November 13, 2013

まだまだ余分が隠されている

自転車に余計な部分は多くありません。


人間の力だけで動かす必要があるため、少しでも軽いほうが有利です。なるべく余分な部分を削り、無駄の少ない形にしたほうが、動力性能的に優れることになります。もちろん、用途によっては頑丈さなどが優先される場合もありますが、クルマなどとは違って、少しでも贅肉をそいだほうがいいことになります。

ママチャリであっても、ある程度それは言えますが、さらにスポーツバイクの場合だと、ママチャリにある前カゴや荷台、チェーンカバー、スタンド、前後の泥除け、ライトなどが省かれ、ママチャリと比べて半分以下の重さのものも少なくありません。少しでも不要な部分は省こうという考え方です。

Bianchiホイール

細かく見ると、例えば車輪一つにも、それは徹底しています。一部に円盤状のディスクホイールを採用した自転車もありますが、ほとんどはスポークが使われています。スポークのほうが、車輪の重量を大きく減らせるからです。横風の抵抗を受けにくいというメリットもあります。

ちなみに、あんな細いスポークで、よく乗り手の体重を支えているものだと感じる人もあると思います。スポークなんて、すぐ曲がってしまいそうに見えます。実は、スポークがハブ(中心)の部分に向かって重量を支えているわけではありません。スポークは圧縮する方向や曲がる方向に力が加わると弱いのです。

逆に引っ張り加重、引っ張る方向には強くなっています。つまり、スポークはハブの部分を上から吊るす形、上から引っ張りあげる形で乗り手を含めた車体の重さを支えているのです。ハブから下に伸びたスポークではなく、瞬間瞬間に上方向に伸びているスポークが、リムからハプを吊り下げる形で支えています。

ソリッドスポークホイール, This image is in the public domain.ハブ, This image is in the public domain.

これは、ハブとスポークの接続部分を観察すると、よくわかります。下からハブに向かって支えるような形状にはなっていません。同じスポークに似た形状の、クルマやオートバイのソリッドスポークホイールが、圧縮方向に強いアルミなどの素材が使われ、下方向からハブを支えているのとは違うのです。

自転車のスポークに、圧縮する方向や曲げる方向力が加わると、簡単に折れたり曲がったりしてしまいます。そこで、タイヤに加わる上下方向だけでなく、横方向や斜めからかかっても、それが変換されて、スポークを引っ張る方向の加重となるような構造、工夫された配置になっています。

また、スポークには、最初から引っ張り方向に張力がかかっており、この力が均等に調整されることによって、リムが円形を維持できるよう支えています。この張力があることによって、圧縮方向に多少力が加わっても、張力が減るだけで、圧縮力にならないことも曲がらない理由です。

Lunartic_Hubless Wheel Prototype, www.jamesdysonaward.orgLunartic_Hubless Wheel Prototype, www.jamesdysonaward.org

このように重要な役割を果たしているスポークですが、これすら省いてしまおうというデザインもあります。ハブレスホイールです。スポークだけでなく、タイヤの中心、ハブをなくしたホイールです。リムの部分だけで重量を支え、円形を保つことになります。

最近は素材技術も進歩していますから、ハブレスにすることは可能でしょう。デザインとしては昔から描かれていますし、コンセプトモデルや試作車などとしては製造されています。ただ、量販車として出回っているのは見たことがありません。おそらくハブレスにするメリットが少ないということなのでしょう。



ハブレスにして、ハブとスポークをなくせば重量が減るかと言えば微妙です。パーツの数としては減るかも知れませんが、そのぶんリムの剛性を上げるために重くなったり、ハブがないので、リムとフレームとの接続部分の工夫によっては、かえって重くなる可能性があります。

重くなるのはデメリットですし、構造的にも弱くなる可能性がありそうです。ハブがないので、フォークやシートステーが短くなります。振動吸収の面でも不利になるでしょう。駆動輪にする場合にも、駆動方法がかわることによるデメリットが、いろいろ考えられます。

ペダルと駆動輪を近づけることが出来て、ホイールベースを短くすることが出来る、チェーンをなくすとしたら、そのことでメンテナンスがしやすい、チェーン絡みのトラブルが減るなど、場合によってはメリットも考えられます。ただ、デメリットもあって一長一短です。

Peugeot B1K Concept BicyclePeugeot B1K Concept Bicycle

デザインとしては未来的、斬新で魅力的ではありますが、実際の採用例がほとんどないということは、やはりメリットになりえないということなのでしょう。とりあえず、量産されていないので、パーツの価格の面でも不利になることは間違いありません。

ハブは、軸受けとしてだけでなく、いろいろな用途に使えます。ハブダイナモを内蔵すれば、抵抗の少ない発電装置として作動します。ハブ部分にポンプを組み込んで、常時空気をタイヤに送ってパンクを防ぐ機構もあります。ハブの内部に変速機を内蔵した、いわゆる内装変速機もあります。

コースターブレーキとか、フリーホイール、ディスクブレーキなども基本的にハプがあってこそ搭載できる機能でしょう。ハプをなくすことで、これらさまざまな機能が使えなくなってしまうデメリットもあります。そこまでしてハブをなくす必要があるか疑問というところでしょう。

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さて、ハブレスホイールについては、そんな認識ではないかと思いますが、今までにない新しい提案が登場しました。なんと、ハブレスにしたタイヤの内側空間を、荷物を運ぶために使おうというのです。カバン程度は十分入ります。コミューター、通勤用自転車という位置づけです。

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そんなことをせずに、バックパック、リュックを背負えばいいという意見もあるでしょう。しかし、リュックやメッセンジャーバッグを背負うと、その部分に汗をかきますし、蒸れて不快ということもあります。通勤に使う自転車なら、普通のカバンが運べたほうが便利という人も多いはずです。

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前カゴや荷台を取り付けてカバンを載せるより、はるかにスタイリッシュです。荷台や前カゴに載せるよりも重心が低くなりますし、前カゴに横向きに置くよりは、空気抵抗も少なくなります。自転車にもトランクと呼べるスペースが持てるというコンセプトです。人気が出る可能性は十分あるでしょう。

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見方によっては、ハブをリムまで拡大し、スポークをなくした形と見ることも出来そうです。リムに当たる部分は回転しますが、ハプの内部、軸部分は回転しないので、その部分を大きくすれば、トランクになるわけです。ハブを拡大するというのは、なかなか斬新な発想と言えるでしょう。

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これはわかりやすい、ハブレスの明らかなメリットです。自転車という限られた構造の中で、上手にスペースを使う方法でもあります。自転車に余計な部分は、ほとんどないと思っていましたが、発想を変えれば、まだまだ無くせる部分、そして利用可能な部分があるのかも知れません。





なんだか急に寒くなりました。つい、ひと月前まで真夏日と言っていたのに、秋を返せって感じですね。

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