ゴミを資源として再利用できるように分別回収したり、いらなくなった品物、本や家電、洋服や趣味の品などをリサイクルショップに持ち込んで売る人は珍しくありません。ショップに売るのは、正確に言うとリユースですが、いずれにせよ資源を無駄にしないようにしようという考え方です。
リサイクルは再資源化ですが、その過程でエネルギーを消費し、ものによってはコストが高くつきます。使えるものはリユース、再利用したほうが、より無駄がありません。そのためにはリペア、修理して使うという考え方が必要になってきます。
リフューズ、不要な物を買わない、あるいは過剰な包装などを断るとか、リデュース、なるべく資源量を減らしたり、長く使えるものを選ぶことで使用量を低減することとも合わせて語られますが、いずれにせよ、モノや資源を無駄にせず、有効に活用しようという考え方が根底にあります。
放置された自転車も、鉄くずとして再資源化するより再利用したほうがいいわけですが、元々格安で粗悪なものも多く、必ずしも需要があるとは限りません。また、撤去された放置自転車を安く販売すると、自転車ショップの営業を圧迫することになり、実際に反発が起きている地域もあります。

そこで国内ではなく世界的なレベルで自転車をリサイクル(リユース)しようというのが、イギリスから始まった非営利団体、その名も“
Re Cycle”です。イギリスなど先進国で廃棄されたり、寄付された自転車をアフリカに持ち込んで、現地のために使おうという活動をしています。
これならば、先進国の自転車販売の邪魔をしませんし、まだ自転車を買えない人が多くいるアフリカの国にとっては、貴重な支援にもなります。単なるリサイクル、リユースというだけでなく、ある種のチャリティー活動と位置づけることも出来ます。

いらなくなった自転車を寄付する人にとって、その自転車が新しい働き場所を得ること、捨てなくて済むことは嬉しいことです。使わない自転車をしまっておくスペースも有効活用できます。そして受け取るアフリカの国の人にとっては、いろいろな意味で福音となります。
最近、アフリカ諸国の高い経済成長が注目を浴びていますが、その恩恵に預かる人は必ずしも多くありません。権力腐敗や利権構造、社会の富の再分配機能が未発達など、理由はいろいろありますが、貧富の差が拡大し、貧しい人は貧しいままです。苦しい生活を強いられているアフリカ人は大勢います。

そうしたアフリカ人にとって、貧困から抜け出せない大きな要素が、移動能力の貧弱さです。都市の一部を除けば公共交通は整備されていません。クルマを所有したり、タクシーなどを使う経済力も当然ありません。多くのアフリカ人は歩くしか方法がないのです。
歩くと言っても、日本とはわけが違います。水を汲みに行くだけでも往復で1日かかってしまったりする距離を歩く必要があるのです。仕事に行くにも、学校に行くにも、市場へ農産品を売りに行くにも、そのための移動や輸送の手段がないのです。

水を汲みに行くだけで長い時間がかかってしまう場所では、その役割を果たす子どもたちが教育を受けられるはずがありません。それが教育の格差となって貧困の再生産につながります。鉱山や工場で働きたくても、そこまで行く手段がないので、豊かになる方法が絶たれているのです。
わずかな作物を売って換金しようにも、市場まで行く方法がありません。全て、歩くしか方法がないわけです。インフラ整備が国全体に行き届いていない、多くのアフリカ諸国では、こうした地域がたくさんあり、多くの人が移動や輸送手段がないために貧困から抜け出せないのです。

こうした地域の人々にとって、自転車素晴らしい贈り物となります。先進国ではいらないものでも、アフリカでは非常に有効に利用されることになるわけです。もちろん舗装された道路はありませんが、それでも自転車があれば、徒歩に比べて機動力や輸送能力が何倍にもなります。
水汲みの時間は短縮され、職場や学校への通勤通学が可能になるかも知れません。市場に農産物を出荷することも出来ます。病院に行けたり、トレイラーなどを使えば病人・怪我人を搬送することも出来ます。そして、今まで歩くことで無駄になっていた時間を手に入れることが出来るわけです。
自転車は燃料代もかからず、維持する費用は安く済みます。修理も比較的簡単ですし、環境を破壊して、人々の健康に害を与えることもありません。実際、自転車が使えるようになったことが、サブサハラのアフリカ諸国において貧困からの脱出に大きく貢献しているのです。
イギリスなどの先進国にとっては、ゴミが減って埋立地の節約につながるとか、家庭の物置のスペースが広がることで、あらたな消費が促進されるかも知れないくらいのメリットでしょう。しかし、アフリカで貧困にあえぐ人達にとって自転車は、死活的に重要な役割を果たす可能性があるのです。

“
Bikes Not Bombs”という組織も同じような活動を行うイギリス系の団体です。その名の通り、爆弾ではなく自転車を届けるわけです。同団体は、同じように貧困の撲滅だけでなく、暴力や戦争をなくすことにもつながると主張します。格差、不平等をなくすことは、希望と平和をもたらします。
格差や不平等、それによる貧困が絶望を呼び、暴力、犯罪、テロなどの温床となることは論を待ちません。食べていくことすら困難になれば、犯罪や暴力、テロ組織への加入などに走るしかありません。内戦に発展して泥沼化すれば、不幸の連鎖が広がることになります。
たかが自転車ですが、貧困や格差の解消に役立ち、平和にも貢献することになるわけです。先進国にとって自転車のリサイクル・リユースは、資源の節約やゴミの減量ですが、世界的な規模でリユースすれば、非常に大きな価値を生むことになります。アフリカにおける自転車は、自転車以上の何かなのです。
先進国における自転車は、ちょっとした移動手段だったり、スポーツや趣味かも知れません。しかし、動画にもあるように、アフリカにおいて自転車は死活的に重要な移動手段だったり、荷物を運ぶトラックだったり、病人を運ぶ救急車だったり、給水車だったり、スクールバスだったりするわけです。
以前からお読みいただいている読者は、思い当たるかも知れませんが、実は似たような活動を行う組織は他にもあります。この二つの団体は初めてですが、似た団体は、これまでにもいくつか取り上げてきました。もちろん水や食料なども大切ですが、自転車は、とても重要な意味を持つ支援として重視されているのです。
日本には、昔から「もったいない」という文化があり、うまくリユース、リサイクルしてモノを使ってきました。何かが不要になれば、他の用途に使えないか考えたり、捨てるのではなく、リサイクルショップへ持ち込んだり、ネットオークションで売るなど、ゴミにしないことを考える人も多いに違いありません。
ただ一方で、自転車を放置し、撤去されても受取りに行かない人も相当の割合に上ると言います。モノがあふれる豊かな日本では、ゴミの量も増えています。自転車に限らず、世界的な規模で再利用することを考えれば、もっと有意義な使い方が出来るものがあるかも知れません。
早朝の観戦に備えて、そろそろ早寝早起きに睡眠のリズムを変えておかなければなりませんね。