大阪市では、撤去した放置自転車の保管期間を短縮する一方で、駐輪場の設置を進めているという話題でした。都市部の地価は高いので、駐輪場の増設は容易ではありません。そこで、歩道などの路上に駐輪機を設置する形で駐輪容量の増強が図られています。
大阪市が管理する歩道上のスペースを無償貸与し、民間事業者が駐輪機を設置します。占有使用料は免除しますが、その代わりに、売り上げに応じた納付金を受けとります。昨年度の納付金による収入は約1億円に上ったと言いますから、小さな額ではありません。
放置自転車の撤去、移送、保管、引渡しには多額の費用がかかっています。この方法を進めていけば、放置自転車の減少が見込めるばかりか、市の収入にもなります。放置自転車対策に頭を痛めている各地の自治体へも、この手法は広がっていく可能性があると思います。
違法駐輪が迷惑な行為であることは間違いありませんが、一方で市民の駐輪ニースがあるのも確かです。現状は格安なママチャリの流通もあって、放置自転車の撤去と放置が繰り返されるいたちごっこです。悪循環を断ち切るには駐輪場の増設しかありません。路上駐輪場は、都市の駐輪能力増強の有望な手段と言えるでしょう。
日本は、台数から言えば明らかに自転車大国です。しかし、自転車の走行環境と同様、駐輪場の数も収容能力も貧弱なのは間違いありません。ヨーロッパに行けば、自転車利用の多い都市、アムステルダムでもコペンハーゲンでも、街角に当然のように駐輪スペースや駐輪場が設けられています。
そこで日本でも、駅周辺にとどまらず、街全体に歩道駐輪場の設置を進めてはどうでしょうか。景観を問題にする人もありますが、歩道や歩道に接した部分には、標識や配電盤、自動販売機、看板など、雑多で目障りなものが多数あります。だからと言うわけではありませんが、多少景観的な面には目をつぶる手はあると思います。
幸か不幸か、過去40年以上、自転車を歩道走行させるような道路行政が行われ、歩道は一貫して広げられてきました。駐輪機を設置すれば歩道が狭くなりますし、邪魔と感じる人はあるでしょうが、充分にスペースがとれる歩道は少なくないはずです。
駅前以外でも、無秩序、不規則に自転車がとめられているより、決められた駐輪スペースに、駐輪機などを使ってとめさせたほうが整然とし、見た目にもスッキリします。きちんと整列して待ったり、ゴミをポイ捨てしないなど、公徳心の高い日本人です。駐輪する場所さえあれば、きちんと駐輪するようになるはずです。
実は、東京などでも、ここ十年で大幅に放置自転車が減っています。昔ほど、路上にあふれてどうしようもない状態ではありません。そろそろ街中に駐輪スペースを増やしていくことで、利用者に秩序ある駐輪を促し、駅前などでなくても、最寄の路上駐輪機にとめる習慣を促していったらどうでしょうか。
路上駐輪場が随所にあって、そこに駐輪することで撤去されずに済むならば、多少離れていても駐輪場にとめると思います。今まで、後ろめたい気持ちがありながらも仕方なく違法駐輪していた人も多いでしょうし、駐輪場が増えれば、確実に市民の利便性は向上します。
今まで、徹底的に撤去してきたやり方を「北風」とするならば、駐輪場を充分に供給する、言わば「太陽」的なやり方に変えると言ってもいいでしょう。料金も、出来れば最初2時間くらいは無料とし、一日とめても僅かな額、リーズナブルな額であれば、多くの人は駐輪機を使うのではないでしょうか。
そして、機械式の駐輪機もいいですが、地区ごと、場所ごと、自由に駐輪機の選定を認めてはどうでしょうか。一定の決まりを設けて、民間に設置させる方法もあると思います。世界には、いろいろ個性的な駐輪ラック、駐輪ポストがあります。中には、見ているだけで楽しくなってくるようなものもあります。
例えば、理髪店の前ならば、くしをかたどった駐輪ラックならば、お店のアピールにもなります。自分で費用を拠出してでも設置したい店もあるでしょう。専用のラックとして使えなくても宣伝効果は期待できます。ちょっと無駄な部分が多い気もしますが..(笑)。
場所によっては、壁に取り付けるラックも考えられます。角度を変えれば、歩道の幅にも自在に対応できます。朝夕のラッシュ時、歩行者が多く通る場所などであれば、時間を決めて角度を変え、歩行者の通行幅を広げるようなことも可能かも知れません。
道幅が狭いところならば、縦置きにするような工夫も考えられます。いろいろ変わったラックがあれば、どうやってとめるのだろうと興味をひき、とめてみたくなる人が増えそうです。スペースの幅も、場所によるでしょうから、ラックの形もいろいろあっていいはずです。
どこでも同じ、ありふれた機械式駐輪機にする必要はありません。もっとオシャレなラックをと考える地区も出てくると思われます。こだわるなら、専門家にデザインしてもらってもいいと思います。駐輪ラックによって、同じ商店街でも雰囲気が変わるかも知れません。
スペースに余裕のある場所であれば、ベンチと組み合わせることも考えられます。人が集まり、地区の憩いの場となるかも知れません。裏道ではなく、人の目のある場所に駐輪することで、盗難予防の効果が見込めるケースもあるのではないでしょうか。
日本でもよく見る駐輪機は実用的ですが、少々野暮ったい感じがするのは私だけではないでしょう。もっとシンプルだったり、デザイン的に優れたものが出てきても不思議ではありません。駐輪ラックであるというサイン、枠線など目印を決めておけば、多様性があってもいいと思います。
駐輪場所の位置を覚えてもらうため、インパクトのある駐輪ラックも面白いかも知れません。スペースの無駄だと言われそうですが、遊び心があると街が楽しくなります。地区のシンボルとなるかも知れませんし、話題となって人を呼び込み、地域の商業を活性化に貢献しないとも限りません。
公園など、歩道でない場所にも駐輪機を設置して、必ず決められた駐輪場所にとめる習慣を促すようにしたいものです。駅前など利用が集中する場所、料金収入が見込める場所以外では、利用を促すためにも無料にすべきです。簡易なものであれば、プランターに付属させるなど、低予算で整備することも可能だと思います。
日当たりのいい場所ならば、太陽光パネルを取り付け、発電する駐輪ラックも考えられるでしょう。最近増えている電動アシスト自転車の充電用に使い、そのぶん料金をとってもいいでしょうし、街灯などの電力用に使うことも考えられます。
こちらは駐輪ラックではなく、一昨年のシドニーのアートフェスティバルで街角にお目見えしたアート作品です。巨大な自転車のオブジェですが、こんな形、観覧車型の駐輪ラックが出来たら面白いかも知れません。回転させることで空中に駐輪するラックです。スペースの有効利用にもなります。
もし、こんなオブジェのような駐輪機が出来るくらいになれば、自転車が街角にとめられている光景は誰も気にならなくなることでしょう。そして、どうしてもスペースが乏しい場合、空中に吊り上げる駐輪機が許可されるようにならないとも限りません(笑)。
こうした楽しい駐輪場が増えれば、現状のように駐輪場をさがす苦労はなくなります。景観の悪化だと言う人は減り、自転車で出かけて、ユニークな駐輪場にとめるのが楽しくなるかも知れません。多少、私の妄想が入っていますが(笑)、歩道に駐輪場を増やすこと自体は、決して夢物語ではありません。
過去にも何度か取り上げましたが、2005年4月試行の法律で、歩道への駐輪場の設置が可能になっています。それを受け、駅前の歩道に駐輪させ、整理員が料金を収受するような場所も増えています。人を配置すると人件費もかかりますが、機械式駐輪機ならば、料金も安く出来るはずです。
冒頭に書いた大阪をはじめ、京都や神戸など、西日本では合理的な判断のもと路上に駐輪機を設置するところが出てきています。一方、個人的な印象だと、東日本では景観を損なうと否定的なところも少なくないようです。実際に、関西に比べて関東では路上駐輪機は少ないと思います。
関東でも駐輪機が増えた感があるのは、スーパーなど商業施設が敷地内に設置するものが多いからでしょう。歩道に接していても、歩道上ではありません。歩道に設置するのと景観的にはあまり変わりませんが、まだまだ自治体が歩道に設置するものは少ないのが現状だと思います。
しかし、大阪などでの好評を受け、他の地域でも歩道駐輪場の設置が進む可能性が出てきたと思います。多くの自治体で、撤去一辺倒ではなく、駐輪ラック、駐輪スペースを増やすことで迷惑駐輪を無くす方向に転換し、願わくば、街全体へも駐輪ラックの設置が広がっていくことを期待したいものです。
単なる暦の切り替わりとしても、5120年に一度しかないそうですから、珍しいというか、乾杯くらいすべきなのかも知れませんね(笑)。
私は、歩道上の駐輪場には反対です。歩道を削るのには賛成ですが、車道からアクセスするようにしなければならないと考えます。しばらく前に、歩道を削って、自動二輪の駐車スペース(車道からアクセス)と、自転車の駐輪スペース(歩道からアクセス)の話がありましたが、自転車も、車道を通行するのですから、車道からアクセスするのが筋だと思います。歩道からアクセスしにくくすることで、車道走行に誘導できるのではないでしょうか。
スレ違いになりますが、昨年、”小学校では、法律改正により車道は走れなくなった・手信号はしないように と教えている”というコメントをしましたが、本年も変わりはないようです(私の子供の通う小学校では、自転車に実地で乗る練習になってしまったため詳細は不明ですが、別の小学校ではそのように教えているそうです)。交通安全協会の(警察を定年した)お年寄りが説明しているようですが、走ってもよいなら、安心(安全ではない)側を走れということなのでしょうね。困ったものです。
いつも読ませていただいています。駐輪問題や広くいえば現在の自転車問題の遠因として、安すぎるママチャリの存在があることを指摘する人は多いと思います。ヨーロッパでは安い輸入自転車には高額の関税をかけることによって、自転車の品質と価格を一定レベルに保っていると聞きます。日本でも中国産などの格安のママチャリには関税をかけて、その税収によって違法駐輪対策や、駐輪場の整備、自転車レーンの整備などを進めたらどうでしょうか。自転車の利用環境が向上します。また、自転車の品質が向上することでマナーがアップし、不法駐輪が減少するという好循環が期待できます。さらに、輸入ママチャリが高くなれば、高品質の国産自転車がマーケットで競争力を回復し自転車産業が振興します。高品質の自転車は専門技術を持ったお店でないと扱いにくいので、町の自転車屋さんがまた起こってきます。好循環が始まるのです。これは初夢ですかね。