3月に入り、関東から中国四国、九州などでも春一番が吹きました。まだまだ寒い日もありますが、だんだんと春が近づきつつあるのを感じます。家に閉じこもってきた寒い冬に飽き、早く野外で活動したいと待ちかねている人も多いのではないでしょうか。
この時期は花見が待ち遠しい人も多いでしょうし、お弁当を持ってピクニックと考えている人もあると思います。あたたかくなったら、サイクリング以外にも、山歩きやキャンプ、バーベキューなど、アウトドアのレジャーを計画している人も多いに違いありません。
アウトドアでの楽しみの一つに野外での食事があります。お弁当や食材を用意していって、自然の中での飲食を楽しむ人は多いと思います。特別なものではないのに、屋外で食べると何でこんなに美味しいのだろうと感じた経験がある人も少なくないと思います。
キャンプやバーベキュー、ピクニックはもちろんのこと、トレッキングや登山に出かける人の中にも、わざわざ重い思いをしてでもバーナーやコッヘルをバックパックに詰めて持って行き、山頂で即席ラーメンなどの簡単な料理を作って食べたりしている人が少なくありません。
もちろん、おにぎりやサンドイッチを食べるだけでも美味しいですが、火を使って、その場で調理したりすると、さらに美味しく感じます。たいした料理でなくても、青空の下で調理して食べるというだけで、飛び切り美味しく感じるのはなぜなのでしょうか。
ところで、アウトドアで調理したり、野外で食事を楽しむのは、当然ながら日本人だけではありません。世界には遊牧民の伝統を持つ民族もありますし、アメリカの西部開拓時代など、歴史的な背景を持つ国もあります。ボーイスカウトなどによる野外教育が盛んだったりして、本格的な野外調理を楽しむ人が多い国もあります。
焚き火で直火焼きにしたり、ローストしたり、バーベキューグリルやダッヂオーブンを使うなど、それぞれのスタイルで野外料理で楽しむ人々がいます。道具も独特の文化や歴史の中で培われ、それぞれの国で好まれる料理、あるいは食材の調理にあったものが使われているようです。
そうした背景を踏まえた上で見てみると、この自転車用のアクセサリーも、リーズナブルなものに見えてきます。
自転車の荷台にセットするグリルです。自転車にセットしたままアウトドアで使うことが出来、野外でも焼きたての美味しいソーセージなどが食べられます。
ネット上で、これを最初に見たとき、自転車の荷台にバーベキューグリルとは、ジョークか何かと思いました。そのミスマッチ感に、奇をてらって人目をひこうとしたか、インパクトで笑いをとろうとした製品かと思ってしまいますが、そうではありません。
ターゲットは主にドイツ人です。ドイツでは全土を結ぶサイクリングロードなどが整備され、自転車で宿泊を伴った旅行を楽しむ人も多いなど、自転車によるレジャーが盛んな国の一つです。近年は若い世代にも人気があり、多くの若者が自転車で郊外にサイクリングに出かけたりして楽しんでいます。
一方、公園などに出かけアウトドアの調理と食事を楽しむのも人気になっています。この二つのトレンドの双方を狙ったのが、自転車の荷台に取り付けるグリルというわけです。奇をてらうどころか、マーケティングやトレンドの分析を元に考えられた製品なのです。
アウトドア用のグリルを自転車に積んで持って行っても良さそうなものですが、自転車の荷台をグリルのスタンドとして使うことが出来、そのぶん荷物がコンパクトになります。小さくても流通するソーセージのサイズなどを考慮し、効率的に焼くことが出来るようになっています。
自転車で出かけ、公園やロケーションの良い場所などに駐輪し、その場で調理を始めることが出来ます。食材などは別にリュックなどに入れて持っていく必要がありますが、まな板がセットされていたり、炭を入れるところや部品の収納場所が用意されるなど、使用する上での工夫がいろいろと凝らされています。
果たしてドイツでどれほどのニーズがあり、どのくらい売れるかはわかりませんが、なかなか面白い製品だと思います。自転車用品としては、かなり限られた用途向けですし、汎用性もありません。アウトドアクッキングやサイクリングが盛んとは言っても、わざわざこれを使う人は、かなり限定されるような気もします。
ただ最近は、例えば家電などでも、ニッチなマーケットを狙った隙間商品的な便利家電が売れていると言います。自転車用品も、汎用性の高いアクセサリー、オーソドックスなグッズはかなり普及しているので、こうしたターゲットを絞ったアイディア商品、新しいコンセプトでないと新たな需要は掘り起こせないのかも知れません。
自転車でバーベキューグリルを持っていくのは大変なので、サイクリングとアウトドアクッキングの両方同時には楽しめないと思いこんでいた人に、双方の両立へ背中を押す製品と見ることも出来るでしょう。言ってみれば、自転車生活を豊かにするアクセサリーです。
そう考えると、もっと他にもいろいろなアクセサリーが考えられます。自転車の荷台にセット出来る天ぷら鍋とか、たこ焼き機とか、ソーメン流し機があってもいいかも知れません。日本食や日本人の好み、日本のレジャーにあった自転車アクセサリーが考えられそうです。
この時期、山菜採りのシーズンが近づいていることを楽しみにしている人も多いと思います。私も地元の詳しい友人に案内してもらって山に入り、山菜をとってきて、帰ってきてすぐ天ぷらにして食べたことがあります。それまで山菜には、あまり興味が無かったのですが、認識を改めるきっかけになりました。
天ぷらにしてしまうなら、さほど鮮度は関係なく、採りたてでなくても良さそうなものですが、あにはからんや、採りたてだと、天ぷらにしても全く美味しさが違うことに驚きました。探す楽しさもありますが、わざわざ山に入って、新鮮な山菜を採りたいという人の気持ちがわかります。
自転車で山に出かけ、山菜を採って、その場で自転車にセットした天ぷら鍋で衣をつけた山菜を揚げて食べたら、さぞや美味しいことでしょう。現実的かどうかわかりませんが、新しいスタイルのレジャーが生まれるきっかけになる可能性もないとは言い切れません。
野外での調理以外にも、アウトドアのアクティビティーと自転車の親和性は高いわけで、自転車で釣りに行くためのアクセサリーとか、潮干狩り用、昆虫採集用、天体観測用といったアクセサリーだって考えられるかも知れません。売れるかどうかは別ですが..(笑)。
街の自転車ショップで、自転車に取り付けるバーベキューコンロが売られていたら、普通だったら笑ってしまうと思います。でも、そんな固定観念を覆すような、これまでにないアイディア、自転車生活を豊かにする目から鱗の提案、新たなレジャーを創造するような斬新な発想があってもいいのかも知れません。
WBCも始まりました。初戦は危なかったですが、1次ラウンドは問題ないでしょう。