私たちの身の回りにも新しいテクノロジーによる製品やサービスが広がり、生活を変えています。こうした動きは幅広い分野に及び、自転車用品をも変化させていくと思われます。前回、自転車用のウェアラブルコンピュータは、ヘルメットがベースになっていくのではないかと書きました。
これは、ごく一般的な見方だと思います。すでにその方向を先取りするような新しい製品、デザイン、アイディアが出てきています。今ある技術を自転車での走行時にも使えるようにし、モバイルコンピューティングを実現するため、ヘルメットに搭載していくという流れです。
ただ、モバイルコンピューティングによる各種のサービスはともかく、ヘルメットそのものがイノベーションによって変わるわけではありません。ヘルメットが新しいテクノロジー、機器を搭載するベースになるとしても、ヘルメットは今まで通りヘルメットです。
ヘルメット自体にイノベーションがおきるとしたら、どのような形になるのでしょうか。今までの常識では思いつかなかったような新機軸、新しい切り口、新しい捉え方、新しい活用法が取り入れられるに違いありません。なかなか凡人には発想できないような驚きの価値が生まれてくることになるでしょう。
例えばこちらは、うつ病や双極性障害、精神分裂症、パーキンソン病やPTSD(心的外傷後ストレス障害)などの疾病の治療をするヘルメットです。れっきとした医療機器でアメリカでは承認も受けています。電気的に発生させた磁力の力で治療します。日々の治療が自転車に乗りながら出来るヘルメットが生まれるかも知れません。
従来の大型の装置の場合、ずっとその場で座っている必要がありました。技術の進歩で小型のヘルメット型になりました。ならば、どうせヘルメットをかぶるわけですし、自転車に乗っている時に済ませてしまおうという発想になっても不思議ではありません。
もちろん、必ずしも自転車に乗りながら治療する必要はありません。自宅でくつろぎながらヘルメットをかぶるのもいいでしょう。しかし、忙しい現代人は、なるべく時間を効率的に使おうとします。通勤時間などを使って、自転車で走行中に治療できれば、時間の節約になります。
これはヘルメットの中に装着するインナーですが、リアルタイムに頭部へのダメージを計測できるような装置が開発されています。単に頭部の保護やダメージの診断機能だけでなく、血流の状態、脳の活動状況など、健康のためのデータを取得する端末としてのヘルメットが生まれてきても不思議ではありません。
毎日自転車に乗って、ヘルメットをかぶる人であれば、定期的に血圧を測ったり、脳波の状態などをモニターする装置としてうってつけです。うつ病なども含め、現代人の健康チェックに役立つような、健康管理機器としてのヘルメットも考えられるのではないでしょぅか。
ヘルメットはいつでも持ち歩くものになるかも知れません。これは災害用で実用性の問題はありますが、ショッピングバッグがヘルメットになります。いつでも自転車に乗れるよう、ヘルメットを持ち歩くという発想があってもいいでしょう。持ち歩きやすいように、ふだん持ち歩くものと融合する可能性があります。
自転車シェアリングを利用するなど、予定外に自転車に乗るような時でも、携帯性に優れたヘルメットがあれば重宝するでしょう。もちろん、日本の現状としては、ヘルメットをかぶる人は圧倒的に少ないですが、持ち運びしやすいヘルメットが出来れば、少しは変わるかも知れません。
こちらは、野球のピッチャー用のアイテムですが、帽子に取り付けることで、ピッチャーの頭を保護します。ヘルメットがないときの代用品、または部分的にヘルメットの用途を果たさせたり、持ち運びに便利な携帯型ヘルメットという方向にも発展していく可能性が考えられます。
ヘルメットは、頭にかぶる帽子状のものという先入観がありますが、もっと違う形状のものは出来ないでしょうか。近年は素材技術も向上していますし、ふだんは柔らかく、使う時にはヘルメット型になるような、例えば経常記憶合金のようなものを使ったアイテムは作れないものでしょうか。
こちらは、ネットゲームに熱中して何時間もモニターの前に座り続けるゲーマー用に、ゲームで手が離せないときでもハンズフリーで食事がとれるヘルメットです。これはゲーム用ですが、忙しい朝でも、自転車通勤中に朝食を摂りながら走行できる自転車用のヘルメットが開発されないとも限りません。
ディープなマニアには必要なのかも知れませんが、いくらゲームで手が離せないからといって、わざわざ食事用ヘルメットをかぶる必要があるのかと思ってしまいます。一方、自転車の場合は手を離すと危険なので、こちらのほうがリーズナブルな気もします。(止まって食べればいいことではありますが..。)
いろいろ取り上げましたが、これらは自転車用のヘルメットではなく、ネットで見つけたヘルメット型の装置の例です。実際に自転車用ヘルメットのイノベーションとして開発されているわけではありません。こうした、全く関係のない機器、装置と自転車用のヘルメットが融合したらという、私の勝手な空想でしかありません。
しかし、イノベーションは、異質なものが出会うことで生まれることが少なくありません。意外な組み合わせから革新的な製品やサービスが生まれることもあります。冗談のような発想が、案外実用的だとして世間に受け入れられたりすることもあるでしょう。
ヘルメットは昔から、言ってみれば頭部を保護するだけのものでした。もちろん、それで十分なわけですが、ウェアラブルコンピューティングの波が自転車にも押し寄せるのならば、ヘルメットがハイテク機器に変わっていく可能性は十分にあります。
今まで、ずっと大きな進化もなく、もちろん半導体や電源が必要な機器でもなく、特に注目されてこなかったヘルメットが、大きく変わる可能性が出てきました。そうした動きは、単にモバイルコンピューティングというだけでなく、ヘルメット自体にイノベーションを起こすかも知れません。
都知事選の構図が見えてきました。果たしてどのような民意が示されるのでしょうか。