しかし、野球のあまり盛んでないイギリス、それもロンドンでとなると話が違ってきます。最近ロンドンで話題のホームランと言えば、昨年から新しくスタートしたランニング愛好者向けのサービスのことです。“
Home Run”、文字通りホームへのラン、家まで走ることを意味しています。
近年、日本でもランニングはブームと言われ、ランナーズ人口は増えています。市民マラソンの大会には多くの応募が集まり、高い抽選倍率となっています。東京では皇居を周回するコースが人気となり、平日の夜でも多くの仕事帰りのランナーが走っています。
イギリスのこのホームランというサービス、仕事が終わってから、例えばバッキンガム宮殿の周りを走るのではなく、家まで走って帰ることを提案するサービスなのです。地下鉄などの交通機関を使う代わりに、走って帰るというわけです。
コースがいろいろ設定されており、参加者は自分の家のある方向へ向かうコースを選び、あらかじめ予約した上で、決められた集合場所に集まります。そこからホームランのリーダーに先導され、集まった人たちと一緒にグループランニングの形で、決められたゴール地点まで走ります。
つまり、自転車通勤ならぬランニング通勤ということになります。ペースは緩やかで誰でもついていけます。あらかじめ着替えて集合し、荷物はその場で預けると、一緒に走る自転車、カーゴバイクがまとめてゴール地点まで運んでくれます。そのまま家に帰ることが出来るわけです。

これならば、勤め先の近くを走ってから電車で帰る必要はありません。家に帰ってシャワーを浴びることが出来るので、ランナーズステーションのような施設の確保も不要です。通勤時間の満員電車に乗らずに済むばかりか、運動不足を解消できて健康にも貢献します。このあたりは自転車通勤とも共通します。
一人で走ろうにも、家まで直接帰る道なんて、普通は不案内でしょうし、荷物が邪魔です。勤め先の近くを走るには、シャワーがある施設の確保などの問題があります。家に帰ってから走るのは、どうしても億劫で続かないなんていう人にも、運動のきっかけになるかも知れません。

なんと言っても、運動する時間と帰宅の通勤時間が兼ねられ、時間の節約になるところが忙しい現代人向けと言えるでしょう。グループランニングで、新しい友人が出来たり、同じ趣味を持った人同士、ランナーのコミュニティが広がるといったメリットも得られるかも知れません。
そして、このサービス、無料というのも魅力です。ロンドンや全英のランナーズコミュニティ、情報サイトなどのパートナーや、企業などのスポンサーによって費用がまかなわれています。現在は無料ですが、万一このまま無料を続けられなくなったとしても、地下鉄代より安い、気軽に使える料金にするつもりだと言います。
おそろいのTシャツも無料で支給されます。「ホームラン」とかかれたシャツが、同じ方向に帰るというだけの参加者に連帯感を感じさせるのかも知れません。もちろん毎日参加する必要はないので、気が向いたとき、天気や体調を見て参加することができます。
走りたくなったら、その日であっても午後4時までなら予約できます。全てウェブを通じて手続き出来るので、キャンセルも簡単です。無料なのですが、他の参加者の機会を奪わないように、キャンセルも午後4時までに連絡して欲しいとなっています。
家まで距離があって、自分の脚力では走れないというなら、途中駅の近くまで走って、その後は電車で帰るなどの工夫も考えられます。ある程度、自分の家の方向に向かう道筋を知っておくというのは、災害時などの備えとしても有効なのではないでしょうか。

ロンドンでは、2005年の地下鉄やバスを狙った同時テロ以降、自転車通勤する人が増えました。また、今回のロンドンオリンピックでの市内の渋滞や、公共交通機関の混雑や遅延を回避するためにも自転車通勤の人気が高まりましたた。閉幕後も、そのまま続ける人が少なくないと報じられています。
自転車通勤は世界的にも増えていますか、ランニング通勤というスタイルの登場には意表を突かれた感じがします。このホームラン、やはりオリンピック期間の地下鉄の混雑回避という事情もあったようですが、オリンピック閉幕後もコースを倍増して継続されています。
これは、日本にもあっていいサービスではないでしょうか。日本でも、最近は夜走っているランナーを見ることが増えました。家の近くを走る人だけでなく、東京のように、仕事帰りに皇居を周回するような人も増えています。あまりに増えて、歩行者などとのトラブルも増えていると聞きます。
皇居を回る周回コースは信号がないので走りやすく、距離も5キロと区切りがよくて走行距離が分かりやすいこと、夜でも警察官が立っているので安心などの理由で、多くのランナーが集まります。でも、皇居を数周する距離を郊外に向かって走れば、意外に遠くまで行けるものです。
東京周辺のランナーにとっては聖地のようになっており、また事情が違う部分もあるでしょうが、皇居周回コースの混雑緩和にも役立つかも知れません。周辺のランナー用施設や銭湯なども混雑するそうですから、中には「ホームラン」に切り替える人も出てくるに違いありません。
この「ホームラン」のサービスは、ロンドン以外への展開も視野に入ってきたようです。ヨーロッパの他の国へ広がる可能性もあるでしょう。日本でも震災で帰宅難民の問題がクローズアップされましたから、歩いて帰宅するコースを知っておく点も含め、関心が高まる可能性もあるでしょう。
こうしたサービスが開始されるかは別として、ランニング通勤というスタイルは、目から鱗という人もあるのではないでしょうか。自転車通勤で、置き場所などに苦労している人は、ランニングの区間と自転車の区間を組み合わせるなんて方法も考えられるかも知れません。
山中教授に閣僚から洗濯機をプレゼントって、冗談じゃなく本気みたいですね。閣僚全員合わせて洗濯機一台って..。