に危害を及ぼす恐れのある鋭利な突出物を装着することになるので、これも要件外です。この状態で歩道走行するのは違法となります。
ところで、海外での雨対策はどうなっているのでしょうか。自転車に傘の固定装置なんて装着するのは、日本だけかと思えばそうではないようです。アメリカにも
似た装置を売る会社があります。最初から専用の傘がセットになっていますが、その形が変わっています。
これは、台風並みの風でも折れたり裏返ったりしないと話題になった、“SENZ”の傘と同じ原理なのでしょう。なるほど前方からの風には強そうですが、前方に傾けない限り、雨が吹き込むのは避けられません。日よけにはいいでしょう。霧雨とか、弱い雨にゆっくり走るならいいかも知れません。
しかし、近距離ならともかく、スポーツバイクで走行するには、ちょっと実用的には見えません。やはり、自転車に傘という選択肢はなさそうです。ベロモービルや専用のカウルやフェアリングを取り付けた自転車等を別とすれば、やはりレインウェアを着るというのが、実用的な雨対策となると思います。
あまり日本では普及していませんが、写真のような雨用のポンチョを使うという手もあります。頭からかぶって、ハンドルごとかぶせてしまえば、手も滑らず、下半身もカバーできます。ただ、下から跳ね上がれば濡れますし、風にも弱そうです。
そもそも外国人は日本人ほど傘をささないと言われます。アジアなどの雨の多い国は別として、欧米の大陸性の気候の国だと、日本のように雨が多くないとか、電車でなくクルマを使う場合が多く、傘を持ち歩く習慣がない、日本人とは違って雨に濡れることをあまり嫌わないなどが理由のようです。
歩く場合にも、傘をさすのではなく、レインウェアを着ることも少なくないようです。ただ、歩く場合はともかく、自転車に乗る場合は汗もかきます。レインスーツが蒸れたり、動きにくかったり、雨が中まで浸入したりと、必ずしも使い勝手がいいとは言えない部分があります。
ところが、オランダの会社がこのほど開発したレインスーツ、その名も“
Bikesuit”は、今までのいわゆるレインウェアとは一味違います。見た目には、よくあるレインウェアと変わらないように見えますが、細かく見ていくと、その違いがわかります。
まず、上下がツナギ、ワンピースになっているので、ジャケットとパンツの間からは雨が入りません。ツナギの形だと着にくいかと思えば、着方も工夫されており、靴を履いたままでも脱ぎ着できます。靴を履いたままパンツに通す必要はありません。
ジッパーで素早く着られ、必要な部分はベルトやコードで締められるようになっています。身体にフィットするように調整した後は、ベルクロでとめられるので、チェーンなどに引っかかることもありません。さらに靴の部分までカバーするので、靴や靴下も濡らさずにすみます。
もちろん水をはじくウォータープルーフになっており、雨ははじきますが湿気は排出する素材です。通気性にも配慮され、背中やウェスト、わきの下などが必要に応じて開閉でき、メッシュ素材で通気性に配慮されています。なかなかよく考えられています。
ハードな使用にも耐える高い耐久性を誇る素材を使っており、夜間の視認性を考慮して、リフレクション素材も各所に使われています。持ち運びにも配慮し、コンパクトにたたんで袋に入れられるようになっています。自転車用のレインスーツとして、ヨーロッパでは高く評価されているそうです。
さすが自転車王国オランダの製品と言えるでしょう。このほかにも、ヒザ上だけをカバーする“
Rainlegs”と呼ばれる製品などもあります。とてもコンパクトなので、応急的な使用や弱い雨の時、ジャケットと組み合わせるなど、こちらも使い方によっては便利そうです。
こうした製品を見ると、まだまだ日本で売られているレインウェアには改良の余地、工夫の余地があるように思います。雨の多い日本ですから、いい製品をつくればニーズも多いに違いありません。優れたレインウェアが開発され、普及すれば、違法で危険な傘をさして走行する人も減るのではないかと思います。
台風17号は本州に上陸、縦断しましたが、もう次の台風が発生しそうという話ですし、まだまだ来るんでしょうか。
Amazonの自転車関連グッズ
Amazonで自転車関連のグッズを見たり注文することが出来ます。
Posted by cycleroad at 23:30│
Comments(10)│
TrackBack(0)
この記事へのトラックバックURL
いつも有益な情報発信をありがとうございます。
雨の多い日本でその対策は誰しも頭を悩ますところですね。
レインウエアの外側からの雨と内側の蒸れの問題は、コストをかければより快適にはなるのでしょう。
また、通勤通学で公共機関も合わせて利用するとなればどうしても傘は持ち歩かなくてはいけなくなります。
なにか画期的なアイテムが開発されるのを待つしかなさそうです。
群馬の自転車屋さんさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
撥水性と通気性に優れたレインウェアはありますが、自転車用に細かい配慮がされたものは、あまり選択肢が多くないように思います。
それだけ需要が少ないということもあるのでしょう。
傘さし走行は、自転車が駅までであり、電車に乗り換える人が多いという事情があるのはわかりますが、危険で迷惑、しかも違法なわけですから、何か違う手段を考える必要がありますね。
レインレッグス使ってます。
下半身で一番ぬれるのは、太ももなので、ちょっとした雨なら、撥水性のあるウインド・ブレーカーなどと組み合わせて使うのに、効果的です。
しかし、しっかりできすぎていて、カバー範囲が小さいのに、装着に時間がかり、折りたたんでも、ベルトやバックル類が多く、体積があります。
ということで、最近の日常使用は、ポンチョが多いです。写真のような、頭までカバーする物は、振り返ったときに邪魔になり、視界が悪くなるため、肩から下のみのキャラダイス製ポンチョと、オルトリーブのレインハットを併用しています。
ポンチョは、脱ぎ着が簡単で、構造がシンプルなので折りたたむと小さくなり、普段の通勤等の使用には便利ですが、ツーリングには使えないと考えています。昔は、使っていましたが、ある程度の雨だと、風が強いことも多いので、ばたついて使い物になりませんでした。
Bikesuitは、完全なカバーでいて、脱ぎ着がしやすそうで魅力的ですね。
確かに、傘は危険です。
レインウェアの方が良いのかもしれませんが
着心地の悪さに慣れません(笑)
いつも、外国の例を教えて下さってありがとうございます!
とても興味があります!
自転車における雨対策にも、豊かなアイデアが、たくさんあるものですね。
特にBikesuit、靴を履いだまま脱着できる、靴が濡れないような設計のカバーという点、そして透湿性、通気性への配慮もしっかりとある。
まさにサイクリストによるサイクリストのための、気遣いのある、心配りのある、ハートのある設計のように感じました。
自転車を愛する者が持つ、熱い心がひしひしと伝わってくるようです。
人々が自転車用品を購入して、使ってみて、思うこと、たくさんあると思います。
「ああ、ここが、こうだったらいいのなあ」
「こうすることなしに、なんとかならないものかなあ」
「もっとこんなかんじで、こんなふうに」
それらを解決するアイデア、発想を反映した商品を設計し、世に送り出す活動に、私は敬いの念を抱くばかりです。私もいずれ、そうありたいものです。
この度の記事で、なお見識を広めることができました。訪れるたび、新鮮な驚きや発見ばかりです。
動画や写真を活かして、なにより読みやすい文で丁寧に解説されてくださっているので、情報量が多い割にススッと入り、掴めるのが不思議な感じです。
製品設計もですが、ブログにおいて必要性や魅力を伝えることの熟達さについても、私はかくありたいと願いつづけています。
manさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですか、レインレッグス、使ってらっしゃいますか。なるほど、使ってみれば、まだまだ不満な点や改良すべき点は多いということのようですね。
確かにポンチョも一長一短があると思います。海外で、よくポンチョが使われているのを見かける地域がありますが、南国系の、おそらくスコールのように雨はふっても、あまり風は強くない、そんな雨のふる国では重宝するのでしょう。
Bikesuit、よさげに見えますよね。使ってみないとわかりませんが、ヨーロッパでは評判になっているようです。
これだけ自転車人口があって、雨の多い国なのですから、日本市場は業者にとっても魅力的だと思います。そのうち売り出されるかも知れませんね。
ピンクのロードバイクかずき(愛媛)さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
レインウェアは蒸れたり、暑かったり、動きにくかったり、着心地がいいとは言えないのは確かですね。
ただ、よくあるレインウェアは自転車用に考えられているとは言えないものも多いので、もっと工夫されたものが出てくれば、少しは違うかも知れません。
佐藤さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
日本の場合は、ママチャリで歩道走行をする人が圧倒的に多く、欧米諸国とは、自転車の使い方、自転車用品のニーズも違うところがあるのは確かでしょう。
街で見かける自転車用品にしても、当然ながらママチャリで歩道を低速走行するためのものが多いわけで、どうしても趣味のサイクリストにとって魅力的な商品は、欧米製のものということにならざるを得ないということでしょう。
Bikesuitも、これだけ自転車人口があって、雨の多い国、日本は魅力的な市場のように思うのですが、安い透明のビニール傘で充分と考えている人が多いのも確かで、そう考えると、日本ではあまり売れないということになるのかも知れません。
過分におほめいただき、恐縮です。ありがとうございます。
モンベルさん安くしてほしいな
色も一色だし
anonymousさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
モンベルは定評のあるメーカーですね。個人的には同社の自転車用雨具を使ったことがないので、使い勝手はよくわかりませんが..。
※全角800字を越える場合は2回以上に分けて下さい。(書込ボタンを押す前に念のためコピーを)