その信号機にもいろいろ種類がありますが、基本的にはこういうものという常識が人々にあります。最近は電球からLEDになったりしていますが、基本的な機能は昔から変わっていません。そんな中、日本初という信号がさいたま市に登場しました。
歩行者優先、車来るまで「青」 日本初、さいたまの交差点
さいたま市浦和区の通学路に、車が近づくまで歩行者用信号が青表示を続けるスクランブル交差点がある。「子どもに優しく、渋滞も起きない」と地元の評判は上々だ。
同区北浦和5の住宅街にある「常盤中学校南側交差点」。片側1車線の細い市道だが、近くに保育所や学校があり、朝夕の通学と下校時間帯には1時間に400〜600人が横断。車は、同じ時間帯に100〜200台が通過する。
3年前まで、通常の交差点と同様に縦横に横断歩道があり、信号は車や歩行者の有無にかかわらず順次、赤と青を繰り返していた。埼玉県警によると、朝夕の歩行者の待ち時間は平均96秒で、信号無視もあったという。
県警は2010年春、「歩行者最優先」をコンセプトに、約1年かけて高度画像センサーを組み込んだ日本初の信号制御システムを開発した。
交差点はスクランブル化され、車が来ない時、歩行者用は常に青信号で、車用は東西、南北方向とも赤信号。例えば東側から車が近づくと、カメラ型センサーが感知し、歩行者用は全て赤になり東西の車用が青になる。車の流れが途切れない時は一定時間がたつと車用が赤に戻る仕組みだ。
11年3月に運用を始めると、歩行者の待ち時間は平均50秒に短縮された。ただ、この制御システムを導入したスクランブル交差点は全国でここだけ。車の通行が一定量以内で、かつ歩行者が多くなければ効果が出にくいといった課題がある。システムを開発した交通規制課の山崎晃由課長補佐は「今後も改良し、歩行者優先の道路交通環境づくりに努めたい」と話している。(2013/6/20 日本経済新聞)
クルマが来ない限り青信号で、歩行者は両方向とも常に渡れるという画期的な信号機です。「歩行者最優先」というコンセプトも、これまでに乏しかった発想と言えるでしょう。これまでは歩行者優先とは言いつつも、渋滞防止など、クルマにも十分に配慮するのが当たり前という考え方でした。
クルマがあまり通らないのに、一定間隔で青と赤を繰り返すというのも、考えて見れば不合理です。クルマが全く来ないのに、律儀に待つのは日本人くらいと言う人もいます。クルマが来なくて安全ならば、赤信号でも横断してしまうという歩行者や自転車は少なくないと思います。
自転車の信号無視を擁護するつもりは毛頭ありませんが、そういう場所で信号無視を繰り返した結果、赤信号を無視することに罪悪感を感じなくなるということもあるのではないでしょうか。言い方は悪いですが、出来の悪い信号機のせいで、信号の遵守精神が損なわれているという側面があるようにも思います。
もし、この埼玉のようなインテリジェンスな信号が普及すれば、横断もスムースになりますし、信号が赤の場合は、本当に危険だから止まろうということにもなるかも知れません。青赤は一定の間隔で変わるものという信号の固定観念を覆すという意味で、なかなか画期的な信号機ではないでしょうか。
ちなみにこの記事では、自転車が車道を走ってきた時、感応して青になるのかは書いてありません。もし青にならないとすると、他のクルマが来るまで通行できないことになってしまいます。降りて歩く手はありますが、待ちかねて、信号無視を誘発しかねない可能性があるところが気になります。
埼玉県は、「自転車王国」を掲げて観光振興を図ろうとしているくらいですから、今どき、自転車の車道走行を考慮していないことは無いと期待します。おそらく、自転車が来ても、新たに組み込まれた高度画像センサーで感知してくれるのでしょう。
歩車分離式信号 全国1位に 整備率8・63%
交差点内の歩行者と車の通行を分離する歩車分離式信号が昨年度までに県内全22警察署管内の計298カ所に整備され、県内の全ての信号機設置箇所に占める割合(整備率)が8・63%と全国平均(3・44%)を上回り、全国1位になった。県警が19日発表した。県警交通部は、人身事故抑制に効果があるとし、2014年度末の整備率10%を目標にさらに整備を進める。
歩車分離式信号は、歩行者用信号機が青の時、右左折する車両用の信号が赤になるなどして歩行者と車の通行を分ける仕組み。県警は児童の通学路を最重点に整備を進めてきた。県警は02年に、押しボタン式の歩車分離式信号機を考案。歩行者がボタンを押した時だけ車が交差点に進入できないため比較的渋滞が起きず、導入に地域住民の理解が得やすかったことも普及率向上につながったという。
同部によると、同信号機が整備された116カ所で整備前後の3年間、事故発生状況を調査したところ、横断中の歩行者と車両の事故は、整備前の45件から整備後は10件まで減少したという。町田修次交通部長は押しボタン式の普及を念頭に「ドライバーの無駄な待ち時間もなく、事故の抑止効果もあるので導入を進めていきたい」としている。(06月20日 信濃毎日新聞)
長野県でも独自に考案された信号機が導入されているようです。考えてみれば、信号のある交差点は、一つひとつ立地が違い、事情が違うわけですから、もっとその場所に合った信号機であってもいいはずです。あまり原則を外すと混乱が起きるので限度はあるとしても、もっとインテリジェンスなものが増えてもいいでしょう。
最近はセンサーや処理システムの進歩も目覚しいものがあります。半導体製品もどんどん安くなる傾向にあるので、もっといろいろな信号機が開発されてもいいのではないでしょうか。その場所の事情にあった信号機にカスタマイズする柔軟性が、もう少しあってもいいと思います。
既存の信号機でも、例えば押しボタン式の歩行者専用信号で、ボタンを押してもなかなか変わらないものがあります。本来なら、歩行者優先の立場から、ボタンを押せばすぐ変わってもよさそうなものですし、即変わるものもあります。このあたりは、もう少し配慮できるのではないでしょうか。
日本では自転車用信号は、ごく限られた場所にしかありません。歩行者用の地下道などがある交差点とか、クルマの進入禁止の道路に向かう交差点の信号などです。また、普通の信号に「自転車用信号」と書かれたもので、海外で見られるような、自転車のマークをしていて、一目で自転車用信号とわかるものではありません。
場所にもよると思いますが、わかりやすい自転車専用信号機を取り付け、他の交通とは別のタイミングで横断させるなどすれば、自転車の安全性が高まるようなケースもあると思います。車道走行を促したり、逆走を防ぐことにもつながるかも知れません。自転車用信号も、もっと活用の方法があるような気がします。
信号機も、固定観念を捨てて考えると、より合理的で新しい信号機の形が見えてくる可能性があります。信号機だって、技術革新により変化していってもいいと思いますし、特に、それが安全の向上につながるなら、なおさらでしょう。まだまだ信号機は完成型ではないはずです。
富士山が世界遺産に登録されました。日本人にとって特別な山ですからね。観光客が増えての環境悪化が、ちょっと気になります。
Posted by cycleroad at 23:30│
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