May 27, 2014

自分たちだけで考えないこと

ライフハックという言葉を聞くことがあります。


意味としては、生活の中や仕事をする上で、より効率よく、より快適に、よりラクにこなすための方法、ちょっとした知恵、気の利いた道具など、といったところでしょうか。元はアメリカのコンピュータなどの技術系ライターが考案した言葉だそうです。

この言葉の自転車版、サイクルハック“Cyclehack”を提案している人がいます。イギリスはスコットランド地方に住む、Sarah さんと Johanna さん達です。意図するところは、自転車での走行を、より安全・快適にするため、都市を自転車に対しフレンドリーなものにするための方法や工夫や道具などということになるでしょう。

CyclehackCyclehack

ただ、ここで言うサイクルハックは、こうした目的のために行われる48時間のイベントのことも指しています。彼女らは、このイベントを実現するために、クラウドファンディングサイトで資金調達を目指すと共に、幅広い賛同を得ようとしています。

自転車環境をより良く改善するための知恵や提案を幅広く集めるためのイベントです。ここで注目すべきは、参加するのがサイクリストだけではない点です。クルマのドライバーや歩行者、役所や民間の都市開発の関係者、プランナー、デザイナー、メーカーなど道路や都市に関する幅広い立場の関係者を集めようとしています。



サイクリストだけであれば、イベントの趣旨への賛同が得られやすく、人も集まるでしょう。しかし、それではサイクリストからの視点だけで議論をすることになり、偏ったものになりかねません。サイクリストだけが集まって提言をしても、広く社会に理解され賛同を得られるような提言にならない可能性があります。

サイクリストだけで集まるのは簡単かも知れませんが、それはサイクリストの会議、サイクリストの意見、あるいはサイクリストの独善と捉えられる懸念があります。せっかくのアイディアや工夫も、その後の実際の整備につながっていかない可能性も考えられます。

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サイクリストとドライバー、歩行者、あるいは行政などとは、利害が対立するような部分もあります。サイクリストだけでアイディアを持ち寄っても、場合によっては他の関係者の反発を買ったり、意見の対立、感情的な反発などを生む可能性も否めません。

サイクルハックを生み出す上でも、サイクリストだけでは気づかない視点、わからないこと、思いつかない部分があるでしょう。さまざまな立場からの関係者を巻き込むことで、より現実的なハックが生まれたり、より実現化しやすくなるということもあるに違いありません。

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議論をし、アイディアを出し、考える必要のある改善点、すなわちサイクルハックを生み出すべき部分は、たくさんあります。例えば自転車レーンに関してなら、違法駐車を排除するアイディア、より安全に通行できる形、ルール違反をなくす工夫、有効なネットワークにするための方法などいろいろ考えられます。

わかりやすい標識や見やすい統一されたサインの実現、電車に載せるための仕組み作り、より多くの自転車を収容し、使われやすい駐輪場の構造、排水溝や路上の異物・障害物などの危険性の除去など、考えるべき課題は山ほどあります。そのために、メーカーに製造してもらいたい道具や製品も出てくるでしょう。

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イベントでは多くの関係者を集め、現状の問題点を解消するためのたくさんのアイディアや解決案、すなわちサイクルハックを生み出す作業が行われます。関係者の研究成果の披露やアイディアのプレゼンが行われ、多くの人が知恵を持ち寄り議論する、自転車のあらゆる障害に対するシンポジウムになります。

このイベント、来月後半の土日に予定されていますが、発案者の二人の住むイギリスのスコットランド地方の都市での問題がベースになります。でも、出来たサイクルハック、プレゼン、アイディア、そのほかの成果物を含め、他の都市でも利用できるようウェブ上に公開されることになっています。

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さらに、このイベントだけに留まらず、広く投資を呼び込んだり、プロジェクトとしてスタートさせたりする予定です。成果をドキュメンタリー映画にしたり、誰でも利用できるサイクルハックのカタログを製作したりするなど、さまざまな展開が構想されています。

イベントの開催や、そのためのネットでの資金調達などの活動を通して、この考え方、スタイルの知名度を上げ、広く認知度を高めることも目指しています。それが、自転車に対するさまざまな障害の解決や、無理解や誤解の解消、そして、そのための活動資金の獲得にもつながると考えているのです。

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すべてのサイクルハックは公開され、誰でも共有できるオープンソースの形をとります。そのこともまた、広く参加者や賛同者を集め、多くの関係者を巻き込んでいく助けになるでしょう。どんな小さなハック、小さな前進でもいいから、何かを生み出したいと考えています。

これは、なかなか興味深い試みと言えるのではないでしょうか。多くの人の英知を結集することで、実践的で現実的なサイクルハックを生み出そうという手法、何より、サイクリストだけでない多くの関係者を巻き込むというスタイルは参考にすべきでしょう。

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日本では、江戸時代からの習い性なのか、どうしても「お上」頼みの部分があります。自らが変えていこうという意思に乏しいところがあります。また、サイクリストや自転車関係者からの提言、働きかけ、イベントなどの行動はあっても、広く利害対立者を巻き込むというスタイルは少ないような気がします。

スコットランドと比べ、日本では都市交通としての自転車に対する一般の理解度が低いとか、身近にロンドンのような先行事例がないといった違いもあると思います。政治的な土壌や市民の成熟度の違い、住民の地方自治に対する問題意識の高さや、政治参加の体験なども違うでしょう。

そうした部分を抜きにしても、いろいろ見習うべきところがあると思います。もちろん、このイギリス発のサイクルハック、日本でも応用できるものもあるでしょう。でも重要なのは、日本でも自転車だけでなく、クルマや歩行者、広く市民や行政、企業などを巻き込んで都市を変えていくという考え方かも知れません。




ゴールデンウィークから海の日の連休までの間が長いですね。8月に山の日が出来るそうですが、6月にも休みが欲しいところです。川の日でどうでしょう(笑)。

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