私も使っていますが、確かに便利です。中には肌身離さず持ち歩き、いつも触っている人、お風呂の中でまで使う人もいます。四六時中LINEなどでコミュニケーションをとったり、SNSなどを頻繁に使うため、常に覗き込んでいないと気がすまなかったりするのでしょう。
すぐに返信をと強迫観念にかられる人や、スマホ中毒、あるいはスマホ依存症が疑われるような人もいます。最近は、それが子どもにまで広がっていることも問題になっています。そんな問題を抱える人でなくても、ついつい触ってしまう、ふと気づけば確認しているという人も多いのではないでしょうか。
問題は移動の時です。最近は「歩きスマホ」とか「ながらスマホ」などと呼ばれて社会問題となっています。駅のプラットホームから転落したり、気づかずに踏み切りに侵入する事故も発生しています。駅などの公の場所で周囲の人と衝突したり、それがトラブルに発展する例もあります。
歩くだけではありません。最近は自転車に乗りながらスマホを使っている人、「自転車スマホ」を見ることもあります。普通の携帯でメールを打ちながらの人も含め、危険な行為であることは間違いありません。本人が事故に遭うだけでなく、周囲を巻き込む危険性もあります。
さらに、クルマの運転をしながらスマホをいじっている人も少なくないに違いありません。外からだと、なかなか確認は出来ませんが、もしかしたら相当の割合の人が「運転スマホ」をしているのではないでしょうか。スマホのナビ機能を使いながら運転する人もあるでしょう。
当然ながら、クルマの運転をしながら携帯電話やスマートフォンを使うのは道路交通法違反です。例え、スマホのアプリでナビゲーションとして使うのであっても、それが運転中に画面を見て確認することになれば、前方不注意で危険なのは明らかです。
あまり運転中のスマホで摘発されたという話は聞きませんが、それは警察官がスマホの使用を現認するのが困難であり、取り締まるのが難しいからでしょう。ケータイで通話をしているのを目視して取り締まることはあっても、スマホを腰のあたりで使っていたら、外からは確認しづらいものがあります。
周囲のドライバーからも確認は困難ですが、これだけ四六時中スマホを使う人が増えているのに、「運転スマホ」だけ増えていないはずがありません。脇見運転とか、ハンドルを誤った、ブレーキが遅れたということで、必ずしも運転スマホが原因とはされないものの、おそらく相当数が事故の原因にもなっているはずです。
通信会社が「歩きスマホ防止機能」を提供したり、テレビコマーシャルなどで啓発活動も行われていますが、なかなか減少する様子は見られません。この問題は、当然ながら日本だけの問題ではなく、世界中で問題になっており、アメリカの州の中には、条例で禁止し、罰金を科すところまであります。
この「ながらスマホ」がなくならない一番の理由は、それが、それほど危険だと思っていない人が多いからではないでしょうか。ほとんどの人が、移動スマホをしても無事に済んでおり、これまでほとんど問題がなかったことが、その根拠となっています。
歩きながらでも、ちょっとメールを確認したいなど、スマホを使いたくなる気持ちは、よくわかります。電車内で確認しきれず、そのまま駅に着いて歩きながら使っても、どうってことありません。歩きながらでも、周囲を十分に注意していれば問題ないと思っている人が大半なのではないかと思います。
「自転車スマホ」も「クルマスマホ」も同じです。前方を注意しつつ、一瞬画面に目をやるくらい、特に支障はないと考えているはずです。いちいち路肩に止まって確認するのも面倒ですし、これまで使っても問題なかったわけで、今後も問題ないだろうと考えている人がほとんどではないでしょうか。
何らかの手段で移動しながらも、「移動スマホ」をしている人がこれだけ多いのは、その行為が、さほど危険だと自覚していないことを表わしているのだろうと思います。歩きスマホに慣れて、自転車スマホ、クルマスマホにエスカレートする人もあるはずです。しかし、本当に危険はないでしょうか。
実は、その本当の危険性がわかった時には、既に遅いかも知れません。歩きスマホが死亡事故につながる確率は低いかも知れませんが、自転車やクルマの場合、死亡事故も十分ありえます。移動しながらスマホを使っていると、いつかそれが致命的な脇見、動作の遅れ、危険の発見の遅れとなり、事故につながるかも知れません。
ふだんは、ちょっと一瞬目をやるだけだったとしても、何かの拍子に数秒注視してしまい、運悪く事故につながることも十分考えられます。だからこそ、わざわざ道路交通法で禁止しているのです。ほかの禁止事項と同じで、事故に直結しているからこそ禁止されている事実を重く捉えるべきでしょう。
あきらかに危険であれば、誰もしません。ほとんどの場合は危険とは思えず、実際なんともない行為です。しかし、それを日常的に続けていくうち、つい引き込まれてしまい、注意が散漫になる時が来るわけです。それが大きな事故になってから悔やんでも遅いのは間違いありません。
海外では、移動スマホをやめようと決心する人たちが出てきています。そして、移動中のスマホをやめようと人々にも呼びかけています。サイトを立ち上げ、そのことを啓発するとともに、この主張に同感の人、共感する人の輪を世界中に広げていこうとしています。
よくよく考えて、移動スマホが危険なことに気づいたとします。移動スマホを続けていると、いつかは事故を起こして自分の命を失うか、人の命を失いかねない、愚かな行為であると悟ったとします。しかし、移動していない時だけと思っていても、ついうっかりスマホを触っていたりします。
そこで、“
Red Thumb Reminder”です。このサイトでは、自分がスマホをいじるほうの手の親指、または使う指の爪をマニキュアやマジックなどで赤く塗ることを推奨しています。その赤い指を見ることで、スマホの操作をしてしまった時、気づいてやめることが出来るというものです。
とてもシンプル、単純明快です。この方法は自分の娘が、宿題か何かを忘れないようにするため、自分の指に糸を巻いていてのを見て思いついたのだそうです。だから“Red Thumb Reminder”、赤い親指のリマインダーです。リマインダーとは、思い出させてくれるもののことを言います。
このアナログで、ばかばかしく見える方法が、意外に効果的だったので、それを広めることにしたと言います。誰でも出来ます。男性は周囲の女性にマニキュアを借りてもいいですし、この際だから一本くらい購入してもいいでしょう。ふだん赤いマニキュアをしている女性だったら、一本だけ違う色にするわけです。
きっと、同僚や友達に、それは何だと聞かれるはずです。それをきっかけに、支持者を広げていってほしいと考えています。親指だけ赤い爪の人を見かけたら、それは仲間です。指を振りあい、この輪の広がりを共有しようと呼びかけています。サイトには、あなたのストーリーを教えてほしいとも書かれています。
例えば、こんなストーリーです。「私は娘に頼んだけれど、私の親指の爪にマニキュアを塗ってくれませんでした。でも、私は娘のために、私の親指の爪を塗ることにしました..。」移動スマホをしないことは、事故を起こさないこと、自分だけでなく、家族のためでもあるのです。
細かいことを言えば、いちいちマニキュアを落すわけにはいかないので、移動中以外に使う時、赤い爪で使うことになるでしょう。赤い爪に慣れてしまい、ギョッとしなくなるような気もします。そう考えると、スマホを使えないよう赤い指サックか何かを使って、移動中以外は外すという方法がいいかも知れません。
いずれにせよ、この「赤爪備忘」の啓蒙活動、なかなか面白いアイディアです。素敵な提案ではないでしょうか。移動スマホの危険に気づいた人なら、共感できるメッセージだと思います。あまり押し付けがましくなく、さりげなく控えめな提案なのも、いい感じです。
移動しながらスマホを使うことが、安全のように見えても、実は大きなリスクをはらんでいることに気づいた人は、自分だけでなく、周囲の人にもやめてほしいと思うでしょう。もらい事故もありますし、自分や家族が巻き込まれないとも限りません。
考えてみれば、少し前まではスマホなんてありませんでした。それを思えば、移動中にまで急いでチェックしたり、返信しようと焦る必要があるでしょうか。移動中に使う習慣がつき、使い続けていれば、将来に大きな禍根を残すかも知れないとするなら、なおさら馬鹿げた話です。あなたは、この「赤爪備忘」、どう思いますか。
かなり厳しくなりました。でも一番悔しいのは選手でしょう。もうダメ元で、乾坤一擲の勝負をしてほしいですね。
ながらスマホはスマホが持ち主の意思とは別に常に通信された状態にあることが一番の要因ではないかと思います。常につながっていることに価値を見出すのではなく、繋がりたい時に自分からアクセスする、通信におけるモラルがユーザーだけではなく、提供者側にも求められるのではないでしょうか。とはいえ、時計の針は戻せない。ジレンマを感じますね。