東京五輪へ向け、初めての実務者会議が開催されました。
いよいよ、2020年東京オリンピックの
準備が始まるようです。会場となる施設だけでなく、アプローチや交通インフラも含めた整備計画、全体像も今後明らかになってくるのだろうと思います。いずれにせよ、湾岸エリアは大きく変わることになるでしょう。
現段階で交通インフラに関しては、羽田と成田の都心直結線だとか、老朽化した首都高の改修、ゆりかもめの延伸、地下鉄の新線や新駅の整備など、さまざまな構想が取り沙汰されています。東京五輪の成功には、渋滞や混雑の緩和、選手・関係者や観客のスムーズな移動が欠かせないということでしょう。
ただ、鉄道や道路の新設は、莫大な費用や長い期間がかかります。そう簡単なことではありません。パラリンピックとあわせても30日ほどの大会のためと考えれば、費用対効果の問題もあります。この際だからと、たくさんの計画を詰め込みすぎて予算が膨らみ、後々禍根を残した例もあります。
必要な整備だからと道路を拡幅したら、かえって交通量が増えたり、新たな場所がボトルネックになるなどして、渋滞が激しくなったという例も少なくありません。バスを走らせたり、五輪専用のバスレーンが設けられたりもするのでしょうが、確実な混雑緩和とスムースな移動の実現を目指す必要があるでしょう。
その意味で是非計画に加えるべきなのは、自転車走行環境の整備だと思います。これは、私が素人考えで言っているのではなく、ロンドンの例を見れば、渋滞や混雑緩和のための有効な選択肢であることがわかります。次のリオデジャネイロでも自転車レーンや駐輪場などの大幅な増設が計画されています。
オリンピック開催都市でなくても、昨今は世界中で自転車の活用が推進されています。都市での効率的な移動を考えたら、むしろ自転車の活用を考えないほうがナンセンスと言っても過言ではないほど、世界の趨勢として、自転車走行環境の整備が進められています。このブログでも多数の例を取り上げてきました。
今回の東京五輪は、半径8キロの範囲に施設を集中させる計画だと言います。この距離ならば、自転車移動にちょうどいい距離です。もっと広くても大丈夫ですが、ふだん自転車に慣れていない観光客でも、半径8キロの範囲内くらいだったら、十分快適に移動出来るでしょう。
自転車の走行環境、すなわち自転車レーンや自転車専用道が整備されれば、会場間の移動の多くは自転車が一番速くなるはずです。必要に応じて電動アシスト自転車などをレンタルすれば、海外からの観光客も含め、ふだん自転車を使っていない人でもラクラク移動できるはずです。
もちろん、他の公共交通インフラの整備も重要ですが、道路の渋滞や電車の混雑の緩和に対して、自転車の活用がきわめて有効なのは間違いありません。自転車を利用する人が増えれば、そのぶん渋滞や混雑の緩和に直結します。これはロンドンでも立証されています。
五輪用にバスを運行し、専用のバスレーンなども必要だと思いますが、一方で道路を確実に渋滞させることになり、バスの車内も相応に混雑するでしょう。それなら自転車でという人が増えれば、公共交通への集中が確実に緩和されます。自転車レーン等が充実すれば、交通手段の分散に貢献するはずです。
新しく整備するなら、少し高規格な自転車専用道でもいいかも知れません。海外から多くのお客を迎える手前、世界第3位の経済大国として、あまり恥ずかしいものはつくれません。ただでさえ貧弱すぎる東京の自転車環境を、この際改善するチャンスでもあります。
ここで、その具体的なイメージやパース図でも描ければいいのですが、私にそのような能力がないのが残念です。代わりにイメージとしてオランダの“Eindhoven”という南部の町の自転車用の橋をあげておこうと思います。橋は立体交差の環状交差点、いわゆる、
ラウンドアバウトになっています。
全てを立体交差にするのは無理ですが、交通量が多く混雑しそうな場所、ボトルネックになりそうな場所、危険な場所などに、こんな専用橋が出来れば理想的です。ここまで立派でなくても、よくある横断歩道橋やペデストリアンデッキ程度でも十分です。もちろん交差部以外は、普通に地上の自転車レーンや専用道で構いません。
既存の道路の一部などを使い、土地を収用したりするのでなければ、他の交通インフラの整備に比べても大幅に低いコストで整備できるはずです。それでも、五輪の渋滞や混雑緩和には威力を発揮します。さらに、五輪後も当然インフラとして残り、事故防止などにも貢献するでしょう。
五輪が終わった後、海外からも含めた旅行客にも使ってもらえるはずです。都市のインフラとして、東京の新しい魅力となるでしょう。東京観光の移動に自転車が使え、それが便利で快適だったとなれば、東京のイメージアップ、政府が掲げる観光立国にもプラスになります。
日本の自転車環境と言えば、海外では、ネット動画に投稿された機械式地下駐輪場がスゴイと評判になっているそうです。日本人には珍しくもないですが、ビックリした、こんな方法考えたことなかったとか、未来都市だとか、美しすぎる、革新的など、驚嘆と絶賛の嵐だという話です。
別に見栄を張れとは言いませんが、その一方で自転車が歩道を走行しているなんて、恥ずかしい話です。海外から見れば、発展途上国並みの光景であり、悪い意味で衝撃的です。世界的に見て、日本の自転車走行環境はきわめて貧弱なのですから、この機会に改善を目指すべきではないでしょうか。
理想を言えば、ロンドンのように全体として自転車都市を目指してほしいと思います。ロンドンは、地下鉄とバスの同時テロで自転車利用者が急増しました。そしてロンドン五輪が決定し、以後劇的に自転車先進都市へと生まれ変わりました。このことは何度か書いています。
自転車レーンや駐輪場の整備だけでなく、中心部から郊外に向けて自転車スーパーハイウェイまで整備されています。ボリスバイクとして有名になった自転車シェアリングも導入され、市民に好評です。五輪終了後も、市民の自転車活用率は大幅に上昇したままと言います。
一方、東京は、相変わらず歩道に自転車通行帯をつくったり、自転車にナンバープレートを導入しようとしたり、新しい条例で自転車通勤をやめさせようとしたり、国に方針にも逆行する、おかしな政策ばかりです。五輪決定を機に、東京の自転車政策も抜本的に見直してほしいと思います。
本当は、全面的に自転車レーンの整備を進めて欲しいところですが、いきなり全部というのも、なかなかコンセンサスが得られないでしょう。そこで、東京オリンピックのエリアだけ、各会場を結ぶルートだけでも自転車レーンや専用道、専用橋などを整備してはどうでしょうか。
環境負荷も低減できますし、市民の運動不足解消にもなります。まさにエコ五輪を目指す東京オリンピックにふさわしいインフラになるはずです。2016年のリオデジャネイロでも、交通対策として自転車の活用を推進していると言いますし、東京もトレンドを見落とすべきではないと思います。
どのみち、会場とその周辺、アプローチなどの整備が必要になるでしょう。同時に自転車インフラの工事をすることで、工事費も節約出来ます。世界の都市に比べて大きく遅れている電線の地中化なども検討されているようですが、同時に自転車レーンの整備をすれば、効率的で経費の節約にもなります。
もし今回、大会開催エリアを中心に自転車レーンのネットワークが整備され、安全で快適な自転車基盤が経験されるならば、その有効性は広く理解されることでしょう。東京全体や他の都市にも広げようという機運が出てくるかも知れません。ぜひ、オリンピックに向けて、自転車の活用も考えてほしいと思います。
オランダにドローという結果は今後に期待が持てますが、勝てる試合でしたね。