これまでもそうでしたが、今後もさらに新しい技術へと置き換わっていくでしょう。例えば、最近はパソコンの売り上げが落ちているそうですが、そのぶんスマートフォンやタブレットへとモバイル化しているのは明らかです。今後は、さらに身に着けて使うウェアラブルコンピュータに変わっていくと言われています。
自転車の世界にも、ナビゲーションや、より高機能のサイクルコンピュータ、GPSと連動したロックやセキュリティーなど、新しいテクノロジーが広がり始めています。まだ、その変化は大きくない分野だと思いますが、今後急速に変わっていく可能性も考えられます。
クルマなどもそうですが、自転車も今後はインターネットに接続されるのが当たり前になっていくかも知れません。すでにスマホを取り付けて走行している人もあるでしょう。地図や経路案内だけでなく、周辺の情報をリアルタイムに取得するなど、便利に使っている人もあると思います。
ゆくゆくは、自転車を一種のネット端末のように扱い、センサーやGPSなどと連動させて、その走行データを蓄積するようになるかも知れません。ビッグデータを収集して、インフラ整備に役立てたり、自転車利用者の周遊状況や動線を分析し、観光や商売に利用するなども考えられます。
最近のトレンドから言えば、自転車に乗りながらでも安全・便利にスマホを利用するような技術は、当然視野に入ってくるでしょう。それが広く受け入れられ、普及するかは別ですが、スマホがウェアラブルコンピュータになっていく過程で、自転車向けの端末が出てきても不思議ではありません。
自転車の場合、スマホを使いながら、視線を落として走行するのは危険が伴います。現在でも、道交法等で取り締まられます。その延長で考えれば、スマホがウェアラブルコンピュータなっても、その利用は認められない、認めるべきではないとの議論も出てくるに違いありません。
ただ、人々を魅了する新しいテクノロジーの勢いは止められないでしょう。現状でもスマホを使おうとする人は後を絶ちません。ならば、自転車に乗りながらでも、より安全に利用できるような技術が期待されます。なおかつ、サイクリストにとって、使うに足るメリットがほしいところです。
そう考えると、自転車用のウェアラブルコンピュータは、ヘルメットをベースにするのが有力ではないでしょうか。今まで、ヘルメットは半導体や電池が使われるような製品ではなく、ほとんどその機能は変わらずにきましたが、一気に進化して、ハイテク機器になる可能性がありそうです。
すでに、その方向性を先取りした製品やデザインプラン、コンセプトモデルが出てきています。まず、ヘルメットをかぶったまま、電話に出られるようなハンズフリー機能を持ったヘルメットの製品化は十分考えられます。音声認識アプリを使って、音声で情報を取得するような機能を搭載したヘルメットも視野に入ってきます。
当然ながら電源が必要になります。今も多くのモバイル機器に搭載されているリチウムイオン電池などの充電池が考えられます。これはスキー用のものですが、中にはバッテリーの持ちをよくするためにも、ヘルメットのシェルに取り付けた太陽電池を利用することも考えられます。
ヘルメットに搭載したヘッドマウントディスプレーによって、センサーやスマホとやり取りしたデータを映して使うスタイルも有力でしょう。ブルートゥースなどを使ったワイヤレスの通信方式は、すでに実用的な技術です。サイコンやハートレートモニターなどの機能も含めて、ヘルメットに統合される可能性があります。
すでにカメラを搭載し、動画を撮影することの出来るヘルメットもあります。こうした機能の搭載も当然考えられます。別にデジタルカメラを取り付けるのではなく、ヘルメットに内蔵され、操作用のボタンなどもついています。USB経由で外部媒体に転送もできます。
ヘルメットに装着するアクセサリーというスタイルのデバイスも考えられます。すでにヘルメットを使っている人が、買い換えなくても導入できるメリットがあります。骨伝導スピーカやマイクなどの技術を使った、ブルートゥースのヘッドセットと仕組みは同じです。
衝撃を感知するセンサーを取り付け、事故時に通報するヘルメットはすで構想されていますが、そのような機能を加えることも考えられます。このアイテムはいろいろなスポーツ用のヘルメットに取り付ける汎用のセンサーで、例えばホッケーの試合中にリアルタイムに衝撃をモニターすることも出来ます。
ヘルメットだけに集積させる以外にも、いろいろなスタイルが考えられます。例えば、リストバンドと連携して入力や操作などを分担させることも出来るでしょう。LEDなどを搭載して、パックライトやターンライトなどの機能をもたせることも可能です。
動画カメラを四方八方に向けて搭載し、ドライブレコーダーのように使うアイディアもあります。自転車に取り付けるのではなく、ヘルメットに搭載し、他のセンサーによるデータと共に、飛行機でいうフライトレコーダー、あるいはブラックボックスと呼ばれるような装置として、記録機能をもたせることも考えられます。
究極的には、視覚情報を全てカメラで取得し、コンピュータで処理してモニターに投影するヘルメットが出来るかも知れません。仮想現実や拡張現実と呼ばれるような技術です。一緒に必要な情報をモニターに映すことができます。歩行者の飛び出しを予測するなど、高度な安全機能が提供されるかも知れません。
ここまでいくには、さすがに時間がかかると思います。モニターだけ見て走行できるようにするには、技術的にもまだ難しい面が多々あります。しかし、走行中はヘルメットとして、自転車を降りたらウェアラブルな情報端末、あるいはヘッドマウントディスプレイとして使うようなスタイルは想定できるかも知れません。
こうして見てくると、すでに開発、あるいは構想されているものだけでも、いろいろなものがあります。もちろん、これまでにない製品を生み出し、それを広く普及にまでもっていくのは、そう簡単なことではないでしょう。それ相応のメリットや購入する動機も必要になります。
ただ、自転車関連の道具の中で、ヘルメットがウェアラブルコンピュータにもってこいのアイテムなのも確かです。現在、日本でのヘルメット装着率が相当低いのは間違いありませんが、もしかしたら、ウェアラブルなモバイル端末として普及し、ヘルメットの装着率が上がるなんてことがあるかも知れません。
まだ騒ぐほどではないみたいですが、中国で鳥インフル流行の兆しがあるようですね。ちょっと気になります。