日本でも、家庭で飲まれるほかにも飲食店などで提供され、広く飲まれてきました。昔からあった喫茶店に加え、近年はスタバやドトールなどのセルフ方式のカフェが増えました。さらにマクドナルドなどがコーヒーの提供に力を入れはじめ、業態の垣根を越えた競争となっています。
昔ながらの喫茶店に、新しいカフェ、ファーストフードと、消費者には選択肢が増えたわけですが、お店にしてみれば、お客の奪い合いです。さらに、そこへ登場したのがコンビニ・コーヒーです。2012年頃から始まり、2013年には、ヒット商品の筆頭にあげられるほどの爆発的な伸びを見せました。
コンビニ参入前でも過当競争なのかと思っていましたが、コンビニ・コーヒーの大ヒットを見ると、まだまだ需要があった、あるいは需要の伸びる余地があったということなのでしょう。一挙に5万店規模のコンビニがカフェとなり、全国のコーヒーを提供する店の数が1.5倍ほどに拡大したことになります。
これに対し、既存のコーヒーチェーンなどは巻き返しに出ています。さすがに市場は飽和状態だろうと思えば、さらに大手チェーンのスーパーマーケット、郊外型を展開するチェーン店、コーヒー卸大手などが新規に参入し、競争はさらに過熱する様相を見せています。コーヒーの消費量も伸びています。
ところで、世界に目を向けると、従来型のカフェでない業態には、まだまだ参入の余地があると考えている人たちがいます。その名も“
Wheely's Cafe”、カーゴバイクでコーヒーを売ろうというものです。今、クラウドファンディング・サイト、“
Indiegogo”で資金調達を目指しています。
これまでにもカーゴバイクや自転車にトレイラーを使うなどして、コーヒーの移動販売に取り組む人を取り上げたことがあります。欧米諸国には、似たことを考える人がいます。しかし、この“Wheely's Cafe”は、少し違って、自転車のコーヒー移動販売の世界的なチェーンを展開しようという意欲的なものです。
個人で起業しようという人などに、世界一小さなカフェとしてのフランチャイズを提供し、“Wheely's Cafe”を世界的なブランドにしようという野心を燃やしています。スタイルが違うので、スターバックスやマクドナルドなどの既存の有名チェーンにも十分挑戦できると考えています。
なんと言っても、初期費用が違います。大手チェーンだと何十万ドル、何千万円という単位の初期投資が必要なのに対し、3千ドル、30万円程度しかかかりません。それでも、スウェーデンでのテストでは、一日150ドルから300ドルの売り上げがあったと言います。
例えば朝のビジネス街など、移動する場所や時間を工夫すれば、もっと売り上げは上がるでしょう。コーヒー以外にもサンドイッチやクッキーを売ったり、食品以外のものを売ることも出来ます。もちろん、ロンドン、ニューヨーク、東京などの大都市なら、大きく売り上げが違ってくるだろうとサイトにも書かれています。
自転車で販売するにも、単なる個人では、下手をすると怪しげに見えてしまいますが、“Wheely's Cafe”というブランドが認知されるようになれば、大きな力になるに違いありません。世界中の個人が一つのブランドの下に集まって、新しいコーヒ−販売の革命を起こそうと呼びかけています。
この“Wheely's Cafe”、スウェーデンの“
Nordic Society For Invention and Discovery”というラボが立ち上げようとしています。このラボは、同じスウェーデンの有名ブランド、“IKEA”や“H&M”の製品開発にも関わったところだそうです。もう一つ新たなブランドが生まれないとも限りません。
目標は、1年で100以上の都市に“Wheely's Cafe”を誕生させることだとしています。フランチャイジーになろうという人がいなければなりませんが、何といっても1件30万円ですから、決して不可能な目標ではないでしょう。欧米ではマスコミにも取り上げられているようです。
果たして日本に上陸するかどうかはわかりません。新規参入が相次ぎ、飽和状態にも見える日本のコーヒーショップ市場ですが、まだまだニーズは埋もれている可能性があります。固定店舗を展開するのとは違い、移動販売が新たなニーズを掘り起こす可能性も考えられます。
オフィス街などで、カフェが少ない場所もあるでしょうし、カフェが少ないため、持ち帰りの需要が多い場所もあるはずです。大きな公園とか、イベント会場、人の集まるところは、まだまだたくさんあると思います。何かの待ち行列に並んでいる人に売るなど、機動的に動くことでニーズが掘り起こせるかも知れません。
普通のカフェは、いったん開店したら移動することは出来ません。どうしても人が多い場所、商業地などに限られます。移動販売ならば、コーヒーショップの密度の低い場所を探したり、時間帯や場所を試しながら可能性を探ることも出来ます。バンや軽トラなどと違って排ガスを出さず、イメージ的にもいいものがあります。
移動の燃料費もかかりませんし、人件費も自分の分だけとするならば、必ずしも大きな売り上げは必要ありません。あまり人通りが多くなく、したがって従来型のカフェが展開していないエリアでも、規模が小さいぶん十分に採算がとれる可能性があります。その点もアドバンテージに数えられるでしょう。
これが食事だと、一日何食も食べるわけにはいきませんが、コーヒーならば今までより飲む回数が増える余地もありそうです。コーヒーという広く愛される嗜好飲料だけに、近くに店がない、買いにいけない、という場所やケースが発掘できれば、市場はもっと広がるかも知れません。
なにもコーヒーに限ったことではないでしょう。自転車を使った移動販売というスタイルは、他にも応用できる可能性があります。移動販売というスタイルはともかくとしても、市場は飽和状態、参入の余地は乏しいといった月並みな見方、凡庸な判断が、ビジネスの創出やイノベーションを阻むということなのかも知れません。
15歳で優勝、メンタルもすごい新人が出てきましたね。オリンピックもありますし、若手の台頭は楽しみです。