June 14, 2014

自転車の活用に不可欠な要素

自転車に乗っていればトラブルも起きます。


タイヤがパンクしたり、チェーンやその他の部品の損傷で走行が困難になることもあります。趣味のサイクリストならばパンク修理くらい自分で出来るでしょうし、修理キットや工具なども携行していると思いますが、その場では修理できないトラブルもあります。

そんな場合は、自転車店で補修用品や交換部品を購入したり、取り寄せてもらうことになるでしょう。自分の手に負えなければ専門のショップで修理を頼むこともあると思います。イザという時に頼れる熟練の自転車屋さん、技術を持ったショップ店員は全国にいます。

最近減ったとは言え、全国に自転車店があり、パーツや用品の在庫が置かれ、通販も含め、必要な部材を取り寄せられる物流網が整備されています。ふだん、あまり意識していないかも知れませんが、こうした店舗網や物流網も私たちが自転車に乗る上で、必要不可欠な社会インフラです。

Ability BikesAbility Bikes

前回、アフリカに自転車を届けている組織の話題を取り上げました。先進国で使わなくなった自転車の寄付を受け、修理・整備した上でアフリカの国々で必要とする人々に使ってもらおうという取り組みです。実は、アフリカにおいて、自転車は死活的に重要な役割を果たしうるという話でした。

先進国で不要になった自転車が、アフリカの国々で有効に活用されるならば、とても有意義なリユースであり、鉄くずとしてリサイクルするより、価値のある再利用です。先進国でもゴミの減量となり、埋め立て処分場の延命につながり、新品の販売を阻害することもありません。

先進国の住人の感覚だと、自転車を送れば済むような気がしますが、実は、それだと不十分です。現地で継続的に自転車を活用するには、自転車の修理や部品・消耗品の供給といったインフラが必要なのです。途上国には、このインフラが整っていない国があります。

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日本の自治体などでも時々、放置自転車を途上国に無償で譲渡したという広報を目にすることがあります。「無償だから譲渡先の国の人は喜ぶだろう。国際親善になるし、こちらも放置自転車の処分費用が節減できて一石二鳥だ。」なんて担当者のコメントが載ったりします。

自転車を活用するインフラのある国ならいいですが、アフリカの国のように、自転車だけ送られても、それを修理維持していくインフラが整っていない国も少なくありません。せっかく自転車を手に入れても、壊れたら最後、自分たちでは修理も出来ず、部品も手に入らないのでは機動力のない生活に逆戻りです。

そこで、継続的に活用してもらうためには、ただ自転車を送るだけでなく、修理や保守のインフラを整備しなければなりません。こうした部分を手がける組織の一つが、“Ability Bikes”です。元々はガーナで活動する先進国のNPO団体でしたが、今では現地のメンバーが独立して運営する組織となっています。

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前回取り上げた“Re - Cycle”や、“Bikes Not Bombs”などとも連携して活動しています。“Ability Bikes”は、これらの団体から提供された自転車の修理やメンテナンスを手がけ、現地の人が継続して自転車を活用するための手助けをしているのです。

単なる修理にとどまらない意義があります。現地のスタッフが技術を身につけ、自ら修理や補修、部品の販売などを行うことは、先進国の援助に頼らず、自立することにつながります。先進国からの援助やチャリティーが途絶えたとしても、継続して自転車を維持する仕組みになります。

これは、地元の雇用を増やすことでもあります。“Ability Bikes”では、技術を教える職業訓練も行っています。修理インフラが整備されることで、自転車が交通手段として定着していけば、現地での自転車の生産や販売も広がる可能性があります。関連する産業が増え、雇用や経済効果も、より大きく広がることになります。

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さらに特筆すべきは、この“Ability Bikes”、全てのスタッフが身体に障害を持つ人であることです。当然ながら、先進国に比べて障碍者に対する福祉が大きく遅れている中で、貴重な障害者雇用の場にもなっています。同時に障害のある人たちに技術を教え、自立の手助けをしているのです。

雇用ですから給料を払わなければなりません。そこで、イギリスや北米などから輸入、あるいは援助として提供された自転車を、それを必要とする人たちに「非常に手頃な価格」で販売し、修理などのサービスを提供しています。慈善活動ではなく、ビジネスとして運営しているのです。



身体の不自由な人には職と技術を提供し、身体が頑健な人には自転車という貴重な機動力を継続的に提供する仕組みです。自転車以外にも車椅子などの寄付を受け、それを整備して障害者に提供しています。全ての人に移動や輸送の自由を与え、障害に関わらず働く能力と機会を提供し、同時に産業の創出を目指しているのです。

前回も書いたとおり、アフリカでも、いまだ貧困にあえぐ層にとって自転車は死活的に重要な移動・輸送の手段であり、それは貧困から抜け出す希望になります。自転車の修理は、それを維持するインフラであり、雇用の創出であり、技術を獲得する職業訓練であり、それを得た人にとっての誇りでもあるのです。



自転車の修理や部品交換が当たり前のように出来る先進国に住んでいると、つい忘れてしまいますが、自転車に乗るためには自転車だけでは不十分で、さまざまなインフラが必要です。道路や設備だけでなく、自転車が手に入り、修理や部品購入がどこでも出来ることが、まず最初に必要なインフラでもあるわけです。

よく、「魚を与えるのではなく、釣り方を教えろ。」ということが言われます。途上国に食料を援助しても、その場しのぎであり、腐敗や利権で多くが貧困層に届かなかったり、むしろ自立を阻んだりします。それより、食料を得る方法を伝授し、貧困から抜け出し、自立できるようにする仕組み作りが重要ということになるでしょう。

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でも、実際には、魚の釣り方を教えるだけでも不十分です。釣り方を教え、釣り竿を提供しても、その釣り竿が折れてしまえば、釣ることが出来なくなってしまいます。釣竿の修理も出来て、継続的に釣りが出来るようにしていかなくては意味がありません。

先進国では当たり前で、意識もしていないようなインフラや産業が未発達な国もあります。そうした国への支援は、ただ物資を提供するだけでは不十分です。「魚を与えるのではなく、釣り方を教え、さらに釣り道具の維持・修理まで自分たちで出来るようにしなければならない。」ということになりそうです。




スペインが5失点とは驚きました。明日は日本代表の試合、何とか力を発揮してもらいたいものです。

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この記事へのコメント
こんにちは

前回の記事と同じですが、
で、我々日本の一般人には何が出来るんでしょうか?

何か情報をお持ちですか?
Posted by ぶーちょ at June 15, 2014 12:08
ぶーちょさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
誰でもすぐ出来るのは寄付でしょう。こうした活動を行う団体のサイトには、だいたい寄付を受け付けるページがあると思います。
団体によって事情は違うと思いますが、いまどきはネットを使えば直接コンタクトがとれますので、何か具体的な協力を申し出ることも出来るでしょう。
何をするかは、それぞれが考えることですが、出来ることは、いろいろあると思います。


Posted by cycleroad at June 16, 2014 22:52
 
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