June 05, 2014

意識でなく仕組みで防ぐ方法

また悪質な事故が起きてしまいました。


京都府福知山市で起きた事故です。


自転車の高校生を巻き込んだまま約1キロ逃げた酒気帯び男 福知山

被害者は重傷 京都府警、殺人未遂容疑適用も視野

巻き込んだまま約1キロ2日午前7時40分ごろ、京都府福知山市石原(いさ)の府道交差点で、右折しようとした軽ワゴン車が、自転車に乗って道路を横断していた同市の高校1年の男子生徒(15)をはねた。車は、男子生徒が乗った自転車を前部で引きずったまま逃走。

近くで取締中だった府警福知山署のパトカーが約1キロ先で停車させた。運転していた男の呼気から基準を超えるアルコールを検出し、同署は自動車運転処罰法違反(過失傷害)と道交法違反(ひき逃げ・酒気帯び運転)の疑いで現行犯逮捕した。男子生徒は右膝骨折の重傷。

逮捕されたのは、同市駒場新町の土木業、古田健二容疑者(60)。府警によると容疑を認め、「事故を起こして逃げた。朝、自宅で焼酎を飲んだ」と供述している。

車は男子生徒をはねた後、約300メートル先でパトカーに発見されたが、さらに約700メートル、男子生徒を自転車ごと引きずったまま府道を同府綾部市方面に逃げたという。自転車の一部が車前部のバンパー付近にひっかかった状態で引きずっていたとみられる。

府警は、男子生徒を引きずっていることを認識しながら約1キロ逃走を続けたことなどから、殺人未遂容疑の適用も視野に詳しい状況を調べている。男子生徒は、自転車で綾部市の高校へ登校する途中だったという。(2014.6.2 産経新聞)


飲酒運転自転車に乗った高校生を、ひきずったまま1キロも走行するという悪質な事故です。振り払おうとして蛇行したとの目撃談もありますので、気づいていたのは間違いないでしょう。発覚面脱容疑がかけられ、殺人未遂容疑での立件を検討とも報道されています。たしかに殺人行為と言ってもおかしくありません。

やはり一番の問題は飲酒ということになるでしょう。事故そのものにも飲酒の影響が考えられますし、そのまま逃げようとしたこと、引きずって1キロも走行するという行為にも、当然影響しているに違いありません。またもや飲酒による無謀な運転が繰り返されたということになります。

今回の被害者は、1キロも引きずられたにもかかわらず、命に別状がなかったのが不幸中の幸いでした。しかし、最近起きた同様の引きずり事故の多くでは被害者が死亡しています。そのどれもが飲酒による事故です。飲んでいたために正常な判断が出来ず、事故に加え、被害者を引きずってでも逃げようとしてしまったのでしょう。

広報・啓発活動福岡で起きた子供3人が死亡した事故をきっかけに、飲酒運転の厳罰化が図られました。それでも危険運転致死傷罪の適用を免れる例が多いことから、先月20日には自動車運転死傷行為処罰法が施行されたばかりでした。飲酒運転に対する厳罰化は確実に進んでいるのに、飲酒による事故は後を絶たないということになります。

飲酒による死亡ひき逃げ事故だけではありません。飲酒運転で捕まり、公務員などが懲戒解雇されるといった事例も少なくありません。飲酒運転の根絶をめざし、全国各地で啓発活動なども行われています。それなのに、大きな悲劇、大きな不幸を生む飲酒運転が、なぜなくならないのでしょうか。

私は、この飲酒運転の厳罰化や啓発活動といった対策が、そもそも間違っているのではないかと思うのです。常習的に飲酒運転をするような人もいますから、厳罰化そのものには反対ではありません。遺族の処罰感情から考えても、飲酒運転は厳罰に処すべきでしょう。そのこと自体に異論はありません。

私が言いたいのは、厳罰化によって飲酒運転を思いとどまらせようとか、飲酒運転の怖さ、重大さを啓発活動によってわからせよう、それで防ぐことが出来るという考え方が間違っているのではないかということです。つまり、一部の青少年や常習者等をのぞき、多くの人は飲酒運転の怖さ、重大さをわかっていると思うのです。

ことわる勇気これだけ悲惨な事故が繰り返されているのですから、懲役20年でなくても、飲酒運転など絶対にしないと考えるのが普通です。しかし、絶対にしないと誓っていても、飲むとその決意が覆ってしまうのが飲酒運転なのではないでしょうか。厳罰や、悲劇を招くことも、いったん飲んでしまうと重要に感じなくなってしまうのです。

よく言われる、「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな。」ですが、「乗るなら飲むな。」は可能ても、飲んでしまったら、「飲んだら乗るな。」は出来ないと考えるべきでしょう。誰しも多かれ少なかれ、お酒を飲むと判断力が失われ、飲酒運転の怖さ、日頃の決意など、どこかへ行ってしまうのです。

この飲酒の基本的な性質を考えるならば、厳罰化や啓発活動だけで防げると思うほうがどうかしています。効果が全くないとは言いませんが、相手は酔っ払いなのですから、理性に働きかけて防ごうというのは無理です。では、どうするかと言えば、物理的に飲酒運転を出来なくするしかありません。

 Alcohol Interlock例えば、呼気の中にアルコールを検知するとエンジンがかからない、アルコールインターロック装置の導入です。欧米では、こうした装置の導入が進められはじめています。日本でも、順次アルコールインターロック装置を義務づけていくことこそが、飲酒運転を減らす上で有効な対策なのではないでしょうか。

国土交通省でも、自動車安全局の技術安全部技術企画課などが、アルコールインターロック装置の技術指針案を策定するなど、導入に向けた検討を行っています。クルマメーカーも技術開発をしています。にもかかわらず、装置の義務化に向かわないのは、国民の間に義務化を求める声が広がらないからでしょう。

その背景には、こうした装置に対する疑問があります。成りすましや機械の解除が出来てしまうというものです。しかし、他の人が呼気を吹きかけたら、その人が飲酒運転の幇助で処罰されます。まともな人ならやらないでしょう。それこそ、お酒を飲んでいる人なら別ですが、反応してしまうので意味がありません。

飲酒運転防止システムもちろん、機械の解除は可能でしょう。そこまでやる確信犯はインターロックでも防げません。でも、この装置は、お酒を飲んで正常な判断が出来ない時、飲酒運転を防いでくれることに意味があります。ふだん、飲酒運転なんてしないと思っている人でも、何かの拍子にしてしまうことは十分考えられます。

飲酒運転の事故のニュースで、加害者の知り合いなどが、普通に社会生活をしていた、会えば挨拶もするいい人だった、などとインタビューに答えていたりします。ふだんは、飲酒運転など絶対にするまいと決意していた人でも、まさに酒のせいで転落してしまうのが飲酒運転なのです。

警察官が飲酒運転で捕まり、懲戒免職になる事例も後を絶ちません。つまり、ひと一倍、飲酒運転の怖さを知り、身に染みている警察官ですら防げないわけです。ふだんは「乗るなら飲まない。」ようにしている人でも、お酒を飲んだ後、何かの拍子に、たまたま運転する機会が出来てしまった時、果たして防げるでしょうか。

そういう危険性に備えるために、アルコールインターロック装置の導入です。言ってみれば、エアバッグなど一緒、安全装置と考えるべきでしょう。酔っ払った時に解除できなければいいのです。しらふの時に装置を解除し、いつでも飲酒運転出来るようにするような人は、まずアルコール依存症の治療をするべきでしょう。

飲酒運転防止装置装置を義務付けると、飲酒運転しない人、お酒が飲めない人まで、負担することになり不公平だという議論もあります。たしかに一理ありますが、これは社会的に悲劇をなくそうという取り組みなのですから、そういう人も含め、皆が協力すべき課題なのではないでしょうか。大量生産されればコストも下がるはずです。

自分に直接関係のない政策、恩恵のないことでも、社会的に必要な政策として進められることはたくさんあります。この装置によって飲酒運転が減少すれば、社会的な損失を減らすことができます。クルマの公害防止対策などと同じで、社会的な必要性と割り切るべきでしょう。

このような装置が、すでに開発されているのですから、使わない手はないはずです。なぜ導入すべきとの声が大きくならないのでしょうか。私なりに考えてみると、これはドライバーの順法意識の問題で、自分には装置など不要だと考える人が多いからではないかと思います。

大多数の人は、自分は飲酒運転などしないと考えているでしょう。事故報道のたびに決意を固めているかも知れません。だから、飲酒運転する人が悪いわけであり、厳罰に処せばいいと考えます。しかし、それでは飲酒運転はなくなりません。そう考える人が、次に飲酒運転で事故を起こすかも知れないのです。

飲酒運転は凶悪犯罪飲酒運転など他人事だと思っている人でも、何かの拍子に、運悪く飲酒運転の状況が揃ってしまうかも知れません。警察官ですら回避できないことがあるのです。今まで運が良かっただけで、自分もやる可能性があると考えるべきでしょう。自分だけは大丈夫と考える人の多いことが、飲酒運転のなくならない理由ではないでしょうか。

飲酒運転はドライバーの順法意識の問題ではありません。厳罰化や啓発活動で防ごうというのが間違いです。飲酒運転が理性に訴えるやり方では防げないことを理解し、物理的な対策を求めていく必要があります。誰もが自分にも起こりうると考え、装置の義務化に積極的に賛成すべきだと思います。

クルマが備えるべきなのに欠けていた装置でしょう。普及すれば自身の事故を防ぐだけでなく、より社会が安全になって飲酒運転から家族を守ることになります。最近クルマに自動ブレーキとか、居眠り防止など新技術が続々と搭載されています。それもいいですが、アルコールインターロック装置のほうが先ではないでしょうか。





関東甲信や北陸でも梅雨入りしました。憂鬱な季節ですが、今年はW杯があります。なるべく多くの日本の試合が見たいものです。

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この記事へのコメント
こんにちは

おっしゃる通り、エンジンがかからないシステムにするしか根絶の術は無さそうですね。
それと同時にシステムの解除も違法にしないと改造で解除されて終わりでしょう。

それにしても情けない大人が多いものですね。
Posted by ぶーちょ at June 06, 2014 12:53
とにかく逃げた者を厳罰化するべきだと思います
逃げたものは自動で危険運転にするとか
事故は起こるものですでも逃げるのは
卑怯な犯罪です
逃げたほうが罪が軽くなるような法は不備というべきでしょう
Posted by あるふぁ at June 07, 2014 00:07
ぶーちょさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
すでに技術として存在しており、需要が増えれば、さらに高度な判定技術や成りすまし防止も視野に入っていると言います。使わない手はないと思いますね。
解除は違法とするとしても、解除するのは、わざわざエアバッグを取り外すようなもの、自分のためにならないことであり、自分が酔って大間違いをしそうになった時、それを防いでくれる装置だと理解すれば、普通の人は解除しないでしょう。
酒の効果は年齢に関わらず、ということでしょうね。
Posted by cycleroad at June 07, 2014 22:53
あるふぁさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
ひき逃げすれば、より重い罪になるのは周知の事実ですが、なくなりませんね。
酒に酔っての事故の場合、逃げて酔いをさませば、いわゆる「逃げ得」になってしまうのは、たしかに問題です。
ただ、さらに厳罰化されたとしても、やはり酔ってしまえば正常な判断が出来ないわけで、ひき逃げの歯止めになるかは疑問といわざるを得ないでしょう。

Posted by cycleroad at June 07, 2014 23:07
 
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