それは、自転車に乗っている人のサドルの低さです。ママチャリやシティサイクルに乗っている人の中には、サドルをかなり低くして乗っている人を時々見かけます。余計なお世話ですが、あれではペダルをこぎづらいだろうにと思ってしまいます。
乗車姿勢ということで言えば、もともとママチャリは前傾ではなくアップライトな姿勢で、すぐ足がつけること、いわゆる足つき性の良さが売りということもあるでしょう。でも、必要以上にサドルが低すぎて、ヒザを大きく曲げたままペダルをこいでいる人もいます。
おそらく、深く考えずにそうしているのでしょう。しかし、足を大きく曲げたままペダルをこいだのでは窮屈ですし、力が入りません。特に坂道などでは辛いと思いますし、太ももなどが筋肉痛になりやすいのではないかと思います。下手をすれば、ヒザなどを痛めかねません。
高齢の方だけでなく、若い男女の中にも低い人がいます。私の感覚では、かなり不格好に思えるほど低いのですが、おそらく自分では気づいておらず、特に何とも思っていないのでしょう。低いサドルに慣れてしまって、それが普通になってしまっているものと思われます。
![Elev8, elev8bikes.com](https://livedoor.blogimg.jp/cycleroad/imgs/c/3/c3d3cd5e.jpg)
子供の中にも、極端にサドルの低い子がいます。足がつく高さにするよう教わったのかも知れませんが、最初は適切でも、子供は成長が速く、すぐに低くなってしまいます。調整しなければ、いつの間にか極端な低さになります。小さい時から低いサドルに慣れてしまった人もいるに違いありません。
そういう人は、試しにサドルを高くして乗ると、ペダルが軽く、ラクにスピードが出ることに驚くのではないでしょうか。慣れないと、最初は違和感があるかも知れませんが、次第に、いかに窮屈な姿勢で乗っていたか、足が疲れやすく、筋肉痛になりやすい乗り方だったか、実感する人も多いはずです。
ペダリングの理想から言えば、ペダルが一番下に来た時、わずかに足が曲がる程度などと言います。もちろん、土踏まずではなく、足の指の付け根でこぐ必要があります。その高さでないといけないわけではありませんが、一番力が入りやすく効率的、理想的な高さがあることを知っておいて損はないと思います。
![Elev8, elev8bikes.com](https://livedoor.blogimg.jp/cycleroad/imgs/4/e/4ec05a53.jpg)
ママチャリならば、足が地面にベッタリつく位の高さで乗っているのは普通だと思いますが、そういう方でも、試しに高くしてみると、こぎやすさ、疲れの少なさ、坂の上りやすさに目から鱗かも知れません。慣れたら、元に戻せなくなるのではないでしょうか。
「自転車に乗るのは疲れる」と思っていた人でも、あまりに軽快なので楽しくなってくるかも知れません。自転車の入門書には、必ずサドルの高さの調整について書いてありますが、趣味で自転車を始めるような人をのぞけば、それを知る機会のない人も多いのでしょう。
サドルの高さに無頓着な人、調整が面倒な人、シートポストが固着して動かなくなっている人もあるに違いありません。何より、サドルの高さの違いが、どれほどペダリングに影響するか知らないため、わざわざサドルを調整してみようなんて思わないということがあるのだろうと思います。
その意味では、この自転車、“
Elev8”は画期的です。サドルにまたがったまま、高さの調節が出来ます。手元のレバーでワンタッチでサドルを上げたり、下げたり出来ます。停止するときには低くして、こぎはじめたら高くするような使い方も出来ます。
これだったら、サドルの高さによって、どれほどペダリングのしやすさが変わるか、すぐに実感としてわかると思います。サドルを高くすると、こぎ出す時、止まる時が不安に感じる高齢者などにも優しい機構と言えるでしょう。なかなかユニークなアイディアです。
ペダルに力が入りやすい高さにすると、足が地面につきにくくなるのは、自転車の構造から言って当然のことです。足を伸ばして地面につく高さのまま理想的なペダリングは出来ず、ペダリングの効率と足つき性の良さは両立しません。ところが、この“Elev8”は、サドルの高さを可変にすることで、両立させてしまいました。
ロードバイクなどに乗っている人ならば、停止時にはサドルから前へ、トップチューブにまたがるようにして止まればいいことです。重量の増加などのデメリットを考えれば、わざわざ、こうした機構を取り付ける必要は感じないでしょう。でも、シティサイクルなどには十分にメリットがあるアイディアだと思います。
サドルの高さなんて、その人の勝手です。しかし、こぎやすい高さがあることを知らずに乗っている人が多く、適切な高さにすると劇的に変わったと感じる人も少なくないと思います。自転車に乗るのは疲れると思っていた人、仕方なく乗っていた人の自転車に対する見方がガラリと変わるかも知れません。
同じような効果で言えば、タイヤの空気圧と注油もそうでしょう。空気圧が不足している人、注油せずに異音をさせて乗っている人も少なくありません。これも適正な空気圧、きちんと注油した状態で乗ると、乗り心地が大きく改善されることに驚く人も多いはずです。
![Elev8, elev8bikes.com](https://livedoor.blogimg.jp/cycleroad/imgs/f/c/fc035059.jpg)
それらの効果を知らない人、調整やメンテナンスをしないズボラな人向けに、タイヤに自動的に空気が注入される機構や、注油が必要ないベルトドライブなども開発されて売られています。この可変サドルも、それと同じような方向性のアイディアと言えるでしょう。
ママチャリの多い日本では、自転車に乗る上での常識やコツを知らない人が少なくありません。それが自転車に乗ること自体を辛いこと、疲れること、楽しくないことにしてしまっています。少しのことで、自転車に対する見方が大きく変わる可能性があるのに残念なことです。
自転車本来のポテンシャルや快適性に気づかせるという意味で、こうした機能は意義のある工夫と言えるでしょう。個人的には、機会があれば周囲の人にアドバイスすることもあります。中には、とても感謝してくれる人もいます。ただ、余計なお節介なので、なかなか助言しにくいことも多いと思います。
こうした機構が普及することで、自転車本来のポテンシャルや快適さに気づく人が増えれば、日本でも自転車をもっと活用しようという機運が、欧米並みに高まる可能性があります。それが世間の常識を変え、コンセンサスを形成し、インフラやルールなどを含めた自転車環境を変えていくことになると思います。
![Elev8, elev8bikes.com](https://livedoor.blogimg.jp/cycleroad/imgs/8/2/8250ac94.jpg)
自転車に対する見方が変わった人は、重くてタイヤが太くて遅い格安ママチャリよりも、もっと高性能な自転車を求めるようになるでしょう。日本の流通業者にもメリットがあることだと思います。メリットを知らない消費者は望まない機能かも知れませんが、こうした工夫も取り入れていってほしいと思います。
この3連休は天気もよく、かなり走りこめました。今週は、台風が来そうですが..。
“Elev8”、すばらしいですね。耐久性やお値段にもよりますが、究極の衝撃吸収ダンパーでは?シトロエンで有名な、ハイドロニューマチックみたいな乗り心地になるのか、等と妄想してしまいました。