December 04, 2013

自転車を通して他の国を見る

自転車は世界中で乗られています。


海外ではカーゴパイクやトライクなど、日本ではあまり見ない自転車があったり、国によって多少仕様の違う部分や、ローカルなメーカーもあります。しかし、基本的に自転車は世界共通であり、世界中で流通しているブランドもたくさんあります。日本で売られている自転車も、海外からの輸入が大部分を占めます。

自転車にはたくさんの種類があり、乗る場所や用途によって違い、あるいは国によって、好まれる自転車が違う場合もあります。しかし、自転車としてみれば共通ですし、自転車に対する理解や考え方も万国共通の部分があります。世界的な流行やトレンドも日本と無縁ではありません。

このブログでも多数取り上げてきていますが、海外で生まれる自転車関連の新しいアイディアや新発想の数々は、日本人でも共感したり、感心したりします。もちろん、奇妙なもの、笑ってしまうようなものもありますが、その工夫や、開発するに至った気持ちは、よく理解できるところです。

ただ、中には、何故そんな部分にこだわるのだろう、何が面白いのだろう、どうしてそんな発想になるのかと首をひねるものもないわけではありません。見た目が変わっていることはわかるものの、おそらく日本人と外国人の間では、意味合いが違うと推測されるものもあります。

Cricklewood Town Square, cricklewoodtownsquare.comCricklewood Town Square, cricklewoodtownsquare.com

例えば、こちらの自転車です。何かモノを運ぶカーゴバイク、もしくは屋台、売店用の自転車かと思えば、そうではありません、これは、「移動する広場」用の自転車だと言います。世界初の移動して町の広場を設置するための自転車だと言います。

自転車の後ろに載せられた建物は、大時計のついた広場のシンボルのようです。その中に、ベンチやパラソルなどが収納させており、適当な空き地に移動して、それらを展開して『広場』を形成します。時計台の建物も含めて、広場を丸ごと運ぶ自転車というわけです。

この自転車は、ロンドンの北西の、Cricklewood という町に、公共の広場がないことを問題視し、再開発によって市民のコミュニケーションの場をつくるよう求めるプロジェクトのための自転車なのだそうです。この町に広場がないことを広くアピールすることも目的です。

ただ、適当な空き地に展開するなら、その空き地はすでに一種の広場にも思えます。ベンチやスツール、パラソルなどはいいとしても、後ろの建物の必要性もよくわかりません。そのあたりのことは、おそらくヨーロッパの人に何か共通認識があるのでしょう。それらの部分については、詳しく書かれていません。

Cricklewood Town Square, cricklewoodtownsquare.comCricklewood Town Square, cricklewoodtownsquare.com

ヨーロッパの国々を訪ねると、多くの都市に有名な広場があります。教会や宮殿、市庁舎などの歴史的建造物の前に設けられていたりします。古い歴史を持つ広場も少なくありません。そしてその中心となる建造物に時計がついていたりします。そんなヨーロッパの典型的な広場をイメージした造作物のようです。

広場そのものに対しても、日本人とは認識が違います。ヨーロッパの都市は歴史のある街も多く、街の外周が城壁で囲われていたところもあります。私は西洋史に詳しいわけではありませんが、ギリシャやローマの時代から、都市が成立してきた歴史と、広場には深い関係があるようです。

古くから、広場は特別な意味のある空間として設けられました。それは大勢の市民の前に王様がお目見えする場であったり、政治や議論の場であったり、さまざまな儀式を執り行う場でもありました。今のようなメディアがない時代、広場は為政者と市民、あるいは市民同士の重要なコミュニケーションの場であったわけです。

場合によっては軍隊が召集され、集合する場所でした。中世の時代には、権力者の権威を示すために公開処刑が行われる場だったりもしました。もちろん、市民の憩いの場であったり、青空市場が設けられたり、イベントなどで人が集まる場であったりもしたわけです。

Cricklewood Town Square, cricklewoodtownsquare.comCricklewood Town Square, cricklewoodtownsquare.com

都市国家の時代から、城壁が築かれた都市は一つの共同体として形成され、さまざまに統治されてきた歴史的な経緯から、広場は特別な意味のある場所、シンボリックな場所なのです。その広場の象徴がレンガ造りの建物であり、時計台ということなのでしょう。

日本には、ヨーロッパのような意味を持つ広場はほとんどありません。日本人は広場に特別な意味を感じず、空き地も広場も一緒だと思ってしまいますが、そうではないのでしょう。そして、自分たちの町に、本来の意味での広場がないということは、町のアイデンティティに関わる問題のようです。

このあたり、私の乏しい歴史の知識と何かの本で読んだ記憶によるもので、確かなところではありません。詳しい方がおられたら教えていただきたいですが、少なくとも、何かしら歴史的なベースやヨーロッパ人の共通認識があるのは間違いなさそうです。

そうした共通の基盤がない日本人には、変わった自転車だとか、家を積んだ自転車なんて、カタツムリのようで面白いというくらいしか、感想がわかないかも知れません。なかなかそれ以上の意味は思いつかず、ちょっと凝ったピクニックの演出くらいにしか見えないのではないでしょうか。

PARKCYCLE, n55.dkPARKCYCLE, n55.dk

こちらもユニークです。見たとおり、芝生で覆われた移動式の小さな公園、その名も“Parkcycle”です。以前、別のプロジェクトを取り上げましたが、こちらは、どこへでも公園を届けられるという自転車です。緑のない都会の真ん中でも、たちまち緑の公園、オアシスが出来上がるというわけです。

これだけでも十分ユニークで、日本人にも理解できますが、一方で、日本人には出てこない発想のような気もします。確かに乾いた都会のコンクリートの中にも緑が欲しいですし、あれば落ち着きます。しかし、それは木々の緑や木陰であって、必ずしも芝生である必要はありません。

PARKCYCLE, n55.dkPARKCYCLE, n55.dk

植栽があって、目が休まれば、それで十分な気もします。このあたりは、芝生に対する執着が強いと言われるアメリカ人ならではのこだわりという気がしないでもありません。一般に、アメリカ人にとって、芝生はアメリカン・ドリームの象徴であり、特別な意味があると言われています。(この開発チームはアメリカのグループ。)

そこまで考えてのことではないにしても、要するに芝生好きなのです。そして、芝生に寝転がって日光浴をするのが大好きということもあります。日本人だったら、日焼けしたがらない人が多いですし、必ずしも都会の真ん中で寝そべりたいとは思わないでしょう。



アメリカだけではありませんが、欧米人は日光浴が大好きです。都会の真ん中であろうと、例えばセーヌ川の川べりで水着になって日光浴をしていたりします。東京だったら、隅田川の護岸で水着で寝そべるようなものです。海水浴に行けば別ですが、隅田川でわざわざ焼かないと思います。

PARKCYCLE, n55.dkPARKCYCLE, n55.dk

最近は、日焼けによる発がんのリスクも取りざたされ、特に肌の色の薄い白人は、日焼けのダメージを一番大きく受けると言われています。それにもかかわらず、白人が日光浴を好むのは、日焼けしていると裕福に見えるからだと言われています。知らないと、日本人には理解しにくい部分です。

日焼けは、長期のバカンスに行ける証拠であり、ステイタスというわけです。実際に意識しているかどうかは別として、昔から白人の間では、日焼けした肌にいいイメージがあり、あこがれがあるようです。必ずしも見栄をはるわけでないとしても、「芝生に寝そべって日焼け」に潜在的に良い印象を持っているのでしょう。

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変わって、こちらはベトナムのハノイです。やぐらのようなフレームを持つ自転車です。やぐらの部分は、台所になったり、食卓になったり、食べ終えて、上のほうに上って昼寝するベッドになったりします。屋根もついて日差しを遮りますし、枠組みだけなので、風通しは抜群です。小さなファンもついています。

食事や就寝だけでなく、そこが小さなコンサートの舞台のようになって、歌って楽しむ場になったり、時には詩を詠んだり、仲間と語らう場になるかも知れません。いつでも好きな時に、どこでも好きな場所へ移動することが出来るコミュニティ空間というわけです。

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形はインパクトがありますし、こんな櫓を自転車に取り付けて移動しようということ自体、十分にユニークです。ただ、なぜこのような形になったのか、今ひとつピンときません。サイトにも、そのあたりのことは詳しく説明されていません。

おそらく、まずベトナムの気候があると思います。特に雨季は湿度が高く、絶えられないような蒸し暑さです。ほかの東南アジアの都市と同じように、風通しの悪い室内より、屋外で食事をしたほうが快適だったりします。これならば、さらに風通しのいい場所へも簡単に移動できるでしょう。

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ベトナムではありませんが、タイでは一般家庭には普通、台所がありません。食事は朝から屋台などで外食です。昼も夜も屋台などでとるのが普通です。買ってくる場合もありますが、自分の家で作るより、屋台などで食べるほうが、よっぽど安上がりなのです。時間の節約にもなりますし、台所で自炊する習慣がないのです。

暑いと火を使う気にもならないのでしょう。べトナムはタイとは違いますが、やはり家の外で調理をしたり、外で食べたりする光景は一般的に見られます。飲食店でも道端に椅子とテーブルを出し、外で食べさせていたりします。日本とは違って、日常から、屋外で暮らすのが普通ということもあるのでしょう。



また、雨季には毎年のように道路が冠水し、街は洪水にあったような光景になります。多少道路が冠水しても、この櫓の高さがあれば、問題ありません。7段になっており、上に上がればいいだけです。イザとなれば櫓ごと移動出来ますし、水上のほうが、かえって涼しく過ごしやすいということもあるかも知れません。

もちろん、ベトナムでも珍しい自転車なのは間違いないでしょう。ただ、なんでこんな形状にしたのか、なぜこんな高さなのかなど、日本人にはピンと来ません。国ごとの事情や背景を知って初めて、そのユニークや発想の理由がわかってくる部分もあります。

自転車は世界中で乗られており、乗り方や使い方の多くは万国共通です。ただ、そうは言っても、国による違いがあって、道路事情から、歴史や風俗習慣、地形や気候、そのほか様々な背景が、自転車の改造や活用方法などにも反映し、独特の自転車が出てくるのも面白いところです。





秘密保護法案、多くの知識人らが反対を表明し、問題点が多数指摘されているのに、なぜ急ぐんでしょうかね。

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