企業誘致や地域の再開発、今流行りの「ゆるキャラ」からご当地グルメまで、その手法はさまざまです。中には自転車を町おこし、村おこしに使おうと考える地域もあります。昨今、自転車が注目されていることもありますが、自転車環境の整備は住民サービスの向上にも役立ちます。
自転車の街を宣言したり、目指すと公言するところも出てきています。サイクリングロードを整備したり、レンタサイクルを充実させるところも増えています。自転車インフラを整備して観光客の誘致を図る一方で、地元観光スポットを周遊、回遊してもらうことが見込めます。
そのほかにも、鉄道の廃線を利用して自転車道にしたり、軌道自転車を売り物にするところ、自転車を持ち込めるサイクルトレインを企画するところもあります。ロードレースなどの大会を開催するところも増えていますし、ライドイベントや市民参加のサイクリング大会も各地で開かれています。
自転車シェアリングを導入したり、自転車レーンの充実を目指すところもあります。ハード面だけでなく、自転車で周遊する観光客向けのガイドツアーを企画したり、自転車で回遊する街コンを実施するところもあります。一口に自転車を使うと言っても、さまざまな手法があるわけです。
海外にも自転車を使った、もしくは自転車を売り物にした観光資源があります。中には、地域おこしのヒントや参考になるものもあるかも知れません。それぞれの地域の環境や背景などもありますから、必ずしも日本で実現可能とは限りませんが、いくつか取り上げてみたいと思います。

日本にも、スキー場の夏場の施設としてMTB用のダウンヒルのコースを整備するところがあります。キャンプ場やアウトドアパークに、いわゆるシングルトラックのコースが設置されているようなところもあります。ただ数は限られます。マウンテンバイクで楽しめる施設がもっとあってもいいような気がします。
こちらは、アメリカ・ミシガン州、“
Copper Harbor”にあるトレイルコースです。場所によって木道が使われており、トリッキーでスリルのあるライディングが楽しめるようになっています。この手法ならば、必ずしも木を切り倒して道を切り開かなくてもコースが展開できます。


日本の国土は山がちで、一部の平野を除けば、急傾斜の山林が僅かな平地の近くまで迫っている地形が少なくありません。シングルトラックがとれる里山のような場所とは違い、地面を走行するコースがとりにくい山間部でも、木道を使えば、面白いコースがとれるのではないでしょうか。


コースが木道だと、走行量の増加で土が削れてトラックが崩落したり、自然林を過度に損傷することもなくなり、施設のメンテナンスもしやすくなるでしょう。日本では、一時期と比べて人気が下降気味のマウンテンバイクですが、東京五輪も決まったことですし、MTB用の施設が見直されてもいいのではないでしょうか。
こちらは、フィリピンの“
kampo juan adventure park”という施設にあるアトラクション“Anicycle”です。まさしく空中を走行する自転車です。命綱はついているものの、これはスリル満点でしょう。比較的低予算で設置できそうな施設に見えますが、そこがまた怖さを増幅している気がします。

高さは場所によって90メートル、30階建てのビルほどもあります。普通の吊り橋を渡るだけでも怖い人は多いと思いますが、下にワイヤーが1本しかないことを思えば、怖さは吊り橋の比ではないでしょう。ジェットコースターなどとは、また違った怖さで人気が出るかも知れません。

この施設も、山がちで深い谷の多い日本に、地形的に向いているアトラクションと言えるでしょう。山間部という立地を逆手にとって展開するには、もってこいの施設です。角度によっては空に浮いているようにも見えます。日本で導入されたら、話題になるのは間違いないでしょう。
アメリカ・ミシガン州の“
Mackinac Island”は、言わば自転車の島です。なんと島内にはクルマが走っていません。一部の業務用カートなどを除けば、島内で移動するには徒歩か自転車、あとは馬車しかありません。自転車で島内を巡るにも、クルマを心配する必要はありません。
五大湖に浮かぶ島なので、本土まですぐでフェリーも2路線通っています。利便性を考えればクルマがあっても良さそうですが、この島は115年間、徹底してクルマを排除してきました。おかげで古き良き時代を髣髴とさせる街並みと、のんびりとした時間が保たれています。クルマの排気ガスや騒音、事故の心配とも無縁です。

もちろん、小さな島だから出来る面もありますが、通常の移動は徒歩と自転車、馬車で十分というわけです。おのずと運動することになるので、住民の健康も増進されます。中途半端にクルマがあるより、徹底していることで、観光地として希少性が高いのも間違いないでしょう。
自転車の街をうたう自治体は日本にもありますが、その実態は、多少他の町より自転車に対する理解がある、インフラ整備に力を入れているといった程度でしょう。思い切って、域内からクルマを排除し、徒歩と自転車のみにしてしまうという手は考えられないでしょうか。

島でなくても、例えば旧市街にはクルマを入れないとか、バイパスの内側を進入禁止にするなど、本当の自転車の楽園にすれば、観光地としての価値、希少性が際立つに違いありません。現実には難しい面もあるでしょうし、どこでも可能な方策ではないと思いますが、もし徹底できたら大いに注目されるでしょう。
当然ながら住民の理解が不可欠ですが、住民の生活環境も向上することになります。物資の搬入やゴミの回収など、完全にクルマを排除するのは困難としても、例えば夜間だけ業務用車両を許可するなど、方法は考えられます。絶対無理のように思えて、案外可能だったりしないでしょうか。
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世界にはいろいろな事例があります。もちろん、その場所だからこそ出来るものもあるでしょう。他の地域が真似出来ても、地域おこしに有効かどうかはわかりません。ただ、どこも似た方策、同じような地域ばかりでは面白くありません。思わず行ってみたくなるような、地域おこしのアイディアが見てみたいものです。
メニューの虚偽表示が、今だとばかり続々と発表されています。名の通ったホテルも多いのに、酷いものです。