April 27, 2014

観光の振興と環境整備モデル

日本各地で自転車が見直されつつあります。


前回、全国各地で自転車関連のイベントやレースが開かれていることを取り上げました。レールバイクや水上バスを運行したり、サイクリングロードやサイクリスト向け施設を整備したり、サイクリングマップを作成したり、専門職員を募集したり、といったニュースもありました。

全国各地の自治体で、「自転車の町」を目指したり、自転車によって地元の観光振興を狙うところが増えてきています。自転車や自転車に乗る人を改めて見直す傾向が顕著といえるでしょう。中でも一番目立ってきているのが、広島と愛媛ではないでしょうか。

両県の間には、ご存知しまなみ海道のサイクリングロードがあります。世界的にも珍しい、海の上を渡るサイクリングロードとして、海外からの客も集める有名な自転車観光地になりつつあります。近年、クルマ用の橋としてだけでなく、自転車道としての価値に気づいたのか、両県や地元自治体も力を入れはじめています。


広島の自転車道2本整備完了 呉・尾道・今治とつながる

広島県の湯崎英彦知事は16日、県内2本の自転車道の整備が完了したと発表した。整備済みの2本と合わせて、広島県と愛媛県の沿岸部や島を回るネットワークが完成。一部をフェリーで乗り継げば、広島市から江田島市を経由して尾道市、愛媛県今治市までを自転車で巡ることができる。

今回、整備したのは呉市から尾道市まで約82キロメートルを結ぶ「さざなみ海道サイクリングロード」と呉市から江田島市の約70キロメートルを結ぶ「かきしま海道サイクリングロード」。車道の端に目的地までの距離を示す距離標や推奨ルートを示す「ブルーライン」を設置した。

整備済みの「しまなみ海道サイクリングロード」と「とびしま海道サイクリングロード」と合わせると、今治市から同市の岡村島と広島市から江田島市の2区間でフェリーに乗れば、ほとんどを自転車で一周できる。

10月には愛媛県と共催で国際サイクリング大会「サイクリングしまなみ」を開催する。知事は尾道と松江間に自転車道を整備する構想を披露。「体力や目的に合わせて様々に利用できるようにさらに自転車道の改善を図っていきたい」とした。(2014/4/17 日経新聞)


しまなみ海道に加え、接続して周辺に拡大する自転車道を整備するなら、さらにその魅力が増すことになるでしょう。しまなみ海道のサイクリングロードとしての魅力、接続地も含めた地元自治体による整備により、走行環境が充実し、サイクリングのメッカのように認知され始めつつあります。


自転車そのままで乗車OK JR予讃線などで春秋に運行

自転車そのまま折りたたまずに自転車を持ち込めるサイクルトレインが19日、JR予讃線と予土線で走り始めた。移動を列車にすれば、目的地でサイクリングが存分に楽しめる。気候が良い春と秋の休日に運行される。

予讃線の松山―今治間(約50キロ)を走る「しまなみ号」と、予土線の宇和島―高知・窪川間(約80キロ)の「四万十号」。ともに愛媛県や自治体、観光協会などによる、自転車文化の振興と観光客呼び込みを狙った企画だ。

しまなみ号は貸し切りの臨時列車1両で、定員30人。運行を昨年の8回から40回へと大幅に増やす。海上でペダルがこげるしまなみ海道をサイクリストの聖地に、と力を入れる県と今治市が負担金を出した。(2014年4月20日 朝日新聞)


サイクルトレインの実施も、しまなみ海道への接続という目的がはっきりしていると利用者が増えるでしょう。しまなみ海道の広域からの集客にも貢献します。自治体だけでなく、地元企業や観光などの関係者が連携することで、より「聖地」としての認知度が高まることが期待できます。


“自転車天国”目指す愛媛県--マイクロソフトがクラウドなどで支援

日本マイクロソフトと愛媛県は4月22日、愛媛県が展開する「愛媛マルゴト自転車道」の推進で連携すると発表。その取り組みとして「愛媛マルゴト自転車道サービスサイト」を公開した。

愛媛県知事愛媛マルゴト自転車道は、瀬戸内しまなみ海道を中心に、県下全域で自転車道を整備するなどして、愛媛県が「サイクリング・パラダイス」となることを目指す取り組み。日本マイクロソフトは、ICTの利活用促進を通して愛媛県内の地域活性化や情報リテラシーの向上支援で1月に愛媛県と覚書を締結。愛媛マルゴト自転車道の推進をICTの側面から支援するという。

愛媛県知事の中村時広氏は「愛媛県は約3年前にサイクリストの聖地になることを目指し、県内に上級者と中級者向けで11コース、ファミリー向けで15コース、合計26コースのサイクリングコースを用意した」と解説、以下のように続けた。

「四国と本州をつなぐ橋にはそれぞれ特徴があるが、しまなみ海道は自転車の専用道を持っているという特徴がある。本州までの間に3種類の橋があり、橋梁技術を知ることにもなり、絶景を楽しむことができる。道路は自動車のためだけなく、歩行者のためであり、そしてサイクリストのためである。

愛媛県では自動車や歩行者、自転車がお互いに思いやりをもった利用を提案する条例を作っている。自転車の新たな文化を提案したいと考えており、健康や生き甲斐、友情を育むことができる。10月26日には、広島県と協力して日本最大級の国際サイクリング大会である“サイクリングしまなみ”を開催する。今回の日本マイクロソフトの支援で愛媛マルゴト自転車道サービスサイトの活用を促進したい」(2014/04/22 CNET Japan)



MS、愛媛県をサイクリング天国に、自転車乗りのための地図・投稿サイト構築

地図・投稿サイト構築愛媛県と日本マイクロソフト株式会社は22日、「愛媛マルゴト自転車道サービスサイト」を公開した。県内のサイクリングロードのルートを地図サービス上で紹介するほか、コースごとの高低図や走行動画、グルメ・観光スポット情報も提供する。また、実際に現地を訪れたサイクリストや県民から写真や情報の投稿も受け付け、地図上から検索できるようにしていく。

愛媛県では、県内全域を“サイクリングパラダイス”にすべく、「愛媛マルゴト自転車道」という事業を推進中。その一環として、同県と日本マイクロソフトが連携してサービスサイトを開発した。

愛媛県のサイクリングロードとしては、本四連絡橋の中で唯一、自転車道が整備されているという「瀬戸内しまなみ海道」がある。中村時広愛媛県知事は同ルートについて、サイクリングで絶景が楽しめる世界に誇れるコンテンツだとアピール。これを核に県内各地にサイクリングロードを整備することで、日本・世界各地からサイクリストを集客したい考えだ。現在、中・上級者向け11コース、ファミリー向け15コースの計26コースが設定されている。

サービスサイトはウェブベースで提供するが、Androidアプリも用意し、スマートフォンから手軽に投稿できるようにする。時期は未定だが、iOSアプリも提供予定だ。(2014/4/22 INTERNET Watch)



NTT西、「瀬戸内しまなみ海道」75kmにWi-Fi整備、サイクリストらに無料提供

西日本電信電話株式会社(NTT西日本)愛媛支店とNTTメディアサプライ株式会社は22日、愛媛県内にキャリアフリーのWi-Fiスポットを整備し、サイクリストらに無料提供すると発表した。

Wi-Fi整備まずは10月26日までに、愛媛県今治市と広島県尾道市を結ぶ本四連絡ルート「瀬戸内しまなみ海道」のサイクリングロード(全長75km)において、周辺の休憩ポイントや観光スポット、宿泊施設などを中心に150カ所を整備する。同日開催される「瀬戸内しまなみ海道・国際サイクリング大会」を見据えたものだ。これに並行して、松山城や道後温泉など、愛媛県内の観光地にも設置していく。

外国人観光客向けにはスクラッチカード「えひめFreeWi-Fiカード(仮称)」を配布。記載されたID・パスワードで2週間使い放題となる。今夏より提供予定で、具体的な配布場所は今後調整する。国内の観光客にも、1日最大60分(15分×4回)まで無料で提供する。

各Wi-Fiスポットでは、インターネット接続サービスに加えて、周辺の旬の情報やクーポンなどの配信も行う。スポットを設置する場所のオーナーにとっても、店舗のホームページを自動表示したり、サイクリストらの集客が見込めるなどメリットがあるという。

愛媛県では、瀬戸内しまなみ海道をはじめとしたサイクリングロード計26コースを県内全域に整備する事業「愛媛マルゴト自転車道」を推進中。その一環として4月22日には、各コースの地図情報や観光スポット情報などを提供・共有するサイト「愛媛マルゴト自転車道サービスサイト」を日本マイクロソフト株式会社の支援を受けて開設した。同サイトでは、サイクリストが現地の写真などを投稿できるアプリも用意する。

NTT西日本は、NTTメディアサプライが提供する店舗向けWi-Fi構築サービス「DoSPOT」を活用してサイクリングロード周辺のWi-Fiスポットを整備することで、サイクリストの集客に向けた愛媛県の取り組みに協力する。(2014/4/22 INTERNET Watch)


マイクロソフトやNTT西日本などの企業も巻き込み、クラウドやWi−Fi環境の整備によって側面から支援し、人気の盛り上がりに貢献する形になっています。スマホなどを使って写真をアップするなどは、今どきどこでも出来ますが、Wi−Fiが使える自転車道というのはなかなかないでしょう。

投稿サイト愛媛県知事は、「サイクリストの聖地」と口にしていますし、各方面と連携して相当力を入れているのは間違いないようです。なんと言っても、しまなみ海道という資産があることは、他の自治体にはマネの出来ない強みです。これを生かさない手はありません。

しまなみ海道を核に、その魅力や集客力がどんどん膨らんでいく好循環を生んでいるようです。まさに「サイクリストの聖地」として、自転車による地域活性化の手本のような場所になっていく可能性があるでしょう。自転車観光のモデルとして各地をリードしていく存在となるかも知れません。

他の自治体は、しまなみ海道にはかなわない、と諦める必要はないと思います。海だけではなく山の魅力だってあるでしょうし、各地区それぞれの特徴や活かせる環境があるはずです。確かに海越えは魅力ですが、サイクリストは[海上コース}にばかり惹かれるわけではありません。

山あいの清流をたどるコースだとか、景色の良い峠を越えるコース、昔ながらの日本の原風景を走り抜けるコースなど、特徴を出すポイントはいろいろあるはずです。しまなみ海道に注目が集まり、盛り上がっているのは確かですが、それを自転車観光の追い風として利用してほしいものです。

しまなみ海道を擁する愛媛・広島両県が、全国の自転車による観光振興の象徴的存在になっていますが、もう一つ注目される地域があるとしたら、それはやはり東京でしょう。舛添都知事が就任して以来、東京の自転車政策に行方に大きな注目が集まっています。


東京五輪、自転車活用へ環境整備を 超党派議連が舛添都知事に要望

舛添都知事に要望自民、公明、民主などの超党派国会議員で構成される「自転車活用推進議員連盟」事務局長の岩城光英参院議員らが21日、舛添要一知事を訪ね、2020年の東京五輪で、自転車を有効な移動手段とするための環境を整備するよう求めた。

同連盟は超党派の衆参両議員計94人で構成。昨年12月に政府に示した提言では各省庁にまたがる関連行政を一元化するために特命の担当相を設置することや、駐輪場の整備や自転車レーンの設置、シェアサイクルを促進するための規制緩和などを提案。東京五輪開催に向け国や自治体に対し、五輪会場周辺の車道に自転車通行帯を設けることなどを要請。岩城事務局長らは「(五輪では)世界から大勢のお客さまが来る。世界一の自転車先進国だということを示すためにも、都内の交通体系整備など、しっかりと後押ししていただきたい」と訴えた。

舛添知事も「直下型地震が起きると車で動けない。自転車だと移動できる。3日分くらいの備蓄を自転車のかごの中に入れることもでき防災面でもいい。一石二鳥、三鳥、四鳥、五鳥くらいあるんじゃないか」と理解を示した。そのうえで「議連の皆さん方と連携をとりながら、来年の予算化にむけて頑張りたい」と前向きな姿勢を表明した。

自転車利用をめぐり舛添知事は、就任直後から、自転車シェアの普及促進のための調査費などとして今年度予算案に2千万円を計上するなど、自転車の利用促進を含めた交通体系の見直しに意欲をみせている。(2014.4.21 産経新聞)


すでに舛添都知事は、自転車環境の充実を表明していますが、その実現への具体的な道のりは、まだ見えてきていません。国会議員からの申し入れなど、各方面からの要望に対し、コミットメントすることが増えれば増えるほど、その実現の可能性が高まっていくわけで、その点で歓迎されるニュースです。

まだ具体的な部分は未知数です。しかし、下の動画にあるように、企業に自転車通勤者用のシャワー設備などの設置を促すというのは、これまでの姿勢と180度逆のものです。これまで都は、都心の企業に、いかに自転車通勤をさせないようにするかというスタンスでした。

これまで東京都は、自転車通勤を認めている事業者に対し、従業員が駐輪場を確保しているかの確認を義務付ける条例を成立させるなどして、自転車通勤を抑制しようとしてきました。もちろん、放置自転車などの問題もあるでしょうが、世界の都市の趨勢とは逆行する姿勢と言わざるを得ません。

舛添都知事が自転車通勤者用のシャワー設備の設置を促すというならば、180度の方針転換と言えるでしょう。都知事が、ボリスジョンソン・ロンドン市長やブルームバークニューヨーク市長のような、強いリーターシップを発揮し、都のお役人たちの迷走を正していってほしいところです。



それにしても、自転車活用推進議連は、もう少しレベルの高いことを言ってほしいと思います。単なるシェアサイクルの導入支援では、各区それぞれのシステムが乱立する恐れがあります。区ごとのシステムでは、結果的に利用者が不便になり、共倒れの恐れすらあります。支援でなく都がイニシアチブをとって、統合すべきでしょう。

オリンピック競技会場周辺の自転車レーンの整備なんてケチなことは言わず、東京都市部全体をネットワークする自転車レーン網の整備と、どうして言えないのでしょうか。自転車活用推進議員連盟の議員たちは、本当にわかっているのか心配になります。

せめて、都内に散らばる競技会場を結ぶ自転車レーンを作らなければ、交通機関の混雑緩和、都内の道路の渋滞緩和、移動の迅速化などの役に立ちません。ロンドン五輪の渋滞対策として大きな効果が上がったのは、競技施設周辺にだけ、レーンを整備したからだと思っているのでしょうか。

東京の場合は、オリンピックという目標があります。都知事交代もチャンスです。これらをきっかけに、東京都心の自転車走行環境が大きく改善する可能性が出てきています。なんと言っても東京は首都ですから、ここでインフラ整備が進むことは大きな意味があります。

東京で自転車インフラの整備が、渋滞や環境、公害、健康、福祉、災害対策、そして事故防止や安全対策として大きな効果を上げれば、これは全国に広がっていく可能性があります。日本全体の自転車走行空間の整備に大きな影響を与えるに違いありません。その意味でも、今後の動きが注目されます。

しまなみ海道と東京、どちらも全国の自転車環境向上を引っ張っていく存在になる可能性があります。自転車のスポーツやレクリエーション、観光資源としての魅力、都市交通としての有用性、安全で便利な都市の自転車基盤といったものを、国民が見て実感して理解するための先駆けとなってほしいと思います。





調査委員会の委員長自ら同じことをしていて、よくあれほど批判できたものですね。健忘症なのか図々しいのか。

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この記事へのコメント
こんにちは
ブログの本題とは違うんですが、質問です。

知人に遅い自転車が車道走ってるとウザいと言われました。

そのことが正しいのかどうかではなく、凄くノンビリしたペースで狭い道路を走る人、どう思いますか?

多分この事が車派と自転車派の一番の摩擦の原因だと思います。
Posted by ぶーちょ at April 29, 2014 17:49
ぶーちょさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
自転車に限らず、クルマでも遅いクルマはいますし、歩行者でも歩くのがゆっくりの人もいます。
いろいろな考え方があるのは仕方がないところでしょう。
自分本位で考えれば、遅い人を邪魔だと感じるのでしょうが、公道、公共空間にいろいろな人がいて、共存するのは当たり前のことだと思います。
「子供叱るな来た道だ、年寄り笑うな行く道だ。」などと言われます。遅いのは高齢者ばかりではないと思いますが、その方も高齢になれば、ゆっくり走らざるを得なくなるでしょうし、その時に気づくのかも知れません。
Posted by cycleroad at April 29, 2014 23:43
ありがとうございました

なぜ車に乗ると皆自己中になってしまうのでしょうか…
日本は国土だけでなく人間も小さい国だと感じてしまいます。

Posted by ぶーちょ at April 30, 2014 21:35
ぶーちょさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
欧米諸国に行くと、日本と比べて交通弱者優先の考え方が徹底している感があります。
一方、日本では、経済効率重視の考え方から「クルマ優先」が無意識に当たり前になっているように思います。まず、そのあたりから根本的に変えていく必要があるのではないでしょうか。
Posted by cycleroad at May 01, 2014 22:54
 
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