今までの考え方では防げない
自転車の盗難事情が変わってきているようです。
趣味でスポーツバイクに乗っている人にとって、一般的なママチャリなどの盗難事情については、あまり関心のないところかも知れません。しかし、ここのところ、メディアが言うところの「高級自転車」、スポーツバイクの盗難についての報道が相次いでいます。
ワイヤ錠切断、分解・転売も…高級自転車盗激増
健康志向やエコブームで自転車の人気が高まる中、ファッション性やスピードなどを兼ね備えた「高級自転車」は特に注目を集めている。
一方、こうした自転車の盗難被害も年々増え、東京都内では、2006年に181件だった10万円以上の自転車の被害が、11年には約4倍の686件に激増した。
頑丈なワイヤ錠を付けていても工具で断ち切られたケースもあり、車体が分解されて海外に転売された例もあったという。警視庁幹部は、「庭先から盗まれる事件も目立っており、家の中に収納するのが基本だ」と注意を呼びかけている。(2013年6月22日 読売新聞)
アシ代わりにちょっと拝借というような犯行ではなく、高価なスポーツバイクを盗んで換金を狙う犯行が増えているようです。駐輪場などからだけでなく、自宅の敷地内から盗まれる例が目立つと言います。警視庁が自転車の室内保管を呼びかけるほど、被害が激増しているということなのでしょう。
そんな中、これまでにない手口による事例が報告されています。自転車専門誌編集長の自宅から、高額なスポーツバイクが盗まれたのですが、なんと盗む前にネットオークションに出品し、売れてから盗むという、新手の手口です。少し長いですが、産経新聞の記事から引用します。
ネットオークションで出品→落札→盗難 順序逆転の自転車ドロボーとは
他人の自転車を無断でインターネットオークションに出品し、落札が決まった後に盗み出す−。こんな大胆不敵な窃盗事件が、東京・池袋で起きた。自転車専門誌編集長の田村浩さん(41)が自宅から高級自転車9台を盗まれたのが6月17日。その後、被害品を含む6台が5日前にネットオークションに写真付きで出品され、事件直前に落札されていたことが分かった。近年のサイクリングブームで高級自転車の盗難被害が急増しており、順序が逆転した新手の手口に警視庁も警戒を強めている。
知人が落札、70万円の高級品も 同じ生活圏か
「ネットオークションで自転車を落札したが、これは盗まれた田村さんのものじゃないのか」
田村さんは17日午前、知人からメールで連絡を受け、指摘されたオークションサイトを閲覧して愕然(がくぜん)とした。自分の愛車が身に覚えのないところで、オークションにかけられていた。
知人は田村さんがブログなどで盗難被害を訴えているのをみて、慌てて連絡してきたという。田村さんは出品された日付を確認し、もう一度、驚いた。被害に遭う5日前の12日となっていたからだ。
田村さんによると、最初の盗難は17日未明。田村さんの妻が豊島区内の自宅で、不審な物音を聞いて外に出たところ、ガレージに保管していた自転車12台のうち3台が盗まれているのに気付き、警視庁に被害を届け出た。
池袋署による実況見分が終わった後、田村さんは無事だった残り9台のうち3台を室内に移動。6台はそのままガレージに残し、同日午前7時ごろに改めて確認したところ、6台ともなくなっていた。
被害品の中には1台約70万円する高価なものもあり、被害総額は約220万円に上るという。
オークションサイトには被害品9台のうち4台と、室内に移した2台の計6台が、同じ「ID」の利用者によって出品され、16日までに1台5万〜17万円で落札されていた。知人が落札したのは、盗まれなかった1台だった。
出品者は商品の引き渡し場所に田村さん宅に近い、JR池袋駅や東京メトロ有楽町線の要町駅周辺を希望。生活圏が同じで、事前に田村さんが自転車の洗車や整備を行う様子を目撃するなどして狙いをつけていた疑いがあるという。
サイクリング人気に便乗か 盗品出品でトラブルも
近年の健康志向やダイエットブームで、サイクリングはランニングやウオーキングと並んで人気が上昇し、競技人口は1000万人を超えるとされる。ネットオークションでも人気のカテゴリーで、大手サイトでは自転車本体のほか、サドルやペダルなどのパーツごとに30万点以上が出品されている。
田村さんは「お買い得な商品を探すこともできるし、他では手に入らない掘り出し物のパーツが見つかることもある。愛好家にとって、ネットオークションは一大マーケットになっている」と説明する。
出品者は他にも多数の自転車を出品しており、自転車がネットオークションで人気が高いことを把握した上で、盗品を出品して現金を得る目的だった可能性がある。
国民生活センターによると、ネットオークションをめぐるトラブルの相談は、平成24年度に6641件あった。大半が「掲載されていたのと違う商品が届いた」「落札者から入金がない」などだが、中には「盗まれた自分の所持品が無断で出品されている」というものもあるという。
今年2月には北海道に住む20代男性が「物置に置いていた工具が盗まれ、出品されている」と相談。3月には、関東在住の30代の男性も「盗難にあった自転車がオークションに出されている」としてセンターに相談していた。
高級自転車、盗難被害4倍に 保管の手間省く?
サイクリングブームに合わせるように、高級自転車の盗難被害も急増している。都内の自転車盗の認知件数は5万〜6万件で推移しているが、10万円以上の高級自転車の被害は18年の181件から23年には686件と約4倍になっている。
路上駐車や自宅などでもロックをかけていない自転車が狙われるケースが多いという。田村さんの自転車もカバーを掛け、さらにブルーシートで覆われていたが、ガレージには誰でも出入りできる状態だった。
その後、被害品の4台が自宅近くの駐車場に捨てられているのが発見された。 犯人は少なくとも1回は下見をし、自転車を撮影だけして立ち去っており、捜査幹部は「盗む前にオークションに出す手口は聞いたことがない。盗品を保管しておく手間を省くことや、保管中に摘発されることを避ける狙いがあるのだろう」とみている。
田村さんの妻がガレージから逃走する30〜40代の男を目撃しており、警視庁はネットオークションの出品者との関連を調べる。田村さんは「事情を知らずに落札した人も被害者になる。盗品の出品は絶対に許せない」と話している。(2013年06月30日 産経新聞)
被害者の田村さんは、ハンドルを左にして自転車の写真を撮っていることを指摘しています。普通ならパーツなどが見えるよう、自転車の右側から撮るのが自然でしょう。犯人は自転車に詳しくない人物、あまり興味の無い人物であろうと推測しています。
逆に言うと、「売れてから盗む」という方法をとれば、自転車の知識が乏しくてもオークションで売りさばき、確実に売買益を手に出来るというわけです。売れるかどうかわからないのに盗んで検挙されるリスクを増やすこともないわけで、犯罪者をほめるつもりはありませんが、なかなか考えた行動です。
盗んでから出品したのでは、被害者に発見され、落札されて検挙される可能性もあります。盗まれてもいないのに、ネットオークションを確認する人はいないでしょうから、その意味でも合理的な犯行と言えます。盗品を保管する手間やスペースも少なくて済みます。
駐輪場や、出先での盗難は警戒しますが、まさか自宅の庭先から盗まれるとは思わなかったという油断があったのかも知れません。ただ、田村さんは、ガレージ内であっても、外から見えないようにシートをかけるなど、警戒していなかったわけではないようです。
おそらく、自転車の出し入れの時に目撃されたか、尾行されたか、いずれにせよ目をつけられてしまったものと推測されます。丹念に物色してまわっていたのかも知れません。そして獲物を見つけ、他人の家に進入し、庭先でまずオークション用の写真を撮るという大胆不敵な犯行に及んだのでしょう。
サイクリストにとっては憎むべき犯行であり、到底許すことは出来ません。被害に遭った田村さんは、まことにお気の毒であり、犯人が検挙されて愛車が戻ることを願うばかりです。同時に他のサイクリストは、これを教訓にさせていただき、同様の被害に遭わないよう気をつけたいものです。
警察関係者などが指摘しているように、今後このような手口は増える可能性がありそうです。自宅の敷地内であっても、なるべく室内保管をしたり、施錠を厳重かつ盗まれにくいものにする、ロッカーなどの中に入れるなど、対策をとる必要があると思います。
高価なロードバイクを狙う自転車盗難が急増。プロ窃盗団の手口とは
自転車盗難事件が増加する一方だ。警視庁のまとめによると、今年6月末現在の都内の自転車盗難(自転車盗)事件発生件数は2万6485件。前年同期に比べ、1000件近くも増えている。特に被害が目立つのが、池袋や新宿といった副都心。そして中野駅、下北沢駅、蒲田駅、新小岩駅など、自転車利用者が多いと思われる駅周辺にも被害が集中している。
これまでこうした自転車盗のほとんどは、「歩くのがめんどくさい」といった、いわば行きずりの衝動的な犯行だった。しかし、最近ではスポーツバイク、なかでも高価なロードバイクが狙われ、窃盗団によるものと思われる犯行が急増しているという。
だが、高価なロードバイクであれば、当然オーナーがきちんとカギをかけてあったはず。どうして、そうした自転車が盗まれてしまうのだろうか。カギのトラブルとセキュリティの専門家で『カギの救急車 新宿店』のセキュリティ部部長の佐野誠一氏はこう指摘する。
「実は、自転車用として販売されているカギに、本当の意味での防犯性能を満たすものがほとんどないんです。自転車のカギには携帯しやすいサイズと重さが求められています。そのため、自転車用のカギの多くはワイヤーロックやチェーンロックです。しかし、これらのカギは窃盗団が使う工具の前にはまったく無力なんですよ」
佐野氏によれば、一定レベル以上の防犯性能を求めるのであれば、自転車用ではなく、バイク向けに作られた太いチェーンロックやU字ロックを選ぶしかないという。
「こうしたカギは、重くてかさばり、自転車で持ち歩くには不便です。そして、そこまで気を配っても、盗難対策としては万全ではないのです。電動工具を使う窃盗団の手にかかれば、ほんの数十秒でカギそのものが破壊されてしまいます。また、カギ穴がある以上、“カギを開ける”ことを防ぐことは不可能です。手馴れたプロなら、比較的セキュリティが高いといわれるディンプルタイプのカギでも、早ければ1分、多少手間どっても5分くらいあれば開けてしまいますから」(佐野氏)
音は出るものの電動工具で瞬時にカギを壊すか、じっくりとピッキングでカギを開けるかは、シチュエーション次第。こうした窃盗団は複数のメンバーで行動し、監視係がロードバイクを離れたオーナーの行動を実行部隊にケータイなどで逐一報告、実行部隊が堂々と作業する時間をつくる例もある。
健康&エコ志向を受け、ロードバイクは急速に売れ行きを伸ばしてきた。だが、それに応じて盗難件数も増加。しかも、プロの窃盗団に狙われたら、もう逃れようがないというわけだ。(2011年08月05日 週プレニュース)
盗まれるのは、自宅からだけとは限りません。少し前の記事ですが、プロの窃盗団の犯行と見られる盗難事件が増えていると報じられています。プロが使うような工具なら、相当頑丈なロックやチェーンでも簡単に破壊出来るでしょうから、確かに防ぐのは困難と言わざるを得ません。
しかも、複数で犯行に及び、監視係が駐輪場所から離れたオーナーの行動を実行部隊にケータイで報告し、実行部隊が作業する時間をつくるということであれば、まさに狙われたら最後、防ぐのはほとんど不可能に近いと言えるでしょう。
以前、私の知り合いが郊外のショッピングセンターで食事をした僅かな間に盗難にあったという話を書きました。いつも駐輪している場所なら目をつけられた可能性がありますが、たまたま駐輪した場所で僅かな間のことです。もちろん施錠していたのですが、プロに目をつけられたら、ひとたまりもないということなのでしょう。
これを防ぐには、もはや自転車から離れないか、常に見張れる場所に置いておくくらいしか防止策は考え付きません。しかし、出かけてから帰宅するまで、ずっと自転車から離れないでいるしかないというのも不便ですし、現実的ではありません。その意味でも完全に防ぐのは困難でしょう。
出来れば、ネットオークションで盗品を売りさばけないようにして欲しいものです。しかし、これだけ市場が拡大し、利用が広がっていることもあって、有効な対策が期待できる状況ではないようです。便利で安く手に入りますし、オークションで買うなというのも無理があります。
高価なスポーツバイクに乗っている人にとっては憂慮すべき事態です。ただ、完全に防ぐのは困難としても、プロの犯行が激増していることを認識し、手口を知っておくだけでも、多少リスクを減らせる可能性があります。今まで平気だったからと過信せず、これまでの盗難防止策を見直してみるべきかも知れません。
参院選が公示されました。ネット解禁で、選挙カーからの耳障りな連呼が少しは減るのでしょうか。
Amazonの自転車関連グッズ
Amazonで自転車関連のグッズを見たり注文することが出来ます。
Posted by cycleroad at 23:30│
Comments(6)│
TrackBack(0)
この記事へのトラックバックURL
会社の従業員が
購入したばかりの
ロードバイク(購入価格10万円)を
自宅の玄関の前に施錠して置いておいた
所
約一か月で盗難に。
ネットオークション、中古自転車販売店
「○○○リー」等探しましたが
結局見つからず。
10万円なら高額とは言えないかもしれませんが
まだ10代の青年なので
かなりショックなようでした。
最近は換金するシステムが容易にあるので
素人でも簡単に盗んで売りさばける状況にあります。
フレームなら一応、製造番号がありますが
プロにかかれば何の対策にもなりません
(防犯登録も効果無しに等しい)
ましてバラしてパーツでの転売なら足が付く可能性は限りなくゼロになります
おそらく窃盗、解体、または再組み付け、転売等
システムが構築されているのではないでしょうか
今後は主な高額パーツだけでもICチップ等、管理タグを埋め込んで
(偽装、なりすまし、改ざん等の問題も発生しますが)
個人データ管理する必要があるかもしれません…
ロードバイク初心者さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
値段はともかく、愛車が突然盗難に遭えばショックですね。買ったばかりでなく、長年馴染んだもの、思い入れが強いものもショックでしょう。
オークションなどで換金が出来るのが問題というのは、その通りだと思います。
ただ、システム上の不備をつぶすのも、難しいところがあって、なかなか進まないようです。確信犯が抜け穴を使うのを完全に防ぐのは困難なのでしょう。
管理タグを埋め込んだとしても、それをすべての取引でチェックし、盗品販売を防ぐシステムの構築が難しそうな気がします。
手口からすると事件の続報でしょうか
単独犯だとは考えづらいですが
自転車窃盗容疑で30代お笑い芸人逮捕へ
ttp://www.nikkansports.com/entertainment/news/f-et-tp0-20130709-1154369.html
Lemondさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
なるほど、ここで取り上げた事件の続報のようですね。容疑者が逮捕されましたか。
まだ本当に犯人かどうかわかりませんが、検挙されたということになれば、同様の手口の犯行に対する抑止になるでしょう。
ネット上では話題になっていたようですが、犯罪抑止の観点から、もっと大きく報じてほしいものですね。
情報をありがとうございます。
こんにちは。最近、衝突事故での莫大な支払い命令や、今回の一件についてメディアが大きく取り上げましたね。その影響か、普段は自転車の話題に全く見向きもしないうちの両親ですら、関心を寄せているようでした。やはり、啓蒙というか認知させるのは大切ですね。
それから、個人的な状況ですが、先月、通勤途中に転倒し、しばらく入院していましたので、会社から黙認されていた自転車通勤は完全禁止されてしまいました(頭蓋内外に出血しましたが、後遺症が残らなかった事は不幸中の幸いです)家族にも色々言われており、当面は休みにもロードバイクに乗る事はできない状況です。サイクルロード様もどうかお気を付け下さい。
noriさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
事件や事故が教訓になるという面はあるでしょうね。起きたこと自体は不幸なことですが、それによって同じことが繰り返されないことに貢献するならば、意味があることだと思います。
転倒して頭を打たれたのですか。頭蓋内外に出血して入院とは大変でしたね。お見舞い申し上げます。
でも、後遺症が残るようなことにならず、本当によかったですね。ロードバイクにしばらく乗れないのは仕方ないでしょう。お大事になさってください。
私もあらためて気をつけるようにします。ありがとうございます。
※全角800字を越える場合は2回以上に分けて下さい。(書込ボタンを押す前に念のためコピーを)