燃費性能の優れたエコカーが、売れ筋上位のほとんどを占めています。小型で燃費のいい、エコなクルマを選ぶ人が増えています。家電製品も省エネ性能に優れ、消費電力の少ないものが各社から売り出され、買い換えたほうが電気代がお得と競って宣伝しています。買うならエコ家電です。
夏のクールビズに倣って、冬はウォームビズが呼びかけられていますし、使わない電気製品のスイッチをこまめに切るなど、節電の習慣も、当たり前のようになってきています。生活する上で、どちらかならばエコなほうがいいと考えるのは普通と言えるでしょう。
現代の生活は昔と比べて豊かになり、便利になりました。今さら便利で豊かな生活をやめて、昔のような不便で貧しい生活に戻れと言われても無理です。しかし、その中で、少しでも無駄を省き、エネルギーを節約しようという感覚は共有されるようになってきています。
今どき、省エネは珍しくありませんが、さらに積極的に、使う電気を自分で生み出してしまおうと考える人もいます。“
Big Rig”と名づけられた、この作業用テーブル、自転車のペダルが取り付けられています。このペダルで自家発電しながら電化製品を使うことが出来るという製品です。
昔の足踏み式のミシンのようなスタイルですが、用途はミシンに限りません。出力先としてコンセントとUSBなどの端子が備えられており、家電用品全般が使えます。ラップトップも使えますし、ミルやミキサーなどの調理家電を使うことも出来ます。ポンプでも日曜大工の道具でも、もちろんミシンでもオーケーです。
普通のコンセントにつなげば簡単なのに、何をわざわざと考える人もあるでしょう。でも、その一方でフィットネスクラブに通い、エアロバイクをこいで汗を流しているとするならば、双方を組み合わせれば、節電できる上に、運動不足も解消できて一石二鳥ということになります。
電気代を節約し、スポーツジム代を浮かせられるばかりか、災害などで停電しても、電気製品を動かすことが出来ます。この装置を使えば、大概の家電製品は動きますが、普通の電力を使うなということではありません。好きな範囲で発電すればいいのです。
便利で豊かな生活から逆行せよと言うのではありません。たかが電気製品を使うのに、疲れてイヤだと思う人には向きません。運動しながらパソコンも使え、時間の節約にもなる。ジムへの往復の時間を考えたら、さらに効率的と考える人には、有意義な道具と言えるでしょう。
人力を使って節約できるエネルギーなんて、たかが知れているかも知れません。ただ、省エネ、節電だけではなく、もう一歩能動的に発電までしてしまおうというのは、一つの考え方だと思います。もう一歩踏み込むという点では、こちらも似た考え方かも知れません。
こちらは、まだコンセプトモデルの段階ですが、言わば
空気清浄自転車です。この自転車で走行することによって、前方の空気吸入口から取り入れた空気を清浄し、後ろに噴出すという仕組みになっています。走るだけで空気がきれいになる、走る空気清浄機と言ってもいいでしょう。
バンコクのデザイナーが開発しているものですが、最近話題になっているPM2・5などの大気汚染は、中国だけでなく、東南アジアでも問題になっています。このような自転車を使うことにより、都市の空気を積極的にきれいにしていこうというコンセプトです。
多くの人がクルマから自転車に乗り換えることで、単純に排気ガスの排出が減ります。クルマの減少で渋滞が減り、大気汚染が減るということもあります。さらに一歩踏み込み、自転車に空気清浄機能を持たせることで、排気ガスの減少という受身にとどまることなく、積極的な清浄効果を狙おうというものなのです。
普及には、いろいろな要素が関係してきますので、実現の可能性はわかりません。でも、単に自転車に乗り換える効果だけでなく、空気清浄効果をもたせるならば、自転車にする人が増えたときの一台当たりの効果が、より大きなものになるのは間違いありません。
とは言っても、自転車一台の効果がそれほど大きくないのも確かでしょう。しかし、それが周囲にも波及していき、大きな台数にまとまっていくならば、効果も大きなものになっていくでしょう。ちりも積もれば山となるという意味では、こちらも同じかも知れません。
地域のコミュニティーで、
家庭用の生ゴミを自転車で回収し、コンポスト、堆肥にしようという活動です。まだミシガン州のトラバースという町の小さな活動に過ぎませんが、地域の子どもや若者たちが、各家庭から生ゴミをカーゴバイクで集めて回り、それを堆肥、有機肥料にしているのです。
普通のゴミと一緒に捨ててしまえばラクですが、そのぶん、ゴミの埋め立て処分場の容量を確実に減らすことになります。有機肥料という資源を無駄にし、そのぶん化学肥料が必要になります。そう考えると、資源の無駄、エネルギーの無駄、環境への負荷軽減、食の安全など各方面に確実に貢献していることになります。
一軒一軒の量は少ないかも知れません。しかし、毎日家庭から発生するものであり、それが地域に広がっていけば、次第に大きな効果になっていくでしょう。地域の子どもや協力者によって、また自転車という手段によって運営されていることも好感されます。
3つの例を取り上げましたが、どれも自転車、もしくはペダルの力を使った事例です。もともと自転車はエコな乗り物ですが、それをエコな目的のために使っています。でも、自転車を使う上で最も効率的なのは、やはり移動です。移動するという自転車本来の使い方も、エコに貢献します。
化石燃料などのエネルギーを使いませんし、排気ガスも出しません。製造にかかるエネルギーも、クルマなどと比べてはるかに小さくなります。道路に与えるダメージも小さく、道路の占有面積もクルマの数分の一です。圧倒的にエコな乗り物なのは疑いの余地がありません。
だからと言って、クルマを排除しろとか、乗るなと言うつもりはありません。クルマが移動や物流に必要なのも間違いありません。ただ、自転車にしてもいいと思う移動について、積極的に自転車を使えば省エネになり、大気汚染や渋滞の低減など、確実に環境への負荷が減ります。
一人ひとりの行動の効果は僅かでも、多くの人が行動すれば、大きな変化となり、大きな成果が得られるでしょう。今どき、エコは当たり前です。エコカーやエコ家電だけでなく、自転車を、さまざまな場面で積極的に活用するための取り組みが、もっともっと当たり前になってもいいような気がします。
高速に自転車を投げ込んだ少年たちが悪ふざけだったと言い訳しているようですが、悪質な殺人未遂で厳罰にしてほしいものです。同じような犯行が後を絶たないのは問題です。