ただ、いまだに気温が25度以上の夏日の日もあって、朝晩は涼しくても、日中は動き回ると汗ばむ日もあります。着ていく服に迷うこともあるかも知れません。最近は機能性衣料で、薄着のように見えて暖かいものもありますし、秋の装いにも選択肢は増えているようです。
機能性衣料と言えば、日本のアパレルメーカー、ユニクロが発売した吸湿発熱素材を使った機能性インナー「、ヒートテック」が爆発的に売れたのが記憶に新しいところです。このヒットを受けて多くのメーカーが追随し、発熱素材の衣料は広く普及しました。
吸水(吸汗)、速乾性の素材はサイクルジャージなどにも採用されていて、サイクリストは大きな恩恵を受けています。愛用している人も多いに違いありません。撥水、防水、透湿などの素材と加工を組み合わせることで、雨や風は通さずに汗によるムレを防ぐものもあります。
近年の繊維の加工技術の進歩、技術革新によって、このほかにも多くの機能を持つ衣料が開発されています。伸縮性の高いストレッチ素材によって、足などを適度に締め付け、血行を良くしたり、むくみの改善、筋肉を補助するような機能を高めたものもあります。
形態安定素材によって、洗濯してもアイロンがいらないシャツとか、防汚素材で、汚れにくくしたものもあります。繊維そのものが軽い軽量素材を使ったものや、肌ざわりなどで涼感性があるもの、紫外線を遮蔽する機能により、日焼けによる肌のダメージを軽減するものもあります。
抗菌や防臭素材も普及しました。インナーなどに広く使われています。静電気が帯電するのを防止する素材は、スカートなどに最適でしょう。水着などに使われる透け防止素材だとか、燃えにくい衣料を製造するための難燃性、防炎機能を持つ素材もあります。
防ダニ、防蚊など、防虫や虫が嫌う成分を使った素材も開発されています。まだあまり聞きませんが、花粉対策の素材も研究されているようです。蓄熱して保温する素材もありますし、高強度による破れにくさ、防弾性能などを高めるものもあるようです。
そのほかにも、電磁波をシールドする素材だとか、遠赤外線を放射する素材、マイナスイオン素材、導電素材など、いろいろな機能を持つものがあるようです。リサイクルされた材料による素材や、土に帰る生分解素材など、実にさまざまな機能を持つ素材が開発されているものです。
私たちが普段着る服もそうですが、スポーツをする時に使われる各ウェアにも、こうした機能性素材が使われることで、近年性能が大きく進化してきました。機能性素材によって快適性がアップし、多くの人に恩恵をもたらしているのは間違いないでしょう。
登山などシビアな環境に遭遇することのあるスポーツでは、天候の急変や、寒い中で行動したことによる汗が体温を奪い、そのことが命に関わるケースもあると言います。天然素材と合成素材の差が生死を分けることもあるそうです。高機能なウェア、機能性衣料は、文字通り命を救うこともあるわけです。
実は、もっと身近な場面でも、私たちの命を救う可能性のある機能があります。それは、夜間の視認性です。リフレクター機能によって事故を防止し、命が助かる可能性があります。リフレクター・テープを取り付けたウェアだけでなく、光を反射する機能のある繊維を使ったウェアもあります。
自転車に乗るときだけてはありません。夜間の道路を歩いている際にも、視認性の高い服を着ることは、事故から身を守ることになります。高齢者などで、黒っぽい服装をしていたため、発見が遅れてクルマにはねられるような事故が実際に起きています。
快適性をアップさせる機能もいいですが、生死に関わる危険から救ってくれるとなれば、大きな価値のある機能と言えるでしょう。ただ、この機能は、実際に生命が救われていたとしても、それに気がつかない可能性があります。機能のないウェアと比較して実感するようなわけにはいかないのが問題です。
自転車本体にもリフレクターが装着されているからか、リフレクション機能のある服を着ている人は多くありません。しかし、自転車の小さな反射材では不十分な場合もあり、後方から見た断面積から言って、乗る人の背中など大きな面積を使えば圧倒的な威力を発揮します。
自転車のウェア類には、リフレクター素材を使ったものもあります。ただ、スポーツとして自転車に乗るのは昼間が多く、夜間走行する人はそれほど多くないでしょう。通勤や通学などで、夜自転車に乗る人は、必ずしも自転車用ウェアを着ていません。
自転車のウェアでなくても、反射素材を取り付けたベストだとか、ジャンパーなど、夜間の視認性を高めた製品もあります。夜間の道路工事現場で作業する人や警備をする人が着用しているのを見かけます。しかし、デザイン的な問題からか、一般の人で、わざわざそうしたベストなどを着ている人を見るのは稀です。
特に女性は、リフレクターテープを貼り付けたジャンパーなど、まず着ないでしょう。実際に夜間自転車に乗るときの服にリフレクション機能が使われていなければ意味がないわけですが、実際問題として、夜間の視認性の高い服装を着ている人など、ごく僅かなのが実態でしょう。
そんな中で一つの示唆を含む例があります。最近一部で注目されるブランド、“
VESPERTINE”です。このブランドは、Sarah Cannerさんという人が始めたもので、自身がデザイナーでもあります。ここの製品は、リフレクター機能のある繊維を使った女性用の服やアクセサリーなどを展開しています。
サラさん自身、サイクリストです。夜間の視認性の重要性を理解していると同時に、それを高める選択肢が足りないと感じています。そこで、特に都市のワーキングウーマンや自転車を使う女性に向けて、リフレクター機能を持つ製品を提案しているのです。インターネットを通じて販売もしています。
従来の機能だけを重視した服では、女性が敬遠するのも無理はありません。ふだん女性が身につけられて、しかも夜間の視認性に貢献するようなデザインが必要です。リフレクター効果の高いテープなどを使うだけではなく、反射機能のある繊維素材なども使っています。
スカーフやベルトなど、アクセサリーも展開しています。リフレクション機能のある服と言っても、毎日同じ服というわけにもいきません。しかし、アクセサリー類ならば、いろいろな服と組み合わせて使うことが出来ます。いくつかアクセサリーを持っていれば、毎日でも視認性に配慮することが可能でしょう。
夜間の視認性とデザインの両立は、充分可能だということがわかります。女性向けの服で出来るのであれば、男性用のデザインも充分可能に違いありません。こういう機能を持たせたアパレルは、もっと市場に出てきてもいいのではないかと思います。
発熱などの機能と違って、反射素材が実際に役立っているとの実感は薄く、その点でメーカーも売りにくい面があるのは認めます。しかし、特に希望しなくても、抗菌作用や防臭機能が付加されていたりする時代です。リフレクター機能を付加されていてもいいはずです。
デザイン性に配慮のないベストを普段着るのは困難でも、夜間の視認性について理解している人は、必ずしも少なくないと思います。それこそ国内の売り上高ダントツ一位のメーカーであるユニクロが、リフレクション・ウェアをシリーズで展開すれば、広く普及し、他社も追随する可能性があると思います。
震災以降、積極的に自転車を活用する人が増えています。今ならぱ、夜間の視認性いう機能が受け入れられる可能性があります。自転車に限らず、徒歩も含めて需要が期待出来るかも知れません。アパレル関係者には、是非検討してみていただきたいものです。
山中伸弥教授のノーベル医学生理学賞受賞、日本人にとっても誇らしいニュースです。iPS 細胞の早期の実用化も期待されますね。