全国各地で、自転車レーンの整備に取り組む動きが報じられます。先の東京都知事選で当選した舛添氏も政策として取り上げています。少し前までは、自転車のインフラなんて、マスコミなどの話題にも上がらなかったことを思えば、ずいぶん変わったものです。それだけ関心も高まっています。
国土交通省や警察庁が歴史的とも言うべき大転換を行い、自転車の原則車道走行を推進する方針を打ち出したことで、これまでの自転車の歩道走行は世界的にみても非常識であることへの理解も、少しずつですが進みつつあります。いわゆる自歩道の整備はナンセンスであり、これは正していかなくてはなりません。、
歩行者の安全を脅かしているだけでなく、歩道走行は交差点などでのクルマと自転車との事故にもつながります。しかし、長年歩道走行できてしまった結果、車道走行に恐怖を感じる人が多いのも確かです。自転車レーンの車道への整備が期待されています。

ただ、自転車のインフラは自転車レーンだけではありません。もう一つの重要なインフラは駐輪場でしょう。自転車が活用される上で、駐輪場や駐輪のためのスペースが欠かせないインフラであるのは間違いありません。駐輪場や駐輪スペースも、もっと充実させる必要があります。
自転車レーンのネットワークが形成されれば、自転車は都市交通の手段として活用されるようになります。単に駅までのアシではなくなり、自ずと、駅前などへの駐輪集中が分散することになるでしょう。ドア・ツー・ドアの移動が増えれば、そのぶん駐輪のニーズが街中に分散することになります。

駐輪インフラは、放置自転車の問題とも直結します。自転車をとめる人のマナーの問題もありますが、駐輪場の不足が放置自転車を増やす面も否めません。駐輪している自転車が多いということは、それだけ市民のニーズが大きいということでもあるわけで、行政としては、基本的にそのニーズに応えることが求められます。
環境負荷や渋滞、大気汚染、交通事故、都市部のヒートアイランドなどの対策としても自転車が見直されていますが、自転車の活用を促すならば、駐輪スペースの整備は必須です。駐輪するスペースなくしては、自転車は活用出来ません。その意味で、自転車レーンだけでは駅の無い線路、バス停のないバス路線のようなものです。

駐輪場に加え、街角の駐輪ラック、駐輪場所を指定するライン、ワイヤーやチェーンなどで施錠するための構造物なども、広い意味での自転車インフラです。こうしたアイテムによって、駐輪すべき場所や方法を指定することで、通行の邪魔にならない駐輪を促していくことにもなります。

イギリスの自転車用インフラ設備の製造販売会社、“
Cyclehoop ”社のサイトを見ると、こうした自転車インフラのための製品がいろいろ売られています。例えば、このクルマのハンドルのような形状のものは、サイクルフープと呼ばれています。

道端のポールや柵、街灯などに取り付けられており、よく見ると自転車のマークがついています。これによって駐輪可能な場所を示すとともに、これを使ってワイヤー錠などで施錠することが出来るようになっているのです。これが街角のあちこちにあれば、ワイヤー錠で施錠する人には便利です。
駐輪用のストレージにしても、いろいろな形状のものがあるものです。設置場所ごとに工夫することで、収容台数を増やしたり、雨にぬれないようにしたり、盗難を防ぐ効果も期待できます。利用者に恩恵をもたらすことで、正しく邪魔にならない駐輪を促すことになります。

場合によっては、クルマの駐車スペースを使って駐輪スペースが設置出来るでしょう。都市の中心部へのクルマの流入を抑制する政策をとるならば、駐車スペースは余る可能性があります。同じ占有スペースを何人で使うか考えれば、どちらが有効活用かは比べるまでもありません。

ちなみに、この会社は駐輪用以外のアイテムも扱っています。例えば、階段に後から設置することが出来る、自転車用のスロープです。日本でも、最初からスロープが設置されている階段がありますが、無い場所に後からスロープを設置できれば、自転車で行き来しやすくなる場所も出てくるでしょう。
公共のポンプ、自転車用の空気入れが街角にあれば親切です。空気圧が不足していたり、その場で自分でパンク修理した場合に使えます。わざわざ自転車屋さんを探す必要がなくなりますし、携帯用の小型のインフレーターを持ち歩く必要もなくなります。

公共の修理作業用の台、リペアスタンドもあります。出先でのトラブルを解決したり、気になった部分の調整、メンテナンスをする時に重宝します。ワイヤーで固定された工具が備え付けられており、わざわざ自分で持ち歩く必要がなくなるのも助かります。

大規模な自転車ステーションのプロデュースもしています。例えば、駅前の大規模な駐輪場などに、貸し自転車や修理屋などが集積された施設です。自転車通勤者向けにシャワーやロッカー、自転車を預かる機能を備えた施設のニーズも高まっていくのではないでしょうか。

こちらの名称はアルマジロ、たしかにそれと連想させる形状です。自転車レーンと車道の境目にボルトで設置し、セパレートするためのものです。低予算で簡単に設置でき、工期も短くてすみます。自転車レーンの安全性を高め、違法駐車を心理的に妨げる役割もあります。

頑丈そうに見えますが、実は100%リサイクルされたプラスチックで出来ており、クルマのタイヤで踏んでもタイヤを破損することはありません。緊急車輌などが乗り上げる必要がある際、それを可能にしています。ペイントに加え、こうしたセパレーターが設置されてもいいはずです。
自転車のインフラ用品も、細かく見ていくといろいろあるものです。自転車レーンや駐輪ラックなどを整備していくのに加え、こうしたアイテムを導入していけば、より質が高く、効率的で利便性の高いインフラになります。こうした部分も欧米の先進国を見習うべきです。
この会社が製品を納める先は地方自治体などになりますが、イギリス国内だけでなく、ヨーロッパ各国や北米、オーストラリアの都市などが広くクライアントとなっています。せっかく自転車インフラを整備するなら、世界の先進的な事例を参考にすべきでしょう。

オランダやドイツ、デンマークなどの自転車先進都市に行くと、大規模な駐輪場があったり、街角にたくさんの駐輪スペースが確保されています。駅前などに大量の自転車がとめられている様子は、日本人の感覚だと放置自転車の山のように見えてしまいますが、現地の人の感覚は、そうではありません。
数が多いと言っても、駐輪スペースにとめられています。もちろん、中には不適切な止め方がないとは言いませんが、大量に自転車がとめられているのは、当たり前の光景と捉えられています。環境と人間に優しい都市の象徴でもあります。自転車が交通手段である以上、必ずどこかに駐輪せざるを得ないのは当然です。
駅前などに自転車があふれているのは景観を損なうとか、見苦しいという日本の感覚とは違います。そもそも、放置自転車という発想がありません。例えば東京駅前、大手町の街角には、自転車を一切とめさせないようにしています。一方、オランダの首都のアムステルダム駅周辺の街角には、自転車があふれています。
駐輪ニーズがあるから、それに応じた駐輪場や街角の駐輪スペースが用意されています。自転車の活用を推進するならば、大量の駐輪自転車が見苦しいという理由で、駐輪させないなんてナンセンスです。よく考えれば当たり前のことですが、このあたりの意識も日本とは大いに違っています。

もちろん、歩行者の危険や邪魔になったり、緊急車輌が入って来れないような駐輪は問題です。日本では、そうしたマナーの悪い駐輪が多いのも事実ですが、それは駐輪場や駐輪スペースが圧倒的に足りないことの結果でもあります。迷惑な駐輪をさせないためにも、駐輪スペースを増やすべきです。
自転車ステーションなど、高いサービスを提供する場所は有料でもいいと思いますが、基本的には無料の駐輪場にすることも重要でしょう。有料駐輪場は敬遠され、使われません。駅付近の駐輪場を無料、あるいは一定時間無料としたことで、迷惑駐輪が大きく減ったという事例は各地から報告されています。
自転車レーンを整備し、自転車を活用しようとするならば、駐輪ニーズも増えるのは避けられません。マナーの向上も必要ですが、駐輪設備の整備が必須です。駅前などへの駐輪場の設置だけでなく、日本でも街角のちょっとしたスペースへの駐輪ラックなどの設置が必要になってくるのではないでしょうか。
言わば、自転車レーンと駐輪場はクルマの両輪です。自転車レーンの整備、充実を進めるならば、それを自転車インフラとして有効に機能させるためにも、駐輪インフラの整備は必須です。街角の自転車が景観を損なうとか見苦しいのではなく、より先進的な都市のシンボルであるとの意識の切り替えも必要なのかも知れません。
それにしてもマレーシア航空機はどこへ行ってしまったのでしょう。こんなに経っても見つからないとは思いませんでした。どこかの国に着陸してたりするのでしょうか。