とは言っても、警察庁の調べによれば、平成24年に自転車盗は全国で30万件あまりも起きています。平成15年に48万件弱だったのと比べれば減っていますが、それでも年間30万件という数には驚きます。ちなみに、平成15年の全国の放置自転車の台数は39万台で、この数字にも影響しているはずです。

この数字は、あくまで警察が認知した件数なので、実際にはもっと起きているはずです。面倒だからと届けない人もいるに違いありません。一方、検挙件数は平成15年に3万2千件あまりで検挙人数が2万5千人強、平成24年が1万9千件あまりで1万5千人弱となっています。
つまり、大多数が捕まっておらず、検挙率は6%〜7%であまり変わっていません。警察が検挙に力を入れたから減ったとは言えない状況です。届けられた盗難のうち、9割以上が未解決、検挙されておらず、そのほとんどが手元に戻って来なかったものと推測されます。
自転車盗の認知件数、検挙件数ともに減っている中で、注目されるのは、盗まれた自転車のうち施錠していなかったケースの割合が、逆に増えていることです。平成15年に41%が無施錠だったのに対し、平成24年では58%が無施錠と、17ポイントも増えているのです。
日本での車種の割合から言って、その多くがママチャリだと思われますが、自転車にカギをかけない人が増えているようです。面倒だとか、盗まれてもいいとか、古いので盗む人はいないだろうとか、理由はいろいろあると思いますが、カギをかけないのでは盗まれても仕方ありません。

外国人から見ると、自転車にカギをかけないという行為は信じられないようです。もちろん、カギをかけなくても盗まれないことがあるということには、もっと驚きます。日本では、諸外国に比べて自転車が盗まれないように見えますが、実際には年間30万件以上も起きているわけです。
ママチャリの馬蹄錠やシリンダー錠では、カギをしても簡単に壊されるので、カギをかけても意味がないと考える人もあるでしょう。しかし、それならば頑丈なチェーンロックやU字錠を使うなど方法はあるわけで、施錠しない理由にはならないでしょう。
よく警察が啓発しているように、ツーロックにする手もあります。プロや用意周到な犯人には破られるとしても、少しでも盗むのが面倒になれば、盗難が防げる確率は上がります。結局、盗難防止に無頓着、盗まれてもいい、あるいは盗まれないとタカをくくっている人が多いという事なのでしょう。
これが海外だと全く違ってきます。例え、高価には見えない使い古された自転車であっても、厳重に施錠します。施錠しなければ、すぐ盗まれます。細いワイヤーでは切断されるので、華奢な女性でも、重くて頑丈な鎖とU字錠を身体に巻きつけて走っていたりします。
そういう国では、当然ながらカギも進化します。こちらの鍵、よくあるU字ロックに見えますが、鍵穴に工夫があります。動画を見るとわかりますが、鍵穴が直接見えないため、ロックを破ることができないという仕組みです。カギを差し込む状態ではただの円筒状の穴でしかなく、鍵穴は直接見えないのです。

U字錠は、そう簡単には破れないとしても、鍵穴が見えるのは弱点ということになるようです。直接カギ穴が見えなければ、鍵を破るのが難しくなるのは明らかでしょう。この“
Forever Lock”、金属部分を大型のカッターなどで切断しない限り盗めそうにありません。かなり強力なアイテムと言えそうです。
こちらの“
Skylock”には、ハイテクが使われています。これもU字錠ですが、スマホによって開錠します。アプリから、Bluetoothによる無線で信号を送って開錠するのです。近づくだけでも開錠する、いわゆるキーレスエントリーも出来て、開錠の距離も設定可能です。

ソフトウェア的にハッキングされて破られないのかと思ってしまいますが、物理的なカギではないぶん、普通の方法では壊しにくいのでしょう。もしスマホを紛失したり忘れたりした場合、充電切れの際には、ロック本体のタッチパッドから、決まったパターンを入力して開錠することが可能です。
この手のスマホで開錠するU字錠の開発例は最近増えており、このブログでも過去にいくつか取り上げました。スマホのアプリなのでロックのキーを友人などとシェアすることも可能になります。この“Skylock”もそうした機能を備えており、グループで簡単に自転車をシェアすることができます。
スマホがキーになるので、わざわざ会ってカギを貸す必要もありません。自転車がある場所はGPS機能などで調べられます。従来のロックでも、合鍵を作って持ち合えば出来ないことはないでしょうが、家族や仲間内で簡単に自転車をシェア出来るというのは、便利な機能です。
さらに、このロックは、盗難を感知する機能もついています。モーションセンサーが内臓されていて、動かされたことを検知すると、持ち主のスマホに信号を送ります。こちらは Wi-Fi による無線通信を使って動作しますが、Wi-Fi 環境がない場所では、Bluetooth で近距離なら動作させられます。

加えて、走行中にモーションセンサーが衝撃を検知すると、持ち主のスマホにメッセージを送る機能があります。反応がないと救急などに通報するように設定することが可能です。事故などが起きたときの自動通報システムの機能も兼ね備えているわけです。
スマホによる開錠とシェアシステム、盗難検知通報システム、事故通報システムと、それぞれの機能を持つグッズは、これまでにもありました。これは、それらの機能を全て備えたロックということになります。また、電力は本体に装備されたソーラーパネルから充電されます。
USBポートからも充電できますが、晴天ならおよそ1時間程度の充電で1週間程度の電力が得られるほどの低電力なので、電池切れの心配はなさそうです。満充電なら1ヶ月程度は動作すると言います。なかなか優れた仕様と言えるのではないでしょうか。

近年、海外では自転車用ロックの変革が急です。一方、日本では盗難自転車の6割が無施錠という好対照になっています。あまり需要がないのか、こうしたロックの開発の話も聞きません。相対的に治安がいいとも言えるのでしょうが、無施錠というのは問題です。
無施錠は窃盗を誘発します。毎年検挙される自転車盗の犯人のうち、だいたい5割から6割が少年です。自転車盗は非行の入り口とも言われています。無施錠が非行少年を増やすのは否めません。非行少年の中から将来の凶悪犯も生まれます。将来の治安の悪化を助長する行為と言っても過言ではありません。
こうしたハイテクのロックを使えとは言いませんが、せめて施錠はするべきであり、基本的なモラルと言えるでしょう。自分の自転車なのだから無施錠は勝手と考える人もあるようですが、社会を住みにくくすることにつながります。自転車のロックは自転車だけでなく、自分たちの社会を守るアイテムと言えそうです。
ところで、隠岐の海と勢って似てますよね。
自転車でさえ鍵を厳重にしないといけない国では、家なんかもっと防犯に気をつけないといけないんだろうな。おちおち、公園のベンチなんかで昼寝もできないなあ。(強盗に刺されるから)