電車の中などでも多くの人がスマートフォンなどの携帯端末を使っています。屋外でも情報が取得出来て便利ですし、どこでもコミュニケーションがとれたり、暇つぶしにもなります。メールのチェックなどを電車の中で済ませて、時間を有効に使おうという人もあるでしょう。
便利なのは間違いありませんが、電車の中でスマホを使っていると、つい電車から降りても、そのまま使い続けてしまう人が出てきます。歩きながらスマホを使っている人も多いのではないでしょうか。しかし、これが最近問題となりつつあります。
歩きながらスマホを使う人は、駅の構内やホームなどでも日常的に見かけます。どうしても周囲が目に入らなくなりますし、歩く速度が遅くなったり、突然立ち止まるなどして他の人と接触し、思わぬトラブルになります。線路に転落したり、何かに激突して怪我をするといった事例も増えているようです。
駅だけではありません。つい先日、住宅街を歩いていたところ、前方を歩いていた若い女性が、電柱に思い切り激突する場面を偶然目撃しました。後ろからは見えませんでしたが、スマホを見ながら歩いていたのでしょう。特に暗い道ではありませんでしたが、電柱が全く目に入らなかったようです。
相当大きな音がしましたので、かなりの衝撃だったと思います。後方からなのでよく見えませんでしたが、顔面に怪我を負ったと思われます。でも、恥ずかしかったのか、なんとか体勢を立て直し、何事もなかったかのように、後ろも振り返らずに歩き去っていきました。
静止物への衝突だけでなく、足を踏み外して側溝に転落したり、つまづいて転倒して怪我をするような例もあります。クルマとの事故にもつながりかねません。周囲への注意が散漫となり、無防備になれば、いろいろなトラブルにあいやすくなるのは明らかです。
さらに最近見かけるのは、自転車に乗りながらスマホを使っている人です。信号待ちだけでなく、走行中もチラチラとスマホに視線を落としながら、器用に走っている人がいます。これは非常に危険な行為であり、当然ながら道路交通法違反として罰金刑になります。
自損事故を起こすだけなら自業自得と言うことも出来ますが、道路上には歩行者や他の自転車、クルマなどがいるわけで、それら他の交通を巻き込みかねず、非常に迷惑で悪質な行為と言わざるを得ません。自分の都合で済まされる話ではありません。こうした行為は取り締まりなどで、禁止を徹底していく必要があります。
ただスマホを使いながらの走行ではなく、例えばスマホをナビとして使うようなケースもあります。自転車用の専用ナビもありますが、スマホの普及で、手軽に自転車でナビが使えるようになってきました。これはスマホの普及が自転車の利便性が向上させる事例と言えるでしょう。
スマホで地図をチェックしたり、近くの施設の検索をしたりするのは、停止して行うべきですが、道順をナビゲートさせる場合、ある程度は走行しながら確認する必要が出てきます。そうでなくては、いちいち止まって紙の地図を広げるのと変わりがなくなってしまいます。
スマホを手に持ちながらではなく、ハンドルバーなどに固定するのは当然としても、走行中にスマホの画面に視線を落とす必要が出てきます。その間、どうしても周囲への注意は散漫になりますし、危険に気づくのが遅れることになるという問題があります。
そこで、画面を注視しなくても、スマホを有効に使える方法はないかと考える人が出始めています。例えばこちら、“
Helios Bars”です。どんな自転車でもハンドルバーを変えることで、インテリジェントな未来の自転車、スマートバイクに変えることが出来るというコンセプトです。
基本的な機能としては、統合されたライトとウィンカーを提供します。センサーによって、乗車時だけ自動的にライトを点灯させたり、ウィンカーを点滅させることが出来ます。スピードによって色が変わるLEDによって、夜間など速度が確認しづらい場面でも、体感的なスピードメーターとして機能したりします。
さらに、スマートフォンなどとブルートゥースなどを介して連携させることも出来るようになっています。例えば目的地の最短ルートをナビゲートさせる場合、曲がる方向を左右のターンライトで確認することが出来ます。これならば、小さなスマホの画面を注視する必要はありません。
ハンドルを交換するだけなので、ほとんどの自転車にインストール出来ます。自転車に乗っている間に使うスマホの機能は、ライトで表示させるくらいで十分であり、それ以上の細かい表示や確認は危険というわけです。それ以上必要ならば、停止して使えばいいことであり、そのほうが安全で確実です。
ハンドルに組み込まれているので、ライトが盗まれにくいのもメリットでしょう。でも、自転車ごと盗まれてしまえば意味がありません。そこでGPSによって、自転車をトラッキングする機能も搭載されています。盗まれた場合に、自転車の位置情報を発信し、発見を助けます。
窃盗犯が、なんとかこのハンドルバーのバッテリーを外すことに成功しても、最高15日間持続する予備バッテリーが仕込まれており、自転車の位置を追跡することが出来るようになっています。そのほかにもスマホと連携させることが出来るようになっています。
同じような発想を、
ヘルメットに組み込むことを考えた人もいます。ヘルメットに組み込む利点は、自分の自転車だけでなく、例えばバイクシェアリングの自転車に乗るような場合でも使えるところです。ヘルメットに取り付けられたLEDなどによってスマホからの情報を確認することが出来ます。
これによってナビゲーション、例えば、走行中に自転車シェアリングの最寄のステーションを検索させ、その位置を光によって誘導させるような使い方も出来ます。ヘルメットの外側でなく、内側のLEDの点灯・点滅によって方向がわかるようになっています。
これは身体に着用して使う、いわゆるウェラブルコンピュータのプラットフォーム、“FLORA”と呼ばれるシステムを使っています。これをヘルメットに仕込み、LEDなどをつなげて自作しています。これはニューヨークの“Citi Bike”用に作られたものですが、スマホと連動させて、さまざまな機能を持たせることが可能です。
ヘルメットに取り付けられた派手なLEDは夜間の視認性を向上させ、安全の確保にも貢献します。自転車に乗っている間は、周囲の状況などの安全に直結する情報、実際に見えているものが大切であり、他の情報は、ヘルメットから目の端にでも伝えられれば十分であり、そうすべきだとの考え方なのでしょう。
ハンドルバーもヘルメットも、スマホと連動させて機能します。新たなアイテムとして自転車用のモバイル端末を開発しようというものではありません。自転車に乗っている時の人間とスマホを仲介するもの、いわばインターフェースの役割を果たすアイテムです。
スマホの画面も、スマホと人との間を仲介するインターフェースです。高精細で多くの情報を伝える方向に進化しています。しかしこのインターフェース、自転車用には不向きです。情報が多すぎますし、そもそも画面を注視しなければならないのが危険だからです。
いかに通常の視野をさえぎることなく、周囲の状況という大切な情報取得を邪魔することなく、スマホからの最低限の情報を知らせるかという、通常のスマホのインターフェースとは違った考え方が求められるわけです。使う人間のほうも、このことを理解してスマホを自転車で使うべきでしょう。
スマホの普及が急拡大する中で、まだまだこうした部分は未整備であり、遅れています。スマホのアプリの開発者も、自転車利用時のインターフェース、自転車モードのようなものを、もっと考えて欲しいと思います。簡潔に伝え、画面を注視させないことで、走行の危険を減らすことが求められます。
自転車はシンプルが一番、自転車を電子化したり、余計な電子機器を積むべきではないと考える人も多いと思います。しかし、一般的な利用者のレベルでは、世の中のスマホの普及により、自転車に乗りながらスマホを使いたいと考える人、使いたいシーンが増えていくことでしょう。
自転車に乗ってスマホを使う、使わないは自由ですが、使う場合にも走行の安全性を阻害せず、また周囲に危険が及ばないようにするための方策の整備は急務だと思います。自転車でスマホを使う場合には、専用のインターフェースが必須であるという認識を、まず広めることも必要なのではないでしょうか。
100周年のツールドフランスが始まっていますね。新城選手も頑張っています。