February 11, 2014

公約はしないが趣旨には賛同

新しい東京都知事が誕生しました。


元厚生労働大臣、舛添要一氏が第8代の東京都知事です。自民党や公明党の支持を受け、2位以下に大差をつける圧勝でした。テレビの開票速報番組の開始と同時に当確が出ていましたので、番組の残りの時間をどうするのだろうとテレビ局の心配をしてしまうほどでした。

舛添要一氏:都選管から当選証書さて、東京都知事選の公示前、NPO自転車活用推進研究会による、自転車環境の整備を求める署名キャンペーンの話題を取り上げました。これは、今回の東京都知事選の候補者に対し、自転車活用政策の推進を公約に採用するよう求める、オンライン署名キャンペーンでした。

最終的に署名した人は6千5百名弱で、主催者が予想したほどには集まらなかったようですが、候補者に要望書を送付し、舛添要一氏、宇都宮健児氏、細川護煕氏、家入一真氏、ドクター・中松氏、鈴木達夫氏の6名から公約または賛同するという回答を得て、当初の目的を果たしています。

候補者の回答には多少温度差があるものの、どの候補も公約にする、または賛同するとの意思を示しており、候補者たちのコミットメントを引き出すのに成功しました。候補者が、このキャンペーン前に、どれほど理解、関心を持っていたかは別として、少なくとも自転車政策を表明させたのは間違いありません。

主要候補者討論会ダイジェスト1月末から2月頭の段階で、当選した舛添氏を含む候補者が回答を寄せています。明確に、「整備を公約またはマニフェストにする」と回答した候補がいた一方で、新都知事に当選した舛添要一氏は、「公約はしないが趣旨に賛同し、当選したら実現に向けて努力する」と回答しています。

これは、回答した候補者の中で比べると、相対的には消極的な答えと言わざるを得ず、その点は多少残念です。趣旨に賛同し、実現に努力というのでは、明確な約束とは言えないでしょう。努力はするが確約しないともとれるわけで、そう考えると物足りない回答です。

ただ、このあたりは典型的な政治家の対応で、注意深く言質をとられないようにした、同候補の政治家としての巧妙さ、老練な部分なのでしょう。なんでもかんでも安請け合いは出来ないし、逆に見通しもなく安易に約束するのは、「最低でも県外」と言った何某ではありませんが、かえって信用できないということもあります。

東京を世界一の街にしたい公約にまではしないと言いつつ、舛添さんは出馬時の会見で「自転車レーンを整備すべき」と発言しています。私がたまたま見た民放のテレビ番組のインタビューでも、特に聞かれたわけでもないのに、政策として自転車レーンの整備を自説として述べていました。

自転車走行空間の整備が全く出来ておらず、そういうことをやっていかなければならないという認識です。ほかに、討論会などの場でも、五輪開催に際し、東京の交通網が他の先進都市に比べて遅れており、その渋滞対策や災害対策、環境保護の観点からも自転車の活用を進めるべきと主張しています。

選挙では、東京五輪に向けた準備や経済、防災、福祉など、注目されるべき政策がたくさんあります。細川護煕・小泉純一郎の元首相コンビが脱原発を掲げたことも話題になりました。そんな中、舛添氏は自転車の活用を主要候補の中では一番触れていたのではないでしょうか。


●目標があれば全力をあげて東京を改造することができる
現在に至る交通インフラが東京オリンピックをきっかけに整備されたことを指摘、「20年間デフレで良いニュースがなかったなあ。でもこれを機に、明るい東京、明るい日本にしようじゃないかという思いがある。目標があれば全力をあげて東京を改造することができると思う。」と述べた。その一例として、マラソンランナーのためにも、渋滞を減らし、自転車レーンを整備することで空気を綺麗にするというプランを示した。 (舛添要一氏が出馬会見)

候補者 政策ごとのスタンス

■舛添要一氏
3.11のときは車が全然動かなかったので、自転車専用道路を整備していきたい。(「東京都知事選」候補者 政策ごとのスタンス)

◆舛添氏
史上最高の五輪にすべく、努力すべきで、そのためには東京の交通網が他の先進都市に比べると遅れていると指摘。環境保護の観点から自転車の活用を進めるべきと主張した。また、こうした自転車のためのインフラを整備することは、災害時の防災対策の観点からも有用だと話した。(主要候補者討論会ダイジェスト)


もちろん、都政の中でより優先すべき重要な課題はたくさんあるわけで、自転車政策は、数多くの政策の中の一つに過ぎないでしょう。でも舛添氏に、自転車政策に対するそれなりの理解、問題意識があることが伺えます。発言を聞く限りでは期待が持てます。

舛添氏は、参議院議員時代、自民党は歴史的使命を終えたとして同党を離党し、自民党は同氏を除名しました。それにも関わらず、自公の全面支援を受けて立候補したことには、いろいろな見方があるでしょう。しかし、都議会与党の自公と対立したまま都知事になるのは得策と言えません。

舛添要一氏が出馬会見よく、都知事は大統領のよう強大な権力を持つとされます。確かにそうした面がある一方、地方自治体の政治は二元代表制です。都知事は直接都民に選ばれますが、都議会議員も都民が直接選挙で選ぶ都民の代表です。都知事とは言え、都議会の意向を無視して都政を進めることは出来ず、双方が対立すると都政が滞ります。

都議会多数派を敵に回すと、都政を進めていくのがなかなか困難であることは、猪瀬前都知事が辞任に追い込まれたいきさつや、橋下大阪市長が辞任して再選挙に臨む経緯などを見てもわかります。その意味で、当選後の議会対策まで睨んで自公と手を組んだのは、用意周到、賢明なやり方なのは間違いありません。

今後、舛添新都知事が自転車インフラの整備を打ち出した時、都議会がどのような態度に出るかはわかりません。しかし、少なくとも今のところ対立しているわけではないので、具体的な政策が実現する見込みは十分あります。その点でも期待が持てます。

現時点で、舛添氏が自転車政策について、どれくらい理解し、どれほどの優先順位をつけ、どれほど実現の意欲を持っているかは未知数です。また、大半の都民は自転車インフラにそれほど関心がなく、政策として打ち出してもアピール度が低いように見えますが、決してそんなことはないと思います。

自転車インフラ、投資効果は無限? NPOに聞く「首都の争点」オリンピックに向けた交通政策、災害対策だけではありません。都民の安全や、利便性を向上させ、医療費の削減にも有効と言われています。環境負荷や予算の面からもアピール度は高く、世界的に見てもトレンドであり、魅力的な政策になるのは間違いありません。

むしろ、同氏が目指す世界一の都市には欠くべからざるインフラであり、自転車の事故を減らし、高齢者にも優しい政策です。観光客にとっても有効な回遊手段となり、東京の魅力を増し、訪日客を増やすことにも貢献するでしょう。ロンドン五輪を成功に導いただけでなく、ニューヨーク、パリなど実例もたくさんあります。

そのあたり、舛添新都知事には更に理解を深めてもらい、具体化に積極的に取り組んでもらわなければなりません。今後、他の政策や課題が山積する中、自転車インフラ政策が埋没してしまい、結果として何も前進しないというような事態にならないよう、具体的な計画がスタートすることを切に望みたいところです。

オンライン署名キャンペーンのおかげで、自転車インフラの整備に光が当たりました。当選した舛添新都知事は自転車インフラに前向きに見えます。しかし、具体的には、まだ何も始まってはいません。都民・自転車乗りは、舛添添都知事の今後の動向を注意深く見守っていく必要がありそうです。





そろそろメダルが欲しいところですね。選手には悔いのないよう、力を出し切ってもらいたいものです。


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この記事へのコメント
最近街で自転車に乗っている人をよく見かけます。歩行者、自転車・自動車に乗っている人全員が安全に行き来できる道路環境になるように政策を実行してくれたらいいですね。
Posted by オガタ at February 14, 2014 10:35
オガタさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうですね、なにも贅沢な環境を求めているわけではなく、欧米諸国では当たり前のように整備されているインフラです。何より市民の安全のための整備ですから、ぜひ政策の実行をお願いしたいものです。
Posted by cycleroad at February 15, 2014 23:28
 
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