June 02, 2014

自転車の魅力を増やす人たち

自転車は面白い乗り物だと思います。


面白い理由はたくさんありますが、その一つに「創造性を刺激する」という点も挙げられるのではないでしょうか。いまのままの自転車でも十分に面白いのに、もっと違う自転車は出来ないか、もっと改良できるのではないかと考え、新しい自転車を生み出そうとする人がたくさんいます。

これまでにも多数の例を取り上げてきました。奇抜なものから実用的なものまで、首をかしげるようなものから、笑ってしまうようなものまで、新しい自転車を創り出そうと試みる人が数え切れないほどいました。ここにも、もう一人、そんな人がいます。

ドイツのエンジニア、Christoph Lenz さんです。彼は自転車が大好きなのですが、ちょっと気に入らなかったのは、スポーツバイクの前傾姿勢です。風の抵抗を減らし、ペダルに力を伝える上においては理想的な姿勢なのですが、それを強いられ続けることが、あまり好きではありませんでした。

それならば、前傾姿勢のきつくないシティサイクルなどに乗ればいいという話です。仰向けに近いような姿勢で乗るリカンベントもあります。ただ、あまりにアップライトな直立姿勢も、仰向け過ぎるリカンベントも好きになれませんでした。軽く後傾したラクな姿勢で乗りたかったようです。

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そこで、ペダルを前輪につけ、このような形の自転車が出来上がりました。この、“MAYNOOTHBIKE”、最初は乗車姿勢から始まりましたが、いろいろな点でユニークな自転車になっています。最大の特徴は、ペダルをこぐのではなく、踏んで進む点です。

私たちも、ときにペダルを踏むというような言い方をしますが、これは文字通りペダルを踏み込むことによって推進力が生まれます。Lenz さんが主張するのは、人間の足は、回転させるより踏み込むほうが向いており、そのほうが力が入るというのです。

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確かに言われてみれば、そんな気がしないでもありません。ただ、乗ってみたわけではないのでわかりませんが、動画でみる限り、ヒザに負担がかかり、太ももの前側が筋肉痛になりそうな感じもします。今のスタイル、すなわちペダルを回すほうが優れていると感じる人も多いのではないでしょうか。

実際のところ、どちらに軍配があがるかは別として、この、“MAYNOOTHBIKE”では、足を回転させるのではなく、踏み込む直線の往復運動を回転運動に転換する機構が取り入れられています。このことによって、前輪駆動で前輪操舵の自転車になっている点にも注目すべきでしょう。



チェーンがフロントフォークに沿っているので、例えばオフロードなどで地面と接触してトラブルになりにくい形状もメリットです。フレームも、ステムの下で、くの字型に折れた特徴的な形なので、折りたたみ自転車にするのも容易なのではないでしょうか。いずれにせよ、ユニークです。

シートの位置からして、乗り手の体重が、かなり後ろに来るように見えます。駆動輪に力がかかるのかと思ってしまいますが、見たところ軽快に走行しています。前輪をやや大きめにしたり、いろいろ試行錯誤がなされているのでしょう。さまざまなプロトタイプの製作を経て、近く販売開始を予定していると言います。

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乗車姿勢は好みとして、この自転車の最大の特徴は踏むペダルです。ペダルを回すより踏み込むほうが、人間の身体の動きとして自然だとするならば、理にかなっていることになります。この“MAYNOOTHBIKE”がペダリングを根本から変えるかどうかは別として、新しい試みの一つであることは間違いありません。

19世紀の終わりに近代の自転車の形が確立して以降、素材や加工技術は飛躍的に進歩しましたが、自転車の仕組み自体は、ほぼ変わっていません。それだけ完成度が高く、熟成したスタイルなのでしょう。これまでにも、新しい自転車を作り上げようとする数多くの試みがありましたが、大きな変革には至りませんでした。

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しかし、一方で、新しい発想によって自転車をもっと面白くしようと考える人たちがいたことで、数多くの種類の自転車が生まれてきたのも事実です。一つのジャンルとして確立したものもあります。オフロードだったり、ワザを競ったり、新しい自転車の楽しみ方が生まれることにもつながりました。

この踏む自転車も、自転車全体の仕組みを変えるものにはならないとしても、前輪駆動の踏む自転車という新たなスタイルを提案しています。自転車を生んだ国、ドイツの技術者の挑戦が更なる進化に向けての一つのステップになるかも知れません。

仕組み的には完成されたものにも関わらず、さらに自転車に変革をもたらせないかと考える人がたくさんいます。それだけ自転車が創造性を刺激するのでしょう。そして、そのことがバリエーションを増やし、自転車の間口を広げ、使い方や楽しみ方、自転車を奥が深いものにしてきたと言えるのではないでしょうか。




果たして拉致問題は進展するのでしょうか。ご高齢の親御さんを見るたび、今度こそ帰国の実現をと願わずにはいられません。

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この記事へのコメント
こんにちは
先日横浜で行われた小径車のイベントでセミリカンベントなる自転車に初めて乗りました。

感動です。

どこまででも走っていけそうな感覚を受けました。

自転車はまだまだ進化する余地が有りそうですね。

ところで、この動画、歩道を走ってますね。。
Posted by ぶーちょ at June 04, 2014 18:11
ぶーちょさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
リカンベントは普通の自転車よりもパワーの伝達効率に優れ、速いと言います。そのためレースで禁止された歴史があるそうですから、相当のポテンシャルを持っていると思います。
そうでしょうか。歩道上の自転車通行帯のようなところではないでしょうか。
Posted by cycleroad at June 05, 2014 20:21
 
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