東京ローカルの地味なニュースですし、巷では、ほとんど話題にもなっていません。これが直接職場までの自転車通勤をしている人にとって、大きな影響を及ぼす可能性のあるものだとは知らない人も多いのではないでしょうか。日本経済新聞から引用します。
通勤自転車に駐輪場、企業の義務に 都が条例
全国初、7月施行へ
自転車の放置対策や安全利用を促す条例が28日の東京都議会で民主、自民、公明などの賛成多数で可決、成立した。自転車通勤を認めている事業者に、従業員が駐輪場を確保しているかの確認を義務付けることが柱で、全国初。7月1日から施行する。
条例は都や自転車の利用者、販売店などの責務を明記。罰則は設けていない。就業規則で自転車利用を禁じていない事業者には、通勤で利用する従業員用の駐輪スペースの確保も義務付けた。
販売業者に対しては、ブレーキがないなど道交法に違反する競技用自転車(ピストバイク)の販売を禁止。販売中止勧告に従わない場合は、販売業者名を公表する。(後略 2013/3/29 日本経済新聞)
これによって今後都内では、自転車通勤を禁止する企業が出てくることが懸念されます。都心部など場所によっては自社内に駐輪場が無く、近隣にも駐輪場を借りるのが困難な職場もあるはずです。おそらく、結果的に周囲に迷惑駐輪を広げているような会社の存在が条例制定の背景にあるのでしょう。
都心の地価を考えれば、新たに用地を確保するのは困難です。会社にとっては、自転車通勤する社員のために駐輪場を設置するより、就業規則などで禁止したほうが費用もかからず、簡単で煩わしいこともないのは明らかです。社員が自らどこかに駐輪場を確保できれば別ですが、無理なら乗ってくるな、となるでしょう。
自転車通勤する社員が周辺の公道上に迷惑駐輪をし、企業がそれを黙認しているのは無責任というのは正論だと思います。公共の場所を一部の会社の一部の社員が占有し、通行の邪魔になったり危険が生じたり、救急や消火活動にも支障をきたしかねないとするならば、自治体としても看過できないのも理解できます。
ただ、最近日本でも自転車通勤をする人が増え、一部の企業の中には社員の健康増進を兼ねて積極的に奨励したり、補助を出したりするところも出てきていただけに、自転車利用の拡大という観点からは、残念なことと言わざるを得ません。直接ではないにしろ、都内の自転車通勤の拡大に水を差す動きなのは間違いありません。
以前にも書きましたが、同じような大都市でも、例えばニューヨークでは、従業員が通勤しやすいように駐輪スペースを確保した企業には、税制上の特典を与えるなど、積極的に自転車通勤を促進するため、それを助ける方向で政策を行っています。東京都のやり方には、自転車を利用させたくないとの意向が見える気がします。
今のところ、企業に対し駐輪スペースの確保を義務付けているものの、違反に対する罰則は設けられていません。7月にすぐに禁止というところばかりではないと思いますが、今後都内の企業としては、駐輪場を確保できない限り、簡単には自転車通勤を認められなくなっていくのは避けられないでしょう。
従業員としては、会社に自転車通勤禁止と言われたら、どうしようもありません。なんとか会社と交渉し、自転車通勤を続けられるように出来ないものでしょうか。この都条例の成立を受け、将来懸念される事態に向け、危機感を募らせている人もあるのではないでしょうか。
それぞれ会社によって事情は違うでしょうし、特別に何か上手い解決方法があるわけではありません。ここでは、何とか自転車通勤を継続できないかと考えている人のために、もしかしたら何かのヒントとなるかも知れない例を取り上げてみたいと思います。
要は、自転車を駐輪出来ればいいわけです。駐輪場が無く、周囲の道路上にとめざるを得ない状況を打開するため、どこかに駐輪スペースは考えられないでしょうか。例えばオフィスの中です。室内保管が出来れば、盗難防止やイタズラ防止の観点からもベストです。
なかなか、こんな職場は無いと思いますが、オフィスの片隅にデッドスペースは無いでしょうか。コートなどを掛けるラックの隣に、自転車ラックは置けないでしょうか。日本では、自転車の室内保管に違和感を持つ人が多いので難しい面もありますが、見慣れれば気にならなくなるかも知れません。
室内保管にするためフォールディング、折りたたみ自転車にする手は当然考えられるでしょう。小径のものならデスクの下あたりでも十分に置ける可能性があります。そのほかに、スペースがあるなら自転車保管用に大きめのロッカーを置かせてもらう手も考えられます。
ロッカーは無理でも輪行袋に入れてしまえば、とりあえず同僚や上司の違和感を防ぐことができる可能性もあるでしょう。ビルの地下に駐車場などがあるなら、そこにデッドスペースはないでしょうか。地下室や、その廊下などに駐輪ラックを取り付けてもらうようなことは出来ないでしょうか。
意外に盲点なのは屋上でしょう。エレベーターで上げることが出来れば、屋上は十分使えます。案外使われていないことも多く、通勤で利用するだけなら、朝夕に上げ下ろししても、それほど苦にならないと思います。屋上も盗難防止やイタズラ防止になります。
狭いエレベーターだったとしても自転車を縦にすれば十分入るはずです。もちろん社内やビル内の利用者の理解を得る必要がありますが、混雑時を避けるなど工夫をすれば、可能性はあるでしょう。屋上緑化やソーラーパネルの設置などの利用も広がっていますが、それらとの共存も十分可能だと思います。
もちろん、社外の駐輪場を探すことも有力な選択肢です。都心部の駐輪需要の拡大をビジネスチャンスと捉える企業が、駐輪場や車体の預かりに加えシャワーなどのサービスを提供する施設などを展開しはじめています。この条例によって、それらの施設の設置が進む可能性もあります。
自転車通勤をしている人なら、出来れば続けたいと考える人が多いと思います。条例の施行は7月であり、当面は罰則も無いので、多少の猶予はあるにせよ、条例に該当する人は、自転車通勤の断念に追い込まれないために、なるべく早めに保管場所の確保を考えておいたほうがいいのではないでしょうか。
自転車通勤は、企業にとってもメリットがあります。従業員の健康増進や生活習慣病の予防、ストレス解消効果による精神疾患などの予防効果も指摘されています。また、出勤前の運動は社員の集中力を高め、作業効率を上げるという研究もあります。
自転車通勤を始めて、その効果を実感として感じている人も多いに違いありません。決して社員の趣味のためではなく、仕事の上でも有効だというコンセンサスを社内で得ておき、自転車通勤への理解者を増やしておくようなことも有効かも知れません。
先般、猪瀬東京都知事がニューヨークに、交通やエネルギー政策のための視察に出かけました。都バスの運行を24時間化する構想をプチあげていましたが、本当に見るべきは、その自転車政策ではなかったかと思います。ブルームバーグ市長によるニューヨークの自転車政策は世界的にも注目されています。
当然ながら都知事は都市交通の専門家ではないですし、大勢の取り巻きがいたようですので、果たしてそのことに気付いたかどうかは定かではありません。東京都は巨大な組織ですし、条例は都の関係部局が進めているもので、必ずしも都知事の意向ではないと思います。
しかし、東京もオリンピックの誘致を目指そうというのであれば、自転車の活用はロンドンの事例や次のリオの取り組みを挙げるまでもなく、世界的な都市の趨勢でありトレンドとして理解すべきでしょう。迷惑駐輪対策の必要性は認めますが、結果として自転車の活用拡大に逆行するような政策は疑問と言わざるを得ません。
もちろん、秩序は必要ですが、本来自治体に求められる行政は、市民のニーズに応えることであり、規制を強化して市民の自由を奪うことではないはずです。放置自転車対策も、規制や撤去移送より駐輪場の充実こそ本来の姿ではないでしょうか。都には、そこのところを考えてほしいものです。
オランダの非営利企業が
人類初の火星旅行へ「片道切符」での募集を始めるそうです。宇宙旅行時代が近付いているんですね。
>同じような大都市でも、例えばニューヨークでは、従業員が通勤しやすいように駐輪スペースを確保した企業には、税制上の特典を与えるなど、積極的に自転車通勤を促進するため、それを助ける方向で政策を行っています。
都市で最高の乗り物は自転車であるというのに、日本の、それも代表的な都市である東京がこれでは、先進諸国から見ても極めて後進的で、残念な政策と私も見受けました。
鉄道でさえ振動公害や騒音公害が深刻な問題としてあり、痴漢被害や痴漢冤罪も多発、メタボリック症候群からの合併症も社会問題化。地下鉄への階段昇降も高齢者にとって大変な負担と聞きます。
バスも効率性からしてみれば素晴らしいですが、それでも自動車という側面があり、排気ガスや騒音、重量ゆえの路面損傷性も高い。
その点、自転車は排気ガスも騒音も出さず、軽量性ゆえに道路も傷めず、占有面積も極めてスマートで渋滞を生まず緊急車両の到着遅延も起こさない。そして健康増進効果は抜群。
先進諸国の多くが自転車を優遇するための優遇税制施策を推進しているなか、日本はいつまで孤立や後退を続けるのか。
そして、それは市民らの声、手で行政を動かして改善させてかなければならない問題であるとも思うところです。
自転車への優遇税制施策の推進は先進国の市街地としてやって当たり前、当然の施策であるとして
サイクルロード氏の駐輪スペース創設の着眼点は本当にすばらしいと思います。
デッドスペースの徹底的な有効活用、そして自転車優遇制度推進の提案。これらは自転車の前輪後輪に位置する重要ポイントとして徹底的にやっていきたいところであります。
自転車レーンや駐輪場もろくに整備せず、そのうえ制度で自転車を押さえつけて何がオリンピックだという声の高まりを感じ、それは至極当然でまっとうな意見としてあります。