December 07, 2013

冬でも自転車で通勤する理由

二十四節気の大雪は、本格的な冬が到来する頃とされています。


雪の降らない地域でも気温が下がり、道行く人も真冬の装いになってきました。自転車に乗るにも手がかじかみ、寒さが身に染みる季節です。身体が温まってしまえば、大汗をかく季節と違って、かえって乗りやすいということもあるのですが、この寒空に自転車になんて乗りたくないという人も多いでしょう。

日本は台数から言えば自転車大国であり、最寄り駅までの往復などに自転車を使っている人は相当な数になります。そんな人の中には、冬は鼻や耳も寒くてチギれそうですし、自転車に乗るには厳しい季節、あまり乗りたくない季節という意識もあるに違いありません。

日本でも、特に震災以降、最寄り駅までではなく、直接職場までの自転車通勤が増えてきました。一般的な人から見ると、こんな季節でも勤務先までの長距離を自転車通勤している人は、さぞかし大変だろうと感じたり、冬なのに頑張っているなと感心したりするのではないでしょうか。

Bicycle lanes from cities around the world, bikelanes.ca

北風が寒く、厳しい日もあります。防寒対策が必要になりますし、寒いほうが大汗をかかなくてすむ利点はあるとしても、汗をかいて冷えると風邪をひきかねません。日も短いですし、路面が凍結したりなど、神経を使う部分もあります。春や秋と比べれば、快適とは言えない部分があるのは間違いありません。

乗らない人にしてみれば、そんな中を、わざわざ自転車に乗らなくても、とか、冬は電車通勤にすればいいのに、とか、ダイエットとか交通費節約などのメリットもあるだろうけど、そんなに頑張らなくても、などと感じている人もあるに違いありません。

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しかし、それは違います。つまり、自転車好きにとって、自転車通勤は楽しいのです。「自転車通勤は遊び」です。辛いけど仕方なくやっているのではありません。そう主張しているのが、カナダのオタワで活動する非営利のコミュニティ“The Ottawa Bicycle Lanes Project”です。

地球にいいからとか、クルマを減らすべきだからとか、渋滞を減らすためにやっているわけではありません。もちろん、結果として、それらに貢献することになっているのは確かです。自らの健康増進に役立っているのも間違いありません。しかし、我慢してやっているのではなく、遊びとして通勤を楽しんでいるのです。





この主張に共感する、日本の自転車通勤者も多いのではないでしょうか。もちろん、気が乗らない日、風が強く、寒くてイヤだなと思う日がないとは言いません。しかし、基本的に好きだから自転車通勤を選んでいるのであって、なんだかんだ言っても、楽しいから続いているという人も多いのではないでしょうか。

日本で自転車を使っている人は多いものの、そのほうが速いから、便利だからという理由で、仕方なく最寄り駅までのアシとして使っている人がたくさんいると思います。そうした大多数の自転車利用者にとって、冬の自転車は憂鬱なだけで、通勤を遊びと捉える考え方は新鮮かもしれません。

Bicycle lanes from cities around the world, bikelanes.caBicycle lanes from cities around the world, bikelanes.ca

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冬は雪も降るオタワですが、自転車通勤は楽しみです。ただ、ケガや事故は防ぎたいものです。出来れば安心して、心置きなく楽しみたいというのは自然な感情でしょう。そこで、自転車インフラの整備です。そして、それは単に自転車好きが楽しむためだけではなく、社会にさまざまなメリットや、経済的な恩恵ももたらします。

この“The Ottawa Bicycle Lanes Project”では、オタワ都市圏の主要な箇所を自転車通行帯によってネットワークすることを提案しています。(写真は全て世界の他の都市の例として挙げられているもの。)これは単に自転車通勤のためだけのものではありません。日常的に使う交通インフラとして、多くの市民が使うものでもあります。

Bicycle lanes from cities around the world, bikelanes.ca

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都市交通インフラとしての自転車レーンは、市民が日常的かつ頻繁に利用する必要がある商業施設などへ、クルマによらないアクセス、安価で誰でも利用できる一般的な手段を提供します。市民にとって大きな利便性をもたらし、交通費の節約ができると同時に、店舗側、地元企業にも恩恵をもたらします。

アメリカやヨーロッパで、有効に作用する自転車レーンのネットワークを導入した都市では、地元企業に顧客の増加をもたらし、売り上げアップに貢献しているという調査もあります。クルマで通過するよりも、店に入りやすいため、立ち寄る人が増えると指摘されています。



また、交通渋滞を減らし、環境への負荷を減らし、市民の健康を増進し、医療や介護などの費用を低減して、市の財政にも貢献します。都市をより過ごしやすくするインフラであると共に、都市の一部として必須のパーツであることを、多くの人に理解してもらおうとしています。

また、クルマと対立・対決するものではないとも主張しています。自転車レーンは市民の選択肢を増やしますが、クルマを排除しようというものではありません。一方で頻発する事故を減らす政策であり、その効果は大きく、それはクルマのドライバーにもメリットとなるでしょう。

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もちろん自転車を使わない市民もいるわけですが、交通事故などの危険を恐れて、市民が自転車利用しないのであれば、それは大きな損失であるとも主張しています。こうした効果や損失は、世界中の都市で検証され、明らかになってきていると説明しています。

自転車レーンは将来世代に残す都市の資産でもあります。このプロジェクトは、自転車インフラが市民生活を便利に、豊かにすると同時に、市民のコミュニティーから企業、地元経済にいたるまで広範な利益をもたらし、人々をハッピーにすることを広く伝えていくものなのです。

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自転車を仕方なく使っている人には、冬の自転車移動は憂鬱に感じるでしょう。特に日本では、格安粗悪な重たい自転車で、近距離しか使わない人が多いので、そもそもの自転車のポテンシャルを知らない人が数多くいます。最寄り駅までならともかく、勤務先まで直接自転車通勤するなんて思いもよりません。

しかし、自転車レーンによって、安全・快適・高速に移動できれば、渋滞する都市部ではクルマより速く、有効な交通手段になります。同時に、自転車での移動は「遊び」でもあり、楽しいものなのです。日本でも、「冬でも自転車は楽しい」と感じる人が増えてほしいものです。





連日、忘年会続きで、ここのところ飲む日が続いています。たまには休肝日をとらないと..。

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この記事へのコメント
こんにちは。最近読ませて頂いた無かったですが、また毎回読ませて頂きますので本年もよろしくお願い致します。

このオタワの環境、良さそうですね。これだけ路側帯があればかなり安心して走れそうでうらやましいです。大阪市の本町通りでも試験的に500mほどカラーゾーンを設けましたが、実際走って見るとその上をタクシーがはみだして信号待ちしていたり、原付がこれはいいと思ったのかゾーン上を走行したり散々です。

私の方もロードバイクからほぼ離れて半年強経ちますが、食事量をだいぶ減らしているのにも関わらず、体重は5kg増えました。いかに自転車通勤がメタボ対策になっていたかと感じます。ということで週に1回でも、隠れママチャリ通勤を考えています。流石にロードは隠せませんので…。
Posted by nori at January 22, 2014 14:28
noriさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
こちらこそ、よろしくお願いいたします。
ハード面での自転車走行環境もうらやましいですが、マナーとか社会的なコンセンサスが日本とは、ずいぶん違うと言わざるをえませんね。
自転車レーンだけでなく、まだまだ、その背景となる一般の人の認知、社会的な意識も遅れています。

自転車通勤に限らず、生活のパターンが変わると、意識していなかった部分が如実に現れるということはあるでしょうね。
健康は、健康なときには、往々にして、そのありがたみが意識できないということとも通じるような気がします。


Posted by cycleroad at January 23, 2014 23:28
 
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