路上には、自転車にとっての障害物がいろいろあります。
車道を走行していて邪魔になるものの中で、その大きさから言って、一番大きくで厄介なのが違法駐車車輌かも知れません。避けるために相当程度、道路の中央に出なければなりません。後方からのクルマを気にしながら回避することになります。
後方を確認しないような人は論外として、交通量の多い道路ならば、走行していて気を使う場面だと思います。サイクリストにとって、癪にさわる存在と感じている人も多いに違いありません。警察には、もっと厳重に違法駐車を取り締まって欲しいところです。
前回、自転車レーンなどの走行環境の整備は、数年でも十分に可能だと書きました。ニューヨークやロンドンが6年ほどで劇的に変わっています。ニューヨーク市交通局長の、ニューヨークの道路を変化させる方法の話は、とても説得力がありました。両都市が出来たのですから、東京もやれば出来るはずです。
塗装するだけなら、東京の道路にも、すぐ自転車レーンが設置できます。大規模な工事をせずに、相当な割合の道路に短い期間で設置可能なことは、国土交通省も確認しています。道路に対する考え方を変えれば、オリンピック開催までに、東京の自転車事情を劇的に向上させることは十分可能なのです。
しかし、懸念もあります。現状でもそうですが、自転車レーンの上に違法駐車され、その効用を十分に発揮できないのではないかという心配です。実際、現状でわずかながら設置されている、ブルーにペイントされた自転車レーンの上にも、案の定、違法駐車のクルマが止まっています。
いま、違法駐車されている道路に、自転車レーンが出来たから誰も止めなくなるかと言えば、甚だ疑問と言わざるを得ません。結局、ブルーのペイントが施されたとしても、自転車レーンとして事実上、役に立たないのではないかと考える人がいるのも当然です。
最初から、クルマが駐車できないよう、あるいは進入できないように、何らかの方法でプロテクトされたレーンを設置しない限り、違法駐車の問題は解決できないでしょう。しかし、それを前提にしたら、6年後どころか、いつまで経っても状況が変わらない可能性があります。
実は、ニューヨークなどでも、この問題は発生しています。プロテクトされ、物理的に分離された自転車レーン以外の、ペイントされただけの自転車レーンには、当然ながら駐車できてしまいます。実際にサイクリストの悩みのタネとなっています。
サイクリストのグループの中には、警察に陳情し、取り締まりを強化するよう働きかける人たちもいますが、なかなか状況が改善しない状況があります。そこで、一部のサイクリストが使い出したのが、今どきの手段、ネットやSNS、そして写真です。
最近は、ケータイやスマホにカメラがついているので、誰もが年中カメラを持ち歩いているような状態です。事件や事故があれば、現場で素人が撮影した動画や画像が報道されることも少なくありません。サイクリストも、自転車レーン上に違法駐車車輌を発見したら、いつでも写真をとれるわけです。
その写真を、ブログや Tumblr などを使ってネット上にアップしている人たちがいます。もちろん、そういう人が増えたとしても、違法駐車するドライバーには痛くも痒くもないわけで、憂さ晴らしにもならない、負け犬の遠吠えにすぎないのではないかという感じもします。
ナンバーもバッチリ映っていますが、それを元に違反キップをきられたという話は聞きません。そもそも関係者や当該ドライバーが、そのサイトを見る可能性は低いでしょう。わざわざ立ち止まって写真を撮り、それをネットにアップしたところで、どうにもならない気がします。
でも、ネットやSNSの力は侮れません。中東で連鎖したアラブの春とは言いませんが、ときに大きな影響力を発揮することがあります。こうした違法駐車の写真サイトが、少しずつSNSなどで拡散され、サイクリストを中心に共感を呼び、徐々に知られるようになってきました。
ある程度、話題になってくると、マスコミが取り上げるようになり、それがまた多くの人の閲覧を呼び、違法駐車に対する反感を共有するようになっていきます。メディアに取り上げられ、問題が存在が広く知られるようになり、各方面に波及することになります。
大手の看板を背負ったトラックが映っていれば、当然会社のイメージが悪くなります。会社の運行管理担当者が気にするようになるかも知れません。個人のクルマでも、ナンバーが映っていれば、あまりいい気持ちはしないでしょう。正規の駐車場所にとめ、自転車レーン上にはとめなくなるかも知れません。
中には、警察車輌ばかりをターゲットにしているサイトもあります。交通取締りの権限を背景に、サイクリストに対しても居丈高な警察は、職務執行上必要だと開き直るか、無視する可能性があります。しかし、警察だからと言って、法律を破っていいわけではありません。
市民からの反発が強まれば、警察とは言え、上のほうからの圧力を受ける可能性があるでしょう。あまり市民を敵に回すのも得策ではないと、自転車レーン上の駐車は回避するよう、お達しが出るようになったとしても不思議ではありません。
もちろん、圧力にならない場合もあります。サイトが話題になっていることを知らない人も多いでしょう。知っていて気にしない人もいます。サイトを見て自発的に違法駐車を自粛する人があったとしても、違法駐車する人はいくらでもいるわけですから、直接的に大きな効果は見込めないかも知れません。
しかし、市民の共感を呼び、マスコミで話題になれば、その世論を行政も無視できません。違法駐車画像サイトが、どれだけ役に立ったかはわかりませんが、自転車レーンが違法駐車によって機能しない事態、自転車利用者の安全を脅かしているのは問題だという意識の広がりは、確実に行政にも伝わったようです。
最近のアメリカの各都市では、物理的にセパレートされたり、プロテクトされた自転車レーンの整備が急速に増えていると言います。単なるペイントによる自転車レーンの設置に続いて、第2の波とも呼ぶべき、プロテクトされた専用レーンの設置が相次いでいます。
これまで、駐車車輌の車道側に自転車レーンが設置され、クルマのドアを急に開けることでサイクリストがケガをする事故が起きていました。それを駐車車輌の歩道側にレーンを移す、より安全で、違法駐車にふさがれることがないレーンへの転換も進んでいます。
日本とは、いろいろと背景や環境が違うので、アメリカと同じような展開を見せるとは言いません。しかしながら、ネットが世論を喚起するような例は、日本でも見られます。飲食店のアルバイト学生が、冷蔵庫に入ったり、食材で遊んだりする写真投稿が大きな話題になったのは記憶に新しいところです。
非衛生的で問題であると多くの人が感じ、マスコミも報じた結果、企業が発生防止に努めるようになりました。インターネットやSNSの影響力拡大によって、世論が企業や行政を動かし、以前より大幅に早く結果が出るようなことも少なくありません。自転車レーンへの違法駐車が問題視されることも十分考えられます。
そう考えると、やはりまず、ペイントだけでもいいから自転車レーンを整備することが大切になるでしょう。これまで歩道を走行していた人にも、車道走行の速さ、快適さ、実用性を感じてもらう必要があります。自転車は車道走行という世界の常識が理解され、多くの人に自転車本来のポテンシャルを実感してもらえるはずです。
当然ながら、スポーツバイクだけでなくママチャリであっても車道走行です。歩道を走行したのでは歩行者を危険にさらすばかりか、本来のスピードが出せず、移動に時間がかかって、有効な都市交通の手段だと実感できません。自転車レーンがあれば、車道走行が怖いという人にも安心して走行してもらえるでしょう。
その過程で、違法駐車によってレーンが機能しないような状況に陥ったとしても、それでは問題だと世論が喚起され、各方面に波及することが期待できます。日常的に自転車に乗る人が多い日本で、自転車レーンの意義が理解されれば、決して少ない人数の声のままではないはずです。
車道走行が当たり前なことを実感し、自転車レーンの有用性が理解されれば、違法駐車問題に対しても、多くの人の共感が得られるようになるでしょう。そのコンセンサスが、違法駐車の問題を解決させる圧力として、ペイントだけの自転車レーンを、違法駐車されないものへと変えていくことが期待できるのではないでしょうか。
いやあ、すごいニュースです。STAP細胞、常識を覆す大発見ですか。それも30歳の女性。若返りまで実現したらすごいことになるでしょうね。