September 11, 2013

世界のトレンドと日本の現実

世界的に自転車の活用に対する関心が高まっています。


それに伴い、事故防止や安全面の注意喚起、あるいは自転車の活用のさらなる促進など、各方面からのメッセージも増えています。行政やNPOの啓発だったり、企業や団体がその姿勢をアピールするものだったり、環境保護を訴えるものなど公共性の高い提言だったりします。

それらは、テレビや新聞の広告、チラシやポスターなど各種の媒体によって伝えられます。前回、世界の広告の中から自転車に関連するもの、商業広告を中心に取り上げましたが、今回は前回とは違った啓発や公共性の高いメッセージを取り上げてみたいと思います。

Bike Month: Man, adsoftheworld.comBike Month: Woman, adsoftheworld.com

いったん事故が起きると、相対的に交通弱者である自転車が大きな被害を被ります。クルマのドライバーに対して、注意喚起や配慮を求めるのは、どこでも同じです。日本では5月が自転車月間ですが、カナダでは6月が自転車の月とされているようです。

People for Bikes: Parking lot, adsoftheworld.com

NPOの“People for Bikes”は以前も取り上げたことがありますが、自転車に関連するさまざまなメッセージを発出しています。これは、「自転車通勤週間」を支持するポスターです。言葉ではなく写真で、クルマを自転車に代えることを表現しています。

People for Bikes: Chainring, adsoftheworld.com

こちらも“People for Bikes”の「自転車通勤週間」のポスターです。女性の足にチェーンリングの跡がついているわけですが、自転車に詳しくない人、チェーンカバーが当たり前の自転車に乗っている人が見たら、それとはわからず、傷を縫った跡か何かかと思うかも知れません。

Sweet Pete's Bike Shop: Bike Safety Cling, adsoftheworld.com

よく見ると、子供がミラーに映っているのではなく、子供の顔の形をしたカードが貼られています。それと知らずにミラーを見たら驚くと思いますが、ドライバーに注意を喚起する啓発ステッカーなのです。裏には自転車の事故の2割は子供が関係していることが書かれています。



こちらの動画、デンマークのヘルメットメーカーの「屋外フィッティングルーム」という試みです。街角にこんなものがあったら、つい頭を突っ込んでみたくなります。似合わない、カッコ悪いと敬遠する人も多いわけですが、ヘルメットを見直してもらうきっかけにしようというアイディアです。

Earth Day Canada, Hometown Hero: Bike Cape, adsoftheworld.com

カナダのアースデイのポスターです。自転車レーンに環境に優しいペンキを使って、実際にペイントされました。マント(ケープ)は、多くのヒーローに共通するシンボルです。環境を守るヒーローというわけです。単純ですが、上手いデザインと言えるでしょう。

Better By Bike: Stress, adsoftheworld.com

Better By Bike: Freeeeee, adsoftheworld.com

環境や運動不足解消、渋滞対策などさまざまな点から自転車の利用が推奨されるわけですが、自転車に乗ることで、ストレスが消えてなくなりますよとアピールしています。これを見て、ストレス解消という目的から自転車に乗ってみようかと考える人もあるでしょう。自由さを強調するパターンもあります。

ThaiHealth Promotion Foundation: Bike, adsoftheworld.com

タイ保健振興財団の啓発ポスターです。居眠り運転の危険、眠気には勝てないことを訴えています。まぶたを閉じたら自転車に衝突してしまうというわけです。インパクトがありますし、目を閉じたら衝突事故というわかりやすい図柄もユニークと言えるのではないでしょうか。

Banco Itau: Swap the car for a bike, adsoftheworld.com

こちらは、ブラジルの銀行の広告です。緑に包まれた地球と自転車が描かれ、花は南北アメリカ大陸になっています。クルマから自転車に乗り換えようとのストレートな提言です。渋滞や大気汚染が深刻な同国では、銀行が、このようなメッセージを発しているのです。

Pacific Blue Cross Health Insurance: Bike Path, adsoftheworld.com

「もし急にクルマのドアが開いたら、保険を申し込むための時間は1.5秒しかありません。怪我をしてからでは遅すぎます。」というメッセージがストレートです。自転車レーンに書かれているところが皮肉ですが、その危険に気づかされる人もあるのではないでしょうか。

Primeau Vélo Bike Store: Garage, adsoftheworld.com

一見、何の変哲もない家の写真です。しかし、よく見るとガレージからの通路が狭すぎることに気づきます。この通路の狭さではクルマを出庫させることは出来ません。つまり、この家の人はクルマから自転車に乗り換えたことを暗に示しているわけです。

◇ ◇ ◇

自転車マナーアップ運動どれも目を惹くように工夫されており、メッセージも明確です。安全面への啓発は別として、海外ではクルマから自転車に乗り換えようというスタンスの多いことが見てとれます。自転車の多くのメリットに気づき、これまでのクルマ一辺倒を見直し、自転車の活用を進める機運が高まっています。

ひるがえって日本でのことを考えてみると、放置自転車や自転車のマナーの悪さを啓発するものが多く、自転車を目の敵にするような論調も少なくありません。自転車の活用推進どころか、いかに市民の自転車の利用を抑制できるかに力を入れているように見える自治体もあります。

自転車の活用以前に歩行者との事故や走行マナー、駐輪のマナーなどの問題があるのは確かですが、海外とは自転車に対するイメージ、見方からして違っています。世界のトレンドから大きく遅れているのも事実なわけで、日本でも、早く自転車の活用推進を呼びかけるメッセージが見られるようになってほしいと思います。





オリンピック決定の余韻が続いています。経済的にも各方面に好影響を与えていきそうですね。

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この記事へのコメント
自転車関係者は、自動車を抑制したい余りに、自転車と自動車をどう共存させるか考慮しないところが有りますね。
自転車の車道通行が話題になるなら、まず自転車と自動車の共存共栄をどうするか考えないといけないかも知れません。今のままでは、自転車も自動車もどちらも不幸になりますね。
Posted by なななな at September 12, 2013 21:49
 初コメです。いつも大変楽しく、啓発されつつ、拝見しております。

 オリンピック・パラリンピック開催が決まりましたが、案の定、高速道路を延ばせだ、地下鉄を作れだ、と土建屋さん的発想が目立ってきています。ここで一気に東京をバイクの街にしよう、とかいう発想は逆さに振っても出てこないんでしょうかね。
Posted by hyrax at September 12, 2013 23:19
9月22日はカーフリーデーです。カーフリーデーとは?
「街の中心部において1日マイカーを使わない地区を創り出し、車のない都市空間を体験します。街では車に頼らなくても日常生活には支障がないことを実感してもらい、社会啓発するものです。しかし、日本では車の交通規制を伴う催しでなくても、啓発活動だけでも参加することができます。本来、地方自治体が主体となってすすめる都市交通施策の一環だが、日本では例外的で、特定公的機関に属さない民間団体が普及活動を進めている状態にあり、特別に市民団体でも参加可能としている」
そこでカーフリーデー当日に開催される「第5回御堂筋サイクルピクニック」の案内です。まずどんなものか参加して体験してみては?
主催:自転車文化タウンづくりの会
2013年9月22日(日)10:00〜15:00 雨天決行
会場/大阪・中之島公園
http://cyclepicnic.wordpress.com/about/
http://cyclepicnic.wordpress.com/event/
https://www.facebook.com/cyclepicnic
Posted by SHARETHEROAD at September 13, 2013 05:44
ドライバーを「スピードのしもべ」から解放して「戦争」を終わらせるべきです。「幸せな社会」を実現したいのであれば。
Posted by SHARETHEROAD at September 13, 2013 12:58
「チームキープレフト」がサイクルモードに向けて「自転車は車道の左側走行!」という標語を掲げ写真を撮って投稿しようと呼びかけてますよね。これは「ちゃんと走ろう」と自転車を教育するものですが。じゃあクルマにはアピールしないのか?
http://www.cyclemode.net/photo/tkl/
「自転車は路上駐車の右側走行!」あるいは
「路上駐車は自転車を危険にさらす悪質な行為です」とドライバーにアピールしませんか?さらに「クルマをやめて徒歩・自転車・公共交通にしませんか?」をもっと推し進めませんか?大阪市のように(堺市も府市統合したら「自転車のまち」に変えないと)。
参考資料
http://www.city.kyoto.jp/sogo/toukei/Publish/Monthly/Topics/201108-01.pdf
Posted by SHARETHEROAD at September 13, 2013 20:13
ななななさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、ただ一方的にクルマを抑制しようというのでは、どうしても現実的でなかったり、偏ったものになりがちです。
あまりにもクルマ優先の思想になりすぎていて、それに気づかないことも多いですが、経済性や効率も考え、ひろく市民が納得するようなスタイルを定着させていくべきでしょう。
Posted by cycleroad at September 13, 2013 23:21
hyraxさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
「バイクの街」までは難しいとしても、もっと自転車を活かせる街にするというのは考えるべきだと思います。
経済効果という点では、話題にならないかも知れませんが、いかに自転車インフラを変えていくかというのは、重要な論点ではないかと思います。
Posted by cycleroad at September 13, 2013 23:27
sharetheroadさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
御堂筋サイクルピクニックも第5回ですか。海外と比べて、日本ではイマイチ話題にならない感じがありますが、他の自治体でもカーフリーデーの催しは少しずつ増えているようですね。
自転車利用者に対する教育だけでなく、ドライバーへの啓発も当然必要だと思います。
ただ、自転車の逆走などが目に余るということもあります。ドライバーにアピールするにしても、まず自らを省みることが重要であり、説得力を持たないということなのでしょう。
Posted by cycleroad at September 13, 2013 23:38
初めて投稿します。

自転車は良い乗り物だと思います。
でも、それに気づいたのは最近です。
学生で交通手段がそれしかなかった頃はとても嫌いな乗り物でした。
天候に左右され、さりとて速くもなく、歩くよりはマシといった位にしか思っていませんでした。

年月は経ち都市部へと生活の拠点を移動しました。
都市部の交通はとても便利ですが、自律ある乗り物を欲しくなりました。
その頃の経済状況では自転車しか選択肢はありませんでした。

そして、ロードバイクを買いました。
楽に速く遠くまで走れるという点で、以前の自転車とは全く違う乗り物だと感じました。
例えば、シティサイクルの10kmというとかなりしんどいので他の交通手段を調べ始めますが、
ロードバイクの10kmは足慣らしの段階だと思います。

ロードバイクの弱点は荷物を積めないことです。
でも、そこを求めるのはいけないことだと思うのです。
理由としてロードバイクの設計思想の中に荷物を積むことは考えられていないからです。
多機能を求めるより、単機能を使い分ける方が良い結果を生むのではと考えています。

最後に自転車を取り巻く環境、自転車に乗る人の意識、運転のマナーなど問題は山積です。
行政にはどこかモデル地域を指定して真剣に取り組んでほしいですね。
その候補地は東京23区が個人的には良いと思います。
Posted by hhk556 at September 15, 2013 14:16
hhk556さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
以前は自転車の良さに気づかず、後から再確認したという人は多いようです。
初めて触れる自転車がママチャリで、自転車本来の良さやポテンシャルが感じられないということもあるのだろうと思います。
その意味でも、日本の自転車は不幸な環境にあると言えるでしょうね。
確かにロードバイクにも弱点はありますが、楽に速く遠くまで走れる、ママチャリなどとは全く違う乗り物だと実感する人が増えれば、自転車が都市交通の重要な手段として、欧米でその活用を真剣に進めていることに納得がいくに違いありません。
東京は世界に向けた日本の顔でもありますから、いまだに自転車の歩道走行という野蛮な状態を放置すべきではないと思います。
流行などが全国に波及していく効果を見ても、自転車環境のモデル地区を東京にするのはいいと思いますね。

Posted by cycleroad at September 16, 2013 23:18
東京が自転車環境のモデル地区になって全国に波及してくれればいいのですが、実態はその逆ですね。
地方都市の方が、切羽詰っているのか、やりやすいのか、思い切った取り組みがどんどん進んでるようです。
外堀から埋めていきながら、2020年までには本丸東京を何としてでも攻め落としたいところですね。
Posted by cyclehighway at September 18, 2013 02:23
cyclehighwayさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
確かに、他方都市での取り組みが報じられていますね。ただ、どれだけ実効性が伴っているかという観点から見れば、必ずしもアナウンスどおりでない場所もある気がします。
各都市で地下鉄やバスなど公共交通機関の充実度から、首長の意識の問題まで、いろいろ違いはあると思いますが、東京で出来ないことはないと思います。海外の大都市の例もたくさんあります。
やはり市民の間のコンセンサスの醸成、世論の後押しが必要なのでしょうね。
Posted by cycleroad at September 18, 2013 23:40
 
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